仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

『 町長選挙 』 奥田 英朗

2009-07-06 18:24:51 | 讀書録(一般)
『 町長選挙 』 奥田 英朗

お薦め度 : ☆☆☆☆
2009年7月3日讀了


昨年、友人に薦められて第1作『イン・ザ・プール』を讀み、その面白さに惹かれて立て續けに第2作『空中ブランコ』を讀んだ。

主人公は精神科醫の伊良部。
社會的常識といふものをいつさい持ち合せてをらず、子供がそのまま大人になつたかのやうな傍若無人な性格の持ち主。
針が人のからだに刺さるのを見るのが好きで、何かに付け注射を打たうとする。
注射を打つのは、けだるい雰圍氣で胸の谷間をちらつかせる若い看護婦のマユミ。
こちらも常識はづれといふ點では伊良部といい勝負だ。

ちなみに、第2作『空中ブランコ』で作者は第131囘直木賞を受賞してゐる。

さて、本書は、伊良部シリーズの第3作。
氣鬱を吹き飛ばしてくれさうな面白い本を讀みたいと思つて、ネットで注文した。
そして、その期待にたがはず、樂しむことができた。

本書には中篇が4篇收録されてゐる。
私が一番面白いと思つたのは、「オーナー」。
いまのありのままの自分を受け容れることの難しさ、受け容れることで訪れるこころの平安がよく描かれてゐる。


「オーナー」
患者は、日本一の販賣部數を誇る新聞社の代表取締役會長で、プロ野球の人氣球團のオーナーでもある、田邊滿男、通稱「ナベマン」。
どこかで聞いたことのあるやうな人物である。
傲岸不遜な性格で、その言動はつねにマスコミを賑ははせるのだが、じつはパニック障害。
暗闇や狹いところ、フラッシュの光などを極度に恐れるのであつた。
この「ナベマン」が伊良部の患者となるのだが、權威をふりかざす「ナベマン」と非常識人間・伊良部とのやりとりが、まるで掛合漫才のやうに面白い。

「アンポンマン」
患者は、安保貴明、インターネットビジネスのライブファストの社長で、プロ野球球團の買收や、放送局の株式買付などで、世間に話題を提供してゐる。
ベンチャービジネスの若き旗手として一世を風靡してゐるのだが、最近ひらがなが書けなくなつてきてゐる。
そこで伊良部のもとを訪れたのだが・・・

「カリスマ稼業」
40代にして若さを保つてゐるカリスマ女優の白木カオル。
しかし、華やかな活躍の蔭では、若さを保つ爲にあらゆる努力をしてゐる。
伊良部と接觸することで、かういふ彼女の心境がどのやうに變化していくか。

「町長選擧」
人口2500人の島で行なはれる町長選擧。
候補者は2名、現職町長と前町長。
公職選擧法などとは別世界の治外法權、現金が飛び交ふ選擧戰。
父親の醫師會でのパフォーマンスのお蔭で、2ヶ月間この島の診療所で診察することになつた伊良部が、町長選擧に卷き込まれる。




町長選挙 (文春文庫)
奥田 英朗
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<第1作>
イン・ザ・プール (文春文庫)
奥田 英朗
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<第2作> 第131囘直木賞受賞作
空中ブランコ (文春文庫)
奥田 英朗
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