きのふ、 「西宮ガーデンズ」 といふ大規模商業施設へ行つて、 『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』 を觀てきた。
この 「西宮ガーデンズ」 は、西宮球場の跡地に2年ほど前に出來たのだが、私は行つたことがなかつた。
阪急西宮北口驛には數へきれないほど行つてゐるといふのに、中年オヤヂひとりでは(2人でも)、なかなか行く氣になれなかつたのだ。
行つてみたら、アトリウムやらオープンエアのデッキ(ガーデン)やら、廣々とした空間が設へてあり、いい感じ。
とにかく廣いので、ここを隅から隅まで巡るには數日がかりになりさうだ。
この5Fに 「TOHO シネマズ」 といふシネコンが入つてゐる。
スクリーン數が12あり、それが通路の兩側に竝んでゐて、なんだか屋臺村のやう。
映畫のハシゴをするには最高の環境にある。
現に、「のだめ」を見終つた客の中には、その斜向ひにある小屋(部屋?)に入つて行つた客もゐた。
12のスクリーンのうち、「のだめ」を上映してゐるのは3つ。
時間差で上映してゐるのだが、もしかしたら重複してゐる時間帶もあるのかもしれない。
前賣チケットを當日座席指定に換へて貰ひ、食事に。
上映開始は13時で、あと1時間半ある。
4Fに飮食店が24店ある。
そのなかで、1時間半をゆつくりと過せさうなところということで、イタリアンを選擇。
ゆつたりと過せたのはよかつたが、デザートを食べる頃には時間が迫つてきて、少し慌てた。
13時少し過ぎに滑り込み。
空いてゐるのに吃驚した。
おそらく座席數の2~3割ほどしか入つてゐなかつただらう。
月曜日だといふこともあるのだらうし、西宮といふロケーションもあるのだらうが、それにしても少ない。
お蔭で、荷物を隣の席に置いて、ゆつたりと觀ることができた。
さて、 『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』 について。
「あらすぢ」については省略。
どうも最近、面倒臭がりに拍車がかかつて來た。
それに、既に觀た人にとつては不要だし、まだ觀てゐない人には邪魔だと思ふので・・・
冒頭は、雷雨の夜にのだめがうなされてゐるシーン。
この映畫がギャグ滿載の樂しいだけの映畫ではないことを豫感させる。
(中略、といふかすべて略)
ラストシーンは、パリの橋の上での長大なキスシーン。
そのあまりの長さに、役者も困つたのではなからうか。
最初のうちは微動だにしない2人だつたが、そのうちに上野樹里が足を踏み換へ、玉木宏が上野を抱いてゐる腕を組み替へた。
あんなに長い間キスしてゐて、お互ひに身動きしないなんて不自然だもんなあ。
貰ひ泣きしたシーンもいくつかあつたが、なかでも峰くんと清良さんのシーンが良かつた。
ウィーンに留學した清良、日本で清良に負けないやうに頑張る峰。
清良のコンクール會場に、清良に告げずにこつそりと應援に來た峰だつたが、あまりの擧動不審さゆゑ、すぐに清良に見つかつてしまふ。
「あのバカ」
清良は、グリーンの蔭にしやがんでゐる峰に近づき、背中から峰に抱き附く。
その時の峰と清良の表情がとても良かつた。
特に清良。
好きな人を日本に置き去りにして2年。
音樂のためとは云ひながら、さぞや複雜な思ひがあつたに違ひない。
その思ひが、峰の背中に抱き附いた時に、溢れでる。
その表情が素晴らしかつた。
のだめの上野樹里もよかつた。
今囘は、いつもの腦天氣なのだめが蔭をひそめて、苦惱するのだめだつた。
いままでとは違つて、表情が大人びてゐるといふか陰があるといふか。
何か決斷した女性が見せる、一見ふてぶてしい、それでゐて何か脆いものを感じさせる表情。
これには上野樹里といふ女優の力量を感じさせられた。
さて、音樂について。
さすがに映畫ともなると音響がいい。
特にオーケストラの音は、我が家の貧弱なオーディオとは比較にならないほどの壓倒的な迫力だ。
映畫とTVドラマで感じる違ひのひとつには、ピアノ演奏がある。
映畫で使はれてゐるピアノ演奏のはうが、TVドラマの演奏よりもいい。
今囘、特にそれを感じたのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第31番作品110。
この演奏は、千秋の解説によるまでもなく、かなり難しい。
私見ではあるが、名ピアニストと云はれるピアニストの演奏のなかでも、この演奏こそベストといふ決定盤がなかなかない。
ところが、この映畫で使はれてゐる演奏は、斷片的な演奏ではあるものの、なかなかよいのだ。
もちろん、古今東西の名ピアニストの演奏を押しのけるほど素晴らしいかと云はれれば、それほどではないかもしれない。
ただ、TVドラマで使はれてゐた演奏とは、何といふか、演奏そのものの質が違ふ氣がした。
もうひとつ效果的だつたのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の使ひ方。
この曲は、のだめと千秋が出會つた時にのだめが彈いてゐた曲だ。
この曲を、今囘はのだめが現實から逃避して幼稚園で子供たちと遊んでゐる時に、子供たちに彈いてみせるのだ。
そして、のだめを搜してゐた千秋が黒木くんからの聯絡で幼稚園に來た。
千秋はすぐには部屋に入らずに、廊下でのだめの演奏を聽きながら、出會の時を思ひだす。
囘想と現實のクロスオーバー。
原作では、ベートーヴェンの作品110のソナタを彈いてゐた(下記<附録>參照)。
この點、原作よりも映畫のはうが效果的だつたと思ふ。
一昨日だつたか、TVでメイキング番組を放送してゐた。
出演した俳優たちのコメントを聞いてゐると、これが最後だといふことを否應なく感じさせられた。
もう次はないのか。
いまコミックでは、オペラ編が連載されてゐるとか。
でも、もう映畫はないのだらう。
オケは何とかなつても、オペラとなつたらお手上げだ。
どんだけ金かかんねん!
これで、のだめと千秋たちとはお別れ。
そしてマングースとも。
ああ、寂しいなあ・・・
『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』 のレビュー
<附録> (原作コミックス23卷のレビューより)
音樂について。
のだめが子供たちに「ヘタクソ」と云はれて、彈いてみせるのがベートーヴェンのピアノソナタ31番。
この曲は、20卷で千秋とのだめがキスする時にも登場した。
實は、このところ毎晩、眠る時にウォークマンで子守歌代はりに聞いてゐた曲なのだ。
俗に「ラスト3」といはれる30,31,32番のなかで、一番柔らかで眠る時にちやうどいい。
聞いてゐるのは、バレンボイム、バックハウス、グルダ、グールド、ギレリス、リヒテル(70年代、90年代)。
もちろん、これらは全て素晴らしい演奏だ。
リヒテルファンの私としては、リヒテルが一番と云ひたいところだが、最近はギレリスがベストだと思ふやうになつた。
ギレリスと云へば、デビューしたての頃は、「鋼鐵のタッチ」と云はれてゐたらしい。
しかし、ここでのギレリスには、そんな面影はない。
誠實に音樂に向合ひ、一音一音を丁寧に紡ぎ出す、そんな彼の晩年の録音である。
この曲の、優しさ、柔かさが、しみじみと心に沁みてくる。
<原作のレビュー>
第1卷
第2卷
第3卷
第4卷
第5卷
第6卷
第7卷
第8卷
第9卷
第10卷
第11卷
第12卷
第13卷
第14卷
第15卷
第16卷
第17卷
第18卷
第19卷
第20卷
第23卷
この 「西宮ガーデンズ」 は、西宮球場の跡地に2年ほど前に出來たのだが、私は行つたことがなかつた。
阪急西宮北口驛には數へきれないほど行つてゐるといふのに、中年オヤヂひとりでは(2人でも)、なかなか行く氣になれなかつたのだ。
行つてみたら、アトリウムやらオープンエアのデッキ(ガーデン)やら、廣々とした空間が設へてあり、いい感じ。
とにかく廣いので、ここを隅から隅まで巡るには數日がかりになりさうだ。
この5Fに 「TOHO シネマズ」 といふシネコンが入つてゐる。
スクリーン數が12あり、それが通路の兩側に竝んでゐて、なんだか屋臺村のやう。
映畫のハシゴをするには最高の環境にある。
現に、「のだめ」を見終つた客の中には、その斜向ひにある小屋(部屋?)に入つて行つた客もゐた。
12のスクリーンのうち、「のだめ」を上映してゐるのは3つ。
時間差で上映してゐるのだが、もしかしたら重複してゐる時間帶もあるのかもしれない。
前賣チケットを當日座席指定に換へて貰ひ、食事に。
上映開始は13時で、あと1時間半ある。
4Fに飮食店が24店ある。
そのなかで、1時間半をゆつくりと過せさうなところということで、イタリアンを選擇。
ゆつたりと過せたのはよかつたが、デザートを食べる頃には時間が迫つてきて、少し慌てた。
13時少し過ぎに滑り込み。
空いてゐるのに吃驚した。
おそらく座席數の2~3割ほどしか入つてゐなかつただらう。
月曜日だといふこともあるのだらうし、西宮といふロケーションもあるのだらうが、それにしても少ない。
お蔭で、荷物を隣の席に置いて、ゆつたりと觀ることができた。
さて、 『のだめカンタービレ 最終楽章 後編』 について。
「あらすぢ」については省略。
どうも最近、面倒臭がりに拍車がかかつて來た。
それに、既に觀た人にとつては不要だし、まだ觀てゐない人には邪魔だと思ふので・・・
冒頭は、雷雨の夜にのだめがうなされてゐるシーン。
この映畫がギャグ滿載の樂しいだけの映畫ではないことを豫感させる。
(中略、といふかすべて略)
ラストシーンは、パリの橋の上での長大なキスシーン。
そのあまりの長さに、役者も困つたのではなからうか。
最初のうちは微動だにしない2人だつたが、そのうちに上野樹里が足を踏み換へ、玉木宏が上野を抱いてゐる腕を組み替へた。
あんなに長い間キスしてゐて、お互ひに身動きしないなんて不自然だもんなあ。
貰ひ泣きしたシーンもいくつかあつたが、なかでも峰くんと清良さんのシーンが良かつた。
ウィーンに留學した清良、日本で清良に負けないやうに頑張る峰。
清良のコンクール會場に、清良に告げずにこつそりと應援に來た峰だつたが、あまりの擧動不審さゆゑ、すぐに清良に見つかつてしまふ。
「あのバカ」
清良は、グリーンの蔭にしやがんでゐる峰に近づき、背中から峰に抱き附く。
その時の峰と清良の表情がとても良かつた。
特に清良。
好きな人を日本に置き去りにして2年。
音樂のためとは云ひながら、さぞや複雜な思ひがあつたに違ひない。
その思ひが、峰の背中に抱き附いた時に、溢れでる。
その表情が素晴らしかつた。
のだめの上野樹里もよかつた。
今囘は、いつもの腦天氣なのだめが蔭をひそめて、苦惱するのだめだつた。
いままでとは違つて、表情が大人びてゐるといふか陰があるといふか。
何か決斷した女性が見せる、一見ふてぶてしい、それでゐて何か脆いものを感じさせる表情。
これには上野樹里といふ女優の力量を感じさせられた。
さて、音樂について。
さすがに映畫ともなると音響がいい。
特にオーケストラの音は、我が家の貧弱なオーディオとは比較にならないほどの壓倒的な迫力だ。
映畫とTVドラマで感じる違ひのひとつには、ピアノ演奏がある。
映畫で使はれてゐるピアノ演奏のはうが、TVドラマの演奏よりもいい。
今囘、特にそれを感じたのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第31番作品110。
この演奏は、千秋の解説によるまでもなく、かなり難しい。
私見ではあるが、名ピアニストと云はれるピアニストの演奏のなかでも、この演奏こそベストといふ決定盤がなかなかない。
ところが、この映畫で使はれてゐる演奏は、斷片的な演奏ではあるものの、なかなかよいのだ。
もちろん、古今東西の名ピアニストの演奏を押しのけるほど素晴らしいかと云はれれば、それほどではないかもしれない。
ただ、TVドラマで使はれてゐた演奏とは、何といふか、演奏そのものの質が違ふ氣がした。
もうひとつ效果的だつたのは、ベートーヴェンのピアノソナタ第8番「悲愴」の使ひ方。
この曲は、のだめと千秋が出會つた時にのだめが彈いてゐた曲だ。
この曲を、今囘はのだめが現實から逃避して幼稚園で子供たちと遊んでゐる時に、子供たちに彈いてみせるのだ。
そして、のだめを搜してゐた千秋が黒木くんからの聯絡で幼稚園に來た。
千秋はすぐには部屋に入らずに、廊下でのだめの演奏を聽きながら、出會の時を思ひだす。
囘想と現實のクロスオーバー。
原作では、ベートーヴェンの作品110のソナタを彈いてゐた(下記<附録>參照)。
この點、原作よりも映畫のはうが效果的だつたと思ふ。
一昨日だつたか、TVでメイキング番組を放送してゐた。
出演した俳優たちのコメントを聞いてゐると、これが最後だといふことを否應なく感じさせられた。
もう次はないのか。
いまコミックでは、オペラ編が連載されてゐるとか。
でも、もう映畫はないのだらう。
オケは何とかなつても、オペラとなつたらお手上げだ。
どんだけ金かかんねん!
これで、のだめと千秋たちとはお別れ。
そしてマングースとも。
ああ、寂しいなあ・・・
『のだめカンタービレ 最終楽章 前編』 のレビュー
<附録> (原作コミックス23卷のレビューより)
音樂について。
のだめが子供たちに「ヘタクソ」と云はれて、彈いてみせるのがベートーヴェンのピアノソナタ31番。
この曲は、20卷で千秋とのだめがキスする時にも登場した。
實は、このところ毎晩、眠る時にウォークマンで子守歌代はりに聞いてゐた曲なのだ。
俗に「ラスト3」といはれる30,31,32番のなかで、一番柔らかで眠る時にちやうどいい。
聞いてゐるのは、バレンボイム、バックハウス、グルダ、グールド、ギレリス、リヒテル(70年代、90年代)。
もちろん、これらは全て素晴らしい演奏だ。
リヒテルファンの私としては、リヒテルが一番と云ひたいところだが、最近はギレリスがベストだと思ふやうになつた。
ギレリスと云へば、デビューしたての頃は、「鋼鐵のタッチ」と云はれてゐたらしい。
しかし、ここでのギレリスには、そんな面影はない。
誠實に音樂に向合ひ、一音一音を丁寧に紡ぎ出す、そんな彼の晩年の録音である。
この曲の、優しさ、柔かさが、しみじみと心に沁みてくる。
ベートーヴェン : ピアノ・ソナタ 第27・28・30・31番ギレリス(エミール),ベートーヴェンポリドールこのアイテムの詳細を見る |
ベートーヴェン: ピアノ・ソナタ第30・31・32番リヒテル(スビャトスラフ)マーキュリー・ミュージックエンタテインメントこのアイテムの詳細を見る |
<原作のレビュー>
第1卷
第2卷
第3卷
第4卷
第5卷
第6卷
第7卷
第8卷
第9卷
第10卷
第11卷
第12卷
第13卷
第14卷
第15卷
第16卷
第17卷
第18卷
第19卷
第20卷
第23卷
これが、最後かと思うと悲しいですね、、、
「のだめ」のお蔭でクラシックを聞き始めた人も多いやうです。
「のだめ」にふれて、早5年。
もう見られないかと思ふと寂しいです。
もうひとつ、難しいと思い避けていた
ベートーベンのPソナタ31番。うちのはゼルキンです。寝坊していた娘が「なんてきれいなおんがくなの」といって起きてきたというエピソードつきです。
女の目線からだと、行き詰ったノダメが「先輩ノダメのことすきですか」ときくシーンです。ふびんで、また不器用な千秋がもどかしく、涙しました。
CDの紹介ありがとうございました。
これからも楽しみに、ときどきお邪魔します。
男でも「のだめ」は楽しめますね!
>わたしにとっての「のだめ」はクラシックが教養ではなくなったことです。
仰る通りですね。
クラシックというと、どうしても教養臭くなりますけど、「のだめ」では楽しみに思えてきます。
>ベートーベンのPソナタ31番。
とても美しい曲ですよね。
ゼルキンの晩年の録音も、タッチは無骨ながらも、曲を慈しむように弾いていて、素晴らしい演奏だと思います。
本文ではゼルキンの名前を書き忘れていることに気がつきました。
しかし、それにしても、お嬢さんは音楽を感じ取る感覚が素晴らしいですね!
<PS>
「からこるむ」さんのハンドルネームを見ると、山のカラコルムを思い出します。
私のハンドルネームはカラコルム山脈から来ています。玉木君が初めてNHKドラマで主役した「氷壁」からつけました。二人の山男がK2の頂上に挑む物語です。相棒は山本太郎さんでした。某電機メーカーのCMコンビを起用したのは話題になりました。友情と悲恋が主題で、主題歌「彼方の光」をリベラが歌いヒットしました。冬期オリンピックに押されて視聴率は振るいませんでしたが、よい作品だと思っています。作曲家の村松さんもトップランナーに出演されて、ドラマに音楽をつける仕事を知り、驚きました。また、その経歴と才能は立派なのに、現代の作曲家の大変さを思いました。ドラマHPがまだあり、かきこみが続いています。いつも長くてすみません。
私は山登りが好きで、井上靖の「氷壁」が愛読書のひとつなんです。
なので、ドラマ「氷壁」も見てました。
あの「お前が好きだ~!」のセリフには驚きましたが(笑)
井上靖の世界とは違うものでしたが、好きなドラマでした。
クライバーといえば、TVでベト7を振っているのを見ました。物凄く早かった。
「のだめ」で指揮指導された飯森さんは腕が長く表情豊かなクライバーをいしきされたそうです。
リヒテルは晩年の長い「インタビュー」を見ました。その中で「無音」もしくは
「静寂」(だったと思うのですが)も音であると言っていたのが印象的でした。
誰もみな、時代の子であることを避けられないのを痛感し、それを思って聞くと
その気になるという、ずいぶんわかりやすいヤツだとおわらいください。
仙丈さんのハンドルネームは、永井荷風とかんけいあります?
ベートーヴェンの4番と7番の交響曲。
颯爽たる指揮でしたが、いい加減な感じがして、前半の4番では居眠りしてしまひました。
目が醒めてスッキリした所爲か、後半の7番は精氣溢れる見事な演奏に思へました。
リヒテルは思索的な?ピアノを彈くピアニストだと思ひます。
若い頃こそ鬼のやうに速く彈く人でしたが、70年代に入るとむしろゆつたりとしたテンポをとるやうになりました。
彼のシューベルトのピアノソナタ21番など、どうしてこんな演奏が出來るのかと思ふほど遲いテンポです。
音樂に表面的な心地好さを求めず、その曲の本質を抉りださうとしてゐるやうな氣がします。
仙丈亭日乘について
荷風の「断腸亭日乘」から、「日乘=日記」といふことを知り、仙丈亭日乘としました。
仙丈は、南アルプスにある仙丈岳といふ山からとりました。
好きな山なものですから。
そういえば、中学生のころ、先生が「啄木」の歌集を勧めるのに「知恵子抄」が好きだったのを思い出しました。おませだったんですね。