仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

『 草原からの使者 ― 沙高樓綺譚 』 浅田 次郎

2009-04-01 18:16:36 | 讀書録(一般)
『草原からの使者―沙高樓綺譚』 浅田 次郎

お薦め度 : ☆☆☆+α
2009年4月1日讀了


前作 『沙高樓綺譚』 に續く第2作。

「語られます方は、誇張や飾りを申されますな。お聞きになつた方は、夢にも他言なさいますな。
「あるべきやうを語り、巖のやうに胸に藏ひますことが、この會合の掟なのです」

高層ビルの最上階に設へられた「沙高樓」で語られる、現代の百物語。
本作は、『宰相の器』、『終身名譽會員』、『草原からの使者』、『星條旗よ永遠なれ』の4編からなる。

『宰相の器』では、總裁選の裏側の話が語られる。
氣の小さい候補者が占ひ師や高僧に縋つて、託宣を受けようとするのだが・・・
そこで起こつた出來事についてここでは記さないが、あまり切れ味はよくない。

『終身名譽會員』は、舊財閥の御曹子が財産を相續した際の出來事。
日本を離れ、ロンドンでほとぼりを冷まさうとして由緒正しいホテルで過ごし、由緒正しいカジノで遊ぶ。
しかし、それもまた・・・
ほんたうの大金持ちといふのは、かういふものなのだらうか。
興味深い話、かつ見事なオチで、この作品は面白かつた。

『草原からの使者』
大馬主を相續するのは誰か。
成功する人間に最も必要なものは「運」であるといふ持論から、相續する者を竸馬で決めることになつた。
勝負を決めたのは、昭和48年5月27日の日本ダービー、あの名馬・ハイセイコーが出走したレースであつた。
10連勝中のハイセイコーが出走するとあつて、ガチガチ鐵板レースだつたのだが、結果は・・・・
語り手は、その時、モンゴルからやつて來てゐた老人に1位と2位になる馬を豫言され、その馬に賭けた。
竸馬を全く知らない私でも面白かつた。
すべての竸走馬は、先祖を辿るとわづか3頭の馬に行き着くのだとか。

『星條旗よ永遠なれ』
最後の1發は赤い玉が出て打ち止めになる。
そんな話を、確か遠藤周作と北杜夫の座談會で讀んだ氣がする。
アメリカでは、なんと星條旗が飛び出すらしい。
旗には柄が附いてゐるから、痛いだらうなあ・・・
それにしても日本でもアメリカでも、ものは違ふものの、「飛び出す」のは一緒らしい。
でも、ホンマかいな?

私の好きな物語は、『終身名譽會員』。
階級社會の傳統が息づく大英帝國、それも霧のロンドンを舞臺にしたのがじつに巧いと思つた。

面白かつたのは、『星條旗よ永遠なれ』。
男たるもの、いつの日かやつてくるであらうその日を、覺悟しておかなくてはなるまい。



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<前作>
沙高樓綺譚 (徳間文庫)
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