仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

山行13:南アルプス 仙丈岳_その1 (1977年4月)

2004-04-06 22:15:38 | 想ひ出の山
場所 :南アルプス北部
時期 :1977年4月
ワンポイント :初めての本格單獨行
コース :
戸台 丹溪小屋 八丁坂 大平小屋 北澤峠 北澤BC (テント泊)~ 仙丈岳 (3033mH) ピストン~ 北澤BC (テント泊)~ 戸台


昨年の冬山の前にピッケルとアイゼンを購入。
兩方とも西ドイツSalewa製のもの。
ピッケルは當時賣り出し始めてゐたグラスファイバーシャフトのもの。
アイゼンは10本爪で少しだけ前爪が出てゐるもの。
12本爪のものと迷つたが、12本爪はスパッツに引つ掛け易いと云ふ話を聽いて、あへて10本爪にした。

テントは高田馬場のカモシカに行つて、エスパースの1人用を購入した。
休日には家の庭で、テントの設營練習、アイゼンの裝着練習をしたのを覺えてゐる。

春山合宿の反省會のあと、山嶽部顧問の櫻井先生に相談した。
駄目だと云はれることはないと確信してゐたが、先生は案の定、
「仙丈か・・天氣が惡いと森林限界から上は嚴しいからなあ。
雪が降つたら森林限界から上へは行かないやうにするんだな」

さて、初めての單獨&殘雪期&テント山行である。
不安もあつたが、それよりも期待に胸を膨らませて、わくわくしてゐた。

<1日目>

伊那市驛から戸台行のバスに乘る。
一人だけの夜行列車は、乘り過ごしてはいけないと云ふ脅迫觀念からか、
なかなか寢つかれなかつたので、睡眠不足。
GW中だと云ふのにバスは空いてゐた。
二人掛けのシートに一人で坐り、睡眠不足を補ふためにひと眠り。

戸台から、戸台川右岸沿ひの道を行くが、すぐに左岸に渡り、あとはずつと左岸沿ひを行く。
2時間足らずで角兵衞澤出會、對岸には鋸岳が魁偉な山容を覗かせてゐる。
丹溪小屋でポリタンに水を補給し、ロングスパッツを裝着。
いよいよ八丁坂の登りにかかる。
標高差200メートル程を一氣に稼ぐ、かなりの急登で、道は九十九折になつている。
積雪は思つた程ではなく、踏み跡を忠實に辿れば、雪を踏み拔くこともない。
ただ、生活道具一式を一人で背負つてゐるため、ザックが25キロにもなり、少々苦しい。
まあ、春山合宿の時よりはこれでもずいぶん輕いので、自分に氣合を入れながら登つて行く。

傾斜が緩やかになり、また少し登ると大平小屋の前に出る。
この小屋は小さな小屋だが、周圍を原生林に圍まれた、いかにも南アルプスらしい良い雰圍氣を持つた小屋である。
南アルプススーパー林道の工事が進んでゐて、
これが完成すると大平小屋から北澤峠を越えて野呂川沿ひの林道と接續するらしいが、
いつたい何の意味があるのか。
この素晴らしい原生林を大型トラックが走ることを想像すると、なんとも傷ましい氣分になつた。

原生林のなかを10分も行くと北澤峠で左手に長衞小屋が見える。
テントサイトはここからさらに10分程歩いた北澤沿ひにある。
早速エスパースを張る。
ポールをつないでテントのポール通しに通すだけなので、ものの3分もあれば設營終了。
ポールはグラスファイバー製なので、柔軟で風には滅法強い。

Optimus8Rでお湯を沸して、紅茶を入れる。
このガソリンコンロは小型輕量でしかも火力が強いし、眞四角なのでパッキングもし易いと云ふすぐれもの。
あへて難を云ふなら、メタ(固形アルコール)によるプレヒートが必要なことぐらいだが、
當時は殆どのコンロがさうだつたので、これは仕方がない。
山嶽部では安全性を重視して、スベア(石油コンロ)を使つてをり、
これはプレヒートの時間は長いし火力も強くないし、しかも重い。
したがつて私にとつてガソリンコンロは憧れの逸品だつたのである。

夕方、小雪がちらつき明日の天氣が心配されたが、夜になると星が見えだして冷え込んで來た。
明日は天氣が良ささうだ。





コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 山行12:丹澤山系・新茅ノ... | トップ | 山行13:南アルプス 仙丈岳... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿