仙丈亭日乘

あやしうこそ物狂ほしけれ

山行13:南アルプス 仙丈岳_その2 (1977年4月)

2004-04-06 22:53:18 | 想ひ出の山
場所 :南アルプス北部
時期 :1977年4月
ワンポイント :初めての本格單獨行
コース :
戸台 丹溪小屋 八丁坂 大平小屋 北澤峠 北澤BC (テント泊)~ 仙丈岳 (3033mH) ピストン~ 北澤BC (テント泊)~ 戸台


<2日目>

北澤BC 5:15 ~ 8:45 仙丈岳頂上 (3033mH) 9:10 ~ 10:00 小仙丈 10:30 ~ 12:15 北澤BC

豫想通りの快晴。
まだ薄暗い中、手早く朝食を食べて、出發。
サブザックには水、ビスケット、非常食、カメラ、アイゼン、シュラフカバー、ヤッケを入れてゐる。

北澤峠から左手の登山道に入る。
踏み跡は明瞭、雪も締まつてゐて登り易い。
しばらくは緩い登りだが、一度少し下つてまた登り返す標高2300メートルあたりから急登となる。
森林限界は2700メートルあたりで、小仙丈へ突き上げる稜線はすでに雪がクラストしてゐる。
ここでアイゼンを裝着。
いよいよここからが本番である。
小仙丈から仙丈へと續く長い稜線は、快晴の空の下、快適そのもの。
アイゼンがキシキシと堅い雪に突き刺さる感觸が、とても氣持が良い。
仙丈への登りにかかり、仙丈カールが右下に見え出すあたりで、ようやく仙丈の本峰が見え始める。

仙丈は、ちよつとした雙耳峰のやうに、手前に本峰より少し低いピークがある。
夏道は忠實にこのピークを通つてゐるのだが、
私はこのピークを卷いてカール最上部の急斜面をあへてトラバースした。
カール底は標高差にして約150メートル、眞つ白なカール底に小さく仙丈小屋の屋根が見えてゐる。
ここで滑落したら果して止めることができるか自問するが、全く自信がない。
それだけに愼重なアイゼンワークが要求される。
谷足である右足は斜面に沿つてなるべく大きく開き、山側の左足は進行方向に向ける。
左足に體重をかけて右足を動かす時には、ピッケルを自分の左側に突いてバランスを取る。
高度感があつて、山に登つてゐることを十分に樂しめた一時であつた。

山頂からの展望は素晴らしい。
北には北澤峠を挾んで、甲斐駒から鋸岳に續く稜線。
東には地藏岳のオベリスク。東南には北岳から間ノ岳、農鳥へと續く稜線。
南には鹽見岳のドームが見えてゐる。
いずれも雪を纏つた美しい姿であつた。
頂上で早めの晝食をとりながら、のんびりと時間を過す。
空はあくまでも蒼く、白い山なみとのコントラストが印象的であつた。

往路をBCまで下る。
BCでは、あたりまへだが、誰もゐないエスパースが私を迎へてくれた。

<3日目>

きのふ程ではないが、依然として良い天氣だ。
テントを撤收し、下山。
原生林のなかを大平小屋まで、のんびりと歩く。
わずか2日前なのに、雪が少なくなつてゐるのがわかる。
八丁坂も下りは重力に委せて下り、すぐに丹溪小屋に着く。
ここまでくれば、あとは戸台川左岸をちんたら歩いて行くだけ。
5萬圖「市野瀬」の「戸台川」と記されてゐる「戸」の字の邊りに、3メートル四方ほどの大きな岩がある。
その岩の上に攀ぢ登り、しばし晝寢をする。
なんとなく名殘惜しい氣分、急いで歸ることもない。

初めての單獨行で、不安もあつたが、充實した山行であつた。






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