蔓紫(つるむらさき)の入道
「殿、入道殿に御座いまする」
「おぉ入道殿。よくお越しいただいた」
「お招き痛み入りまする」
「色々と面白き話を聞かせて下され。かの曽呂利新左衛門のごとくにのぉ」
「しからば殿、床の間の花は何でござるや」
「あの、菊のことか。誠に見事よのぉ」
「しからば、これは」
「んっ」
入道は先ほど庭で手折った一輪の草花を懐紙から取り出した。
「これを」
入道は眼前に出された茶碗を托からよけ、上にそっと草花を置いた。
「如何でござる」
「うむ、善き景色じゃ」
「床の間に大輪の菊。これは野の小さき菊にござる」
「麗しき姿じゃ」
「殿は大成なさりまする」
「いかなることじゃ」
「民の里にては、これが菊でござる。分け隔てなく愛でる心こそ良き治世の要にござりまする」
「あいわかった」
入道は帰った。
「善き、面白き御仁であった」
「またお招き致しまする」
「楽しみじゃ」
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花の名前: ツルムラサキ 花はこちらから
撮影日: 2016/10/31さ