◆遺伝子技術の進歩で、人類がついに老化を克服した近未来。人は生まれ、育ち、25歳で成長を止める。そして、その先の人生を老いることなく、若々しいまま過ごす。この夢の世界にはたった一つだけ、当然の制約があった。不老のユートピアを守るためには、どうしても必要なもの。世界が人口過剰で破滅しないためにどうしても確保しなければならない、絶対数の「死」。この不老の世界では、25歳になった瞬間に1年の時間が与えられ、左腕のデジタル表示が秒単位で減り続けていく。残された時間がゼロになれば、その瞬間に命が終わる。そして、この世界の[通貨]は、自らの余命そのものである[時間]だった。
富裕層が数百年の寿命を持つのに対し、貧困層は25歳になると同時に明日をも知れぬ命となる。25歳で与えられる1年分の時間は、生活のために前借りしていたローンの返済であらかた消えてしまい、余命は数日に満たない。働いて[時間]を稼がなければ明日は死ぬ、文字通り以上の「その日暮らし」の人間が貧困層の大半を占めていた。[時間]が通貨としてやりとりできる以上、それを奪う犯罪も横行し、[時間]を巡る犯罪を取り締まる時間管理局の捜査官が社会を監視していた。
貧困層の労働者、28歳のウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ひょんなことから知り合った富裕層の男から一世紀以上もの時間を貰い受ける。一週間の時間を持っているだけでもギャングに襲われる世界で、それは目もくらむほどの数字だった。綱渡りのような生活を続ける貧民層では、[時間]切れは日常茶飯事だった。ただ物価が上がるだけでも、[時間]に余裕のないその日暮らしの貧困層は、若々しい姿のままで簡単に死んでいく。無限に思える[時間]を手に入れたウィルは、この世界の仕組みをぶち壊そうと、最富裕層の住むゾーンへ侵入する。
◆うん、なかなか面白かった。我々の住む現実の社会では、一文無しになった瞬間に死ぬことはない。そのため、富の再配分の偏りや社会のシステムの歪みが際立ちにくかったりするが、この物語の中では時間(余命)を通貨とすることで、情け容赦なく死が訪れるため、経済原理という冷たい方程式に支配された我々の世界を、より刺激的に、とても分かりやすく映し出している。
物語の世界には、貧困層と最富裕層間にいくつもの「タイムゾーン」と呼ばれるエリアがあり、生活レベルも段階的に違うという設定になっているようだが、その中間部分は登場せず、貧民と富裕層という分かりやすい二極のみが描かれる。貧困層に生まれ育ったウィルが抱くのは、「なぜ俺たちは貧しいのか」という疑問。そして、物語を転がす上で欠かせない存在として、ウィルは富裕層のエリアで億万長者の娘、シルヴィア・ワイス(アマンダ・サイフリッド)と出会う。シルヴィアの父は銀行家であり、この世界の富を牛耳るシステムの一員でもある。明日より先のことを考えたことのなかったウィルと、明日のことを思い悩んだことのないシルヴィアは、行きがかりで始まった逃避行の中で、互いに現実を知り、同じ目的に向かう。
こう書くと、「社会への不満を持った貧しい青年と、社会の現実を知った大富豪の娘が出会い、共に手を携えて理想に向けて.....」などという典型的な展開に思えるが、この二人、社会正義に目覚めたり、イデオロギーを語ったりはしないんである。この映画はそういう社会派ではなく、あくまでも斬新なアイデアを生かしたSFアクション。固いことを考えず、物語の流れに身を任せていれば終点までスムーズに流れていくので、安心してご覧頂きたい。
さて、重箱ツツキストの私としては、いくつか申し添えたい。ウィルとシルヴィアの二人を追う時間管理局の捜査員、レオンを演じるキリアン・マーフィーについて。個性的で存在感のあるレオンは、物語の始めから終盤までウィルを追い続ける。彼は、自分の立場に対する疑問や苦労も口にするのだが、その部分はちと弱い。社会派の映画じゃないからそれでいいのかもしれないが、少し影が薄いように感じられてもったいないように思えた。 そしてもう一つ、これは個人の感じ方次第かもしれないが.....。ヒロインのシルヴィアが綺麗じゃない。かわいくもない。私のような男からすると、これは感情移入がしにくいし、物語への引き込まれ方が弱いと思う。そこだけは、ちょっと残念。
富裕層が数百年の寿命を持つのに対し、貧困層は25歳になると同時に明日をも知れぬ命となる。25歳で与えられる1年分の時間は、生活のために前借りしていたローンの返済であらかた消えてしまい、余命は数日に満たない。働いて[時間]を稼がなければ明日は死ぬ、文字通り以上の「その日暮らし」の人間が貧困層の大半を占めていた。[時間]が通貨としてやりとりできる以上、それを奪う犯罪も横行し、[時間]を巡る犯罪を取り締まる時間管理局の捜査官が社会を監視していた。
貧困層の労働者、28歳のウィル・サラス(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ひょんなことから知り合った富裕層の男から一世紀以上もの時間を貰い受ける。一週間の時間を持っているだけでもギャングに襲われる世界で、それは目もくらむほどの数字だった。綱渡りのような生活を続ける貧民層では、[時間]切れは日常茶飯事だった。ただ物価が上がるだけでも、[時間]に余裕のないその日暮らしの貧困層は、若々しい姿のままで簡単に死んでいく。無限に思える[時間]を手に入れたウィルは、この世界の仕組みをぶち壊そうと、最富裕層の住むゾーンへ侵入する。
◆うん、なかなか面白かった。我々の住む現実の社会では、一文無しになった瞬間に死ぬことはない。そのため、富の再配分の偏りや社会のシステムの歪みが際立ちにくかったりするが、この物語の中では時間(余命)を通貨とすることで、情け容赦なく死が訪れるため、経済原理という冷たい方程式に支配された我々の世界を、より刺激的に、とても分かりやすく映し出している。
物語の世界には、貧困層と最富裕層間にいくつもの「タイムゾーン」と呼ばれるエリアがあり、生活レベルも段階的に違うという設定になっているようだが、その中間部分は登場せず、貧民と富裕層という分かりやすい二極のみが描かれる。貧困層に生まれ育ったウィルが抱くのは、「なぜ俺たちは貧しいのか」という疑問。そして、物語を転がす上で欠かせない存在として、ウィルは富裕層のエリアで億万長者の娘、シルヴィア・ワイス(アマンダ・サイフリッド)と出会う。シルヴィアの父は銀行家であり、この世界の富を牛耳るシステムの一員でもある。明日より先のことを考えたことのなかったウィルと、明日のことを思い悩んだことのないシルヴィアは、行きがかりで始まった逃避行の中で、互いに現実を知り、同じ目的に向かう。
こう書くと、「社会への不満を持った貧しい青年と、社会の現実を知った大富豪の娘が出会い、共に手を携えて理想に向けて.....」などという典型的な展開に思えるが、この二人、社会正義に目覚めたり、イデオロギーを語ったりはしないんである。この映画はそういう社会派ではなく、あくまでも斬新なアイデアを生かしたSFアクション。固いことを考えず、物語の流れに身を任せていれば終点までスムーズに流れていくので、安心してご覧頂きたい。
さて、重箱ツツキストの私としては、いくつか申し添えたい。ウィルとシルヴィアの二人を追う時間管理局の捜査員、レオンを演じるキリアン・マーフィーについて。個性的で存在感のあるレオンは、物語の始めから終盤までウィルを追い続ける。彼は、自分の立場に対する疑問や苦労も口にするのだが、その部分はちと弱い。社会派の映画じゃないからそれでいいのかもしれないが、少し影が薄いように感じられてもったいないように思えた。 そしてもう一つ、これは個人の感じ方次第かもしれないが.....。ヒロインのシルヴィアが綺麗じゃない。かわいくもない。私のような男からすると、これは感情移入がしにくいし、物語への引き込まれ方が弱いと思う。そこだけは、ちょっと残念。