◆冬のベルリン、降り積もる雪の中を夫と共に帰宅するカイル(ジョディー・フォスター)。だが、ふと気づけば傍らにいたはずの夫の姿はなく、雪の上に残る足跡も自分のものだけ。カイルが見ていたのは、哀しみのあまり心が作り出した幻想だった。彼女の夫は、六日前にビルから転落して命を落としていたのだ。翌日、カイルは6歳になる娘のジュリア、そして夫の棺とともに、超大型ジェット機のE-474でニューヨークに向かうことになっていた。
事件はニューヨークに向かう飛行機の中、上空11,000フィートで起きた。ついうとうとしていたカイルは、隣に娘の姿がないことに気づき、心配になって機内を探す。だが、娘のジュリアが見つからないばかりか、荷物さえも消えていた。機長(ショーン・ビーン)の協力を受け、乗務員・乗り合わせたエアマーシャル(私服の航空安全管理官)のカーソン(ピーター・サースガード)とともに娘を捜すが、目撃者すら見つけることは出来なかった。そして、搭乗者名簿にも娘の名前は無かった。まるで、最初から存在しなかったかのように。
本業が航空設計技師で、たまたまこの機、E-474の開発に携わっていたカイルは、機体構造を熟知していた。その知識を生かして客室以外にカーゴスペースなどの捜索も主張するが、機長に却下されてしまう。ここにきて、機長はカイルの精神状態を疑い、カーソンに身柄の確保を命じる。協力者がゼロの機内で、カイルの孤独な戦いが始まる。頼れるのは、この機の構造知識と娘への愛だけ。
◆映画が始まった瞬間の第一印象は、「老けたなぁ~」だった。2002年公開の前作『パニックルーム』から三年、ジョディ・フォスターは確実に老けたような気がする.....。
それはさておき、映画の方はそこそこ面白かった。『フォーガットン』のような反則技をかますことなく、やや短めな98分の中でそれなりに上手くまとまっている。正直に言えば、物語の展開は大方の予想をあまり裏切らない形で進んでいくのである程度読めてしまうのだが、とりあえず最後まで退屈することなく観ることが出来た。
追いつめられたカイルが単独で行動を起こすシーンだが、戦う母として盛大に反撃に出る気持ちは私にも理解できる。ただ、飛行機の安全管理に関する法律はとても厳しいものだ。あそこまで派手にやっちゃうと、事情はどうあれカイルも何らかの罪に問われるのではないかと気になってしまった。もちろんこれは娯楽映画なので、飛行機の内部構造にしてもトラブル発生時の態勢や乗務員の対応の仕方も、現実とはかなり違うものなのだろう。
ラスト、カイルが犯人とやり合う部分の盛り上がりは、もう少し派手さがあっても良かったような気がする。そのへんであと一ひねり、もう一工夫あれば、もっとスカッと終われたのではないか。あとは、伏線やミスリードをこまめに散りばめてくれればもっと面白くなったとは思うのだが.....。地上で待ちかまえる警察やFBIの対応は、いくらなんでも雑に描きすぎ。まぁ、あまり細かいことは考えず、孤立無援の母が娘のために戦うサスペンス映画だと思って観るのが吉。
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