高校の入試問題というのは、大学の入試問題よりも格差がひどいかもしれません。そこには小学生でもすらすら解けそうなものから、大学生でも手を出しかねるような問題までそろっています。ためしに、ある国立高校の入試問題を、受験生とおなじ条件で、東大の俊英の諸君に解いてもらったところ、全員悲鳴をあげてしまいました。そのような問題が解けるように日夜勉強をかさねる中学生諸君のことを考えると、まったくお気の毒なことです。
高校の入試問題というのは、一般に、解答時間にくらべて、あまりにも問題の分量が多すぎるようです。そこでは、問題とじっくりとりくむ余裕などありません。となると、考えるよりも憶えることにはげむことになります。しかし、理解をともなわない数学の知識ほどもろいものはありません。入試はどうにかパスできても、高校の課程で、のりこえがたき壁につきあたることになるでしょう。
中学生のための数学の問題集、参考書はずいぶん市販されていますが、数学を憶えることに手をかしている書物が目立ちます。そこには似たような問題がただ並んでいるだけで、機械的な計算練習を目指しているかのようです。しかし、本当の計算力というのは、機械的な練習で身につくものではないのです。思考をともなわない計算は暇つぶしでしかありません。また、解答が略解にすぎて、ただ答え合わせのためのような書物もあるようです。
しかし、数学は、答え自身よりも、解答の方針とかその過程に意味があるのです。数学を理解させ、入試にも、理解に裏打ちされた自信でのぞめるような教材で学んでいきましょう。