Jリーグで4連覇を逃し、
ACLの出場権を得るために何としても負けられない鹿島。
長谷川監督をはじめ、多くのチームを去る選手のために、
有終の美を飾りたい清水。
天皇杯って、こういう大会だよなーとはいつも思うが、
今年はほんと、そういうチームの意気込みと言うか意地というか、
大会にかけるモチベーションの高さが、
どのチームも非常に力強く感じられた大会だったと思う。
ガンバにしたって、悲願の3連覇という明確な目標があり、
FC東京にしたって、J2降格の屈辱を晴らす絶好の舞台。
そういう観点から考えてみれば、
どこか優勝を飾ってみても、おかしくはない大会だった。
そして、
熾烈な決勝を制して優勝したのは鹿島アントラーズ
清水との決勝戦。
これはもー、やっぱり決勝は面白い!
と、胸をはって言える展開だった。
まず前半。
試合はいきなり鹿島が攻めまくっていく
準決勝でも結構苦しんだし、やっぱりマルキーニョスいないと厳しいんじゃ…、
と思っていた俺の予想を見事に裏切り、
とにかくボールを繋ぎ、前へ前への推進力をいかんなく発揮。
これが優勝へのモチベーションなのか。
そう思えるぐらい、鹿島つよそーの印象を強く受けた。
ただ、これに関してはどうにも、
清水側にもやや硬さがあった感は否めないか。
本来、清水がやりたかったサッカーは、
流動的な3トップを最終ラインの裏へと走らせる、アグレッシブなものだったはず。
しかし、サイドを完全に鹿島に抑えられ、
鹿島の最終ラインが攻撃的な姿勢を感じさせるように上がり気味だったため、
どうにも押し返すことができない状況だった。
そんな中、
フェリペガブリエルが先取点をついに奪取
これが、前半の26分。
鹿島としてはまさしく、理想通り、狙い通りの得点だったんじゃないだろうか。
形としては、少し運もあったのかなー、
と思えるようなコーナーからの一発だったんだが、
この決勝においてそんなものはあまり関係ない。
攻めて攻めて、気持ちでも何でもいいからゴールを奪う。
それが体現された瞬間だった。
そして、運命の後半。
清水はヨンセン、岡崎の2トップにシステムをチェンジし、
これが功を奏してか、鹿島の運動量が落ちてか、
徐々に好機を掴んでいくようになる。
前半はほとんどボールに絡むことができなかった選手も存在感を出し、
リズムを作っていったのは清水。
それでも最後を割らせない鹿島の集中力もさすがだったが、
ゴールへの匂いを感じさせる時間帯は続いた。
すると、
そんな期待に応えたのはヨンセン
後半の14分、後方からのロングボールに抜け出し、
その長い足で浮いたボールをちょんと前方へと放り込むと、
これが綺麗な放物線を描いてゴールへ。
いやー、もうこれは素晴らしいループシュートとしか言いようがない。
マークが怠慢だとか、キーパーのポジショニングとか、
そういう次元のものじゃなかった。
この大舞台であの落ち着き、さすがは大ベテラン。
こうして清水が待望の同点弾を叩き出した。
しかし、これで熾烈な攻防が展開されるか、と思いきや、
鹿島はらしさある見事な戦いぶりを披露する。
1-1の同点となったのがまるで合図だったかのように、
直後に本山を投入し、
これによってはまりつつあった清水のマークを翻弄し、
流れを引き戻すという名采配ぶり。
これに伊東を投入するなどして清水もきっちり対応するが、
やはり勝者のメンタリティーを持ち、
試合巧者なのは断じて鹿島。
それを物語るように、徐々に流れは鹿島が掴んでいく。
そして、ゲームを決める1点を奪ったのは鹿島。
後半の32分。
ゴール正面からのフリーキックを、
野沢が鮮やかなシュートで飾る
まさしく芸術的。そんでもってさすが。
ボールの軌道も言うなればオーソドックスなものだったが、
狙ったところに蹴れれば入る。
そんなものが伝わってくる冷静沈着なゴールだった。
そしてこのまま、ゲームは2-1でタイムアップの笛。
鹿島にしてみれば、まさしく見事。
自分たちらしさ溢れる試合巧者ぶりと勝負強さで、
待望のタイトルの手中に収めた。
反面、破れた清水は悔しさの残る内容だったかもしれない。
力をいかんなく発揮できたとは言いがたかったし、
藤本にしろ岡崎にしろ、どこか不完全燃焼だった感は否めない。
ボスナーも、ちょっとなーって動きだった。
ただ、長谷川監督はやっぱりシルバーコレクターだなと、
そう改めて思わされた試合でもあった。