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イスラエルのゴラン高原への主権を承認したアメリカにロシアのクリミア併合を非難する資格などない

2019-03-26 20:47:31 | 国際情勢
タイトルについて、何を当たり前のことをわざわざ言うのかという思いもありますけど

今回アメリカのトランプ政権はイスラエルの国際法を無視した「ゴラン高原」の「征服」を承認したことになります。

https://news.goo.ne.jp/article/fnn/world/fnn-00414957CX.html

アメリカのトランプ大統領は、イスラエルがシリアから奪ったゴラン高原について、イスラエルの主権を認める文書に正式に署名した。

トランプ大統領は25日、イスラエルのネタニヤフ首相と会談し、ゴラン高原の主権を認める文書に署名し、「イスラエルとの同盟はかつてなく強固だ」と強調した。

イスラエルが1967年の第3次中東戦争で、シリアから奪ったゴラン高原については、アメリカをはじめ、国際社会がイスラエルの主権を認めていなかった。

トランプ大統領としては、大統領選を見据え、イスラエル寄りを鮮明にし、自らの支持層にアピールするとともに、4月に行われるイスラエルの総選挙で苦戦するネタニヤフ首相を援護する狙いがあるとみられる。

これに対し、シリアは「主権に対する攻撃だ」と強く反発している。


これは当然ながらシリアの主張の方に正当性があります。

まずゴラン高原は元々はシリアの領土でした。

それを第三次中東戦争の際に、イスラエルが武力により占領したものです。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/%E7%AC%AC%E4%B8%89%E6%AC%A1%E4%B8%AD%E6%9D%B1%E6%88%A6%E4%BA%89

1967年6月5日、イスラエル空軍機が超低空飛行でエジプト・シリア・ヨルダン・イラク領空を侵犯、各国の空軍基地を奇襲攻撃して計410機にも上る航空機を破壊した。この「レッド・シート作戦」によって制空権を奪ったイスラエルは地上軍を侵攻させ、短期間のうちにヨルダン領ヨルダン川西岸地区、エジプト領ガザ地区とシナイ半島、シリア領ゴラン高原を占領した。

ヨルダンとエジプトは6月8日に停戦、シリアも6月10日に停戦した。延べ6日間の電撃作戦でイスラエルの占領地域は戦前の4倍以上までに拡大した。


見かねて国際社会は調停に入ることとなります。

イスラエルによる領土占領は無効とされたものの、独立、生存権を認められるなど、条件的には、むしろイスラエルに有利な調停内容だったとも言えます。

消耗戦争による戦争の再燃で再度米ソに加えイギリスが調停に加わり、イスラエル寄りの米国案にアラブ寄りのインド案を加味した形で協議を行った。その結果11月22日、国際連合安全保障理事会はイスラエルの占領を無効とする安保理決議242を全会一致(中華民国、フランス、イギリス、アメリカ、ソビエト連邦、アルゼンチン、ブラジル、ブルガリア、カナダ、デンマーク、エチオピア、インド、日本、マリ、ナイジェリア)で可決した。決議では同時に国際水路の自由通行権の保障、パレスチナ難民問題の公正な解決、イスラエルを含む全ての当事国の生存権の承認を確認した。

決議はイスラエルの占領を無効とする一方、撤退期限は定められず経済制裁などの具体的なイスラエルへの対抗措置も行われなかった。一方、イスラエルの独立が確認されており、イスラエルにとって有利な内容と言えた。その結果、イスラエルは決議を無視し、占領地の支配を続けた。また、アラブ側当事国(エジプト、ヨルダン、シリア)もイスラエルの承認を拒んだ(1970年、アメリカの要請に従いエジプトが応じるとヨルダンも従ったが、シリアは拒否を続けた)。しかし本決議は現在でも有効であり、1973年、第四次中東戦争時の安保理決議338では、安保理決議242に基づく停戦が確認され、シリアも受け入れた。1980年には安保理決議465で、重ねてイスラエルによる占領の無効を決議した[1]。従って、第三次中東戦争以降のイスラエル占領地は[2]、原則としてイスラエルの支配は公認されていない。


さて、他のところでもふれましたけど「平和条約によらない領土移転」つまり「戦争時に外国領土を占領して、そのまま領有意思を表明する行為」というのは国際法上、「征服」の権原に当たります。
そして「征服」は「原始的無効(void and null)」であり何の権利も権原も創設されません。

これはイスラエルによる「ゴラン高原」の「征服」にもそっくり当てはまります。

しかも、イスラエルはシナイ半島など「他の占領地」は、エジプトなどに段階的とは言え、ちゃんと領土の返還を行ってもいます。

またアメリカ自身も参加した数度にわたる安保理決議でも
イスラエルによる「占領の無効」は可決されています。


にもかかわらず

今回、トランプ政権がゴラン高原に対するイスラエルの主権を認めたということは

アメリカもまた(イスラエルと同様)、国際法など守る気のない無法国家であると宣言したに等しいことです。

そんなアメリカが

ウクライナに対するロシアの軍事的介入があったとはいえ
(それも、そもそもはウクライナ自身によるロシア系住民の迫害がきっかけですけど)

「民族自決権」の行使により、ひと度はウクライナから独立した上でロシアへの編入を選んだクリミア住民の意思を無視して

ロシアの「クリミア併合」を「国際法違反」などと非難できるのでしょうか?


もし、そうであるなら

アメリカこそはダブルスタンダードの無法国家であると言わざるをえないでしょう。


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2 コメント

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Unknown (shpfive)
2019-03-31 21:02:37
コメントいただき、ありがとうございます。

>私はむしろそこよりも、イスラエルへの傾倒に宗教右派が絡んでいるほうが心配です。

→私もそれは強く懸念しています。

我が国における「統一教会」の思想も、それと重なりますしね。

また、トランプ政権に対するユダヤ勢力の影響力は、この件だけを取り上げても明らかだと思うのですけど

なぜ、ほとんど誰も指摘しないんだろう?

とおもったりもします。

ただ、本件については

「明らかに国際法違反と知りながら、イスラエルのゴラン高原における主権を認めた」アメリカが

ロシアの「クリミア併合」を非難する「おかしさ」を取り上げたいという動機がありました。

なお私自身は国際法的な議論を離れていえば

ロシアの「クリミア併合」には、それなりに理があると思っていますけど
(実際にクリミアのロシア系住民は歓迎しています)

イスラエルのゴラン高原領有はハッキリと非難されてしかるべきだと思っています。
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Unknown ()
2019-03-31 20:37:45
 アメリカがダブルスタンダードを駆使するのは今日に始まったことではないですし、国家というのは程度の差はあっても都合によりダブルスタンダードは使うものではないでしょうか。

 アメリカの場合は影響力も大きいだけに迷惑千万ではありますが。

 私はむしろそこよりも、イスラエルへの傾倒に宗教右派が絡んでいるほうが心配です。本当かどうかはわかりませんが、宗教右派のイスラエルびいきの理由は「キリスト再臨」つまりハルマゲドンの勃発を望んでいるかだ。
 という話をよく聞きます。

 普通なら笑い飛ばすところですが、アメリカで増大するキリスト教原理主義の状況を見ると、とても笑えない。

 ダブルスタンダードが国益のために行われているならまだしも、宗教的意義のためなど理性が期待できない動機だと、どこへ行き着いてしまうかわかったものではありません。
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