天才ISIL？ 間抜けISIL？

IS戦闘員の「自撮り」写真で空爆地点がバレバレに

ニューズウィーク日本版 6月5日(金)12時45分配信


　テロ組織ISISの巧妙なSNS戦略は、世界中の若者たちをテロ活動に引き寄せている。しかしネット上でプロパガンダを拡散しようという彼らの作戦は、同時に組織の崩壊も引き寄せているようだ。

　米空軍協会の朝食会で今週、戦闘空軍司令官を務めるハーバート・カーライル空軍大将が、最近ISISがネット上にアップした情報で空爆地点を割り出したことを明らかにした。

「SNSへの投稿をくまなく調べていると、何人かの愚か者がある司令部の前に立っているのがわかった。他にも公開のソーシャルメディアで自分たちの司令官やISISの強さについて自慢げに吹聴していた」と、カーライルは語った。「これで空軍は標的を特定できた。22時間後に空爆して建物全体を吹き飛ばす」

　カーライルは、SNSのどんな投稿が空爆の決め手となったかは明かさなかったが、どうやらそれは一般で言うところの「自撮り」画像だったようだ。

ローレン・ウォーカー

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ISIL(自称「イスラム国)は2000年頃にアブー・ムスアブ・アッ＝ザルカーウィーがヨルダンなどで築いた Jama'at al-Tawhid wal-Jihad（アラビア語：جماعة التوحيد والجهاد /タウヒードとジハード集団/略称: JTJ）を前身としています。

この集団はアフガン戦争後、イラクに接近し、2003年のイラク戦争によってフセイン政権が崩壊した後にイラク国内に入り込んでさまざまなテロ活動を行いました。2004年にアル＝カーイダ（アルカイダ）と合流して名称を「イラクの聖戦アル＝カーイダ組織」と改めたが、外国人義勇兵中心の彼らはイラク人民兵と衝突しました。

2006年1月にはイラク人民兵の主流派との対立をきっかけに名称を「ムジャーヒディーン諮問評議会」（略称: MSC）と改め、他のスンニ派武装組織と合流し、さらに2006年10月には解散して他組織と統合し、「イラクのイスラム国」（略称: ISI）と改称しました。

更に、フセイン政権の与党であったバース党の一部を吸収して行政運営のノウハウも身に着けて国家化していきました。

その後、2013年4月、アブー・バクル・アル＝バグダーディーはアル＝ヌスラ戦線が「イラクのイスラム国」の下部組織であると発表し、今後はアル＝ヌスラ戦線と合併して組織を「イラクのイスラム国」（略称: ISI）から「イラクとレバントのイスラム国」（略称: ISIL）、別称「イラクとシリアのイスラム国」（略称: ISIS）に改称しました。

そして、2014年6月29日に「イラクとレバントのイスラム国」は同組織のアブー・バクル・アル＝バグダーディーが「カリフ」であり、あらゆる場所のイスラム教徒の指導者であるとし、イスラム国家であるカリフ統治領をシリア・イラク両国の「イラクとレバントのイスラム国」制圧地域に樹立すると宣言して、組織名からイラクとレバントを削除し、「イスラム国」と改変して現在に至っています。

※「イスラム国」を国家として認めない立場としてISIS/ISILの呼称が用いられます。

このISILが他の過激派テロ集団と異なるところは、中東最強の軍事力を誇るイスラエルに手を出さず、イラクやシリア、リビアのような内戦中の国に浸透して勢力圏を広げることに全力を挙げていることです。


(ISILの勢力圏)


(ISILの領土主張範囲　聖地エルサレムのあるイスラエルは含まれていない)

また、油田を抑えて資金源を持っている点も他の過激派組織と一線を画しています。


このようにある意味「天才的」とも表現できるISILが、間抜けなミスで崩壊しようとしていることは興味深いことです。


何はともあれ、イスラムの名前を汚して多くの人を殺してきたエセ宗教国家のISILが一日も早く消滅することを祈ります。