畑に穴を

朝から、雨が降っている。久しぶりの雨だ。
昼過ぎ、スコップで畑に穴を掘ろうと思った。ミカンの収穫期に入り、小さすぎるものや、割れてしまったものを放り込むためだ。
もう一つ、理由がある。
潰瘍病対策のためだ。潰瘍病になって枯れた枝には、ウイルスが付いているため、焼却処理する必要がある。ついでに枯れ草も一緒に処分できる。

運動不足のなまった体には、きつい作業だった。
４ｍ×４ｍの広さで、１ｍぐらいの深さの穴なのだが、雨が降って多少柔らかくなっているはずなのに、小石交じりで非常に硬い土質のため、作業に１時間もかかってしまった。
膝が笑い、腕が震え、腰に鉛を取り付けられたようなだるさが襲ってくる。しかも、計画通りには捗らない。

サスペンスドラマで、殺人者が穴を掘る、という場面がある。
人を埋めるだけの穴を掘ろうと思ったら、かなりの体力と時間が必要なのに、ドラマではあっさりと掘ってしまう。
もくもくと穴を掘っていると、そのリアリティーのなさがバカバカしく思えてくる。

完成した穴を肩で息をしながら見つめた。
曇り空を見上げる。
遠くの積善山には、雨雲がかかっていた。
晴れた日には、焚き火をしよう。