地球浪漫紀行☆世界紀行スタッフの旅のお話し

(株)世界紀行・スタッフのブログです。ブログ・タイトル『地球浪漫紀行』は弊社ダイレクトメール名です。

東方の三博士の聖遺物(ケルン大聖堂)

2010年06月21日 20時33分58秒 | ドイツ

 
古代ローマ帝国の時代にライン川沿いに建設された植民都市ケルン。
ドイツ有数の観光地として知られるこの街には、世界的に有名なケルン大聖堂があります。

4世紀頃にヨーロッパ・キリスト教文明圏で最も古い聖堂の一つがこの街に置かれました。
その後、ケルンに司教座が置かれたことからも、古くから交通などの要所としてケルンが大変に重要視されていたことがわかります。
元々の教会堂は火災等の理由により倒壊し、現在我々が見ることができる大聖堂は、1248年に着工が始まりました。

着工当時、人口三万人を有しドイツ最大の都市でもあったケルンは、毛織物を中心とした交易で栄えていました。
この富が、大聖堂の再建を後押しし、フランスのアミアン大聖堂を手本として内陣から工事の着工が開始されました。
しかし、16世紀以降、資金難などの理由により建築は順調には進まず、未完成のまま約300年間に渡って工事は完全に停止してしまいました。
長期の空白ののち、一般市民や巡礼者などの寄付により1842年に工事が再開され、1880年、ドイツ国民の愛国心の象徴として大聖堂は完成しました。
156mの高さの双塔を持つケルン大聖堂は、ドイツが世界に誇る北部ヨーロッパ最大の大聖堂として現在でも多くの観光客や参拝者を集めています。
この美しいケルン大聖堂も、パリ郊外のサンドニ教会で始まったゴシック様式の影響をふんだんに取り入れています。
それまで分厚い石壁のロマネスク様式から、光を取り入れる姿へと変わり、それまでなかった新しい思想と芸術が一体となった劇的な空間を創造していきました。

ケルンが中世期から発展し、巨大な大聖堂を建設しえた理由の一つには、「東方の三博士(マギ)」の頭蓋骨という非常に珍しい聖遺物がこの大聖堂に安置されていることが挙げられます。
この聖遺物は、神聖ローマ皇帝フリードリッヒ・バルバロッサ(赤髭王)がイタリア遠征の際、ミラノから1164年に持ち帰ったといわれています。
この聖遺物こそがケルン大聖堂の要であり、このために多額の寄付が集まり、巨大な大聖堂が建設され、信仰と芸術の中心地として発展を遂げていきました。
この貴重な遺物のために黄金の聖骨箱が作られ、聖遺物とその容器である箱は多くの巡礼者を集めました。
13世紀に設計されたこの聖骨箱は、現存する中世金細工の最高峰と称されています。

新約聖書『マタイによる福音書』によると、東方で星を見てイエスの誕生を知った学者たちは、エルサレムを訪れてヘロデ大王にユダヤ人の王の居場所を尋ねました。
大王やエルサレムの人々は不安になりましたが、大王は生まれた子について調べて報告するように命じて、彼らをベツレヘムに送り出しました。
学者たちは星の導きによってヨセフ家族のいる家に辿り着くと、幼子イエスを拝み、黄金、乳香、没薬を贈り物として献げました。
ところが、「ヘロデのところへ帰るな」というお告げが夢に現れたため、学者たちは別の道から自分たちの国へ帰国し、更に天使がヨセフに「ヘロデがイエスを殺そうとしてる」と夢の中で告げたため、ヨセフは妻であるマリアと子イエスを連れてエジプトへ逃げ去りました。
ヘロデは学者たちに騙されたことに怒り、ベツレヘムとその周辺にいた二歳以下の男子を虐殺しました。


(「東方三博士の礼拝」バーン=ジョーンズ)

聖書にはこれ以上の記述はありませんが、3世紀頃には「3つの贈り物」ということから、三博士と呼ばれるようになり、三人に名前(西洋ではメルキオール、バルタザール、カスパール)が付けられるようになりました。
6世紀頃からは東方諸国の王とされ、更に12世紀頃からは、老年、壮年、青年の三世代、またヨーロッパ、アジア、アフリカの三大陸の象徴として描き分けられるようになりました。

現在、宗教学者達の間では、東方の三博士はゾロアスター教の司祭たちであった、という説が唱えられています。
マギの複数形はマゴスで、元々は古代ペルシャの宗教における司祭の意味で、彼らは占星術に長けていました。
3世紀の初め頃には、ローマ皇帝コンスタンチヌスの母ヘレナが、三博士の調査を命じ、その結果三人の遺骸を発見して、それをコンスタンチノープルの聖ソフィア寺院(現アヤソフィヤ)に納め、後にミラノへと贈られたという伝説も残っています。
いずれにしても多くの謎とともに現在はケルン大聖堂に安置されています。

キリスト教の宗教絵画でもよく題材に取り上げられ「マギの礼拝」でも知られる東方の三博士。
非常に歴史的・宗教的価値の高い彼らの聖遺物が納められるケルン大聖堂に是非お出かけください。

(川崎 大地)


お忙しい中、毎日のお願いで、恐縮ではございますが、
下の2つのランキングにクリックしてご協力いただけますと誠に幸いに存じます。

←こちらと、
←こちらも・・
いつもご協力いただきましてありがとうございます。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 九寨溝・黄龍 | トップ | ドイツのマーケット »

コメントを投稿

ドイツ」カテゴリの最新記事