裁判官:原告の言い分ですけれども、甲第14号証の陳述書というのをお出しになっていますが、こちらに書いてあるとおりでよろしいですか?
はい。(1点訂正箇所を述べる)
これは原告御自身がお書きになって記名と押印を御自身でされたものという御認識でいらっしゃるんですか?
はい。
原告御自身は、本件の会社との雇用契約は期間の定めのないものという御認識でいらっしゃるんですか?
はい。実質期間の定めのないものという認識はあります。
そのことについて伺いますけれども、まず、求人票を見て応募されたんですよね?
求人票を見る前に、4月1日から3回、被告会社のK課長より原告に、日本政策投資銀行を勤務地とすることを条件とした連絡を受けました。その後、ハローワークに行って求人票を持ってきたわけです。
求人票については、特にそのときには期間についてどういう御認識があったんですか?
採用時の面接の過程で、毎年契約を継続していくという発言がありました。
求人票ではそういう御認識はなかった?
求人票ではありません。
その後、面談して、面談時のやり取りで更新が続きますという説明を受けたんですか?
はい。毎年、実質的に期間を更新していくという説明を受けております。
どなたから受けたんですか?
被告会社のK課長からです。
それ以外についてのお話、やり取りはなかったですか?
特にございません。
労働条件通知書、これは御覧になっていますね?甲第4号証と乙第1号証。
はい。
最初のものですね。
はい。
最初の雇用契約についてのものですけれども、ここには期間の定めのありというふうに書いてありますよね?
はい。
これは、御認識していたんですか?
これは4月30日に被告会社から電話されて、会社に赴いて署名しただけです。具体的には5分程度で説明終わって帰りました。
この記載があることも気付いていらっしゃらなかったんですか?
記載されたことは気付いております。
御自身のお名前と判こも押してありますよね?
はい。
これはこの内容の了解をして署名押印したというものではないんですか?
内容を理解して署名しました。(契約期間満了でもって更改しない。つまり、平成28年4月30日で勤務地を変更しないという意味)
会社のほうからは口頭での説明、期間については、この時点ではなかったですか?
説明はありません。
原告のほうが、今後更新が続いていくというふうに思われた理由というのは、一番最初の面談時の説明、それ以外にはありますか?
採用時の面接の過程で、銀行から長期間勤務をしてもらいたいために若い方を望むという趣旨の下に、原告に連絡を入れたということを伺いました。
それは、いつの時点ですか?
4月4日です。
k課長からの説明は、銀行の方がそういう要望があるということを御説明になったということでしょうか?
はい。
具体的には、いつまでとか、どのくらいの期間とかというお話されましたか?
基本的には定年までということです。4月9日にK課長と銀行に赴いて、銀行支店長、次長、総務課長、運行管理責任者と面談し、どのくらいの期間勤められますかの質問に対し、原告は定年まで勤めさせてくださいということを述べて、翌日10日に銀行から正式な採用を受けたということをK課長から電話をいただきました。
実際には1年という期間で雇い止めというふうに言われたんですよね?
いいえ、受けていないです。
そうすると、まだ御勤務が続いているという御認識なんですか?
はい。
被告会社のほうからは、1年の期間でもう終了だと言われたんですよね?
言われておりません。
それ以外に更新が期待される理由として、原告が御認識されている理由というのはありますか?
第1に重複するかもしれませんが、採用時の面接の過程で、毎年契約を継続していくという被告会社の雇用継続を期待させる理由。第2点としては、佐藤支店長が運転代勤員を命じるにあたり、原告の将来性を考慮して決定したと述べた点、第3は、甲第5号証、乙第10号証において、平成28年4月30日で雇用が終了するのならば、派遣期間を平成28年9月28日と記載しないこと。第4に、労働条件通知書に定年の記載があり、期間が明白に決まっているのならば、定年を記載する必要はありません。被告は、業務上必要性のあった場合のみ契約を更新すると述べておりますが、それであっても、契約は更新されるに期待される理由になります。
それ以外の従業員の方がどうなっているかは調べてみましたか?
はい。
どうでしたか?
原告の前任者は同一勤務場所、日本政策投資銀行にて10年以上、配転なく就業しており、定年退職後、嘱託職員となっていることからも、原告は、明示的にも、黙示的にも、配転はないと認識しておりますし、雇用は継続されるものと認識しております。
前任者の方の雇用条件は御存知なんですか?
私と同じです。
それ以外はよろしいでしょうか?
それ以外は、乙第12号証においても、期間満了による有期雇用正職員は存在しません。それと、就業規則第4条により、原告の地位である有期雇用正職員は正職員と同等であると記載されており、正職員との雇用の差異は存在しません。第2に、臨時職員の定義に、期間の定めのある職員であり、有期雇用正職員は除くと記載されてあって、有期雇用正職員は期間の定めのある職員とは言えません。
配転のことについて伺います。配転の業務上の必要性がないんだと言うことを御主張されているんですけれども、その前提として、日本政策投資銀行における業務の内容を具体的に説明していただけますか?
職員の送迎です。
それだけですか?
はい。
実際には、それ以外の職務も行っていたんですか?
付帯業務を課せられました。
付帯業務の具体的な中身は何ですか?
郵便物受け取り、発送、来訪者のドアの開閉、空調管理、コピー用紙補充です。
この付帯業務をさせられることについての御不満がおありでしたか?
ありました。
これは会社の方にはおっしゃったんでしょうか?
はい。
どのようにおっしゃったんですか?
まず、9月1日に、同僚であり、責任者である斎藤氏と共に支店に呼ばれて、その日に、銀行から付帯業務を課せられた事実を報告いたしました。その後、10月21日に菅野指導員が銀行を巡回訪問したときにも述べました。
会社の対応はどのようなものでしたか?
何もしてくれませんでした。
それ以外にも業務上の不満というのはおありでしたか?
斎藤責任者や銀行の新担当者が原告の運行スケジュールを勝手に入れながら、原告に教えないことにより、運行業務に支障をもたらしました。
それも、被告会社に告げていたんでしょうか?
これは、告げておりません。斎藤責任者には告げました。
斎藤責任者の対応はどういったものでしたか?
何もしませんでした。
それ以外にはありますか?
本来、運行管理責任者である斎藤責任者がやるべき仕事を原告がやらされました。(被告は原告が自らやったと陳述書に虚偽記載した)
それも斎藤責任者にお話になったんでしょうか?
はい。
これについても対応はなかったんですか?
何もありませんでした。
他の上司等にお話しになるということはなかったですか?
9月7日に会社に電話して支店で述べました。
それには、どういう対応でしたか?
特に何もありませんでした。
逆に、会社のほうから、業務について指導や改善を求められたということがありますか?
特にありません。
会社のほうから、業務そのものでなくても、業務に関連する事項ですとか、職場での立ち居振る舞い等について、こうしろというような指示があったということはないですか?
特にございません。
会社のほうとしては、原告に対しては、何も特に指導や改善を求めたということはなく、あなたのほうから不満を言うことはあったと、そういう状況でしょうか?
不満もありますし、改善も要求しました。
改善を要求したというのは、どのような内容ですか?
付帯業務に関すること、あとは、運行指示書は今まで毎週月曜日に原告に渡されていたにも拘わらず、9月以降渡されないことによる違法行為になる指摘です。
異動、配転ですね、このお話が最初にでたのはいつでしょうか?
支店に呼ばれたのは12月7日です。
この時に初めて異動のお話が出たんですか?
はい。
これは、異動を促すというような内容でしょうか?
はい。
命令としての配転命令が出たのはいつですか?
佐藤支店長から命令と言われたのは、12月21日です。
これに対しては、あなたのほうではどういう対応をしたんでしょうか?
拒否しました。
あなたのほうでは、誓約書に署名したということはないですか?
誓約書に署名しました。
これは、どうして署名したんでしょうか?
いつの誓約書ですか。
1月4日のです。
1月4日には署名しておりません。1月6日に強制されて、4日付けで署名しました。
強制されてというのは、どういう意味ですか?
1月6日に、暖房の効かない部屋で、ただ椅子に座っているだけで、それに耐えきれなくて、異動命令は受け入れられない旨と、法的手段は必ず起こす旨を佐藤支店長と菅野指導員に強調して、運転代務員は引き受けるということは申し述べました。その後、労働条件通知書を渡されましたが、原告が1月6日で署名したいと言ったところ、4日にしてくれと言われて4日にしました。
あなたとしては、それを、内容として受け入れるつもりはなかったけれども、署名したということなんですか?
はい。
配転は被告のほうの不当な動機に基づくものである、と御主張されていますね?
はい。
これは、どういった理由なんでしょうか?
3点ありますが、第1に、平成27年10月21日に、菅野指導員は偽装請負行為を認識しながら黙認しております。改善要求ではなかったと記載しておりますが、改善要求の有無にかかわらず、認識した後に銀行に対し、付帯業務の中止を求めるのは職務です。実際、9月1日の原告の報告に対し、3日には自ら銀行に赴いて改善を要求したのでありますから、それがない状態は黙認した証拠です。同年12月21日にも、原告の指摘により、佐藤支店長が翌日銀行に対し付帯業務をやめさせたのであれば、報告も改善もされなかった違法状態の中で原告は仕事をさせられていたということになります。
私の質問は、配転が不当な動機に基づくものというふうにあなたが考える理由ですが、三つあるとおっしゃったひとつは偽装請負の話ですね。
二つ目は、運行指示書が9月以降渡されなかったということです。三つ目は配転を拒否する原告に対し、平成27年12月25日に突然銀行を訪ね、有無を言わさず原告を銀行から退去させ、原告の自宅を突然訪ね、配転を拒否する原告の自宅の呼び鈴を1時間にわたり鳴らし続けるというパワーハラスメントを行いました。これによって原告とその家族は被害に遭いました。原告の私的領域に踏み入ってまでも配転を強行することは不当な動機であり権利の濫用です。
配転の理由として、それが不当な動機だとおっしゃっる理由は何かというふうに聞いているんですが、配転の目的自体が、あなたに対する嫌がらせ目的とか、あなたに対して不利益を及ぼしたいという会社の意図があるということをおっしゃりたいんでしょうか?
私を配転させることによって、事なかれ主義をとったと思います。
事なかれ主義というのはどういうことですか?
私が銀行に対し付帯業務の改善を要求したにも拘わらず、銀行職員は、私が自ら進んで付帯業務を行ったということを会社に訴えて、それを真に受けて、会社は運行指示書を出すこともせず、付帯業務を改善することもなく、配転せることによって何事もなかったようにしたということだと思います。
あなたのほうで、適切でない行動があったという指摘をしましたよね。それを隠蔽するということですか?
はい。
会社のほうからは、あなたの異動に関してはどういう説明を受けましたか?
特に説明は受けてません。ただ、乙第1号証を示して、ここに、異動することもあると書いてあるじゃないかということを強調されました。
それ以外の理由についての説明はないということでよろしいですか?
特にありません。また、運転代務員をやってもらいたいと、私の将来性を考慮して決定したんだから、ということを強調されました。
異動後の業務はどのようなものでしたか?
県内に点在する他の運転手の病気等により代務員の必要性が生じても、原告が代務員として勤務したことは、2ヶ月の間一度もありません。同じ部屋にいる他の職員の送迎だけでありますが、職員は自ら運転もしておりますので、特に業務上必要性はありませんでした。
配転によって、あなた自身にはどのような影響がありましたか?
鬱状態がひどくなりました。
今回は、精神的苦痛による慰謝料ということも請求されるわけですね?
はい。
どういう精神状態というか、苦痛が具体的にあったか説明できますか?
2ヶ月間、原告は日本政策投資銀行を勤務地とすることを条件に採用に応じたにも拘わらず、配転を強行され、さらに、平成27年3月下旬に原告と佐藤支店長の間に、運転代務員はできないという認識がありながら、強制的に原告の同意もなく運転代務員にしたことです。運転代務員は今までやっていた同一場所で同じ車種を運転するものではなく、車種も大型バスや、勤務地もいろんなところにあって、職種変更に近いものがあり、原告はできないと言うのにも拘わらず、それを強制的に命じたことに対する苦痛です。また、1月以降、基本的に仕事というものはありませんでした。椅子に座っているか、あっても職員の送迎、しかし、職員は自ら運転もしているので、取ってつけたような仕事ばかり、そういうことです。
あと、最後に言いたいことはありますか?
原告は民事調停申立て以前から、被告支店長に対し銀行に戻すように何度も懇願し、何事もなかったように振る舞う、誓約書を書いてもいいし、土下座してもいいから銀行に戻して欲しいと述べてきました。労働審判で慰謝料を請求するも、慰謝料請求を放棄する、銀行に戻してもらえれば他に要求するものは何もないと審判官に訴えても、被告は見直すことをしませんでした。原告の譲歩を被告は拒否したのであり、1年経過して、もはや原告から和解することはあり得ません。原告はいかなることがあろうとも、請求が認められるまで争います。他の不当な配転や雇い止めを受けている労働者の例となるためにも、そして、今後原告のような被害者がでないためにも判決を望みます。
つづく