「四面体」の「四線座標」並びに「内心I」「傍心E_B」の重心座標の公式の「証明」その1_2009.05.28(木)
( なお、三角形の「三線座標」については2009.2.16のBlogを見てください )
1.「重心座標」の復習
「四面体ABCD」の「重心座標」と、頂点Aの対面の「△BCD」に関する「重心座標」との関連を述べる。
「n次元ユークリッド空間」をE^n で表わすことにする。ここにnは自然数としておく。
E^3は3次元ユークリッド空間ということになる。
「四面体ABCD」⊆E^3⊆E^n、ただし n≧3としておく。頂点Aが上方にあり、△BCDが底面に
あるとする。頂点Aを通り、底面の「△BCD」に平行な平面をπで表しておく。
A∈πであることに注意しておく。このとき、次の[命題1.1]が成り立つ。
[命題1.1]
記号は上の通りとする。
点 T∈E^3 をとり、Tはπには属してないとする。上の注意から T≠Aであって
「直線AT」が考えられる。「Tはπには属してない」から「直線AT」は「△BCDの造る平面」と
ただ1点で交わる。
その点を以前のブログのように T_A で表すことにする。T_Aは「直線AT上の点」だから
(→AT)=(1-t)(→A(T_A)) … (1.1.1) となる実数 tが存在する。
T_Aの「△BCD」に関する「重心座標」を(β,γ,δ) 、ただし β+γ+δ=1とすると
任意の点P∈E^nに対し
(→P(T_A))=β(→PB)+γ(→PC)+δ(→PD) … (1.1.2)
かつ β+γ+δ=1 … (1.1.3)
また、点Tの「四面体ABCD」に関する「ベクトルによる重心座標表現」を
任意の点P∈E^nに対し
(→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD ) … (1.1.4)
かつ κ+λ+μ+ν=1 … (1.1.5) とする
⇒
(1) t=κ (カッパ ) であって (1.1.1) は(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) … (1.1.6) となり、
(2) λ=(1-κ)β , μ=(1-κ)γ , ν=(1-κ)δ … (1.1.7) となる。
[証明]
点Pは任意の点だから(1.1.2),(1.1.4)において P ⇒ Dと置き換えて
(→A(T_A))=β(→AB)+γ(→AC)+δ(→AD) … (1.1.8)
かつ
(→AT)=λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD) これらを(1.1.1)に代入すれば、
λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD)=(1-t){β(→AB)+γ(→AC)+δ(→AD)}
すなわち
λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD)=(1-t)β(→AB)+(1-t)γ(→AC)+(1-t)δ(→AD) … (1.1.9)
点Aは、「△BCD上にはなく」、(→AB),(→AC),(→AD)は一次独立であるから
λ=(1-t)β , μ=(1-t)γ , ν=(1-t)δ … (1.1.10)
(1.1.10)の3式を両辺同士加えあわせて
λ+μ+ν=(1-t)(β+γ+δ) (1.1.3)から β+γ+δ=1なので
⇔ λ+μ+ν=1-t ここで (1.1.5) から λ+μ+ν=1-κ なので
⇔ 1-κ=1-t ⇔ t=κ となる。これを (1.1.1), (1.1.10)に代入すれば
(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ,λ=(1-κ)β , μ=(1-κ)γ , ν=(1-κ)δ となる。
([命題1.1]の「証明」終わり )
[命題1.2] ( [命題1.1]と同値である )
記号は[命題1.1]の通りとする。
「直線AT」が「△BCDの造る平面」と1点T_Aで交わる
⇒ (→T(T_A))=κ(→A(T_A)) … (1.2.1)
「証明」
[命題1.1]の (1.1.6) (→AT)=(1-κ)(→A(T_A))を書き変えて
(→A(T_A))+(→(T_A)T)=(→A(T_A))-κ(→A(T_A))
⇔ (→T(T_A))=κ(→A(T_A))
([命題1.2]の「証明」終わり )
[命題1.3]
記号などは[命題1.1]の通りとする。
「直線 AT」が「△BCDの造る平面」と 1点T_Aで交わる
⇒ AT:T(T_A)=(1-κ):κ
すなわち 点Tは 線分A(T_A)を 「(1-κ):κの比に分ける点」である
「証明」
[命題1.1],[命題1.2] から
(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) … (1.1.6) かつ (→T(T_A))=κ(→A(T_A)) … (1.2.1)
よって 成り立つ。
([命題1.3]の「証明」終わり )
[命題1.4]
記号などは[命題1.1]の通りとする。点Tの「四面体ABCD」に関する「重心座標]を
(κ,λ,μ,ν) ,κ+λ+μ+ν=1 としておく。
そのとき、
T∈π ⇔ κ=1 (カッパ=1)
ここに πは「四面体ABCD」の[頂点Aを通り底面の△BCDに平行な平面]である。
「証明」
(1) T∈πとしよう。このとき、κ=1を以下に示す。
(ア) T=Aなら
点Aの「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PA)=1×(→PA)+0×(→PB)+0×(→PC)+0×(→PD) だから
点Aの「重心座標」は(1,0,0,0) である。よって T=A ⇔(κ,λ,μ,ν)=(1,0,0,0)で
κ=1となり、O.K.
次に
(イ)T≠Aの場合を考える。このとき 「直線AT」が考えられる。
T∈πとしているから、[直線AT]//π ⇔[直線AT]//[底面の「△BCDの造る平面」]となる。
(→DB),(→DC) は一次独立だから実数β,γが一意的に存在し、
(→AT)=β(→DB)+γ(→DC) … (1.4.1) と書ける。
⇔ (→PT)-(→PA)=β{(→PB)-(→PD)}+γ{(→PC)-(→PD)}
⇔ (→PT)=1×(→PA)+β(→PB)+γ(→PC)+{-(β+γ)}(→PD) … (1.4.2)
そこで 点Tの「ベクトルによる重心座標表現」を
(→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) … (1.4.3)
かつ κ+λ+μ+ν=1とすれば、1+β+γ+{-(β+γ)}=1 に注意して
「ベクトルによる重心座標表現」の一意性から
(κ,λ,μ,ν)=(1,β,γ,-(β+γ)) ⇒ κ=1となる。
(2) 逆に κ=1 としよう。このとき、T∈πを以下に示す。
つまり 点Tの「重心座標」が(κ,λ,μ,ν)=(1,λ,μ,ν), かつ λ+μ+ν=0 とする。
すると点Tの「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PT)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD)
=(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD)
⇔ (→PT)-(→PA)=λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD)
⇔ (→AT)=λ(→PB)+μ(→PC)+κ(→PD) ,λ+μ+ν=0から ν=-(λ+μ)を代入し
⇔ (→AT)=λ(→PB)-(→PD)} +μ{(→PC)-(→PD)}
⇔ (→AT)=λ(→DB)+μ(→DC) ここで λ(→DB)+μ(→DC)は「△BCDに平行な平面上」を動き回る。
(→AT)は点Aが始点なので (→AT)//[底面の「△BCDの造る平面」]
すなわち T∈πとなる。
( [命題1.4]の「証明」終わり)
[命題1.5]
記号などは[命題1.1]の通りとする。点T∈E^3をとり、その「四面体ABCD」に関する
「重心座標」を(κ,λ,μ,ν),κ+λ+μ+ν=1とする。κ≠1であるとする。上記[命題1.4]の対偶より
Tは平面πには属さず、T≠Aで 直線ATは底面の「△BCDの造る平面」と1点で交わる。
その交点をT_Aとすれば、T_Aの「△BCD」に関する「重心座標」(β,γ,δ),β+γ+δ=1は
次のようになる。
β=λ/(1-κ),γ=μ/(1-κ),δ=ν/(1-κ) …(1.5.1)
⇔ β=λ/(λ+μ+ν),γ=μ/(λ+μ+ν),δ=ν/(λ+μ+ν) … (1.5.2)
「証明」
[命題1.1]の(2)の(1.1.7) 式
λ=(1-κ)β , μ=(1-κ)γ , ν=(1-κ)δ において、κ≠1から 1-κ≠0
ゆえに β=λ/(1-κ) ,γ=μ/(1-κ),δ=ν/(1-κ)
これに 1-κ=λ+μ+νを代入すれば (1.5.2)が得られる。
([命題1.5]の「証明」終わり )
2. 以下については2009.2.16のブログの内容とほぼ同じです
「四線座標」の復習
(1) 記号の導入:
四面体について:「四面体ABCD」の「体積」をVとし,△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積を
順に S_A,S_B,S_C,S_D・・・(2.1.1)で表すことにする。
また頂点A,B,C,Dから対面の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCに
降ろした垂線の足を順にH_A,H_B,H_C,H_Dとおき、△BCD,△ACD,△ABD,△ABCを
それぞれ「四面体ABCD」の底面と見たときの高さを順に h_A,h_B,h_C,h_D ・・・(2.1.2)
とおく。さすれば h_A=A(H_A),h_B=B(H_B),h_C=C(H_C),h_D=D(H_D)・・・(2.1.3)
また、体積 V=(1/3)(S_A)(h_A)=(1/3)(S_B)(h_B)=(1/3)(S_C)(h_C)=(1/3)(S_D)(h_D)から
h_A=(3V)/S_A ,h_B=(3V)/S_B,h_C=(3V)/S_C ,h_D=(3V)/S_D ・・・(2.1.4)
場合によっては △BCD=S_A ,△ACD=S_B,△ABD=S_C,△ABC=S_D ・・・(2.1.5)と略記する。
以後これらをずっと使用する。
(2)
[定義2.1] 四面体ABCDに関する「四線座標」の定義
四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。点Tから四面体ABCDの各面△BCD,△ACD,
△ABD,△ABCに降ろした垂線の足を順にT^A,T^B,T^C,T^D ・・・(2.1.6)とし、
α=点Tから面△BCDまでの距離=T(T^A),β=点Tから面△ACDまでの距離=T(T^B),
γ=点Tから面△ABDまでの距離=T(T^C),δ=点Tから面△ABCまでの距離=T(T^D) ・・・(2.1.7)
とおき、その符号は、次のように決める。
例えば点Tが「面BCDの造る平面」に関して、頂点Aと反対側にあるときだけ、α<0 と考える。・・・(2.1.8)
このようにして「四面体ABCD」を用いて、3次元空間E^3に「三線座標」を真似て「四線座標」が
導入できることが分かる。また、例えば面△ABC上の点Tに関しては、「四面体」での「四線座標」と
「△ABC」での「三線座標」の2通りが考えられる。このとき、「重心座標」のようには
「四線座標」が「三線座標」の「拡張」とはなってはいないので注意する必要がある。区別するときは、
「三線座標」は(α(3),β(3),γ(3))などと書き、「四線座標」の方は(α(4),β(4),γ(4),δ(4))
などで表すことにする。
点Tの「四線座標」の「一意性」は定かではないが、「四面体ABCD」に関する「重心座標」の
「一意性」とこれから述べる[命題2.2]以降によって、明らかになるだろう。
四面体の「四線座標」並びに「内心I」「傍心E_B」の重心座標の公式の「証明」その2_2009_05_28(木)
2. 以下については2009.2.16のブログの内容とほぼ同じです
「四線座標」の復習
(1) 記号の導入:
四面体について:「四面体ABCD」の「体積」をVとし,△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積を
順に S_A,S_B,S_C,S_D・・・(2.1.1)で表すことにする。
また頂点A,B,C,Dから対面の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCに
降ろした垂線の足を順にH_A,H_B,H_C,H_Dとおき、△BCD,△ACD,△ABD,△ABCを
それぞれ「四面体ABCD」の底面と見たときの高さを順に h_A,h_B,h_C,h_D ・・・(2.1.2)
とおく。さすれば h_A=A(H_A),h_B=B(H_B),h_C=C(H_C),h_D=D(H_D)・・・(2.1.3)
また、体積 V=(1/3)(S_A)(h_A)=(1/3)(S_B)(h_B)=(1/3)(S_C)(h_C)=(1/3)(S_D)(h_D)から
h_A=(3V)/S_A ,h_B=(3V)/S_B,h_C=(3V)/S_C ,h_D=(3V)/S_D ・・・(2.1.4)
場合によっては △BCD=S_A ,△ACD=S_B,△ABD=S_C,△ABC=S_D ・・・(2.1.5)と略記する。
以後これらをずっと使用する。
(2)
[定義2.1] 四面体ABCDに関する「四線座標」の定義
四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。点Tから四面体ABCDの各面△BCD,△ACD,
△ABD,△ABCに降ろした垂線の足を順にT^A,T^B,T^C,T^D ・・・(2.1.6)とし、
α=点Tから面△BCDまでの距離=T(T^A),β=点Tから面△ACDまでの距離=T(T^B),
γ=点Tから面△ABDまでの距離=T(T^C),δ=点Tから面△ABCまでの距離=T(T^D) ・・・(2.1.7)
とおき、その符号は、次のように決める。
例えば点Tが「面BCDの造る平面」に関して、頂点Aと反対側にあるときだけ、α<0 と考える。・・・(2.1.8)
このようにして「四面体ABCD」を用いて、3次元空間E^3に「三線座標」を真似て「四線座標」が
導入できることが分かる。また、例えば面△ABC上の点Tに関しては、「四面体」での「四線座標」と
「△ABC」での「三線座標」の2通りが考えられる。このとき、「重心座標」のようには
「四線座標」が「三線座標」の「拡張」とはなってはいないので注意する必要がある。区別するときは、
「三線座標」は(α(3),β(3),γ(3))などと書き、「四線座標」の方は(α(4),β(4),γ(4),δ(4))
などで表すことにする。
点Tの「四線座標」の「一意性」は定かではないが、「四面体ABCD」に関する「重心座標」の
「一意性」とこれから述べる[命題2.2]以降によって、明らかになるだろう。
--「四面体ABCD」に関する「四線座標と「重心座標」との関係ーー
次の[命題2.2],[命題2.3]は、「3角錐の体積の公式」と「直角三角形同士」の「相似」の関係を
使用しているだけである。
[命題2.2]
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)
かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」,「λ≠1 ⇒ β=(3V/S_B)λ」
「μ≠1 ⇒ γ=(3V/S_C)μ」,「ν≠1 ⇒ δ=(3V/S_D)ν」・・・(2.2.1) が成立する。
(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1とする。
κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつν≠1 ・・・(2.2.2)のときは
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V ・・・(2.2.3) が成立する。
「証明」
(2)について:
まず(1)が成り立つとして(2)を証明する。
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν より、
(S_A)α=(3V)κ,(S_B)β=(3V)λ,(S_C)γ=(3V)μ,(S_D)δ=(3V)ν ・・・(2.2.4)
ゆえに
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=(3V)(κ+λ+μ+ν)=(3V)×1=3V
よって(2.2.3)が成り立つ。
(1)について:
それでは(1)を証明しよう。
点Tの「四面体ABCD」に関する「重心座標」(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1について
「 κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」を証明する。
κ≠1であるから T≠A となり(∵[命題1.4])直線ATは「△BCDの造る平面」と1点T_Aで交わり、
[命題1.2]から (→T(T_A))=κ(→A(T_A)) となる。H_Aは頂点Aから下した垂線の足だった。
(ア)0<κ<1 のとき、直線AT上に3点 A,T,T_Aがこの順に並び、また線分A(H_A)が頂点Aからの
「垂線」として存在する。点Tから「△BCDの造る平面」に「垂線」を引きその足をT^Aとおく。
T(T^A)=α>0 である。T_A≠H_Aとしよう。△A(T_A)(H_A)∽△T(T_A)(T^A)となるから
⇒ A(T_A):T(T_A)= A(H_A):T(T^A) ・・・(2.2.5)となる。
(→T(T_A))=κ(→A(T_A))から A(T_A):T(T_A)=1:κ, T(T^A)=α,(2.1.4)から
A(H_A)=h_A=(3V)/S_A だから (2.2.5) は 1:κ=h_A:α
⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ ゆえに (2.2.1)の第1式が成立。
これで α=(3V/S_A)κ が証明された。T_A=H_A のときは(→T(T_A))=κ(→A(T_A))は
(→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(2.2.6)となり α=T(H_A) ,A(H_A)=h_A だから
(2.2.6)から α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となり、(2.2.1)の第1式が成立。
(イ)κ=0 のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))=(→0)からT=T_A∈「△BCDの造る平面」 ゆえにα=0
よって α=(3V/S_A)κは両辺とも「0」となり成立する。
(ウ)κ< 0のとき、四面体ABCDの面△BCDを底面、頂点Aを上方にもってきたとき、点Tは底面の△BCD
よりも下方にある。直線AT上には頂点A、交点T_A、点Tの順に上方から並んでいる。
α=T(T^A)<0である。T_A≠H_Aとしよう。△T(T^A)(T_A)∽△A(H_A)(T_A) である。
よって A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A) すなわち 1:(-κ)=h_A:(-α)
⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ つまり α=(3V/S_A)κ
T_A=H_A のときは (→T(T_A))=κ(→A(T_A))は (→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(2.2.7)
となる。α=T(H_A),A(H_A)=h_A から (-α)=(-κ)(h_A) これから
(ア)と同様に式がでる。
(エ) κ>1のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))から点Tは「四面体ABCD」の上方にあり、
直線AT上に上方から点T、頂点A,交点T_Aの順に並んでいる。T_A≠H_Aとしよう。
△(T_A)A(H_A)∽△(T_A)T(T^A) ⇒ A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A)
すなわち 1:κ=h_A:α よって α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となる。T_A=H_Aのときも
式がでる。
以上により、「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」が証明された。
(2.2.1)の他の式も同様である。
こうして、[命題2.2]の(1)が「証明」された。
([命題2.2]の「証明」終わり)
[命題2.3] [命題2.2]の、κ,λ,μ,νの取る値の制約を外すことができる。すなわち
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を
(κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。このとき
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν ・・・(2.3.1) が成立する。
(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
このとき
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V ・・・(2.3.2) が成立する。
「証明」
(1) で κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつ ν≠1 の場合は
[命題2.2]から(1)(2)は成り立つ。
そこで(1)では、
「κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1」・・・(2.3.3)のときに「証明」をすればよい。
(1)について:
κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1 ・・・(2.3.4)とする。
点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を (κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,
「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。 そして κ=1とする。
(ア) T=A のときは、頂点A」の「重心座標」は (κ,λ,μ,ν)=(1,0,0,0)で(2.1.4)から
α=T(T^A)=h_A=(3V/S_A)、 κ=1だから α=(3V/S_A)κ がやはり成立する。
(イ) κ=1でT≠A とすると [命題1.4]から (→AT)//「△BCDの造る平面」であり、
よって、またα=T(T^A)=h_A=(3V/S_A),κ=1だから α=(3V/S_A)κ が成立する。
(ウ) κ=1のとき、λ+μ+ν=0 で 「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点 P∈E^n(ただしn≧3)にたいし
(→PT)=(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(2.3.5)
となる。ここで もし λ≠1ならば[命題2.2]の(1)から β=(3V/S_B)λ が成立する。
そこで、さらにλ=1とすれば、Tの重心座標は(1,1,μ,ν) ,1+μ+ν=0 となる。
よって T≠Bである。[∵ Bの重心座標は (0,1,0,0) ] λ=1だから[命題1.4]と同様にして
(→BT)//「△ACDの造る平面」となる。ゆえに β=T(T^B)=h_B=(3V/S_B)となる。λ=1なので
β=(3V/S_B)λが成立する。次にμ≠1ならばT≠Cで [命題2.2]からγ=(3V/S_C)μが成立する。
そこで
(エ)κ=1 かつ λ=1かつ μ=1としよう。するとκ+λ+μ+ν=1からν=-2 となる。
μ=1だから (→CT)//「△ABDの造る平面」となる。
よって γ=T(T^C)=h_C=(3V/S_C) そしてμ=1 なのでγ=(3V/S_C)μ が成立する。
そして ν=-2なのでν≠1であり、(→DT)//「△ABDの造る平面」とはならない。
ゆえに δ=(3V/S_D)ν が成立する。
以上により κ=1 かつ λ=1かつ μ=1かつν=-2のときも
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(2.3.1)が成立する。
(オ) この κ=λ=μ=1かつ ν=-2のときを図形的に考えてみよう。点Tは「四面体ABCD」に関して
どこにくるのか調べてみる。κ=λ=μ=1かつ ν=-2より 点Tの「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PT)=(→PA)+(→PB)+(→PC)-2(→PD) ・・・(2.3.6)だから 特に P⇒D とおくと
(→DT)=(→DA)+(→DB)+(→DC) ・・・(2.3.7) そこで△ABCの重心をG_D とおくと
G_D の「四面体ABCD」に関する「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PG_D)=1/3(→PA)+1/3(→PB)+1/3(→PC)+0×(→PD)・・・(2.3.8) 。G_Dの「四面体ABCD」
に関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3,0) 、△ABCに関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3)で
あって(2.3.8)で特にP=D とおいて (→DG_D)=1/3[(→DA)+(→DB)+(→DC)] ・・・(2.3.9)
これと(2.3.7)から (→DT)=3(→DG_D) ・・・(2.3.10)となる。ゆえに(→DT)はDから対面の
△ABCに向かってその重心G_Dを通り、DG_Dの長さを3倍にしたもので、Tは四面体ABCDの外部の所にある。
つまり D(G_D):(G_D)T=1:2 ・・・(2.3.11)となる。T_D=G_Dであり、 T(T^D)=δはδ<0である。
すなわち (→DT)は「△ABCの造る平面」とは平行にはならず、
T(T^D):D(H_D)=T(G_D):D(G_D)=(-2):1 ⇒ δ:h_D=(-2):1
⇔ δ=(h_D)×(-2) ・・・(2.3.12)
h_D=3V/S_D ,ν=-2だから (2.3.12)は δ=(3V/S_D)ν となる。
このようにして、κ=1から始めてλ,μ,νとやっていって、
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(2.3.1) が成立する。
よって他の場合も(2.3.1)は成立する。ゆえに(2)も成立する。
([命題2.3]の「証明」終わり)
[命題2.4]
(1)四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3の「重心座標」
(κ,λ,μ,ν),κ+λ+μ+ν=1 と「四線座標」(α,β,γ,δ)の間には[命題2.3]の(1)の(2.3.1)の
関係が成立し、1対1の対応がある。「四線座標」では、点が異なれば「四線座標」も異なり、逆も成り立つ。
四面体の「四線座標」並びに「内心I」「傍心E_B」の重心座標の公式の「証明」 その3_2009.05.28(木)
3.
「四面体ABCD」の「内心Iと「傍心E_B」などの「ベクトルによる重心座標表現」及び
その「半径r」,「半径r_B」を求める
(1)「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」を求めてみよう。
「内心I]では、2次元の内接球面の半径をr>0とし、
任意の点P∈E^nにたいし、その「ベクトルによる重心座標表現」を
(→PI)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3.1.1) かつ
κ+λ+μ+ν=1・・・(3.1.2) とおく。
また「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
「内心I」から「△BCDの造る平面」、「△ACDの造る平面」、「△ABDの造る平面」、
「△ABCの造る平面」へ降ろした「垂線」の足を順にI^A,I^B,I^C,I^Dとすれば
求める条件は
r=I(I^A)=I(I^B)=I(I^C)=I(I^D) ・・・(3.1.3)
このI(I^A)=α>0,I(I^B)=β>0,I(I^C)=γ>0,I(I^D)=δ>0 だから(3.1.3)は
r=α=β=γ=δ ・・・(3.1.4) ここで[命題2.3]の(1)から
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν だから(3.1.4)は
r=(3V/S_A)κ=(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν ・・・(3.1.5) となり、
これをκ+λ+μ+ν=1・・・(3.1.2) かつ κ>0,λ>0,μ>0,ν>0 ・・・(3.1.6)のもと、
5つの方程式で、5つの未知数κ,λ,μ,νとrを 解けばよい。
(3.1.5)に対していわゆる「加比の理」を用いれば、
r=(3Vκ/S_A)=(3Vλ/S_B)=(3Vμ/S_C)=(3Vν/S_D)
=(3Vκ+3Vλ+3Vμ+3Vν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
=(3V)(κ+λ+μ+ν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
よって r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(3.1.7)
κ=S_A/(S_A+S_B+S_C+S_D)、λ=S_B/(S_A+S_B+S_C+S_D),
μ=S_C/(S_A+S_B+S_C+S_D),ν=S_D/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(3.1.8)
と解けた。
これらは(3.1.6)をみたす。 これらを(3.1.2)に代入して、次の「定理3.2]が得られた。
「定理3.2]
「四面体ABCD」の2次元の「内接球面」の半径をr( r>0)とし「内心」をIとしたとき、
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は 任意の点P∈E^n(ただし n≧3)
にたいして
(→PI)=[1/(S_A+S_B+S_C+S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_C)(→PC)+(S_D)(→PD)]
・・・(3.2.1)
その半径rは r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(3.2.2)
detJ(3)=(6V)^2 だから (3.2.2)は
r=√[detJ(3)]/2(S_A+S_B+S_C+S_D) ・・・(3.2.3)とも表現される。
(2) 次に「角B内で△ACDで『傍接する』傍接球面」の「中心」を「E_B」で表わすことにする。
「傍心E_B」の「ベクトルによる重心座標表現」が求まったとし、その半径をr_B >0 とする。
「角B内で△ACDで『傍接する』傍接球面」が存在する条件は、
「傍心E_B」は四面体ABCDの外部にあり、面△ACDに関して,頂点Bと反対側にある。
「傍心E_B」から、面△BAC、,面△BAD,面△BCD,及び頂点Bの「対面△ACD」に下した「垂線」の
足をそれぞれ、K,L,M,Nとすれば、求める条件は、
r_B=(E_B)K=(E_B)L=(E_B)M=(E_B)N ・・・(3.2.4)
ここで[命題2.3]の(1)から
(E_B)K=α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,(E_B)M=γ=(3V/S_C)μ,(E_B)N=δ=(3V/S_D)ν
ただし、α>0,γ>0,δ >0 そして β<0
(「傍心E_B」は四面体ABCDの外部にあり、面△ACDに関して,頂点Bと反対側にあり、四線座標の符号の決め方から )
だから (E_B)L=-β=-(3V/S_B)λ
κ>0,λ<0,ν>0, r_B=(3V/S_A)κ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν,
かつ r_B=-(3V/S_A)λ (∵λ<0 )
r_B=(3V/S_A)κ=-(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν・・(3.2.5) となる。
この κ,λ,μ,ν及びr_Bを、λだけ「マイナス」他の κ,μ,νは「プラス」かつ
κ+λ+μ+ν=1 のもとに解けばよい。 (3.2.5) を
r_B=(3Vκ)/(S_A)=(3Vλ)/(-S_A)=(3Vμ)/(S_C)=(3Vν)/(S_D)・・・(3.2.6)と
変形して 、「加比の理」を使えば、
r_B=(3Vκ)/(S_A)=(3Vλ)/(-S_B)=(3Vμ)/(S_C)=(3Vν)/(S_D)
=(3Vκ+3Vλ+3Vμ+3Vν)/(S_A-S_B+S_C+S_D)
=3V(κ+λ+μ+ν)/(S_A-S_B+S_C+S_D)
=(3V)/(S_A-S_B+S_C+S_D) ( ∵ κ+λ+μ+ν=1)
よって κ=(S_A)/(S_A-S_B+S_C+S_D),λ=(-S_B)/(S_A-S_B+S_C+S_D),
μ=(S_C)/(S_A-S_B+S_C+S_D),ν=(S_D)/(S_A-S_B+S_C+S_D) ・・・(3.2.7)
r_B=(3V)/(S_A-S_B+S_C+S_D) ・・・(3.2.8) と求まる。
よって
「定理3.3]
「角B内で△ACDで『傍接する』傍接球面」の「傍心E_B」の「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^n(ただし n≧3)に対して、
(→PE_B)=[1/(S_A-S_B+S_C+S_D)]×[(S_A)(→PA)-(S_B)(→PB)+(S_C)(→PC)+(S_D)(→PD)]
・・・(3.3.1)
また[傍接球面E_B]の半径r_Bは
r_B=(3V)/(S_A-S_B+S_C+S_D)=√[detJ(3)]/2(S_A-S_B+S_C+S_D)・・・(3.3.2) となる。
[注意]:ここで、「四面体ABCD」において
『 3つの側面の三角形の面積の和 > 他の1つの面積 』・・・(#) という 「事実」を用いている。
それにより、
◎ S_A+S_C+S_D > S_B ⇔ S_A-S_B+S_C+S_D >0 となり、(3.2.7),(3.2.8)の分母 >0
となっている。
(#)は、直感的には「四面体ABCDを頂点Bを上方にとり、それを底面の△ACDの造る平面に射影すれば
分かる気がするが・・・
「定理3.4]
「四面体ABCD」の頂点A,B,C,Dから対面の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCに下した「垂線」の足を
それぞれ、H_A,H_B,H_C,H_D とし、h_A=A(H_A),h_B=B(H_B),h_C=C(H_C),h_D=D(H_D)
,すなわち各頂点からのこの「四面体ABCDの高さ」をそれぞれ、h_A ,h_B ,h_C ,h_Dとし、
2次元の「内接球面」の半径をrとすれば、三角形の場合(2009.1月頃のブログで示した)と同様に
「公式」
(1/h_A)+(1/h_B)+(1/h_C)+(1/h_D)=1/r ・・・(3.4.1)が成り立つ。
「証明」
体積の公式 V=(1/3)(S_A)(h_A)=(1/3)(S_B)(h_B)=(1/3)(S_C)(h_C)=(1/3)(S_D)(h_D)から
h_A=(3V)/S_A ,h_B=(3V)/S_B,h_C=(3V)/S_C ,h_D=(3V)/S_D ・・・(2.1.4)だった。
よって
(1/h_A)+(1/h_B)+(1/h_C)+(1/h_D)=S_A/(3V)+S_B/(3V)+S_C/(3V)+S_D/(3V)
=(S_A+S_B+S_C+S_D)/(3V) ところが[定理3.2]のr=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(3.2.2)
から 1/r=(S_A+S_B+S_C+S_D)/(3V)
ゆえに (1/h_A)+(1/h_B)+(1/h_C)+(1/h_D)=1/r が成り立つ。
([定理3.4]の「証明」終わり )
四面体の垂心・外心・内心の重心座標表現の具体例_第6例 2009.02.19(木)
1.一般に四面体ABCDの6辺の長さを BC=a ,CA=b ,AB=c,BD=e ,CD=f とおく。
また その体積を Vとおく。
「垂心四面体ABCD』になる条件は主に次の(ア)(イ)(ウの3通りがあった。
(ア)
AB⊥CD かつ AC⊥BD かつ AD⊥BC ・・・(1.1.1)
この3つの「垂直条件」は2つが成立すれば、残りの1つも成立する。
(イ)
AB^2+CD^2=AC^2+BD^2=AD^2+BC^2 ・・・(1.1.2)
すなわち a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2 ・・・(1.1.3)
(ウ)
((→AB,→AC))=((→AB,→AD))=((→AC,→AD))
⇔((→BA,→BC))=((→BA,→BD))=((→BC,→BD))
⇔((→CA,→CB))=((→CA,→CD))=((→CB,→CD))
⇔((→DA,→DB))=((→DA,→DC))=((→DB,→DC))
のどれか1つの条件が成立すること
の3通りである。(ア)⇔(ウ)は明らかであり (ア)と(イ)の同値性は「高校の教科書にも載っている」
ようである。
「垂心四面体」においては、
x=((→AB,→AC))=((→AB,→AD))=((→AC,→AD)),y=((→BA,→BC))=((→BA,→BD))=((→BC,→BD)),
z=((→CA,→CB))=((→CA,→CD))=((→CB,→CD)) ,w=((→DA,→DB))=((→DA,→DC))=((→DB,→DC))
・・・(1.1.4)
とする。そのとき、
x+y=AB^2=c^2 ,x+z=AC^2=b^2 ,x+w=AD^2=d^2 ,
y+z=BC^2=a^2 ,y+w=BD^2=e^2 ,z+w=CD^2=f^2 ・・・(1.1.5)
また、a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2 だから、
e^2=(a^2+d^2)-b^2=d^2+(a^2-b^2) ,f^2=(a^2+d^2)-c^2=d^2+(a^2-c^2) ・・・(1.1.6)
さらに detJ(3)=(6V)^2=yzw+xwz+xyw+xyz
=(x+w)yz+(y+z)xw=(d^2)yz+(a^2)xw ・・・(1.1.7)
などは以前に示した。
2.
さて、今回の「垂心四面体の第6例」は極めて分かりやすく「よくある四面体」といえよう。
底面に△ABCがくるように四面体ABCDをを配置する。この△ABCは1辺の長さがaの「正三角形」とし、
上方にとった頂点Dは正三角形ABCの重心に立てた垂線上にあるとする。
すなわち、この四面体ABCDはBC=CA=AB=a,AD=BD=CD=d ・・・(2.1.1)とする。
つまり,上で述べた、a,b,c,d,e,fを使えば
「b=c=a,AD=d,BD=e=d,CD=f=d」 となるものである。
これが
「垂心四面体ABCD」であることは、1.の「条件(イ)」を満たすからである。
実際 、△ABCは正三角形でc=b=a,f=e=dより
b^2+e^2=a^2+d^2 ,c^2+f^2=a^2+d^2 ⇒ b^2+e^2=c^2+f^2=a^2+d^2
すなわち(イ)が成り立つからである。
そこで、この「垂心四面体」の諸量は正の数aとdで表される筈である。
まず1.に示したxを計算しよう。
x=((→AB,→AC))=((→AB,→AD))=((→AC,→AD))であるが、
x=((→AB,→AC))=[|AB|^2+|AC|^2ー|BC|^2]/2=(a^2+a^2-a^2)/2=(a^2)/2
よって (1.1.5)から y=c^2-x=a^2ーx=(a^2)/2 、z=b^2-x=a^2-x=(a^2)/2
w=d^2ーx=d^2-(a^2)/2 こうして
x=y=z=(a^2)/2 ・・・ (2.1.1) ,w=d^2-(a^2)/2 ・・・(2.1.2)となった。
そこで detJ(3)=yzw+xzw+xyw+xyz ・・・(2.1.3)の
yzw=xzw=xyw=(x^2)w ,また xyz=x^3 ・・・(2.1.4)となるので、
detJ(3)=yzw+xwz+xyw+xyz=3x^2w+x^3=x^2(3w+x) ・・・(2.1.5)
=(x^2)[3{d^2ー(a^2)/2}+(a^2/2)]
=(x^2)[3d^2ーa^2]=(a^4/4)[3d^2ーa^2] ・・・(2.1.6)
「垂心四面体」の条件を満たすものが「立体」つまり「四面体」になる条件は
detJ(3)>0だけで必要十分である。このことはあとの「復習」の(3.1.4)の
detJ(3)=4(S_D)^2(k^2)ー(abc)^2>0 からの4(S_D)^2>(abc)^2/(k^2)>0 より分かる。
そして detJ(3)>0 ⇔ 3d^2ーa^2>0 ⇔ 「d^2> (a^2)/3」 ・・・(2.1.7)
このとき、V=(1/6)√[detJ(3)]=(1/6)×(a^2/2)√[3d^2ーa^2]
すなわち「体積」V=(1/12)(a^2)√[3d^2ーa^2] ・・(2.1.8)
こうして
[命題2.2]
この「四面体ABCD」ができるためのa,dの必要十分条件は 「d^2> (a^2)/3」 ・・・(2.2.1)
◎次の[命題2.3]は以下の4.の「計算(2)(3)」から分かる。
[命題2.3]
(エ) w<0 ⇔ (a^2)/3<d^2<(a^2)/2 のとき、△DAB,△DAC,△DBCは鈍角三角形で、「垂心H」は
「四面体の外部」で「頂点Dよりも上方」にあり、「外心O」は「四面体の外部」で△ABCの下方にくる。
(オ) w=0 ⇔ d^2=(a^2)/2 のとき、△DAB,△DAC,△DBCは直角2等辺三角形で
「D-3直角四面体」 であり、「垂心H」=「頂点D」で、「外心O」は四面体の外部」で
△ABCの下方にきて、
(→PO)=(1/2)[(→PA)+(→PB)+(→PC)-(→PD)]となる。
(カ) w>0 ⇔ d^2>(a^2)/2 のとき、△DAB,△DAC,△DBCは鋭角2等辺三角形で「垂心H」は
「四面体の内部」にあり、
(a^2)/2<d^2<(2/3)(a^2)ならば、「外心O」は四面体の外部」で△ABCの下方にくる。
(d^2)=(2/3)(a^2)ならば「外心O」は△ABC上にあり、△ABCの「重心」のところである。
(d^2)>(2/3)(a^2)ならば「垂心H」も[外心O」とも「四面体の内部」にくる。
(キ) 特にd=a ならば、この「垂心四面体」は「1辺の長さaの正四面体」である。
3.
<復習をしておく>:一般の「垂心四面体ABCD」について、x,y,z,wを上の(1.1.4)のようにおく。
そして 正の数kを 1.の「条件(イ)」の a^2+d^2=b^2+d^2=c^2+d^2=k^2 ・・・(3.1.1)を
満たすものとし、また、△BCD、△ACD,△ABD,△ABCの面積をS_A,S_B,S_C,S_D とする。
(1) 「垂心四面体ABCD]の体積Vは detJ(3)=(3!V)^2=(6V)^2 ・・・(3.1.2)を満たし、
detJ(3)=4(S_D)^2(d^2)ーa^2(x^2)=d^2{(bc)^2-x^2}-(a^2)(x^2)
=(bcd)^2ー(a^2+d^2)(x^2)=(bcd)^2-(k^2)(x^2) ・・・(3.1.3)
detJ(3)=4(S_D)^2(k^2-a^2)ー(a^2)(x^2)=4(S_D)^2(k^2)ー(a^2){4(S_D)^2ーx^2}
=4(S_D)^2(k^2)ー(a^2)(bc)^2=4(S_D)^2(k^2)ー(abc)^2 ・・・(3.1.4)
(∵ 4(S_D)^2=(bc)^2ー(x^2)だから)
よって
4detJ(3)=4(6V)^2
=d^2(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)-(a^2)(b^2+c^2-a^2)^2 ・・・(3.1.5)
(2)「垂心四面体ABCD」の「垂心H]の「ベクトルによる重心座標表現」は任意の点P∈E^3にたいして
(→PH)=1/[detJ(3)][yzw(→PA)+xzw(→PB)+xyw(→PC)+xyz(→PD)] ・・・(3.1.6)
そして detJ(3)=yzw+xzw+xyw+xyz ・・・(3.1.7) が成り立つ。
(3)「垂心四面体ABCD]の「外心O]の「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^3にたいして
(→PO)=1/[2detJ(3)](-yzw+xzw+xyw+xyz)(→PA)
+1/[2detJ(3)](yzw-xzw+xyw+xyz)(→PB)
+1/[2detJ(3)][(yzw+xzwーxyw+xyz)(→PC)
+1/[2detJ(3)](yzw+xzw+xyw-xyz)(→PD) ・・・(3.1.8)
=1/[2detJ(3)][(detJ(3)-2yzw)(→PA)+(detJ(3)-2xzw)(→PB)]
+1/[2detJ(3)][(detJ(3)-2xyw)(→PC)+(detJ(3)-2xyz)(→PD)]・・・(3.1.9)
(5・6行目の式は (3.1.7)を用いるとでてくる)
(4)「2次元外接球面」の半径をR(3)とすると、
[R(3)]^2=(k^2)/4ー(xyzw)/(detJ(3)) ・・・(3.1.10)
(5)
4(S_A)^2=zw+yw+yz ,4(S_B)^2=zw+xw+xz,4(S_C)^2=yw+xw+xy,
4(S_D)^2=yz+xz+xy ・・・(3.1.11)
(6) 各面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの「三角形」としての「垂心」をそれぞれ
H_A,H_B,H_C,H_Dとすれば、「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^n (n≧2)にたいして
(→PH_A)=1/[4(S_A)^2]×[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)] ,
(→PH_B)=1/[4(S_B)^2]×[zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)]
(→PH_C)=1/[4(S_C)^2]×[yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)],
(→PH_D)=1/[4(S_D)^2]×[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]
・・・(3.1.12)
(7) 各面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの「三角形」としての「外心」をそれぞれ
O_A,O_B,O_C,O_Dとすれば、「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^n (n≧2)にたいして
(→PO_A)=1/[8(S_A)^2]×[y(z+w)(→PB)+z(y+w)(→PC)+w(y+z)(→PD)],
(→PO_B)=1/[8(S_B)^2]×[x(z+w)(→PA)+z(x+w)(→PC)+w(x+z)(→PD)],
(→PO_C)=1/[8(S_C)^2]×[x(y+w)(→PA)+y(x+w)(→PB)+w(x+y)(→PD)],
(→PO_D)=1/[8(S_D)^2]×[x(y+z)(→PA)+y(x+z)(→PB)+z(x+y)(→PC)] ・・・(3.1.13)
(8)「2次元の内接球面」の半径r 及び「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点P∈E^n (n≧3)にたいして
(→PI)=1/[(S_A)+(S_B)+(S_C)+(S_D)]
×[S_A(→PA)+(S_B)(→PC)+(S_C)(→PC)+(S_D)(→PD)] ・・・(3.1.14)
その半径rは
r=√[detJ(3)]/[2{(S_A)+(S_B)+(S_C)+(S_D)}] ・・・(3.1.15)
(9) 「七平方定理」
(2S_A)^2+(2S_B)^2+(2S_C)^2+(2S_D)^2=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2 ・・・(3.1.16)
(1)~(8)は求めて、(9)は確認してみよう。
4.
上記3.のことをこの「垂心四面体_第6例」について計算しよう。
(2)
(2.1.4) の yzw=xzw=xyw=(x^2)w ,また xyz=x^3 と、
(2.1.6)の detJ(3)=(x^2)(3w+x)=(x^2)[3d^2ーa^2] から
「垂心H]の「ベクトルによる重心座標表現」は任意の点P∈E^3にたいして
(→PH)=1/[(x^2)(3d^2ーa^2)]×[(x^2)w{(→PA)+(→PB)+(→PC)}+(x^3)(→PD)] )
=1/(3d^2ーa^2)[w{(→PA)+(→PB)+(→PC)}+x(→PD)]
=1/[2(3d^2ーa^2)]×[(2d^2ーa^2){→PA)+(→PB)+(→PC)}+(a^2)(→PD)] ・・・(4.1.1)
(3)「外心O]の「ベクトルによる重心座標表現」は(2.1.6)より
(detJ(3)-2yzw=x^2(3w+x)-2(x^2)w=x^2(w+x),(detJ(3)-2xzw=x^2(w+x),
(detJ(3)-2xyw=x^2(w+x),(detJ(3)-2xyz=x^2(3w+x)-2x^3=x^2(3w-x)だから
(3.1.9)は
(→PO)=1/[2detJ(3)][(detJ(3)-2yzw)(→PA)+(detJ(3)-2xzw)(→PB)]
+1/[2detJ(3)][(detJ(3)-2xyw)(→PC)+(detJ(3)-2xyz)(→PD)]
=1/[2(x^2)(3d^2ーa^2)]×[x^2(w+x){(→PA)+(→PB)+(→PC)}+x^2(3w-x)(→PD)]
=1/[2(3d^2ーa^2)]×[(w+x){(→PA)+(→PB)+(→PC)}+(3d^2-4x)(→PD)]
=1/[2(3d^2ーa^2)]×[d^2{(→PA)+(→PB)+(→PC)}+(3d^2-2a^2)(→PD)] ・・・(4.1.2)
☆ (2)(3)から直ちに(→PH)+(→PO)=(1/2)[(→PA)+(→PB)+(→PC)+(→PD)]
すなわち (1/2)[(→PH)+(→PO)]=(1/4)[(→PA)+(→PB)+(→PC)+(→PD)] ・・・(4.1.3)
「四面体のオイラー線の関係」が成り立っている。
(5)
x=(a^2)/2>0,d^2>(a^2)/3 だから
4(S_A)^2=zw+yw+yz=xw+xw+x^2=x(x+2w)
=x{x+2(d^2ーx)=x(2d^2-x)=x(4d^2-a^2)/2=(a^2)(4d^2-a^2)/4
4(S_B)^2=zw+xw+xz=xw+xw+x^2=x(x+2w),
4(S_C)^2=yw+xw+xy=xw+xw+x^2=x(x+2w) ゆえに
4(S_A)^2=4(S_B)^2=4(S_C)^2=x(4d^2-a^2)/2=(a^2)(4d^2-a^2)/4 ・・・(4.1.4)
d^2>(a^2)/3 から 4(S_A)^2=4(S_B)^2=4(S_C)^2=x(4d^2-a^2)/2>0 となり問題はない。
S_A=S_B=S_C=a√(4d^2-a^2)/4 ・・・(4.1.2)
4(S_D)^2=3x^2=3(a^2/2)^2=(3a^4)/4 > 0, S_D=√3a^2/4 ・・・(4.1.5)
(9) 七平方定理の確認をしよう。
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]=3x(x+2w)+3x^2
=6x(x+w)=3a^2×d^2=3(ad)^2 ・・・(4.1.6)
(∵ (S_D)^2=3x^2,4(S_A)^2=4(S_B)^2=4(S_C)^2=x(x+2w)と(1.1.5)のx+w=d^2)
一方 (ad)^2+(be)^2+(cf)^2=(ad)^2+(ad)^2+(ad)^2=3(ad)^2 ・・・(4.1.7)
ゆえに
(2S_A)^2+(2S_B)^2+(2S_C)^2+(2S_D)^2]=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2 で成立。
(8) 2F=S_A+S_B+S_C+S_D=3a√[(4d^2-a^2)]/4+√3(a^2)/4=(√3a/4)[√{3(4d^2ーa^2}+a]
・・・ (4.1.8)となるから
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現は。
(→PI)=(→PI)=1/[(S_A)+(S_B)+(S_C)+(S_D)]
×[S_A(→PA)+(S_B)(→PC)+(S_C)(→PC)+(S_D)(→PD)]
=(1/a√[√{3(4d^2-a^2)}+a]×[a√(4d^2-a^2){(→PA)+(→PB)+(→PC)}+√3a^2(→PD)]
=1/√3[√{3(4d^2-a^2)}+a]×[√(4d^2-a^2){(→PA)+(→PB)+(→PC)}+√3a(→PD)]
・・・(4.1.9)
内接球面の半径rは (2.1.6)から
r=√[detJ(3)]/2[(S_A)+(S_B)+(S_C)+(S_D)]
=(a^2)/2√[3d^2ーa^2]/[√3a/2{√{3(4d^2ーa^2)}+a]
=(a/√3)×√[3d^2-a^2]/[√{3(4d^2-a^2)}+a] ・・・(4.1.10)
r^2=(1/3)(a^2)(3d^2-a^2)/[√{3(4d^2-a^2}+a]^2 ・・・(4.1.11)
(6) x=(a^2)/2>0だから
(→PH_A)=1/[4(S_A)^2]×[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)]
=1/[x(x+2w)]×[xw(→PB)+xw(→PC)+x^2(→PD)]
=1/(x+2w)×[w(→PB)+w(→PC)+x(→PD)]
=2/(4d^2-a^2)[{d^2-(a^2)/2}(→PB)+{d^2-(a^2)/2}(→PC)+(a^2)/2(→PD)]
=1/(4d^2-a^2)[(2d^2-a^2){(→PB)+(→PC)}+(a^2)(→PD)]
すなわち
(→PH_A)=1/(4d^2-a^2)[(2d^2-a^2){(→PB)+(→PC)}+(a^2)(→PD)]
・・・(4.1.12)
同様にして
(→PH_B)=1/(4d^2-a^2)[(2d^2-a^2){(→PA)+(→PC)}+(a^2)(→PD)]
・・・(4.1.13)
(→PH_C)=1/(4d^2-a^2)[(2d^2-a^2){(→PA)+(→PB)}+(a^2)(→PD)]
・・・(4.1.14)
△ABCは1辺aの「正三角形」だからH_Dは△ABCの「重心」よって
(→PH_D)=1/3[(→PA)+(→PB)+(→PC)」のはずである。
(→PH_D)=1/[4(S_D)^2]×[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)]
=4/(3a^4)[x^2{(→PA)+(→PB)+(→PC)}]
=4/(3a^4)[(a^4)/4{(→PA)+(→PB)+(→PC)}]
=1/3[(→PA)+(→PB)+(→PC)]でO.K.
(7)
(→PO_A)=1/[2x(x+2w)]×[x(x+w)(→PB)+x(x+w)(→PC)+2xw(→PD)]
=1/2(x+2w)[((x+w)(→PB)+(x+w)(→PC)+2w(→PD)]
=1/(4d^2-a^2)[d^2(→PB)+d^2(→PC)+2{d^2-(a^2)/2}(→PD)]
=1/(4d^2-a^2)[d^2{(→PB)+(→PC)}+(2d^2-a^2)(→PD)]・・・(4.1.15)
同様に
(→PO_B)=1/(4d^2-a^2)[d^2{(→PA)+(→PC)}+(2d^2-a^2)(→PD)] ・・・(4.1.16)
(→PO_C)=1/(4d^2-a^2)[d^2{(→PA)+(→PB)}+(2d^2-a^2)(→PD)] ・・・(4.1.17)
O_Dは正三角形ABCの「重心」になるので、(→PO_D)=1/3[(→PA)+(→PB)+(→PC)]のはず。
(→PO_D)=2/[3a^4]×[(2x^2)(→PA)+(2x^2)(→PB)+(2x^2)(→PC)]
=[2/(3a^4)]×(a^4)/2[(→PA)+(→PB)+(→PC)]
=1/3[(→PA)+(→PB)+(→PC)] でO.K.
(4)「2次元外接球面」の半径をR(3)は(2.1.6)の detJ(3)=(x^2)[3d^2ーa^2] より
[R(3)]^2=(k^2)/4ー(xyzw)/(detJ(3))
=(a^2+d^2)/4-[(x^3)w]/[(x^2)(3d^2ーa^2)]
=(a^2+d^2)/4-xw/(3d^2ーa^2)
=[(a^2+d^2)(3d^2ーa^2)ーa^2(2d^2ーa^2)]/[4(3d^2ーa^2)]
=[3d^4+2(ad)^2-a^4-2(ad)^2+a^4]/[4(3d^2ーa^2)]
=(3d^4)/[4(3d^2ーa^2)]
[R(3)]^2=(3d^4)/[4(3d^2ーa^2)] ・・・(4.1.18)
ゆえに R(3)=(√3d^2)/[2√(3d^2ーa^2)] ・・・(4.1.19)
四面体の四線座標を利用した内心Iと傍心E_Dの重心座標ーその3 2009.02.16(月)
4.
例えば
(1)「内心I]では、内接円,または2次元の内接球面の半径をr>0とすれば
三角形では (α,β,γ)=(r,r,r)、四面体では(α,β,γ,δ)=(r,r,r,r)がそれぞれ
真の「三線座標」と「四線座標」である。その比を考えると、それぞれ
α:β:γ=1:1:1, α(4):β(4):γ(4):δ(4)=1:1:1:1となる。
(2)「重心G」では、「△ABC」のその真の「三線座標」は(α,β,γ)=(2S/3a,2S/3b,2S/3c)
その比は α:β:γ=1/a:1/b:1/c、「四面体ABCD」では、その真の「四線座標」は
(α,β,γ,δ)=(3V/4S_A,3V/4S_B,3V/4S_C,3V/4S_D)で、「四線座標」の比は
α:β:γ:δ=1/S_A:1/S_B:1/S_C:1/S_D ・・・(4.1.1)
(3)
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」を求めてみよう。
任意の点P∈E^nにたいし、その「ベクトルによる重心座標表現」を
(→PI)=κ(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(4.1.2) かつ
κ+λ+μ+ν=1・・・(4.1.3) とし、「内接球面」の半径をr(r>0)とする。
また「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
「内心I」から「△BCDの造る平面」、「△ACDの造る平面」、「△BDの造る平面」、
「△ABCの造る平面」へ降ろした「垂線」の足を順にI^A,I^B,I^C,I^Dとすれば
求める条件は
r=I(I^A)=I(I^B)=I(I^C)=I(I^D) ・・・(4.1.4)
このI(I^A)=α,I(I^B)=β,I(I^C)=γ,I(I^D)=δ だから(4.1.4)は
r=α=β=γ=δ ・・・(4.1.5) ここで[命題3.3]の(1)から
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν だから(4.1.5)は
r=(3V/S_A)κ=(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν ・・・(4.1.6) となり、
これをκ+λ+μ+ν=1・・・(4.1.3)のもと、5つの方程式で、5つの未知数κ,λ,μ,νとrを
解けばよい。
(4.1.6)にたいしていわゆる「加比の理」を用いれば、
r=(3V/S_A)κ=(3V/S_B)λ=(3V/S_C)μ=(3V/S_D)ν
=(3Vκ+3Vλ+3Vμ+3Vν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)=(3V)(κ+λ+μ+ν)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)
よって r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.1.7)
κ=S_A/(S_A+S_B+S_C+S_D)、λ=S_B/(S_A+S_B+S_C+S_D),
μ=S_C/(S_A+S_B+S_C+S_D),ν=S_D/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.1.8)
と解けた。これらを(4.1.2)に代入して、次の「定理4.2]が得られた。
「定理4.2]
「四面体ABCD」の2次元の「内接球面」の半径をr( r>0)とし「内心」をIとしたとき、
「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は 任意の点P∈E^n(ただし n≧3)
にたいして
(→PI)=[1/(S_A+S_B+S_C+S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_C)(→PC)+(S_D)(→PD)]
・・・(4.2.1)
その半径rは r=(3V)/(S_A+S_B+S_C+S_D)・・・(4.2.2)
detJ(3)=(6V)^2 だから (4.2.2)は
r=√[detJ(3)]/2(S_A+S_B+S_C+S_D)=√[detJ(3)]/4F ・・・(4.2.3)とも表現される。
☆ 同様に「角D内で△ABCで『傍接する』傍接球面」の「中心」を「E_D」で表せば。
「傍心E_D」の「ベクトルによる重心座標表現」は 任意の点P∈E^n(ただし n≧3)
にたいして
(→PE_D)=[1/(S_A+S_B+S_C-S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_C)(→PC)-(S_D)(→PD)]
・・・(4.2.4)
2F=S_A+S_B+S_C+S_D とおけば、
(→PE_D)=[1/2(F-S_D)]×[(S_A)(→PA)+(S_B)(→PB)+(S_C)(→PC)-(S_D)(→PD)]
そして、この傍接球面の半径r_Bは
r_D=(3V)/(S_A+S_B+S_C-S_D)=√[(detJ(3)]/2(S_A+S_B+S_C-S_D)
=√[detJ(3)]/4(F-S_D) ・・・(4.2.5)
などとなる。三角形の場合も容易に求まる。これらはまた、次回に示そう。
三角形の「三線座標」と「四面体」の「四線座標」(その2)と「内心I」「傍心E_D」の重心座標 2009.02.16(月)
「四面体」にたいして「2次元内接球面」の中心「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」と
その半径rの公式や、「傍接球面」の中心、「傍心E_D」のベクトルによる重心座標表現」と
その半径r_Dなどを求めるために、新たに「四面体」に関する「四線座標」も導入し、
三角形の「三線座標」と比較しながら同時に考察する。
3.
「四線座標」の導入
(1) 記号の導入:
三角形について:△ABCの面積をSとし、3辺 BC=a,CA=b,AB=cとおく。また頂点A,B,Cから
対辺BC,CA,ABに降ろした「垂線」の足を順にH_A,H_B,H_Cとする。辺BC,CA,ABをそれぞれ
「△ABC」の底辺と見たときの△ABCの「高さ」を順にh_A,h_B,h_Cとするとh_A=A(H_A),
h_B=B(H_B),h_C=C(H_C)となる。面積Sが,S=(1/2)a(h_A)=(1/2)b(h_A)=(1/2)c(h_C)
と書けるので、
h_A=(2S)/a ,h_B=(2S)/b,h_C=(2S)/c ・・・(3.1.1) である。
四面体について:「四面体ABCD」の「体積」をVとし,△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積を
順に S_A,S_B,S_C,S_D・・・(3.1.2)と書く。
また頂点A,B,C,Dから対辺の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCに
降ろした垂線の足を順にH_A,H_B,H_C,H_Dとおき、△BCD,△ACD,△ABD,△ABCを
それぞれ「四面体ABCD」の底面と見たときの高さを順に h_A,h_B,h_C,h_D ・・・(3.1.3)
とおく。さすれば h_A=A(H_A),h_B=B(H_B),h_C=C(H_C),h_D=D(H_D)・・・(3.1.4)
また、体積V=(1/3)(S_A)(h_A)=(1/3)(S_B)(h_B)=(1/3)(S_C)(h_C)=(1/3)(S_D)(h_D)から
h_A=(3V)/S_A ,h_B=(3V)/S_B,h_C=(3V)/S_C ,h_D=(3V)/S_D ・・・(3.1.5)
場合によっては △BCD=S_A ,△ACD=S_B,△ABD=S_C,△ABC=S_D ・・・(3.1.6)と略記する。
以後これらをずっと使用する。
(2)
[定義3.1] 四面体ABCDに関する「四線座標」の定義
四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。点Tから四面体ABCDの各面△BCD,△ACD,
△ABD,△ABCに降ろした垂線の足を順にT^A,T^B,T^C,T^D ・・・(3.1.7)とし、
α=点Tから面△BCDまでの距離=T(T^A),β=点Tから面△ACDまでの距離=T(T^B),
γ=点Tから面△ABDまでの距離=T(T^C),δ=点Tから面△ABCまでの距離=T(T^D) ・・・(3.1.8)
とおき、その符号は、次のように決める。
例えば点Tが「面BCDの造る平面」に関して、頂点Aと反対側にあるときは、α<0 と考える。・・・(3.1.9)
このようにして「四面体ABCD」を用いて、3次元空間E^3に「三線座標」を真似て「四線座標」が
導入できることが分かる。また、例えば面△ABC上の点Tに関しては、「四面体」での「四線座標」と
「△ABC」での「三線座標」の2通りが考えられる。このとき、「重心座標」のようには
「四線座標」が「三線座標」の「拡張」とはなってはいないので注意する必要がある。区別するときは、
「三線座標」は(α(3),β(3),γ(3))などと書き、「四線座標」の方は(α(4),β(4),γ(4),δ(4))
などで表すことにする。
点Tの「四線座標」の「一意性」は定かではないが、「四面体ABCD」に関する「重心座標」の
「一意性」とこれから述べる[命題3.2]以降によって、明らかになるだろう。
ーー「△ABC」に関する「三線座標」及び「四面体ABCD」に関する「四線座標」
と「重心座標」との関係ーー
[命題3.2]
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)
かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」,「λ≠1 ⇒ β=(3V/S_B)λ」
「μ≠1 ⇒ γ=(3V/S_C)μ」,「ν≠1 ⇒ δ=(3V/S_D)ν」・・・(3.2.1) が成立する。
(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
Tの「重心座標」を(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1とする。
κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつν≠1 ・・・(3.2.2)のときは
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V ・・・(3.2.3) が成立する。
(3) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
κ+λ+μ=1、「三線座標」を(α,β,γ)とする。
「κ≠1 ⇒ α=(2S/a)κ」, 「λ≠1 ⇒ β=(2S/b)λ」
「μ≠1 ⇒ γ=(2S/c)μ」 ・・・(3.2.4) が成立する。
(4) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
κ+λ+μ=1,「三線座標」を(α,β,γ)とする。
κ≠1 かつ λ≠1 かつ μ≠1 ・・・(3.2.5) のときは
aα+bβ+cγ=2S ・・・(3.2.6) が成立する
「証明」
(2)について:
まず(1)が成り立つとして(2)を証明する。
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν より、
(S_A)α=(3V)κ,(S_B)β=(3V)λ,(S_C)γ=(3V)μ,(S_D)δ=(3V)ν ・・・(3.2.7)
ゆえに
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=(3V)(κ+λ+μ+ν)=(3V)×1=3V
よって(3.2.3)が成り立つ。
(4)について:
まず(3)が成り立つとして(4)を証明する。
α=(2S/a)κ,β=(2S/b)λ,γ=(2S/c)μ より
aα=(2S)κ,bβ=(2S)λ,cγ=(2S)μ ・・・(3.2.8)
ゆえにaα+bβ+cγ=(2S)κ+(2S)λ+(2S)μ=(2S)(κ+λ+μ)=2S×1=2S
よって(3.2.6)が成り立つ。
(1)について:
それでは(1)を証明しよう。
点Tの「四面体ABCD」に関する「重心座標」(κ,λ,μ,ν)、κ+λ+μ+ν=1について
「 κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」を証明する。
κ≠1であるから T≠A となり(∵[系2.3])直線ATは「△BCDの造る平面」と1点T_Aで交わり、
[命題2.7]から (→T(T_A))=κ(→A(T_A)) となる。H_Aは頂点Aから下した垂線の足だった。
(ア)0<κ<1 のとき、直線AT上に3点 A,T,T_Aがこの順に並び、また線分A(H_A)が頂点Aからの
「垂線」として存在する。点Tから「△BCDの造る平面」に「垂線」を引きその足をT^Aとおく。
T(T^A)=α>0 である。T_A≠H_Aとしよう。△A(T_A)(H_A)∽△T(T_A)(T^A)となるから
⇒ A(T_A):T(T_A)= A(H_A):T(T^A) ・・・(3.2.9)となる。
(→T(T_A))=κ(→A(T_A))から A(T_A):T(T_A)=1:κ, T(T^A)=α,(3.1.5)から
A(H_A)=h_A=(3V)/S_A だから (3.2.9) は 1:κ=h_A:α
⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ ゆえに (3.2.1)の第1式が成立。
これで α=(3V/S_A)κ が証明された。T_A=H_A のときは(→T(T_A))=κ(→A(T_A))は
(→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(3.2.10)となり α=T(H_A) ,A(H_A)=h_A だから
(3.2.10)から α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となり、(3.2.1)の第1式が成立。
(イ)κ=0 のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))=(→0)からT=T_A∈「△BCDの造る平面」 ゆえにα=0
よって α=(3V/S_A)κは両辺とも「0」となり成立する。
(ウ)κ< 0のとき、四面体ABCDの面△BCDを底面、頂点Aを上方にもってきたとき、点Tは底面の△BCD
よりも下方にある。直線AT上には頂点A、交点T_A、点Tの順に上方から並んでいる。
α=T(T^A)<0である。T_A≠H_Aとしよう。△T(T^A)(T_A)∽△A(H_A)(T_A) である。
よって A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A) すなわち 1:(-κ)=h_A:(-α)
⇒ α=(h_A)κ=(3V/S_A)κ つまり α=(3V/S_A)κ
T_A=H_A のときは (→T(T_A))=κ(→A(T_A))は (→T(H_A))=κ(→A(H_A)) ・・・(3.2.11)
となる。α=T(H_A) A(H_A)=h_A から (-α)=(-κ)(h_A) これから
(ア)と同様に式がでる。
(エ) κ>1のとき (→T(T_A))=κ(→A(T_A))から点Tは「四面体ABCD」の上方にあり、
直線AT上に上方から点T、頂点A,交点T_Aの順に並んでいる。T_A≠H_Aとしよう。
△(T_A)A(H_A)∽△(T_A)T(T^A) ⇒ A(T_A):T(T_A)=A(H_A):T(T^A)
すなわち 1:κ=h_A:α よって α=κ(h_A)=(3V/S_A)κ となる。T_A=H_Aのときも
式がでる。
以上により、「κ≠1 ⇒ α=(3V/S_A)κ」が証明された。
(3.2.1)の他の式も同様である。
こうして、[命題3.2]の(1)が「証明」された。
[命題3.2]の (3),(4)が「三線座標」の場合で(3)はh_Aなどで (3.1.5)の代わりに(3.1.1)を使えば同様にできる。
([命題3.2]の「証明」終わり)
[命題3.3]
(1) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を
(κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。このとき
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_A)ν ・・・(3.3.1) が成立する。
(2) 四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3をとる。Tの「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。
このとき
(S_A)α+(S_B)β+(S_C)γ+(S_D)δ=3V ・・・(3.3.2) が成立する。
(3) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「重心座標」を(κ,λ,μ)かつ
κ+λ+μ=1、「三線座標」を(α,β,γ)とする。このとき
α=(2S/a)κ,β=(2S/b)λ,γ=(2S/c)μ ・・・(3.3.3) が成立する。
(4) △ABC⊆E^2(平面)とし、点T∈E^2をとる。Tの「三線座標」を(α,β,γ)とする。
このとき aα+bβ+cγ=2S ・・・(3.3.4) が成立する。
「証明」
(1) で κ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1 かつ ν≠1 および(3)でκ≠1 かつλ≠1 かつ μ≠1の場合は
[命題3.2]から(1)(2)(3)(4)は成り立つ。
そこで(1)では、
「κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1」・・・(3.3.5)のときに「証明」をすればよい。
また(3)では
「κ=1 または λ=1 または μ=1」 ・・・(3.3.6) のときに「証明」をすればよい。
(1)について:
κ=1 または λ=1 または μ=1 または ν=1 ・・・(3.3.5)とする。
点T∈E^3をとる。Tの「重心座標」を (κ,λ,μ,ν)かつ κ+λ+μ+ν=1,
「四線座標」を(α,β,γ,δ)とする。 そして κ=1とする。
(ア) T=A のときは、頂点A」の「重心座標」は (κ,λ,μ,ν)=(1,0,0,0)で(3.1.5)から
α=T(T^A)=h_A=(3V/S_A)、 κ=1だから α=(3V/S_A)κ がやはり成立する。
(イ) κ=1でT≠A とすると [系2.3]から (→AT)//「△BCDの造る平面」であり、
よって、またα=T(T^A)=h_A=(3V/S_A),κ=1だから α=(3V/S_A)κ が成立する。
(ウ) κ=1のとき、λ+μ+ν=0 で 「ベクトルによる重心座標表現」は
任意の点 P∈E^n(ただしn≧3)にたいし
(→PT)=(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(3.3.7)
となる。ここで もし λ≠1ならば[命題3.2]から β=(3V/S_B)λ が成立する。
そこで、さらにλ=1とすれば、Tの重心座標は(1,1,μ,ν) ,1+μ+ν=0 となる。
よって T≠Bである。[∵ Bの重心座標は (0,1,0,0) ] λ=1だから「系2.3」と同様にして
(→BT)//「△ACDの造る平面」となる。ゆえに β=T(T^B)=h_B=(3V/S_B)となる。λ=1なので
β=(3V/S_B)λが成立する。次にμ≠1ならばT≠Cで [命題3.2]からγ=(3V/S_C)μが成立する。
そこで
(エ)κ=1 かつ λ=1かつ μ=1としよう。するとκ+λ+μ+ν=1からν=-2 となる。
μ=1だから (→CT)//「△ABDの造る平面」となる。
よって γ=T(T^C)=h_C=3V/S_C そしてμ=1 なのでγ=(3V/S_C)μ が成立する。
そして ν=-2なのでν≠1であり、(→DT)//「△ABDの造る平面」とはならない。
ゆえに δ=(3V/S_D)ν が成立する。
以上により κ=1 かつ λ=1かつ μ=1かつν=-2のときも
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(3.3.1)が成立する。
(オ) この κ=λ=μ=1かつ ν=-2のときを図形的に考えてみよう。点Tは「四面体ABCD」に関して
どこにくるのか調べてみる。κ=λ=μ=1かつ ν=-2より 点Tの「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PT)=(→PA)+(→PB)+(→PC)-2(→PD) ・・・(3.3.7)だから 特に P⇒D とおくと
(→DT)=(→DA)+(→DB)+(→DC) ・・・(3.3.8) そこで△ABCの重心をG_D とおくと
G_D の「四面体ABCD」に関する「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PG_D)=1/3(→PA)+1/3(→PB)+1/3(→PC)+0×(→PD)・・・(3.3.9) 。G_Dの「四面体ABCD」
に関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3,0) 、△ABCに関する「重心座標」は(1/3,1/3,1/3)で
あって(3.3.9)で特にP=D とおいて (→DG_D)=1/3[(→DA)+(→DB)+(→DC)] ・・・(3.3.10)
これと(3.3.8)から (→DT)=3(→DG_D) ・・・(3.3.11)となる。ゆえに(→DT)はDから対面の
△ABCに向かってその重心G_Dを通り、DG_Dの長さを3倍にしたもので、Tは四面体ABCDの外部の所にある。
つまり D(G_D):(G_D)T=1:2 ・・・(3.3.12)となる。T_D=G_Dであり、 T(T^D)=δはδ<0である。
すなわち (→DT)は「△ABCの造る平面」とは平行にはならず、
T(T^D):D(H_D)=T(G_D):D(G_D)=(-2):1 ⇒ δ:h_D=(-2):1
⇔ δ=(h_D)×(-2) ・・・(3.3.13)
h_D=3V/S_D ,ν=-2だから (3.3.13)は δ=(3V/S_D)ν となる。
このようにして、κ=1から始めてλ,μ,νとやっていって、
α=(3V/S_A)κ,β=(3V/S_B)λ,γ=(3V/S_C)μ,δ=(3V/S_D)ν ・・・(3.3.1) が成立する。
よって他の場合も(3.2.2)は成立する。ゆえに(2),(4)も成立する。
([命題3.3]の「証明」終わり)
[命題3.4]
(1)四面体ABCD⊆E^3(3次元空間)とし、点T∈E^3の「重心座標」
(κ,λ,μ,ν),κ+λ+μ+ν=1 と「四線座標」(α,β,γ,δ)の間には[命題3.3]の(1)の
関係が成立し、1対1の対応がある。「四線座標」では、点が異なれば「四線座標」も異なる。
(2)
△ABC⊆E^2とし、点T∈E^2の「重心座標」(κ,λ.μ),κ+λ+μ=1 と「三線座標」(α,β,γ)の
間には[命題3.3]の(3)の関係が成立し、1対1の対応がある。「三線座標」では、点が異なれば
「三線座標」も異なる。
☆
最後に、「重心座標」、「三線座標」、「四線座標」ともその比さえ分かればよいときもある。
三角形の「三線座標」と「四面体」の「四線座標」(その1) 2009.02.16(月)
「三線座標」の考えを用いて、△ABCの「内心I」と∠A内の傍接円の中心E_A、
すなわち【傍心E_A】の「ベクトルによる重心座標表現」や、同様に∠B内の「傍心E_B」,
∠C内の「傍心E_C」、及び「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」も求めるために
「三線座標」について「準備」をする。と同時に「四面体」にたいして「2次元内接球面」の
中心「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」とその半径rの公式や、「傍接球面」の中心、
「傍心E_D」の「ベクトルによる重心座標表現」とその半径r_Dなどを求めるために、
新たに「四面体」に関する「四線座標」も導入し、三角形の「三線座標」と比較しながら
同時に考察する。
1.
三線座標の導入
△ABCを辺BCが底辺で頂点Aが上方にあるように平面上においておく。
まず△ABCの内部の点Tから辺BC,CA,ABに下した垂線の長さ、つまり「点Tと3つの直線との距離」
を考えてみる。点Tから直線BCまでの距離=α ,点Tから直線CAまでの距離=β ,
点Tから直線CAまでの距離=γ ...(1.1.1)
とおく。例えば点Tが「内心I」のとき、「内接円の半径」をrとすれば、
α=r ,β=r ,γ=r である。つまり「内心I」では (α,β,γ)=(r,r,r) ・・・(1.1.2)となる。
△ABCの内部の点に対してだけでなく、△ABCの「境界点」や
「外部」の点Tに対しても、点Tから直線BCまでの距離=α,点Tから直線CAまでの距離=β ,
点Tから直線CAまでの距離=γを次のように「拡張して」みる。
(1) 辺BC上に点Tがあり、点Tがそのいわゆる「内点」のとき、点Tから直線BCまでの距離=0だから,
点Tから直線BCまでの距離=α=0 とする。点Tから直線CAまでの距離=β ,点Tから直線ABまでの距離=γ は
普通に考えられるのでその値は「+」,[+」となる。
すなわち α=0 ,β>0 ,γ>0 である。特に 「直線BC上の点はすべて α=0」・・・(1.1.3)を満たす。
(2) 点Tが頂点Bであるとき、点Bから直線BCまでの距離=α=0,点Tから直線ABまでの距離=γ=0,
点Bから直線CAまでの距離=β>0 となるので (α,β,γ)=(0,β,0)となる。この場合のβを求めてみよう。
βは△ABCにおいて底辺をCA=bとしたときの 高さh_Bである。
(1/2)b(h_B)=S だから β=h_B=(2S)/b ・・・(1.1.4)となる。
ゆえに △ABCの頂点Bに対しては (α,β,γ)=(0,(2S)/b,0)・・・(1.1.5)となる。
(3) 点Tが三角形の「外部」にあり,辺BCに関して点Aと反対側にあり、かつ直線ACよりも左、
かつ直線ABよりも右側の「領域内D」にあるときは、点Tから直線BCまでの距離=αは
「通常の点Tと直線BCとの距離」に「-」の符号をつけたものとしてα<0と考えよう。また
「領域内D」の点Tは直線CAに関して「頂点Bと同じ側にある」ので,
点Tから直線CAまでの距離=通常の点Tと直線CAとの距離=β>0と考える。「領域内D」の点Tは
直線ABに関して 「頂点Cと同じ側にある」ので、点Tから直線CAまでの距離=γ>0 と考える。
こうして、「領域内D」の点Tにたいして (α,β,γ)=(「-」,「+」,「+」)・・・(1.1.6)となる。
α<0, β>0 ,γ>0 である。
(4) 点Tが直線ABよりも左、かつ直線BCよりも下の「領域E」内にあるときは、点Tは直線BCに関して
「頂点Aと反対側にある」ので、α<0,直線CAに関しては「頂点Bと同じ側にある」ので
点Tから直線CAまでの距離=β>0、そして直線ABに関して「頂点Cと反対側にある」ので
点Tから直線ABまでの距離=γ<0 と考えるのである。
こうして 点Tが直線ABよりも左、かつ直線BCよりも下の「領域E」内にあるときは
(α,β,γ)=(「-」,「+」,「-」) ・・・(1.1.7) α<0 ,β>0,γ<0 である。
(5) 図を描いてみれば分かるように α<0,β<0,γ<0 ⇔ (α,β,γ)=(「-」,「-」,「-」)と
なることはあり得ない。( α<0 かつβ<0の共通部分を描いておき、それと γ<0の所との
共通部分は空集合となってしまう。!)
この様にして次の[定義1.2]ができる。
[定義1.2]
△ABC⊆E^2(平面)とし、任意の点T∈E^2にたいして、
点Tから直線BCまでの距離=α ,点Tから直線CAまでの距離=β ,点Tから直線CAまでの距離=γ ・・・(1.2.1)
として、点Tにたいして定まる3つの実数の組 (α,β,γ)を点Tの「三線座標」とよぶ。
注意:この「三線座標」の「符号の組」と「△ABC」に関する「重心座標」の「符号の組」は
同じように対応する。
(ア)この様にして△ABCを使って平面E^2に座標が導入され、「境界線を除いた平面」は
「+」「-」の符号の組み合わせによってどの座標も0ではない、「七つの座標の組」に分けられる。
(イ) 境界線の「直線BCの方程式は α=0」、「境界線ABの方程式は γ=0」
よって その交点Bの三線座標は上記(2)から,(α,β,γ)=(0,β,0)=(0,(2S)/b,0) となる。
2.
ーーー「重心座標」と「△ABC」に関する「三線座標」及び「四面体ABCD」に関する「四線座標」との関係ーーー
[命題2.1]
△ABCの面積をS,3辺の長さをそれぞれBC=a、CA=b,AB=cとしておく。
△ABC⊆E^2 とし点T∈E^2に対する「重心座標」を(κ,λ,μ) ,κ+λ+μ=1 とし。
点Tの「三線座標」を(α,β,γ)とする。 このとき、次の等式が成立する。
(1) α=[(2S)/a]κ ・・・(2.1.1) ⇔ k=[a/(2S]α ・・(2.1.2)
(2) β=[(2S)/a]λ ・・・(2.1.3) ⇔ λ=[a/(2S]β ・・(2.1.4)
(3) γ=[(2S)/a]μ ・・・(2.1.5) ⇔ μ=[a/(2S]γ ・・(2.1.6)
(4) そして「三線座標 (α,β,γ)の間には 、等式
aα+bβ+cγ=2S ・・・(2.1.7) が成立する。
☆ [命題2.1]の「証明」及び「四線座標」での対応する等式を示すために準備をする。
[命題2.1]はあとの[命題3.2]で「四線座標」と同時にほぼ「証明」ができ、[命題3.3]にて「証明」が完成する。
[命題2.2]
(1)
四面体ABCDがあり、四面体ABCD⊆3次元空間E^3 とする。これにより3次元空間E^3内に
「重心座標(κ,λ,μ,ν),ただし κ+λ+μ+ν=1」が入る。
このとき、四面体ABCDの頂点Aを含み、底面の△BCDに平行な平面Lの方程式は
重心座標では、k=1 かつλ+μ+ν=0 となる。すなわち
L={(1,λ,μ,ν)|λ+μ+ν=0,λ,μ,ν は実数}となる。
(2)△ABCがあり、△ABC⊆平面E^2 とする。これにより2次元空間E^2内に
「重心座標(κ,λ,μ),ただし κ+λ+μ=1」が入る。
このとき、△ABCの頂点Aを含み、底辺BCに平行な直線Lの方程式は
重心座標では、k=1 かつλ+μ=0 となる。すなわち
L={(1,λ,μ)|λ+μ=0,λ,μ は実数}となる。
「証明」
M={(1,λ,μ,ν)|λ+μ+ν=0,λ,μ,ν は実数}とおき、M=Lを示そう。まず
Aの重心座標は(1,0,0,0)であるから、A∈M ,またA∈L。そこでT≠A かつ T∈Mをとる。
すると「ベクトルによる重心座標表現」は任意の点P∈E^nにたいして
(→PT)=1×(→PA)+λ(→PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ・・・(2.2.1),λ+μ+ν=0・・・(2.2.2)
P ⇒Aとして (→AT)=λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD) (2.2.2)からのν=-(λ+μ)を
代入して (→AT)=λ(→AB)+μ(→AC)ー(λ+μ)(→AD)=λ(→DB)+μ(→DC)
つまり (→AT)=λ(→DB)+μ(→DC) ・・・(2.2.3),(→DB),(→DC)は一次独立でそれらの
一次結合λ(→DB)+μ(→DC)は平面BCDに平行である。
よって (2.2.3)から (→AT)//平面BCD ⇒ T∈L これで M ⊂Lが示された。
逆に T≠A かつT∈Lをとる。Tは点Aを通って「△BCDの造る平面」に平行な平面上にある。
そこで(→AT)を考えれば(→AT)//「△BCDの造る平面」⇒(→AT)=λ(→DB)+μ(→DC)
・・・(2.2.3) となる実数λ、μが一意的に定まる。これから
任意の点P∈E^nにたいし(→PT)-(→PA)=λ(→PB)+μ(→Pc)ー(λ+μ)(→PD)
つまり(→PT)=(→PA)+λ(→PB)+μ(→Pc)ー(λ+μ)(→PD)そこで ν=ー(λ+μ)とおけば
k=1 かつλ+μ+ν=0 で(→PT)=(→PA)+λ(→PB)+μ(→Pc)+ν(→PD)
となりT∈Mがいえ L⊂M となった。よってL=M
(2)も同様にできる。
([命題2.2]の「証明」終わり)
[系2.3]
[命題2.2]より
(1) 四面体ABCDに関して、
点Tの重心座標(κ,λ、μ,ν),κ+λ+μ+ν=1が、κ≠1 ・・・(2.3.1)
⇔(→AT)が△BCDの造る平面に平行でない
⇔直線ATは△BCDの造る平面と交わる
(2)△ABCに関して
点Tの重心座標((κ,λ、μ),λ+μ+ν=1が、κ≠1 ・・・(2.3.2)
⇔(→AT)が直線BCに平行でない
⇔直線ATは直線BCと交わる
☆「注意]:四面体ABCDの頂点Aの重心座標は(1,0,0,0)だから、
点Tの重心座標(κ,λ、μ,ν)が κ≠1 ⇒ T≠Aとなる。
同様に△ABCに関する点Tの重心座標((κ,λ、μ)が κ≠1 ⇒ T≠A となる。
◎点Aと異なる点T∈E^3をとり、直線ATを考えてこれが△BCDの造る平面と交わったとき、
その点をT_Aとし、点Tと点T_Aの2つの点の重心座標の間の関係を調べたい。
直線ATが△BCDの造る平面と交わる条件は κ≠1 である。△ABCでも同様である。
それで、この後もよく使用する簡単だが、重要な[命題2.4]を用意しておく。
[命題2.4]
(1)「四面体ABCD」⊆E^3 とし、点T∈E^3の「四面体ABCDに関する重心座標」を
(κ,λ,μ,ν) ,κ+λ+μ+ν=1 ・・・(2.4.1)とし、頂点Aの対面△BCD上の
点T_Aの「△BCDに関する『重心座標』を(l,m,n),l+m+n=1 ・・・(2.4.2)」と
したとき、
ある実数tがあって 点Tと点T_Aとの間に
(→AT)=(1-t)(→A(T_A)) ・・・(2.4.3)が成立しているとする。
⇒ t=κ(カッパ) 、(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ・・・(2.4.4)
λ=(1-κ)l ,μ=(1-κ)m ,ν=(1-κ)n ・・・(2.4.5)
(2)△ABC⊆E^2 とし、点T∈E^2の「△ABCに関する重心座標」を
(κ,λ,μ) ,κ+λ+μ=1 ・・・(2.4.6)とし、直線BC上の点T_Aの
「1次元単体辺BCに関する『重心座標表現』を(l,m)、ただし l+m=1・・(2.4.7)」
としたとき、( T_Aは辺BCをm:lの比に分ける点ということ。ただしl+m=1)
ある実数tがあって 点Tと点T_Aとの間に
(→AT)=(1-t)(→A(T_A)) ・・・(2.4.8)が成立しているとする。
⇒ t=κ(カッパ) ,(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ・・・(2.4.9)
λ=(1-κ)l ,μ=(1-κ)m ・・・(2.4.10)
「証明」
(1) 点Tの「四面体ABCD」に関する「重心座標」が(κ,λ,μ,ν) ,κ+λ+μ+ν=1
だから 任意の点P∈E^n (ただしn≧3)にたいして「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PT)=κ(→PA)+λ(PB)+μ(→PC)+ν(→PD) ,κ+λ+μ+ν=1 ・・・(2.4.11)
Pは任意の点だから特にP⇒Aとして (→AT)=λ(AB)+μ(→AC)+ν(→AD) ・・・(2.4.12)
また T_Aの「△BCD」に関する「重心座標」が(l,m,n),l+m+n=1だから
任意の点P∈E^nにたいして、
(→P(T_A))=l(→PB)+m(→PC)+n(→PD) ,l+m+n=1。 P⇒Aとして
(→A(T_A))=l(→AB)+m(→AC)+n(→AD) ,l+m+n=1 ・・・(2.4.13)
(2.4.12),(2.4.13)を条件(2.4.3)に代入して
λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD)=(1-t){l(→AB)+m(→AC)+n(→AD)}
⇔ λ(→AB)+μ(→AC)+ν(→AD)=(1-t)l(→AB)+(1-t)m(→AC)+(1-t)n(→AD)
(→AB),(→AC),(→AD)は一次独立 だから
λ=(1-t)l ,μ=(1-t)m ν=(1-t)n ・・・(2.4.14)を得る。
3式を加えて λ+μ+ν=(1-t)(l+m+n)=(1-t)×1=1-t ・・・(2.4.15)
一方 κ+λ+μ+ν=1から λ+μ+ν=1-κ よって (2.4.15)⇔1-κ=1-t ⇔t=κとなり
(2.4.14)は λ=(1-κ)l ,μ=(1-κ)m ,ν=(1-κ)n となる。
(2)も同様である。
点Tの「△ABC」に関する「重心座標」が(κ,λ,μ) ,κ+λ+μ=1
だから 任意の点P∈E^n (ただしn≧2)にたいして「ベクトルによる重心座標表現」は
(→PT)=κ(→PA)+λ(PB)+μ(→PC) ,κ+λ+μ=1 ・・・(2.4.16)
P⇒ Aとして (→AT)=λ(→AB)+μ(→PC) ・・・(2.4.17)
また T_Aの「辺BC」に関する「重心座標」が(l,m),l+m=1だから
任意の点P∈E^nにたいして、T_Aの「辺BC」に関する「ベクトルによる重心座標表現」は
(→P(T_A))=l(PB)+m(→PC) ,l+m=1。 P⇒Aとして
(→A(T_A))=l(→AB)+m(→AC) ,l+m=1 ・・・(2.4.18)
(2.4.17)(2.4.18)を条件(2.4.8)に代入して
λ(→AB)+μ(→AC)=(1-t){l(→AB)+m(→AC)}
⇔ λ(→AB)+μ(→AC)=(1-t)l(→AB)+(1-t)m(→AC)
(→AB),(→AC) は一次独立 だから
λ=(1-t)l ,μ=(1-t)m ・・・(2.4.19)を得る。
2式を加えて λ+μ=(1-t)(l+m)=(1-t)×1=1-t ・・・(2.4.20)
一方 κ+λ+μ=1から λ+μ=1-κ よって (2.4.20)⇔ 1-κ=1-t ⇔t=κとなり
(2.4.19)は λ=(1-κ)l ,μ=(1-κ)m となる。
([命題2.4]の「証明」終わり)
このとき、
[系2.5]
[命題2.4」と同じ条件のもと、
(1) κ≠1 ならば l=λ/(1ーk),m=μ/(1ーk),n=ν/(1ーk)
すなわち κ≠1 ならば l=λ/(λ+μ+ν),m=μ/(λ+μ+ν),n=ν/(λ+μ+ν) ・・・(2.5.1)
(2) κ≠1 ならば l=λ/(1ーk),m=μ/(1ーk)
すなわち κ≠1 ならば l=λ/(λ+μ),m=μ/(λ+μ) ・・・(2.5.2)
[命題2.6]
(1)「四面体ABCD」に関する点T,T≠Aの「ベクトルによる重心座標表現」が
点P∈E^nにたいして(→PT)=κ(→PA)+λ(PB)+μ(→PC)+ν(→PD) かつ
κ+λ+μ+ν=1・・・(2.6.1) とし、直線ATと「△BCDの造る平面」とが1点で交わるとする。
その交点をT_Aとすれば、(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ・・・(2.6.2)となる。
T_Aの「△BCD」に関する「ベクトルによる重心座標表現」は、
(→P(T_A))=1/(λ+μ+ν)[λ(PB)+μ(→PC)+ν(→PD)] となり、
「△BCD」に関する「重心座標」は(λ/(λ+μ+ν),μ/(λ+μ+ν),ν/(λ+μ+ν))・・・(2.6.3)
となる。
(2)「△ABC」に関する点T,T≠Aの「ベクトルによる重心座標表現」が
点P∈E^nにたいして (→PT)=κ(→PA)+λ(PB)+μ(→PC),κ+λ+μ=1 ・・・(2.6.4)
とし、直線ATと直線BCが1点で交わるとする。その交点をT_Aとすれば、
(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ・・・(2.6.5)となる。T_Aの「辺BC」に関する
「ベクトルによる重心座標表現」は、
(→P(T_A))=1/(λ+μ)[λ(→PB)+μ(→PC))] となり、「辺BC」に関する「重心座標」は
(λ/(λ+μ),μ/(λ+μ))となる。
「証明」
(1)直線ATと「△BCDの造る平面」とが1点T_Aで交わっているとあるから、κ≠1である。(∵[系2.3])
よって 「命題2.4]と[系2.5]から明らかである。
(2)直線ATと直線BCが1点T_Aで交わているとあるから、κ≠1である。(∵[系2.3])
よって 「命題2.4]と[系2.5]から明らかである。
([命題2.6]の「証明」終わり)
[命題2.7]
[命題2.6]と同じ条件のもとで、点Tの重心座標について
κ≠1ならば (→TT_A)=κ(→A(T_A)) となる。・・・(2.7.1)
「証明」
(→AT)=(1-κ)(→A(T_A)) ・・・(2.6.2),(2.6.4)から
(→TT_A)=(→AT_A)-(→AT)=(→AT_A)-(1-κ)(→A(T_A))=κ(→A(T_A))
すなわち (→TT_A)=κ(→A(T_A)) これは κ≠1のときになりたつ。
[注意]:κ=1のときはT≠Aであっても、「系2.3]から直線AT//直線BC,または直線AT//「△BCDの造る平面」と
なることに注意せよ。
---三角形の三線座標と四面体の四線座標(その2)と内心I,傍心E_Dの重心座標 ーーに続くーーー
三角形の傍心・内心についての等式_追加版 2009.02.16(月)
前回のBlogでは△ABCに対して、傍心・内心の「ベクトルによる重心座標表現」と
その半径を与え、種々の等式を証明した。「前回で書き残した等式」がまだ少しあるので
それを紹介し、証明しておく。
0.
[命題0.1]
△ABCにおいてBC=a,CA=b,AB=c ,2s=a+b+c とおく。
角 A/2 の正接・余弦・正弦の2乗をs,a,b,c つまり 3辺a,b,cで次のように
表すことができる。
(1) tan^2(A/2)=(s-b)(s-c)/[s(s-a)] ・・・(0.1.1)
(2) cos^2(A/2)=s(s-a)/(bc) ・・・(0.1.2)
(3) sin^2(A/2)=(s-b)(s-c)/(bc) ・・・(0.1.3)
「証明」
(1)について:前回のBLogの[補題2.2]から
tan(A/2)=r/(s-a) であった。r=S/s とHeron(ヘロン)の公式
S^2=s(s-a)(s-b)(s-c)により
tan^2(A/2)=(S/s)^2/(s-a)^2=[s(s-a)(s-b)(s-c)]/[s(s-a)]^2
=[(s-b)(s-c)]/[s(s-a)]
(2)について:
tan^2(A/2)が求まったので、お決まりの cos^2(A/2)=1/[1+tan^2(A/2)]を使って求める。
1+tan^2(A/2)=1+(s-b)(s-c)/[s(s-a)]=[s(s-a)+(s-b)(s-c)]/[s(s-a)]
ところが s(s-a)+(s-b)(s-c)
=2s^2-(a+b+c)s+bc
=2s^2-2s×s+bc=bc(∵ 2s=a+b+c)
よって 1+tan^2(A/2)=bc/[s(s-a)]
ゆえに cos^2(A/2)=1/[1+tan^2(A/2)]=[s(s-a)]/bc
(3)について:
sin^2(A/2)=tan^2(A/2)×cos^2(A/2)=[(s-b)(s-c)/s(s-a)]×[s(s-a)]/bc
=[(s-b)(s-c)]/bc
([命題0.1]の「証明」終わり)
[命題0.2]
△ABCにおいてその面積をS,BC=a,CA=b,AB=c,△ABCの頂点Aから辺BCに降ろした垂線の足をH_A、
頂点Bから対辺のCAに降ろした垂線の足をH_B,頂点Cから対辺のABに降ろした垂線の足をH_Cとし,
h_A=A(H_A) ,h_B=B(H_B),h_C=C(H_C) とおけば
1/(h_A)+1/(h_B)+1/(h_C)=1/r ・・・(0.2.1)
「証明」
証明は極めて簡単である。S=(1/2)a(h_A)=(1/2)b(h_B)=(1/2)c(h_C) から
1/(h_A)=a/(2S) ,1/(h_B)=b/(2S) ,1/(h_C)=c/(2S)
また r=S/s=(2S)/(2s)=(2S)/(a+b+c)⇒ 1/r=(a+b+c)/(2S)
ゆえに 1/(h_A)+1/(h_B)+1/(h_C)=a/(2S)+b/(2S)+c/(2S)
=(a+b+c)/(2S)=1/r
すなわち 1/(h_A)+1/(h_B)+1/(h_C)=1/r
([命題0.2]の「証明」終わり)
[命題0.3]
∠Aの二等分線と辺BCとの交点をDとし、AD=f_Aで表すことにし、
同様に∠Bの二等分線と辺CAとの交点をEとし、BE=f_B、∠Cの二等分線と辺CAとの交点をFとし、
CF=f_Cとすれば、
(1) (f_A)^2=[bc(a+b+c)(b+cーa)]/(b+c)^2
=[4bcs(s-a)]/(b+c)^2 ・・・(0.3.1)
⇔ f_A=√[bc(a+b+c)(b+cーa)]/(b+c)=2√[bcs(sーa)]/(b+c)
(2) (f_B)^2=[ca(a+b+c)(c+aーb)]/(c+a)^2
=[4cas(s-b)]/(c+a)^2 ・・・(0.3.2)
⇔ f_B=√[ca(a+b+c)(c+aーb)]/(c+a)=2√[cas(sーb)]/(c+a)
(3) (f_C)^2=[ab(a+b+c)(a+bーc)]/(a+b)^2
=[4abs(s-c)]/(a+b)^2 ・・・(0.3.3)
⇔ f_C=√[ab(a+b+c)(a+bーc)]/(a+b)=2√[abs(sーc)]/(a+b)
(4)
(f_A)(f_B)(f_C)=8(abcs)S/[(b+c)(c+a)(a+b)]
=8(abcrs^2)/[(b+c)(c+a)(a+b)] ・・・(0.3.3)
「証明」
(1)を証明すれば(2)(3)も同様であるので、(1)と(4)を証明しよう。
(1)について:ベクトルを使おう。
f_A=AD。点Dは∠Aの二等分線と辺BCとの交点だから
BD:DC=AB:AC=c:b よって(b+c)(→AD)=b(→AB)+c(→AC)
よって (b+c)^2(f_A)^2=(b+c)^2|(→AD)|^2=|b(→AB)+c(→AC)|^2 ここで
|b(→AB)+c(→AC)|^2=b^2|(→AB)|^2+c^2|(→AC)|^2+2bc((→AB),(→AC))
=(bc)^2+(bc)^2+2bc×(c^2+b^2ーa^2)/2
=2(bc)^2+bc(c^2+b^2ーa^2)
=bc{2bc+(c^2+b^2)-a^2}=bc[(b+c)^2-a^2]
=bc(a+b+c)(b+cーa)=4bcs(sーa)
ゆえに (b+c)^2(f_A)^2=bc(a+b+c)(b+cーa)=4bcs(sーa)
これより(0.3.1)が導かれる。
(4)
[(f_A)(f_B)(f_C)]^2
=[4bcs(s-a)]/(b+c)^2×[4cas(s-b)]/(c+a)^2
×[4abs(s-c)]/(a+b)^2
=64(abcs)^2×[s(s-a)(s-b)(s-c)]/[(b+c)(c+a)(a+b)]^2
=64(abcs)^2×(S^2)/[(b+c)(c+a)(a+b)]^2
ゆえに (f_A)(f_B)(f_C)
=8(abcs)S/[(b+c)(c+a)(a+b)]
=8(abcrs^2)/[(b+c)(c+a)(a+b)] (∵ S=rs )
([命題0.3]の「証明終わり)
[命題0.4] 最後に△ABCにおいて辺BCの中点をMとして、中線の長さm_A=AMをa,b,c
などで表しておこう。
(m_A)^2=[2b^2+2c^2-a^2]/4=[b^2+c^2+2bccosA]/4 ・・・(0.4.1)
「証明」パップス(またはパッポス)の中線定理
AB^2+AC^2=2(AM^2+BM^2)⇔c^2+b^2=2{(m_A)^2+(a/2)^2}⇔ (m_A)^2=[c^2+b^2/2ー(a^2/4)]
⇔ (m_A)^2=[(c^2+b^2)/2ー(a^2/4)]=[2b^2+2c^2-a^2]/4 ここで b^2+c^2-a^2=2bccosA
よって (m_A)^2=[b^2+c^2+(b^2+2c^2-a^2)]/4=[b^2+c^2+2bccosA]/4
([命題0.4]の「証明」終わり)
三角形の傍心・内心及びその半径と諸公式_2009.02.08(日)
△ABCに対して、∠A内の辺BCで傍接する傍接円の「ベクトルによる重心座標表現」を前回のBlogで与えた。
その中心をE_Aとした。同様に∠Bの二等分線と∠Bの二つの外角の二等分線は1点E_Bで交わり傍接円E_Bが、
∠Cの二等分線と∠Cの二つの外角の二等分線は1点E_Cで交わり傍接円E_Cができる。
そこでこの3つの傍接円E_A,E_B,E_Cの半径を順にr_A,r_B,r_Cとする。また内接円の半径をrとし、
△ABCの面積をSとする。前回のことから次の事が言える。
1.
[命題1.1]
△ABCに対して3辺の長さを BC=a,CA=b, AB=c とおく。
そのとき、それぞれ「傍心E_A」,「傍心E_B」,「傍心E_C」の「ベクトルによる重心座標表現」は
次のようになる。 △ABC⊆E^2⊆E^mとし、任意の点P∈E^m (m≧2)にたいして、
(→PE_A)={-a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(-a+b+c) ・・・(1.1.1)
(→PE_B)={a(→PA)ーb(→PB)+c(→PC)}/(a-b+c) ・・・(1.1.2)
(→PE_C)={a(→PA)+b(→PB)-c(→PC)}/(a+b-c) ・・・(1.1.3)
これは確かに△ABCに関する「ベクトルによる重心座標表現」である。
また、内接円の中心をIで表し、内接円自体も「内接円I]とよぶことにすると
[命題1.2]
△ABCの面積をS、その3辺の長さをBC=a,CA=b, AB=c とおく。またa+b+c=2s・・・(1.2.1)
とし、内接円の半径をrとする。
このとき、「内心I」の「ベクトルによる重心座標表現」は次のようになる。
△ABC⊆E^2⊆E^mとし、任意の点P∈E^m (m≧2)にたいして、
(→PI)={a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(a+b+c) ・・・(1.2.1)
また 半径rは r=2S/(a+b+c) ⇔ r=S/s ⇔ S=rs ・・・(1.2.2)
となる。
[注意]:[命題1.2]は既知としておく。(1.2.1)が角の二等分線と辺の関係から導かれ、(1.2.2)が
△ABCを「内心I]で3つの三角形△IBC,△ICA,△IABに分けたとき、3つの面積の和=△ABCの面積=S
から出ることはよいだろう。受験生には(1.2.1),(1.2.2)は必須であろう。
さて、「内接円I」の半径rは(1.2.2)のようになったが、「傍接円E_A,E_B ,E_C」の半径に
ついては次のようになる。
[命題1.3]
△ABCの面積をS、その3辺の長さを BC=a,CA=b, AB=c とおく。またa+b+c=2s・・・(1.3.1)
とおく。
半径 r_Aは r_A=2S/(-a+b+c) ⇔ r_A=S/(s-a) ⇔ S=(r_A)(s-a) ・・・(1.3.2)
半径 r_Bは r_B=2S/(a-b+c) ⇔ r_B=S/(s-b) ⇔ S=(r_B)(s-b) ・・・(1.3.3)
半径 r_Cは r_C=2S/(a+b-c) ⇔ r_C=S/(s-c) ⇔ S=(r_C)(s-c) ・・・(1.3.4)
となる。
したがって r_A,r_B,r_Cはみな、rよりも大きい。
◎ [命題1.3]の「証明」は [以下の[命題1.3]を拡張した[命題2.4]の中で]行われる。しばらく辛抱して欲しい。
なお a+b+c=2s だから b+c-a=2s-2a=2(sーa) などから
s-a=(b+c-a)/2>0 , s-b=(c+a-b)/2>0 ,s-c=(a+b-c)/2>0 と
なっている事を注意しておく。
この[命題1.3」からすぐ、次の[公式1.4]がでる。
[公式1.4]
△ABCにたいしてその面積をS,r,r_A,r_B,r_Cは上記のとおりとする。
このとき、
1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)=1/r ・・・(1.4.1)
「◎実は「四面体」の場合は 「傍接球面」が4つできて、このときは
1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)+1/(r_D)=2/r ・・・(☆)となる。
これはまた次回とする。」
[公式1.4]の「証明」
[命題1.3]から r_A=S/(s-a) ⇒ 1/(r_A)=(s-a)/S
r_B=S/(s-b) ⇒ 1/(r_B)=(s-b)/S
r_C=S/(s-c) ⇒ 1/(r_C)=(s-c)/S
よって 1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)={(s-a)+(s-b)+(s-c)}/S={3s-(a+b+c)}/S
=(3s-2s)/S=s/S そして (1.2.2)から 1/r=s/S
したがって 1/(r_A)+1/(r_B)+1/(r_C)=1/r
([公式1.4]の「証明」終わり)
[公式1.5]
△ABCにたいしてその面積をSとし,s,r,r_A,r_B,r_Cは上記のとおりとする。
このとき 「内接円」の半径r と「傍接円」の半径 r_A,r_B,r_C は3辺の長さ
a,b,cを用いて表せる。ここに 2s=a+b+c とする。
(1) r=√[(s-a)(s-b)(s-c)]/s] = (1/2)√[(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)/(a+b+c)] ・・・(1.5.1)
(2) r_A=√[s(s-b)(s-c)]/(s-a)]=(1/2)√[(a+b+c)(c+a-b)(a+b-c)/(b+c-a)]
r_B=√[s(s-c)(s-a)]/(s-b)]=(1/2)√[(a+b+c)(a+b-c)(b+c-a))/(c+a-b)]
r_C=√[s(s-a)(s-b)]/(s-c)]=(1/2)√[(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)/(a+b-c)] ・・・(1.5.2)c
[公式1.5]の「証明」
ヘロンの公式 S^2=s(s-a)(s-b)(s-c) を使う。
(1)は rs=S ⇒ r^2=(S^2)/(s^2)=[s(s-a)(s-b)(s-c)]/(s^2)=[(s-a)(s-b)(s-c)]/s
⇔ r=√[(s-a)(s-b)(s-c)]/s]
(2)は [命題1.3]の(1.3.2)から
(r_A)^2=(S^2)/(s-a)^2=[s(s-a)(s-b)(s-c)]/(s-a)^2=[s(s-b)(s-c)]/(s-a)
⇔ r_A=√[s(s-b)(s-c)]/(s-a) となって証明された。
([公式1.5]の「証明」終わり)
[ 公式1.6] ついでに △ABCの「外接円」の半径Rを3辺の長さで表しておく。
R=abc/√[(a+b+c)(b+a-c)(c+a-b))(a+b-c)] ・・・(1.6.1)
[ 公式1.6]の「証明」
よく知られた 公式 S=abc/4R すなわち R=abc/4Sと ヘロンの公式
S=√[s(s-a)(s-b)(s-c)]=√[(a+b+c)(b+a-c)(c+a-b)(a+bーc)]/4
を使えばよい。
([公式1.6]の「証明」終わり)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
2.
[命題1.3]を証明するために、いくつか準備をする。
[補題2.1]
△ABCの「内接円I」と辺BC,辺CA,辺ABとの接点を順にL,M,Nとおく。
2s=a+b+cとする。このとき次のことが成り立つ。
AM=AN=s-a , BN=BL=s-b ,CL=CM=s-c ・・・(2.1.1)
「証明」
AM=AN ,BN=BL,CL=CM だからAM=AN=x ,BN=BL=y ,CL=CM=z とおいて
x,y,zの連立方程式をたてて、x,y,zを求める。
x+y=c ,y+z=a,z+x=b ・・・(2.1.2) この3式を加えて
2(x+y+z)=a+b+c=2s⇒x+y+z=s ・・・(2.1.3)
(2.1.3)と(2.1.2)から順に z=sーc,x=s-a ,y=s-b
よって証明された。
([補題2.1]の[証明」終わり)
◎ なお [補題2.1]はよく知られたことである。
次に
[補題2.2]
△ABCについて[補題2.1]と同じ記号を使う
tan(A/2)=r/(s-a) ,tan(B/2)=r/(s-b) ,tan(C/2)=r/(s-c) ・・・(2.2.1)
「証明」
tan(A/2)=r/(s-a)だけ示そう。△ANIは∠ANI=90° の直角三角形で∠IAN=A/2
そして[補題2.1]から 辺AN=s-a ,NI=r (内接円の半径) よって tan(A/2)=r/(s-a)
([補題2.2]の[証明」終わり)
[計算補題2.3]
△ABCについてその面積をS,BC=a,CA=b,AB=c,2s=a+b+c,内接円の半径をrとする。
このとき
(s-a)(s-b)-r^2=(cr^2)/(s-c) ・・・(2.3.1)
「証明」
ヘロンの公式と r=S/sを使う。
S^2=s(s-a)(s-b)(s-c) だから (s-a)(s-b)=S^2/{s(s-c)} よって
(s-a)(s-b)-r^2=(S^2)/{s(s-c)}-(S/s)^2=(S^2)×{s-(s-c)}×1/{(s^2)(s-c)}
=c{(S/s)^2}/(s-c)=(cr^2)/(s-c)
([計算補題2.3]の「証明」終わり)
◎[補題2.1]と[補題2.2] は「内心I]の方からでてくる性質であった。
次に「傍接円」の方からの性質を述べる。
[命題2.4]
△ABCにたいし BC=a,CA=b,AB=c,2s=a+b+c,内接円の接点を[補題2.1]のように
L,M,Nとしておく。
また「傍接円E_A」を考え、直線ABとの接点をD,直線ACとの接点を点Eとおく。
DE_A=r_A である。このとき、
BD=s-c ,CE=s-b・・・(2.4.1) ,r_A=S/(sーa) ⇔ S=(r_A)(s-a)・・・(2.4.2)
また r_A=(s-b)(s-c)/r⇔rr_A=(s-b)(s-c)・・・(2.4.3) となる。
「証明」
まず D(E_A)=r_A に注意。 BD=X とおく。Xと r_A の連立方程式を作り、それを解く。
(1) ∠CBD=180°-B だから ∠DB(E_A)=∠CBD/2=90°ーB/2
よって 直角三角形BD(E_A)において ∠B(E_A)D=B/2 ・・(2.4.3.*) ← ここがポイントである。
ゆえに tan(B/2)=BD/D(E_A)=X/(r_A) つまり tan(B/2)=X/(r_A) ・・・(2.4.4)
[補題2.2]の(2.2.1)から tan(B/2)=r/(s-b)
よって、まず X/(r_A)=r/(s-b) ・・・(2.4.5) の等式を得る。
(2) 次に
直角三角形AD(E_A)では、∠DA(E_A)=A/2 ,AD=AB+BD=c+X だから
tan(A/2)=(r_A)/(X+c) これと [補題2.2]の(2.2.1)から tan(A/2)=r/(s-a)
よって (r_A)/(X+c)=r/(s-a) ・・・(2.4.6) の等式を得る。
(3) そこで
(2.4.5)×(2.4.6)として r_Aを消去して、
X/(X+c)=(r^2)/[(s-a)(s-b)] 逆数をとり (X+c)/X=(s-a)(s-b)/(r^2)
⇔ 1+c/X=(s-a)(s-b)/(r^2) ⇔ c/X=[(s-a)(s-b)-(r^2)]/(r^2) ・・・(2.4.7)
ここで[計算補題2.3]より (s-a)(s-b)-(r^2)=(cr^2)/(s-c) これを(2.4.7)に
代入して c/X=[(cr^2)/(s-c)]/(r^2)=c/(s-c)
したがって X=s-c ・・・(2.4.8) すると X+c=sとなるから (2.4.6)より
r_A=(rs)/(s-a)=S/(sーa) つまり r_A=S/(sーa) の(2.4.2)式を得た。(これで[命題1.3]も
証明された。) なお、 rs=S を用いた。
また X=s-cを(2.4.5) に代入し、その逆数をとり変形して
r_A=(s-b)(s-c)/r となり (2.4.3)を得る。CE=s-bも同様にできる。
また tan(A/2)=(r_A)/s そして (2.4.6)の前の等式より tan(A/2)=r/(s-a)
よって tan(A/2)=(r_A)/s =r/(s-a) ・・・(2.4.9) も分かった。
([命題2.4]の「証明】終わり)
同様に考えて以上のことをまとめれば、
[命題2.5]
S=rs=(r_A)(s-a)=(r_B)(s-b)=(r_C)(s-c) ・・・(2.5.1)
r_A=S/(sーa)=(s-b)(s-c)/r ⇔ rr_A=(s-b)(s-c)・・・(2.5.2)
r_B=S/(sーb)=(sーc)(s-a)/r ⇔ rr_B=(s-c)(s-a)・・・(2.5.3)
r_C=S/(sーc)=(sーa)(s-b)/r ⇔ rr_C=(s-a)(s-b)・・・(2.5.4)
tan(A/2)=r/(s-a)=(r_A)/s ,tan(B/2)=r/(s-b)=(r_B)/s
tan(C/2)=r/(s-c)=(r_C)/s ・・・(2.5.5)
ーーーーーーーーーーーーーーーー
3.
これを用いて次の[命題3.1]を示そう。
[命題3.1]
△ABCの面積をS、外接円の半径を Rとし、r,r_A,r_B,r_C は上記と同様とする。このとき
(1) S^2=r(r_A)(r_B)(r_C) ⇔ S=√[r(r_A)(r_B)(r_C)] ・・・(3.1.1)
(2) r=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) ・・・(3.1.2)
(3) r_A=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2) ・・・(3.1.3)
同様に
r_B=4Rsin(B/2)cos(A/2)cos(C/2) ,r_C=4Rsin(C/2)cos(A/2)cos(B/2)
[命題3.1]の「証明」
(1) [命題2.5]の(2.5.2)(2.5.3)(2.5.4)を掛け合わせれば
ヘロンの公式 S^2=s(s-a)(s-b)(s-c) と r=S/s より
(r^3)(r_A)(r_B)(r_C)=[(sーa)(sーb)(sーc)]^2=(S^4)/(s^2)=(S^2)(S/s)^2=(S^2)(r^2)
よって r(r_A)(r_B)(r_C)=S^2 となり(3.1.1)が示された。
(2) 正弦定理の a=2RsinA ,b=2RsinB,c=2RsinCと「和・積」と2倍角の公式を使う。
なおcos(90°-θ)=sinθ、sin(90°-θ)=cosθは縦横に使う。
[命題2.5]から
r=(s-a)tan(A/2)=R(sinB+sinB-sinA)tan(A/2)
=2R[sin(B+C)/2×cos(BーC)/2-sin(A/2)cos(A/2)]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)tan(A/2)[cos(BーC)/2-cos(B+C)/2]
=4Rsin(A/2)[sin(B/2)sin(C/2)]
=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) となる。
よって r=4Rsin(A/2)sin(B/2)sin(C/2) となり (3.1.2)が導かれた。
(3) 同様に [命題2.5]から
r_A=stan(A/2)=(1/2)(a+b+c)tan(A/2)=R(sinA+sinB+sinC)tan(A/2)
=R[2sin(A/2)cos(A/2)+2sin{(B+C)/2}cos{(B-C)/2}]tan(A/2)
=2R[sin(A/2)cos(A/2)+cos(A/2)cos{(B-C)/2}]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)[sin(A/2)+cos{(B-C)/2}]tan(A/2)
=2Rcos(A/2)×tan(A/2)[cos(B+C)/2+cos(B-C)/2]
=4Rsin(A/2)[cos(B/2)cos(C/2)]
=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2)
よって r_A=4Rsin(A/2)cos(B/2)cos(C/2) となり(3.1.3)が示された。
([命題2.5]の「証明」終わり)
「注意」:(2)は sinB+sinC-sinA=4cos(A/2)×sin(B/2)sin(C/2)
(3)は sinA+sinB+sinC=4cos(A/2)cos(B/2)cos(c/2) を
「証明しておいて」からやるとわかり易かった。
4.最後に Napier(ネーピア)の公式と呼ばれる式の証明を示しておく。今となっては簡単な
式の変形に過ぎない。「対数」と関係があるのかもしれない。
[命題4.1] Napier(ネーピア)の公式
(a+b)/(a-b)=[tan(A+B)/2]/[tan(A-B)/2] ・・・(4.1.1)
「証明」
正弦定理から
a+b=2R(sinA+sinB)=4R[sin(A+B)/2)cos{(A-B)/2}] ・・・(4.1.2)
a-b=2R(sinA-sinB)=4R[cos{(A+B)/2}sin{(A-B)/2}] ・・・(4.1.3)
(4.1.2)÷(4.1.3) をして
(a+b)/(a-b)=[sin{(A+B)/2}cos{(A-B/2}]/[cos{(A+B)/2}sin{(A-B)/2})
=[sin{(A+B)/2}/cos{(A+B)/2}]/[sin{(A-B)/2}/cos{(A-B)/2}]
=[tan(A+B)/2]/[tan(A-B)/2]
(Napier(ネーピア)の公式「証明」終わり)
△ABCの傍心のベクトルによる重心座標表現の公式 2009.02.07(土)訂正版
[読者の皆様、いつも読んで下さりありがとうございます。誤りを2022.12.11(日)に訂正しました
ので宜しくお願いします。これで大丈夫と思います…が]
△ABCに対して、その傍接円は3つできる。その「傍接円」の中心を「傍心」という。
したがって 「傍心」は3つある。△ABCの3辺を BC=a,CA=b, AB=c とおく。
E^mでm次元ユークリッド空間を表すものとし、(→PB)で「ベクトルPB」を表すものとする。
1.
「傍接円の定義」
平面上に辺BCを底辺にとり、頂点Aが上方にくるように△ABCを書いておく。辺ABの頂点Bの方への
延長線上に点D、辺ACの頂点Cの方への延長線上に点Eをとる。
すると∠B=∠ABCと∠C=∠ACBの「外角」はそれぞれ∠CBDと∠BCEになる。
さて辺BCよりも下方で直線ABDよりも右かつ直線ACEよりも左の
△ABCの外部の「領域」を考える。この「領域内」において、
辺BC及び直線ABDに接し、かつ直線ACEに接する一つの円が△ABCの外部にできる。
これを△ABCの『辺BCに「傍接」する「傍接円」』とよぶことにする。
この様な傍接円は辺BCに対してはただ1つ存在する。
その中心をE_Aで表し,「傍心E_A」という。またその円を「傍接円E_A」とよぶことにする。
同様にして『辺CAに「傍接」する「傍接円E_B」』,『辺ABに「傍接」する「傍接円E_C」』ができる。
この様に三角形に対しては「傍接円」は3つできる。
2.
※※※※※ 「傍接円E_A」の中心「傍心E_A」の求め方:※※※※※※※※※※※※※※※※
「傍接円E_A」は辺BCと直線ABDに接するのであるから、その中心E_Aは「∠B=∠ABC」の
外角∠CBDの二等分線m上にあり、「∠C=∠ACB」の外角∠BCEの二等分線n上にもある。
この交点が「傍心E_A」になる。
さらに辺BCの下方へ、∠A=∠BACの二等分線l(エル)を引いてみるとl(エル)はこの点E_Aを通るのである。
つまり、2つの外角と1つの内角の3本の二等分線l(エル),m,nは1点で交わり、
その交点が「傍心E_A」である。 (これが普通のE_Aの求めかたである。)
3.
[主命題1.1]
△ABCに対して3辺の長さを BC=a,CA=b, AB=c とおく。
そのとき、「傍心E_A」の「ベクトルによる重心座標表現」は次のようになる。
△ABC⊆E^2⊆E^mとし、任意の点P∈E^m (m≧2)にたいして、
(→PE_A)={-a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(-a+b+c) ・・・(1.1.1)
(-a+b+c)/(-a+b+c)=1だから、
これは確かに△ABCに関する「ベクトルによる重心座標表現」である。
なお、b+c>a に注意されたい。
4.
この[主命題1.1]を証明するために準備をする。
[補題1.2]
△ABCにたいして BC=a ,AC=b とおく また ∠BAC=A,∠ABC=B と書くことにする。
このとき、よく知られているように
(ア)a<b⇔ A<B (イ) a=b⇔ A=B (ウ) a>b ⇔ A>B ・・・(1.2)となる。
[補題1.3]
△ABCにおいて a<b (つまり BC< AC)とする。点D,Eは上記1.のようにとる。二等分線nも同じく
外角∠BCEの二等分線とする。
このとき外角∠BCEの二等分線nと直線ABとは交わる。
「証明」
外角∠BCEの二等分線n上 かつ、辺BCの下方に点Fをとる。
∠CBD+∠BCF <180° ・・・(1.3.1) を示せば直線ABと直線nとは1点で交わる。
そこで (1.3.1)を示そう。
まず
∠CBD=180°-B ・・・(1.3.2) ,∠BCE=A+B よって∠BCF=(∠BCE)/2=(A+B)/2 ・・・(1.3.3)
また a<bだから[補題1.2]の(ア)を使うと A< B <180° よって⇒0°<(B-A)/2<90° ・・・(1.3.4)
そこで (1.3.2),(1.3.3)より
∠CBD+∠BCF=(180°-B)+(A+B)/2=180°-(B-A)/2
(1.3.4)から、0°<180°-(B-A)/2<180° よって ∠CBD+∠BCF=180°-(B-A)/2 <180° となり
∠CBD+∠BCF<180° となって (1.3.1)が示された。
([補題1.3]の「証明」終わり)
[補題1.4]
△ABCにおいて a=b のとき、∠BCEの二等分線nは直線ABと平行である。
「証明」
a=b ⇔ A=B から
∠BCE=A+B=2A よって ∠BCF=(∠BCE)/2=A (点Fは[補題1.3]と同じようにとる)
一方 ∠ABC=B=A
ゆえに 二直線AB,nに関して錯角の∠ABCと∠BCFとがAに等しいので平行である。
([補題1.4]の「証明」終わり)
5.
次に ※※※※※※重要な[命題1.5]を述べる。※※※※※※※※※※
[命題1.5]
△ABCにおいて a<b (つまり BC<AC)とする。点D,Eは上記1.のようにとる。二等分線nも同じく
外角∠BCEの二等分線とする。[補題1.3]より外角∠BCEの二等分線nと直線ABとは交わる。
この交点をK_Aとおく。K_Aは辺ABの点Bの方の延長線上にある。
⇒ K_Aは辺ABをb:aの比に【外分】する点になる。
A(K_A):B(K_A)=b:a
すなわち 点 K_Aは辺ABをb:(-a)の比に【分ける点】である。・・・(1.5.1)
【証明」
頂点Bから直線CEに平行な直線を引き、直線n=直線CFとの交点をJとする。
直線BJ//直線ACとなるから∠BJC=∠JCE(錯角が等しい)・・・(1.5.2)
また、直線CJすなわち直線nは∠BCEの二等分線だから∠BCJ=∠JCE・・・(1.5.3)
よって(1.5.2),(1.5.3)から△BCJにおいて∠BJC=∠BCJつまり、△BCJは二等辺三角形となり
⇒ BJ=BC=a ・・・(1.5.4)
そこで直線BJと直線ACが平行で、△(K_A)BJと△(K_A)ACにおいて、
∠(K_A)BJ=∠(K_A)AC、∠B(K_A)J=∠A(K_A)Cであるから、
⇒△(K_A)BJ∽△(K_A)AC
よって(1.5.4)から
A(K_A):B(K_A)=AC:BJ=AC:BC=b:a となる。
([命題1.5]の「証明」終わり)
6.
※※※※※※※それでは[主命題1.1]の「証明」に入る※※※※※※※※※
[命題1.6]
△ABCにおいて 辺BC=a ,CA=b とし、(ア)a<b または (イ)a=b とする。
『辺BCに「傍接」する「傍接円」』の「傍心」を「E_A」とする。
このとき、(ア)(イ)どちらでも、
(→AE_A)=[b(→AB)+c(→AC)]/(-a+b+c) ・・・(1.6.1)
「証明」
(ア) a<b の場合、[補題1.3]から外角∠BCEの二等分線nと直線ABとの交点がある。それをK_Aとする。
[命題1.5]から 点K_Aは辺ABをb:(-a)の比に【分ける点】である。
よって 頂点Cを始点としたベクトルを考えて
(→C(K_A))=[(-a)(→CA)+b(→CB)]/{b+(-a)} ・・・(1.6.2)
「傍心E_A」は直線C(K_A)上にあるから (→CE_A)=λ(→CK_A) ・・・(1.6.3)となる実数λがある。
(1.6.2),(1.6.3)から
(→AE_A)-(→AC)=λ[(-a)(→CA)+b{(→AB)-(→AC)}]/{b+(-a)}
=(bλ)/(b-a)(→AB)+{(a-b)λ/(b-a)}(→AC)
=(bλ)/(b-a)(→AB)-λ(→AC)(∵a<b)
ゆえに (→AE_A)=(bλ)/(b-a)(→AB)+(1-λ)(→AC) ・・・(1.6.4)
一方 A(E_A)は∠BACの二等分線l(エル)であるから
直線A(E_A)と辺BCとの交点をLとすれば、BL:LC=c:bより
(→AE_A)=μ[b(→AB)+c(→AC)]/(b+c) ・・・(1.6.5) となる実数μがある。
(→AB),(→AC)は一次独立だから(1.6.4),(1.6.5)より
(bμ)/(b+c)=(bλ)/(b-a) ・・・(1.6.6) かつ
(cμ)/(b+c)=1-λ ・・・(1.6.7) このλ,μの連立方程式を解く。
(1.6.6) ⇔ λ=μ(b-a)/(b+c) ・・・(1.6.8) これを(1.6.7)に代入して
(cμ)/(b+c)={(b+c-(b-a)μ}/(b+c)
⇔ cμ=b+c-(b-a)μ ⇔ (b+c-a)μ=b+c ⇒ μ=(b+c)/(b+c-a) ・・・(1.6.9)
(1.6.9)を(1.6.5)に代入して
(→AE_A)=[b(→AB)+c(→AC)]/(-a+b+c) となり、(1.6.1)が示された。
(イ) a=bのときC(E_A)∥ABより
(→CE_A)=λ(→AB) ・・・(1.6.10)
また (→AE_A)=μ[b(→AB)+c(→AC)]/(b+c) ・・・(1.6.5)となる実数λ,μがある。
(∵E_Aは∠BACの二等分線l(エル)上にある)
(1.6.10)⇔ (→AE_A)=λ(→AB)+1(→AC) ・・・(1.6.11)
ここで、(→AB),(→AC)は一次独立だから(1.6.5),(1.6.11)より
(bμ)/(b+c)=λ ・・・(1.6.12) かつ (cμ)/(b+c)=1 ・・・(1.6.13)
(1.6.13) ⇔ μ=(b+c)/c ・・・(1.6.14)
a=b ⇒ b+c-a=c よって (1.6.14) ⇔ μ=(b+c)/(b+c-a) ・・・(1.6.15)
(1.6.15)を(1.6.5)に代入して
(→AE_A)=[b(→AB)+c(→AC)]/(-a+b+c) となり、やはり(1.6.1)が示された。
([命題1.6]の「証明」終わり)
◎同様にして
[命題1.7]
△ABCにおいて 辺BC=a ,CA=b とし、(ウ)a >b とする。
『辺BCに「傍接」する「傍接円」』の「傍心」を「E_A」とする。
このとき、
(→AE_A)=[b(→AB)+c(→AC)]/(-a+b+c) ・・・(1.7.1)
※※※※※※※以上の[命題1.6] [命題1.7]より目標の[主命題1.1]が証明される※※※※※※※※※
[主命題1.1]の「証明」
△ABCにおいて 辺BC=a ,CA=b としたとき、
その【傍心E_A】について
(→AE_A)=[b(→AB)+c(→AC)]/(-a+b+c) ・・・(1.1.2)
よって
(→PE_A)-(→PA)=[b(→PB)-b(→PA)+c(→PC)-c(→PA)]/(-a+b+c)
⇔ (→PE_A)={(-a+b+c)-(b+c)}(→PA)/(-a+b+c)+{b(→PB)+c(→PC)}/(-a+b+c)
={-a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)}/(-a+b+c)
となって証明された。
([主命題1.1]の「証明」終わり)
垂心四面体ABCDで成り立つベクトル等式の「証明」2009.01.20(火)
[表記の約束]: (→PQ)で「ベクトルPQ」を表し、E^mでm次元ユークリッド空間を表すことにする。
また S_A のAは下付きのA(添字)を表す。((→AB),(→AC))でもって (→AB)と(→AC)の「内積」を
表すことにし、一般の四面体に対してその「体積」をVで表す。
◎さらに、J(3)は次のような3次の対称正方行列で、detJ(3)はその「行列式」を表す。detJ(3)は
いわゆる「Gramの行列式」である。
J(3)=
( (→AB,→AB) (→AB,→AC) (→AB,→AD) )
( (→AC,→AB) (→AC,→AC) (→AC,→AD) )
( (→AD,→AB) (→AD,→AC) (→AD,→AD) )
(→AB),(→AC),(→AD)は一次独立だから detJ(3)>0 である。
さて、2009.01.14(水)に与えた「ベクトル等式」を証明する。
次のようであった。
[命題1.1」
垂心四面体ABCDにおいて
△BCD、△ACD、△ABD、△ABCの面積を順 に S_A ,S_B, S_C,S_D とし、
頂点 A,B,C,D から対面の△BCD、△ACD、△ABD、△ABCに下した垂線の足をそれぞれ
H_A,H_B,H_C,H_Dとすれば、
等式
{(S_A)^2}(→AH_A)+{(S_B)^2}(→BH_B)+{(S_C)^2}(→CH_C)+{(S_D)^2}(→DH_D)=(→0)
・・・(1・1・1)
が成立する。
◎
△ABC では、対応する等式は次のようになる。
[命題2.1]
3辺 BC,CA,AB の長さをそれぞれ a,b,c とし、頂点 A,B,Cから対辺 BC,CA,AB に
下した垂線の足を、順に H_A , H_B, H_C とし、△ABCの面積をSとすれば、
等式
(a^2)(→AH_A)+(b^2)(→BH_B)+(c^2)(→CH_C)=(→0)
・・・(2・1・1)
が成立する。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
(ア)垂心四面体ABCDで成り立つ事柄の復習
[命題1.2]
「四面体ABCD」の「垂心H」が存在する
⇔(1) AB⊥CD かつ AC⊥BD かつ AD⊥BC ・・・(1.2.1)
⇔(2) (AB)^2+(CD)^2=(AC)^2+(BD)^2=(AD)^2+(BC)^2 ・・・(1.2.2)
(1)は容易に
⇔ ((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)) ・・・(1.2.3)
⇔ ((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)) ・・・(1.2.4)
⇔ ((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)) ・・・(1.2.5)
⇔ ((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.2.6)
そこで x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)),
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),→(BD)),
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)),
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.2.7)
とおく。 このとき、
[命題1.3]
垂心四面体ABCDにおいて
x+y=(AB)^2 ,x+z=(AC)^2, x+w=(AD)^2,
y+z=(BC)^2 ,y+w=(BD)^2, z+w=(CD)^2 ・・・(1.3.1)
であった。
また
[命題1.4]
垂心四面体ABCDにおいて
detJ(3)=(6V)^2=yzw+xzw+xyw+xyz ・・・(1.4.1) であった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
(イ) △ABCで成り立つ事の復習
[命題2.2]
△ABCにおいて、その面積をSとし,x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))と
おけば、x+y=(AB)^2 ,x+z=(AC)^2,y+z=(BC)^2 ・・・(2.2.1)となる。
その「垂心H」の「ベクトルによる重心座標表現」は任意の点P∈E^m(m≧2)
( ただし△ABC⊆E^2⊆E^m)としておく) に対して、
(→PH)=1/{4(S^2)}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(2.2.2)
また 4(S^2)=yz+xz+xy ・・・(2.2.3) であった。
◎ 以上(ア)(イ)が復習である。
※※※※※※※※※※※※ それでは「証明」に入る ※※※※※※※※※
[命題1.1」の「証明」
垂心四面体ABCDの「垂心」をHとする。
このとき、2008.11.3[垂心四面体で見落としていた大事な事]のブログで述べたように
H_A,H_B,H_C,H_D は順に△BCD,△ACD、△ABD,△ABCの「垂心」であった。よって[命題2.2]の
三角形での「垂心のベクトルによる重心座標表現」により、[命題1.2]の(1.2.7)に注意すれば、
任意の点P∈E^m(m≧3)に対して、
(→PH_A)=1/{4(S_A)^2}[zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)] ・・・(1.1.1)
かつ 4(S_A)^2=zw+yw+yz ・・・(1.1.2)
同様に
(→PH_B)=1/{4(S_B)^2}[zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)] ・・・(1.1.3)
4(S_B)^2=zw+xw+xz ・・・(1.1.4)
(→PH_C)=1/{4(S_C)^2}[yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)] ・・・(1.1.5)
4(S_C)^2=yw+xw+xy ・・・(1.1.6)
(→PH_D)=1/{4(S_D)^2}[yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)] ・・・(1.1.7)
4(S_D)^2=yz+xz+xy ・・・(1.1.8)
したがって(1.1.1),(1.1.3),(1.1.5),(1.1.7)の分母を払い、四式を加えて
(1.1.2),(1.1.4),(1.1.6),(1.1.8)を使えば
{4(S_A)^2}(→PH_A)+{4(S_B)^2}(→PH_B)+{4(S_C)^2}(→PH_C)+{4(S_D)^2}(→PH_D)
=zw(→PB)+yw(→PC)+yz(→PD)+zw(→PA)+xw(→PC)+xz(→PD)
+yw(→PA)+xw(→PB)+xy(→PD)+yz(→PA)+xz(→PB)+xy(→PC)
=(zw+yw+yz)(→PA)+(zw+xw+xz)(→PB)
+(yw+xw+xy)(→PC)+(yz+xz+xy)(→PD)
={4(S_A)^2}(→PA)+{4(S_B)^2}(→PB)+{4(S_C)^2}(→PC)+{4(S_D)^2}(→PD)
すなわち
{4(S_A)^2}(→PH_A)+{4(S_B)^2}(→PH_B)+{4(S_C)^2}(→PH_C)+{4(S_D)^2}(→PH_D)
={4(S_A)^2}(→PA) +{4(S_B)^2}(→PB) +{4(S_C)^2}(→PC) +{4(S_D)^2}(→PD) ・・・(1.1.8)
ゆえに {4(S_A)^2}[(→PH_A)-(→PA)]+{4(S_B)^2}[(→PH_B)-(→PB)]
+{4(S_C)^2}[(→PH_C)-(→PC)]+{4(S_D)^2}[(→PH_D)-(→PD)]=(→0)
すなわち
{(S_A)^2}(→AH_A)+{(S_B)^2}(→BH_B)+{(S_C)^2}(→CH_C)+{(S_D)^2}(→DH_D)=(→0)
よって [命題1・1]は証明された。
( [命題1・1]の「証明」終わり )※ 注意:[命題1.4]は使用しなかった。
次に △ABCの場合の[命題2.1]は、次の[命題2.3]を使う。
[命題2.3] [命題2.2]から次の事が分かる。
△ABCにおいて、頂点A、B、Cから対辺 BC、CA、AB に下した垂線の足を順にH_A,H_B,H_Cとすれば、
H_A,H_B,H_C は 辺 BC,CA ,ABを
B(H_A):(H_A)C=y:z ,C(H_B):(H_B)A=z:x ,A(H_C):(H_C)B=x:y
の比に分ける点である。
[命題2.3]については、Gooのブログ「あれこれゆっくりと学びについて考える」
の2008.8.31の[三角形の垂心のベクトルによる重心座標表現」に
書いてあるので,そちらを見ていただきたい。)
※※※※※※※※※※※※ [命題2.1]の「証明」をしよう※※※※※※※※※
[命題2.3]から△ABCの場合の[命題2.1]の「証明」は簡単である。
[命題2.1]の「証明」
[命題2.3]から
[命題2.2]の(2・2・1)に注意すれば
(→AH_A)={1/(y+z)}[z(→AB)+y(→AC)]={1/(a^2)}[z(→AB)+y(→AC)] ・・・(2.1.1)
(→BH_B)={1/(x+z)}[z(→BA)+x(→BC)]={1/(b^2)}[z(→BA)+x(→BC)] ・・・(2.1.2)
(→CH_C)={1/(x+y)}[y(→CA)+x(→CB)]={1/(c^2)}[y(→CA)+x(→CB)] ・・・(2.1.3)
( なお BC=a ,CA=b ,AB=c に注意せよ )
分母を払って 加えれば
(a^2)(→AH_A)+(b^2)(→BH_B)+(c^2)(→CH_C)
=[z(→AB)+y(→AC)]+[z(→BA)+x(→BC)]+[y(→CA)+x(→CB)]
=[z(→AB)+z(→BA)]+[y(→AC)+y(→CA)]+[x(→BC)+x(→CB)]
=(→0)+(→0)+(→0)=(→0)
( [命題2.1]の「証明」終わり )
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
◎ [命題1.1」の「別証明」
(1.1.1)で P ⇒A ,(1.1.3)で P ⇒B ,(1.1.5)で P ⇒ C ,(1.1.7)で P ⇒ D として
分母を払い四式を加えれば、
{4(S_A)^2}(→AH_A)+{4(S_B)^2}(→BH_B)+{4(S_C)^2}(→CH_C)+{4(S_D)^2}(→DH_D)
=[zw(→AB)+zw(→BA)]+[yw(→AC)+yw(→CA)]+[yz(→AD)+yz(→DA)]
+[xw(→BC)+xw(→CB)]+[xz(→DB)+xz(→BD)]+[xy(→CD)+xy(→DC)]
=(→0)+(→0)+(→0)+(→0)+(→0)+(→0)=(→0)
( [命題1.1」の「別証明」終わり)
<垂心四面体で成り立つベクトル等式> 2009.1.14(水)
1 復習
垂心四面体ABCDとは、4つの頂点A,B,C,Dから対面に下した4本の垂線が1点で交わる四面体をさす。
この交点を「四面体ABCD」の「垂心」と呼ぶ。
[命題1.1]
垂心四面体ABCDにおいて、
△BCD、△ACD、△ABD、△ABCの面積を順にS_A ,S_B ,S_C ,S_Dとし、
頂点A,B,C,Dから対面に下した垂線の足をそれぞれH_A,H_B ,H_C ,H_D
とすれば、 H_A,H_B ,H_C ,H_Dはそれぞれ△BCD、△ACD、△ABD、△ABCの
三角形としての「垂心」 であるが、
等式
[(S_A)^2](→AH_A)+[(S_B)^2](→BH_B)+[(S_C)^2](→CH_C)+[(S_D)^2](→DH_D)=(→0)
・・・(1.1.1)
が成立する。
2
三角形ABCでは、対応する等式は、次のようになる。
[命題2.1]
3辺BC,CA,ABの長さをそれぞれ a,b,c とし、頂点A,B,Cから対辺BC,CA,ABに
下した垂線の足を、順にH_A H_B ,H_C とすれば、
等式
(a^2)(→AH_A)+(b^2)(→BH_B)+(c^2)(→CH_C)=(→0) ・・・(2・1・1)
が成立する。
「証明は近いうちに示す」
垂心四面体ができる条件の補足 2008.12.12(金)
2008.12.9(火)に「一般の四面体が3次元空間内に実現できる条件」を述べた。(証明はしてない)
(四面体ABCDにおいて、6辺の長さを BC=a,CA=b,AB=c,BD=e,CD=fとおく。)
また、前に「垂心四面体ABCDの垂心・外心の具体例1.2.3.4.5」では、
6辺a,b,c,d,e,fの内 △ABCの3辺a,b,cで三角形ができる・・・(1.1)
ようにし、第4番目の辺dの長さを決めるのにd>0が与えられたとすれば、
垂心四面体の条件a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2より、
e^2=d^2+(a^2-b^2)>0 ・・・(1.2) かつ f^2=d^2+(a^2-c^2)>0 ・・・(1.3)
となるようにd^2の条件を決め、さらに何度もこのBlogで用いてきた(4×Gramの行列式)
4detJ>0 ・・・(1.4) の条件をも満たすようにd^2の範囲を求めた。
そのとき、△ABC以外の四面体ABCDの3つの面が実際に、構成できることを示して
説明してきたが、これは不要であり、
実は、d^2については(1.2)~(1.4)までの3つの条件が満たされるようにすれば十分なのである。
そのことを「説明しよう」と思う。
まず
[命題1.1]
正の数 a,b,cで △ABCができる条件は、
⇔ ヘロンの公式の式の中に表れてくる、
H(a,b,c)=(a+b+c)(a+b-c)(b+c-a)(c+a-b) ・・・(1.5)式を
考えたとき、H(a,b,c)>0となること
これは、例えば b,c正の数が与えられたとき、x>0としたとき、xの3次の関数
f(x)=H(x,b,c)/(x+b+c)=(x+b-c)(b+c-x)(c+x-b)・・・(1.6)を考え
これをx>0の範囲で不等式f(x)>0を解けば、
|b-c|<x<b+c ・・・(1.7)となることから分かる。
◎
H(a,b,c)>0ということは △ABCの面積をS_Dとしたとき、
16{(S_D)^2}=H(a,b,c)>0だから
(S_D)^2>0となる(面積が正で存在!)ということである。
[2]
ところで「垂心四面体ABCD」で成り立つ「種々の等式」の内、
detJ=4(S_D)^2(d^2)-(a^2)(x^2)=4(S_D)^2(k^2)-(abc)^2 ・・・(2.1)
という式があった。(そして、(S_D)^2の部分はH(a,b,c)の式から導いていた。)
ここに、kは a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2=k^2を満たす正の数、S_Dは△ABCの面積である。
(Blog内のLinkの貼りかたが分からないので済みませんが、前の「種々の等式の証明」
のところを見てください。)
この detJ=4{(S_D)^2}(k^2)-(abc)^2という式は次のようにも表現できる。
detJ=4{(S_A)^2}(k^2)-(aef)^2=4{(S_B)^2}(k^2)-(dbf)^2
=4{(S_C)^2}(k^2)-(cde)^2=4{(S_D)^2}(k^2)-(abc)^2 ・・・(2.2)
が成立している。ここで 16{(S_A)^2}=H(a,e,f),16{(S_B)^2}=H(d,b,f)
16{(S_B)^2}=H(c,d,e) ,16{(S_D)^2}=H(a,b,c) である。
したがって、(ここからは、前に述べた畏友K氏が注意してくれたものである。)
detJ>であれば 4{(S_A)^2}(k^2)-(aef)^2>0 ,4{(S_B)^2}(k^2)-(dbf)^2>0
4{(S_C)^2}(k^2)-(cde)^2>0 となる。
よって (S_A)^2>(aef)^2/{4(k^2)}>0 ,(S_B)^2>(dbf)^2/{4(k^2)}>0,
(S_C)^2>(cde)^2/{4(k^2)}>0
より、H(a,e,f)>0,H(d,b,f)>0,H(c,d,e)となる。
つまり 垂心四面体ABCDにおいて、
detJ>0であれば H(a,e,f)>0,H(d,b,f)>0,H(c,d,e)>0
となるので △BCD,△ACD,△ABDが構成できるというわけである。
ここに S_A=△BCDの面積、S_B=△ACDの面積,S_C=△ABDの面積
[命題2.1]
垂心四面体ABCDにおいて detJ>0
から H(a,e,f)>0 ,H(d,b,f)>0,H(c,d,e)>0,H(a,b,c)>0
が導かれる。
「一つの辺の長さが共通な2つの三角形を共通辺を貼り合わせて四面体ができる必要十分条件」の続き
2008_12_10(水)
[9]
「例1」で [命題1.2](1.2.1)の
「四面体ABCD」ができる ⇔ (A_1)D< AD < (A_2)D を使って求めたAD=dの範囲が
(7.1)の (53-√23√79)/4<d^2<(53+√23√79)/4 であった。
そこで[定理8.3]より、 このd^2の条件が上記の(8.3.5)
(ad)^2(b^2+e^2+c^2+f^2-a^2-d^2)+(be)^2(c^2+f^2+a^2+d^2-b^2-e^2)
+(cf)^2(a^2+d^2+b^2+e^2-c^2-f^2)-{(aef)^2+(dbf)^2+(cde)^2+(abc)2}>0
からも導かれることを示してみよう 。
BC=a=√2 ,CA=b=√3 ,AB=c=2 である△ABCと
BC=a=√2,BD=e=√10 、CD=f=√11である△BCDだったから(8.3.5)に代入して
2d^2(3+10+4+11-2-d^2)+30(4+11+2+d^2-3-10)
+44(2+d^2+3+10-4-11)-{(2×10×11)+(d^2)×3×11+4×(d^2)×10+2×3×4}>0
・・・(9.1.1)
よって
2d^2(26-d^2)+30(4+d^2)+44(d^2)-{220+33(d^2)+40(d^2)+24}>0
ゆえに -2(d^4)+(52+30+44-33-40)d^2+120-220-24>0・・・(9.1.2)すなわち、
2(d^4)-53(d^2)+124<0 ・・・(9.1.3)という d^2の2次不等式になる。
2(d^4)-53(d^2)+124=0を解の公式で解く
d^2=(1/4)[53±√{(53^2)-4×2×124} ・・・(9.1.4)
(9.1.4)の√の中身=判別式=53×53-4×2×4×31=53×53-32×31
=53×53-31×31-31=(53+31)(53-31)-31=84×22-31=1848-31=1817
ところが 1817=23×79 ・・・(9.1.5) となる!!
ので(9.1.3)を解くと
{53-√(23×79)}/4<d^2<{53+√(23×79)}/4
つまり
(53-√23√79)/4<d^2<(53+√23√79)/4 となり、
(7.1)が導かれた。
[10]
この場合は2つの三角形は共に存在していたので、 d^2の求める条件は
(ad)^2(b^2+e^2+c^2+f^2-a^2-d^2)+(be)^2(c^2+f^2+a^2+d^2-b^2-e^2)
+(cf)^2(a^2+d^2+b^2+e^2-c^2-f^2)-{(aef)^2+(dbf)^2+(cde)^2+(abc)2}>0
つまり、四面体ABCDの体積Vについて 4detJ=(6V)^2>0 だけで必要十分であったのである。
一般には、三角形ができるかどうかもわからないので、この4detJ=(6V)^2>0だけでは不十分である。
これについては、「栗田 稔」 先生の本「入門|現代の数学[7] 具象から幾何学へ」
(数学セミナー増刊)のP64~P65に書いてある。
つまり、 (1)「1つの三角形ができること、すなわちヘロンの公式>0 (面積が存在すること)」
かつ (2) 4detJ>0 (体積が存在すること)となる
ことが必要十分である。
「四平方定理」を「一般の垂心四面体」へ拡張した「七平方定理」 2008.11.3(月)
☆ この「定理」は2008.10.30(木)に得たばかりである。
「垂心四面体ABCD」の6辺の長さを例によって、
BC=a ,CA=b ,AB=c ,AD=d ,BD=e ,CD=f ・・・(1.1.1)とし、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)),
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)),
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)),
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(1.1.2)とおくと、
x=(b^2+c^2-a^2)/2=(c^2+d^2-e^2)/2=(d^2+b^2-f^2)/2
y=(c^2+a^2-b^2)/2=(e^2+c^2-d^2)/2=(a^2+e^2-f^2)/2
z=(a^2+b^2-c^2)/2=(b^2+f^2-d^2)/2=(f^2+a^2-e^2)/2
w=(d^2+e^2-c^2)/2=(f^2+d^2-b^2)/2=(e^2+f^2-a^2)/2 ・・・(1.1.3)
kを a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2=k^2 ・・・(1.1.4)を満たす正の数とする。
また、△BCD ,△ACD ,△ABD ,△ABCの面積をそれぞれ、S_A ,S_B ,S_C ,S_D
とする。
このとき、次の関係式(1.1.5)があった。
y+z=a^2 ,x+z=b^2 ,x+y=c^2 ,
x+w=d^2 ,y+w=e^2 ,z+w=f^2 ・・・(1.1.5)
実は、
「四面体ABCD」が「垂心四面体」であること、つまり(1.1.2) ⇔ (1.1.5) である。
このことは、また別の機会に示すつもりである。
さて、次の[定理2.1]が成り立ち、これは、「3直角四面体」で成立する「四平方定理」の
自然な拡張である。平方が7つあるので「七平方定理」と呼ぶことにする。
すなわち、
[定理2.1] 垂心四面体の「七平方定理」・・・・次の(2.1.5)を指す。
「垂心四面体ABCD」の6辺の長さを、
BC=a ,CA=b ,AB=c ,AD=d 、BD=e ,CD=f ・・・(2.1.1)とし、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD)),
y=((→BA),(→BC))=((→BA),(→BD))=((→BC),(→BD)),
z=((→CA),(→CB))=((→CA),(→CD))=((→CB),(→CD)),
w=((→DA),(→DB))=((→DA),(→DC))=((→DB),(→DC)) ・・・(2.1.2)とおき、
kを a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2=k^2 ・・・(2.1.3)を満たす正の数とする。
また、△BCD ,△ACD ,△ABD ,△ABCの面積をそれぞれ S_A ,S_B ,S_C ,S_D
とする。
このとき、aとd ,bとe ,cとfが3組の対辺であるが、
(1) 4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2 ・・・(2.1.4)
が成立する。
すなわち (2S_A)^2+(2S_B)^2+(2S_C)^2+(2S_D)^2=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2 ・・・(2.1.5)
(2) 「A-3直角四面体」では、上の(2.1.3)から
よく知られた、(S_A)^2=(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2 ・・・(2.1.6) の式が
自然に導かれる。
「証明」
(1) 2008.11.03(月)に、このBlogのあとにアップロードする予定のBlog「垂心四面体ABCDの垂心の
ベクトルによる重心座標表現で見落としていた大事なこと」により、
S_A ,S_B ,S_C ,S_Dは それぞれ △BCD ,△ACD ,△ABD ,△ABCの面積だから、
4(S_A)^2=zw+yw+yz ・・・(2.2.1), 4(S_B)^2=zw+xw+xz ・・・(2.2.2)
4(S_C)^2=yw+xw+xy ・・・(2.2.3), 4(S_D)^2=yz+xz+xy ・・・(2.2.4)
これらを加えれば、(1.1.5)を用いて
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]
=(zw+yw+yz)+(zw+xw+xz)+(yw+xw+xy)+(yz+xz+xy)
=2(xy+xz+xw+yz+yw+zw)
=2{x(z+w)+y(x+w)+z(y+w)}
=2{x(f^2)+y(d^2)+z(e^2)}
=(2x)(f^2)+(2y)(d^2)+(2z)(e^2) ・・・(2.2.5)
ここで (1.1.3)から
2x=b^2+c^2-a^2 ,2y=c^2+a^2-b^2 ,2z=a^2+b^2-c^2 を代入して
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]
=(b^2+c^2-a^2)(f^2)+(c^2+a^2-b^2)(d^2)+(a^2+b^2-c^2)(e^2)
ところで、(2.1.3)の a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2=k^2 により、d^2,e^2,f^2を
k^2と、a^2,b^2,c^2で表せば、
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]
=(b^2+c^2-a^2)(k^2-c^2)+(c^2+a^2-b^2)(k^2-a^2)+(a^2+b^2-c^2)(k^2-b^2)
={(b^2+c^2-a^2)+(c^2+a^2-b^2)+(a^2+b^2-c^2)}(k^2)
-[(c^2){(b^2)+(c^2)-(a^2)}+(a^2){(c^2)+(a^2)-(b^2)}+(b^2){(a^2)+(b^2)-(c^2)}]
={(a^2)+(b^2)+(c^2)}(k^2)
-[(bc)^2+(c^4)-(ac)^2+(ac)^2+(a^4)-(ab)^2+(ab)^2+(b^4)-(bc)^2]
={(a^2)+(b^2)+(c^2)}(k^2)-[(a^4)+(b^4)+(c^4)]
=(a^2){(k^2)-(a^2)}+(b^2){(k^2)-(b^2)}+(c^2){(k^2)-(c^2)}
=(a^2)(d^2)+(b^2)(e^2)+(c^2)(f^2)
=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2
ここで、(2.1.3)の a^2+d^2=b^2+e^2=c^2+f^2=k^2 により
(k^2)-(a^2)=(d^2) ,(k^2)-(b^2)=(e^2) ,(k^2)-(c^2)=(f^2)を用いた。
こうして (2.1.4)の
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]=(ad)^2+(be)^2+(cf)^2
が導かれた。
次に
(2)を示そう。
「A-3直角四面体ABCD」は、∠BAC=∠BAD=∠CAD=90度の四面体で、これは「垂心H」が
「頂点A」になる特殊な「垂心四面体」であった。
よって 上の(1.1.2)の x=0 であって、
x=((→AB),(→AC))=((→AB),(→AD))=((→AC),(→AD))=0
これは(1.1.3)から、
b^2+c^2-a^2=c^2+d^2-e^2=d^2+b^2-f^2=0 ,
a^2=b^2+c^2 ,e^2=c^2+d^2 ,f^2=b^2+d^2 ・・・(2.3.1)
ゆえに a^2,e^2,f^2は b^2 ,c^2 , d^2 で表される。
よって
△ABCは∠BAC=90度の直角三角形、△ABDは∠BAD=90度の直角三角形,
△ACDは∠CAD=90度の直角三角形であり、
S_D=(bc)/2 ,S_C=(cd)/2 ,S_B=(bd)/2 ゆえに
bc=2(S_D) ,cd=2(S_C) ,bd=2(S_B) ・・・(2.3.2) である。
さて、
(1)で証明した公式(2.1.4)の右辺に(2.3.1)を代入すれば、
(2.1.4)の右辺=(a^2)(d^2)+(b^2)(e^2)+(c^2)(f^2)
=(b^2+c^2)(d^2)+(b^2)(c^2+d^2)+(c^2)(b^2+d^2)
=2{(bd)^2+(cd)^2+(bc)^2} ・・・(2.3.3)
これに (2.3.2)を代入すれば、
(2.1.4)の右辺=8[(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]となる。
よって (2.1.4)式は
4[(S_A)^2+(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]=8[(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2] となる。
ゆえに 4(S_A)^2=4[(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2]
すなわち (S_A)^2=(S_B)^2+(S_C)^2+(S_D)^2
となり、(2.1.6)式が自然に導かれた。
(証明 終わり)