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四面体の正弦定理と応用,特に四面体の「6つの二面角がすべて等しい四面体は、正四面体になる」

2018年12月18日 | 考察

四面体ABCDの正弦定理と応用,特に、四面体の「6つの二面角がすべて等しい四面体は、正四面体になる」_2018.12.18(火)

1.
まず、△ABCの正弦定理を振り返ってみよう。△ABCの正弦定理は、角A,B,Cと辺a=BC,b=CA,c=AB
と外接円の半径 R_2に対し、
 a/sinA=b/sinB=c/sinC=2(R_2) ・・・(1.1.1) と表現される。ここで大事なことは、
 a:b:c=sinA:sinB:sinC ・・・(1.1.2)であり、その一定の連比が2(R_2)ということであるが、
ここでは三角関数に注目して、sinA:sinB:sinC=a:b:c ・・・(1.1.3) その連比が、
 1/[2(R_2)]・・・(1.1.4)と考えることにする。さて(1.1.3)の証明であるが、普通は△ABC
の外接円を描き、円周角の定理を用いておこなう。しかしここでは、面積の公式
S=(1/2)bcsinAを使って証明してみるのである。これから sinA=(2S)/(bc) つまり
 sinA=a(2S)/(abc)・・・(1.1.5) 同様に S=(1/2)casinB=(1/2)absinC から、
 sinB=b(2S)/(abc)・・・(1.1.6), sinC=c(2S)/(abc)・・・(1.1.7)
 ゆえに  sinA/a=sinB/b=sinC/c=(2S)/(abc)・・・(1.1.8)
 よって sinA:sinB:sinC=a(2S)/(abc):b(2S)/(abc):c(2S)/(abc)=a:b:c・・・(1.1.3) 
 が導かれた。次に一定の連比については、(1.1.8)から、(2S)/(abc)であることが分かるが、
 ここで、よく知られた、
 R_2=(abc)/[4S_2] ・・・(1.1.9) となることから、一定の連比 (2S)/(abc)は
 (2S)/(abc)=1/[2(R_2)]・・・(1.1.4)であることが分かる。これで(1.1.1)が示された。

[(1.1.9)はよく知られたことであるが、(1.1.9)の証明の為に正弦定理(1.1.1)を
使うと循環論法になる」そこで、(1.1.9)を正弦定理(1.1.1)を用いずに証明してみる。

2.
(1.1.9)の「証明」

 本「重心座標による幾何学」の「n次元単体の外心(但しn≧2)」についてのP128~129の
 [定理8.8]における、(R_n)^2=-[detΘ_n]/[2detΞ_n]を見てみる。ここにおいて、n=2
 として (R_2)^2=-[detΘ_2]/[2detΞ_2]・・・(2.1.1)となる。本のP131とP132のように、

 Θ_2=
( d00^2  d01^2  d02^2 )
( d10^2  d11^2  d12^2 )
( d20^2  d21^2  d22^2 )
=
(    0            A0A1^2    A0A2^2 )
( A1A0^2       0            A1A2^2 )
( A2A0^2     A2A1^2              0    )
=
(   0       AB^2        AC^2   )
( BA^2        0         BC^2   )
( CA^2      CB^2          0    )
=
(   0      c^2        b^2   )
(  c^2       0            a^2   )
(  b^2      a^2          0     )
即ち、
 Θ_2=
(    0      c^2        b^2   )
(  c^2       0            a^2    )
(  b^2      a^2            0     ) ・・・(2.1.2)
ゆえに detΘ_2=a^2b^2c^2+a^2b^2c^2=2a^2b^2c^2 ・・・(2.1.3)
また、
 Ξ_2=
(   0       c^2      b^2       1   )
(  c^2       0           a^2       1   )
(  b^2      a^2           0        1   )
(   1             1            1        0   ) ・・・(2.1.4)
detΞ_2を計算するにはまともにやらずに、本の分解定理[命題8.6](P126)を使う。
つまり、
detΞ_2=-detΘ_2^0-detΘ_2^1-detΘ_2^2 ・・・(2.1.5)として、

detΘ_2^0=
|  1      c^2     b^2  |
|   1       0           a^2  |
|   1      a^2           0   |    
=a^2(b^2+c^2-a^2) ・・・(2.1.6)

detΘ_2^1=
|   0        1       b^2   |
|  c^2       1         a^2   |
|  b^2       1            0    |
=b^2(c^2+a^2-b^2) ・・・(2.1.7)

detΘ_2^2=
|    0      c^2      1    |
|  c^2        0          1    |
|  b^2      a^2       1    |
=c^2(a^2+ b^2-c^2) ・・・(2.1.8)

(2.1.6)~(2.1.8)を(2.1.5)に代入して、
 detΞ_2=-a^2(b^2+c^2-a^2)-b^2(c^2+a^2-b^2)-c^2(a^2+ b^2-c^2)
        =a^4+b^4+c^4-2(b^2)(c^2)-2(c^2)(a^2)-2(a^2)(b^2)
        =-[-a^4-b^4-c^4+2(b^2)(c^2)+2(c^2)(a^2)+2(a^2)(b^2)]
        =-(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c) ・・・(2.1.9)
 (2.1.3)と(2.1.9)を(2.1.1)に代入して、
  (R_2)^2=-[detΘ_2]/[2detΞ_2]
     =-[2a^2b^2c^2]/[-2(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)]
     =[a^2b^2c^2]/[(a+b+c)(b+c-a)(c+a-b)(a+b-c)]
     =[a^2b^2c^2]/[16(S_2)^2] (∵ ヘロンの公式)
 ⇔ R_2=[abc]/[4(S_2)}

これで (1.1.9)が証明された。なおヘロンの公式はS=(1/2)bcsinAを平方し、
第二余弦定理 cosA=[b^2+c^2-a^2]/[2bc]を使うが、第二余弦定理は
三平方の定理から図形的に導かれるので、以上の議論は外接円には関係なく
循環論法ではない。しかし、これでは正弦定理を導く為に余弦定理も用いたことに
なってしまう。これを避けるには、detΞ_n=-(-2)^n×detJ_n ・・・(2.1.10)
[本のP123の(1)式]とdetJ_n=(n!V_n)^2[本のP122の(2)式]を使い、
n=2とすれば、detΞ_2=-(-2)^2×detJ_2=-4×4(V_2)^2=-16(S_2)^2
 [∵ V_2=S_2]を使えばよい。 何れにしろ大分面倒だった。
((1.1.9)の「証明」終わり)

3.四面体ABCDの正弦定理について

△ABCの正弦定理では、面積公式 S_2=(1/2)bcsinAを基本にし、
 sinA/a=(2S_2)/(abc)・・・(1.1.8)  において、 R_2=[abc]/[4(S_2)]
 即ち、(2S_2)=(abc)/[2R_2]・・・(1.1.10) を更に用いて、(1.1.8)の右辺のabcが
 相殺されて、
一定の連比が、R_2「だけ」の式になったが,これはたまたまのことである。
(図形的な証明ではexplicitに関係してくるが)

これから述べる「四面体ABCDの正弦定理」と私がよぶものにおいては、
一定の連比がR_3だけの式にはならない。まず、「本」「重心座標による幾何学」
 のP217の[命題12.25]の式
 sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)] ・・・(3.1.1)を変形して
 [ここにBCは辺BCの長さ]
 
 sinθ(A,D)/[(BC)/{(S_A)(S_D)}] =√[detJ(3)]/4 となる。detJ(3)=(3!V_3)^2より、
 √[detJ(3)]=6V_3 
 ゆえに  sinθ(A,D)/[(BC)/{(S_A)(S_D)}] =√[detJ(3)]/4=6(V_3)/4・・・(3.1.2) 
 となる。
 これらより、
 sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)
 =[(CD)/{(S_A)(S_B)}]:[(BD)/{(S_A)(S_C)}]:[(BC)/{(S_A)(S_D)}]
 :[(AD)/{(S_B)(S_C)}]:[(AC)/{(S_B)(S_D)}]:[(AB)/{(S_C)(S_D)}] ・・・(3.1.3)
 となる。V_3を単にVで表し、[定理3.1]として述べると、

[定理3.1] 「四面体ABCDの正弦定理]

sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)

 =[(CD)/{(S_A)(S_B)}]:[(BD)/{(S_A)(S_C)}]:[(BC)/{(S_A)(S_D)}]

 :[(AD)/{(S_B)(S_C)}]:[(AC)/{(S_B)(S_D)}]:[(AB)/{(S_C)(S_D)}] ・・・(3.1.3)
 となる。その一定の連比=√[detJ(3)]/4=6V/4 ・・・(3.1.4)
 また、この一定の連比=√[-detΘ(3)]/[16R_3]・・・(3.1.5)とも書ける。

 ここにR_3は四面体ABCDの外接球面の半径、detΘ(3)は本のP125の[定義8.5]
 (3)のものである。 [detΘ(3)<0 であり、detΘ(2)>0 (∵(2.1.3)) である。] 
「証明」
 (3.1.4)は(3.1.2)よりいえる。
 (3.1.5)は「本」のP135の (R_3)^2=-[detΘ(3)]/[2detΞ(3)] と
  detΞ(3)=-[(-2)^3]detJ(3)=8detJ(3) より
    (R_3)^2=-[detΘ(3)]/[16detJ(3)] ・・・(3.1.6) detΘ(3)<0により、
 ⇔ (R_3)^2=[-detΘ(3)]/[16detJ(3)]⇔ R_3=√[-detΘ(3)]/[4√detJ(3)]
 ⇔ √detJ(3)= √[-detΘ(3)]/[4R_3] ⇔√[detJ(3)]/4=√[-detΘ(3)]/[16R_3]
 と(3.1.4)による。
(「証明」終わり)                            

[定理3.1]の系1
 θ(A,B),θ(A,C),θ(A,D)などのように共通の添え字[ここではA]を1つずつもつ
  3つの二面角については、

 sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D)=[(CD)/(S_B)]:[(BD)/(S_C)]:[(BC)/(S_D)]・・・(3.1.7)
 などが成り立つ。

[定理3.1]の系2:[等面四面体ABCDの正弦定理]
 
  sinθ(A,B):sinθ(A,C):sinθ(A,D):sinθ(B,C):sinθ(B,D):sinθ(C,D)

 =CD:BD:BC:AD:AC:AB ・・・(3.1.8)
「証明」
 四面体ABCDが等面四面体 ⇔ S_A=S_B=S_C=S_D 「バンの定理] であるから、[定理3.1]の
 の(3.1.3)の右辺の比の分母を払った式を考えればよい。
(「証明」終わり)

なお (3.1.1)自体は detJ(3)=(3!V)^2 ⇔ √[detJ(3)]=6V により、
sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)]⇔sinθ(A,D)=(BC)6V/[4(S_A)(S_D)]
⇔ sinθ(A,D)=(BC)3V/[2(S_A)(S_D)] ・・・(3.1.9)
⇔ V=(1/3)[2(S_A)(S_D)]sinθ(A,D)/BC・・・(3.1.10) と同値。これは四面体ABCDの

体積を求めようとして自然に出てくる。BCはS_AとS_Dとの共通辺である。

 ☆
  また(3.1.1)にて、sinθ(A,D)を求めたいとき、BCの長さだけでなく S_A,S_Dと
 体積Vも必要ということである。

 この実例については、2016.04の兄弟 blog「物言はぬは腹ふくるる業」
 に挙げた実例:
 BC=a=2,CA=b=√7,AB=c=3,AD=d=4, BD=e=√6,CD=f=2√2とすると、
 4S_A=2√23,4S_D=2√27,detJ(3)=149 なので、
 sinθ(A,D)=BC√[detJ(3)]/[4(S_A)(S_D)]=4BC√[detJ(3)]/[(4S_A)(4S_D)]
           =[4×2√149]/[(2√23)(2√27)]=2√149/[√23√27] つまり、

  sinθ(A,D)=2√149/[√23√27]・・・(3.1.11)となる。
 一方、そこのblogの結果より、
 cosθ(A,D)=-5/[√23√27]・・・(3.1.12)だったので、

  sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)を計算してみると、

  sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)=[(2√149)^2+(-5)^2]/[23×27]
     =[596+25]/[23×27]=621/[23×27]=[23×27]/[23×27]
     =1 であって、
 目出度く  「sin^2θ(A,D)+cos^2θ(A,D)=1」 
 となって計算に間違いはない。

 しかし、 sinθ(A,D)が判ったといって、
 θ(A,D)=sin^(-1)(2√149/[√23√27])=(78.42543239)°とすると、間違いである。
 それは、(3.1.12)にあるように、cosθ(A,D)<0 よりθ(A,D)は鈍角で、blogに
 あったようにθ(A,D)=(101.5745676)°が正しい値。
 θ(A,D)=180-sin^(-1)(2√149/[√23√27])=180°-(78.42543239)°
 =(101.5745676)°としなければならない。[関数電卓のsin^(-1)(x)の定義域は、
 -1≦x≦1、値域は -90°≦y≦90°]
 図を正確に描いて二面角θ(A,D)が 鋭角か、鈍角かが 判れば、
 sinθ(A,D)の方が、detJ(3)の計算が要るが、 計算は楽である。
 しかし、一般には公式が複雑ではあるが、detJ(3)の計算
 [即ち体積の計算]が要らないcosθ(A,D)の方がきちんと求まる。
 ・・・という状況である。

4.

最後に、[等面四面体ABCDの正弦定理]の応用として、既に以前のblogで
与えた「二面角が全て等しい四面体は正四面体に限る」ことを、
証明してみよう。

[定理4.1.1] 「二面角が全て等しい四面体は正四面体に限る」

 四面体ABCDにおいて、その二面角
 θ(A,B)=θ(A,C)=θ(A,D)=θ(B,C)=θ(B,D)=θ(C,D)
 ⇒ この四面体は正四面体
「証明」
 四面体の第一余弦定理をまず使用する。
 S_D=(S_A)cosθ(A,D)+(S_B)cosθ(B,D)+(S_C)cosθ(C,D)・・・(4.1.2)
 において、θ(A,D)=θ(B,D)=θ(C,D)だから、(4.1.2)に代入して、
 S_D=[(S_A)+(S_B)+(S_C)]cosθ(C,D) ・・・(4.1.3)となる。
 (S_A)+(S_B)+(S_C)=2F-S_D>0 より cosθ(C,D) =S_D/[2F-S_D]・・・(4.1.4)
 同様に
 S_A=(S_B)cosθ(B,A)+(S_C)cosθ(C,A)+(S_D)cosθ(D,A)・・・(4.1.5)
 よって cosθ(D,A) =S_A/[2F-S_A]・・・(4.1.6)
 同様に
 S_B=(S_A)cosθ(A,B)+(S_C)cosθ(C,B)+(S_D)cosθ(D,B)・・・(4.1.7)
 よって cosθ(D,B) =S_B/[2F-S_B]・・・(4.1.8)
 同様に
 S_C=(S_A)cosθ(A,C)+(S_B)cosθ(B,C)+(S_D)cosθ(D,C)・・・(4.1.9)
 よって cosθ(D,C) =S_C/[2F-S_C]・・・(4.1.10)
 (4.1.4),(4.1.6),(4.1.8),(4.1.10)と、θ(C,D)=θ(D,A)=θ(D,B)=θ(D,C)
 により、
 S_D/[2F-S_D]=S_A/[2F-S_A]=S_B/[2F-S_B]=S_C/[2F-S_C] ・・・(4.1.11)
 となる。ここで、
 写像 g:(0,2F) → (0,∞) ,g(t)=t/[2F-t] は単射だから、(4.1.11)から
 S_A=S_B=S_C=S_D となり、この四面体ABCDは等積四面体、つまり等面四面体
 となる。そこで、θ(A,B)=θ(A,C)=θ(A,D)=θ(B,C)=θ(B,D)=θ(C,D)と
 (3.1.8)の[等面四面体ABCDの正弦定理]を用いて、
   CD=BD=BC=AD=AC=AB ・・・(4.1.12)が示され四面体ABCDの6辺が
 全て等しくなり、この四面体ABCDは正四面体であることが分かった。
(「証明」終わり)