あれこれゆっくりと学びについて考える

学んだことなどを自分勝手に気が向いた時だけ書くと、いうことで

四面体ABCDの「内接球面Iの接点」と内心Iとの間のベクトル等式_[その2]

2018年04月11日 | 考察

-------四面体ABCDの「内接球面Iとその接点」と内心Iとの間のベクトル等式_2018.04.11(水)_[その1]からの続き------

四面体ABCDの「内接球面Iとその接点」と内心Iとの間のベクトル等式_2018.04.11(水)_[その2]

[2].

さて、それでは表題の「四面体の内心I」についても同様なことが成り立つことを示そう。
四面体ABCDを考え、内心をI、内接球面Iと各面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCとの接点を
例によって、I^A,I^B,I^C,I^D とし、面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積を
S_A,S_B,S_C,S_D とおき、S_A+S_B+S_C+S_D=2F とおく。このとき、
[定理2.1]
 四面体ABCD⊆E^3⊆E^n (但し n≧3とする)とする。任意の∀P∈E^nに対し
    S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)
   =S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+ S_D(→PD)       ・・・(2.1.1) となる。
 これは、
  S_A(→AI^A)+S_B(→BI^B)+S_C(→CI^C)+ S_D(→DI^D) =(→0) ・・・(2.1.2)と同値である。
 
「証明」
 (2.1.1)⇔(2.1.2)のことは[定理1.2]の証明と同様である。そこで(2.1.1)を証明しよう。
 まず、2017.1.31(火)のblog「四面体ABCDの「内接球面」の各側面と4つの接点
 「I^A,I^B,I^C,I^D」の重心座標」の[定理2.3]で述べたように、
 I^Aは
 (0,S_B/(2F)[1+cosθ(B,A)],S_C/(2F)[1+cosθ(C,A)],S_D/(2F)[1+cosθ(D,A)] )
   ・・・(2.1.3)
  I^Bは、
 (S_A/(2F)[1+cosθ(A,B)],0,S_C/(2F)[1+cosθ(C,B)],S_D/(2F)[1+cosθ(D,B)] )
   ・・・(2.1.4)
 I^Cは、
 (S_A/(2F)[1+cosθ(A,C)],S_B/(2F)[1+cosθ(B,C)],0,S_D/(2F)[1+cosθ(D,C)] )
      ・・・(2.1.5)
 I^Dは、
 (S_A/(2F)[1+cosθ(A,D)],S_B/(2F)[1+cosθ(B,D)],S_C/(2F)[1+cosθ(C,D)],0 )
      ・・・(2.1.6)
 即ち
 (→PI^A)
 =S_B/(2F)[1+cosθ(B,A)](→PB)+S_C/(2F)[1+cosθ(C,A)](→PC)+S_D/(2F)[1+cosθ(D,A)](→PD)
 などにより、

 (2F)(→PI^A)=S_B[1+cosθ(B,A)](→PB)+S_C[1+cosθ(C,A)](→PC)+S_D[1+cosθ(D,A)](→PD)
             ・・・(2.1.7)
 (2F)(→PI^B)=S_A[1+cosθ(A,B)](→PA)+S_C[1+cosθ(C,B)](→PC)+S_D[1+cosθ(D,B)](→PD)
              ・・・(2.1.8)
  (2F)(→PI^C)=S_A[1+cosθ(A,C)](→PA)+S_B[1+cosθ(B,C)](→PB)+S_D[1+cosθ(D,C)](→PD)
              ・・・(2.1.9)
  (2F)(→PI^D)=S_A[1+cosθ(A,D)](→PA)+S_B[1+cosθ(B,D)](→PB)+S_C[1+cosθ(C,D)](→PC)
              ・・・(2.1.10)
 となる。ゆえに、このとき
    (2F)[S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)]
  =S_A[S_B[1+cosθ(B,A)](→PB)+S_C[1+cosθ(C,A)](→PC)+S_D[1+cosθ(D,A)](→PD)]
  +S_B[S_A[1+cosθ(A,B)](→PA)+S_C[1+cosθ(C,B)](→PC)+S_D[1+cosθ(D,B)](→PD)]
  +S_C[S_A[1+cosθ(A,C)](→PA)+S_B[1+cosθ(B,C)](→PB)+S_D[1+cosθ(D,C)](→PD)]
  +S_D[S_A[1+cosθ(A,D)](→PA)+S_B[1+cosθ(B,D)](→PB)+S_C[1+cosθ(C,D)](→PC)]

  =S_A[S_B[1+cosθ(A,B)]+S_C[1+cosθ(A,C)]+S_D[1+cosθ(A,D)]](→PA)
  +S_B[S_A[1+cosθ(B,A)]+S_C[1+cosθ(B,C)]+S_D[1+cosθ(B,D)]](→PB)
  +S_C[S_A[1+cosθ(C,A)]+S_B[1+cosθ(C,B)]+S_D[1+cosθ(C,D)]](→PC)
  +S_D[S_A[1+cosθ(D,A)]+S_B[1+cosθ(D,B)]+S_C[1+cosθ(D,C)]](→PD)

  =S_A[(S_B+S_C+S_D)+{S_Bcosθ(A,B)+S_Ccosθ(A,C)+S_Dcosθ(A,D)}](→PA)
  +S_B[(S_A+S_C+S_D)+{S_Acosθ(B,A)+S_Ccosθ(B,C)+S_Dcosθ(B,D)}](→PB)
  +S_C[(S_A+S_B+S_D)+{S_Acosθ(C,A)+S_Bcosθ(C,B)+S_Dcosθ(C,D)}](→PC)
  +S_D[(S_A+S_B+S_C)+{S_Acosθ(D,A)+S_Bcosθ(D,B)+S_Ccosθ(D,C)}](→PD)
      ・・・(2.1.11)
 ここで、四面体の第1余弦定理から S_Bcosθ(A,B)+S_Ccosθ(A,C)+S_Dcosθ(A,D)=S_A
 よって
   S_A[(S_B+S_C+S_D)+{S_Bcosθ(A,B)+S_Ccosθ(A,C)+S_Dcosθ(A,D)}]
  =S_A[(S_B+S_C+S_D+S_A]=S_A×2F=(2F)S_A ・・・(2.1.12) 
  同様にして
   S_B[(S_A+S_C+S_D)+{S_Acosθ(B,A)+S_Ccosθ(B,C)+S_Dcosθ(B,D)}]
 =(2F)S_B ・・・(2.1.13)
   S_C[S_A[1+cosθ(C,A)]+S_B[1+cosθ(C,B)]+S_D[1+cosθ(C,D)]]
  =(2F)S_C ・・・(2.1.14)
   S_D[(S_A+S_B+S_C)+{S_Acosθ(D,A)+S_Bcosθ(D,B)+S_Ccosθ(D,C)}]
  =(2F)S_D ・・・(2.1.15)

 したがって (2.1.11) の
   右辺
  =(2F)(S_A)(→PA)+(2F)(S_B)(→PB)+(2F)(S_C)(→PC)+(2F)(S_D)(→PD) ゆえに(2.1.11)式は
 
     (2F)[S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)]
    =(2F)[S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+S_D(→PD))]
 ⇔   S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)
  =S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+S_D(→PD) となって[定理2.1]は証明された。
(「証明」終わり)

 次に以前に証明したように,
[命題2.2]
四面体ABCD⊆E^3⊆E^n、但し n≧3としておく。内心をIとすると、∀P∈E^n に対して
 (→PI)=[S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+S_S(→PD)]/(S_A+S_B+S_C+S_D) ・・・(2.2.1)
 であって、これは S_A(→IA)+S_B(→IB)+S_C(→IC)+S_D(→ID)=(→0) ・・・(2.2.2)と同値。

[命題2.3]
[定理2.1]の等式 (2.1.1)は、
 S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)=(→0) ・・・(2.3.1)と同値。よって
また (2.1.2)とも同値である。
「証明」
(2.1.1)であるとする。(2.1.1)で P ⇒ Iとして
   S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)
   =S_A(→IA)+S_B(→IB)+S_C(→IC)+ S_D(→ID)       ・・・(2.3.2) ここで
 [命題2.2]の(2.2.2)より S_A(→IA)+S_B(→IB)+S_C(→IC)+ S_D(→ID)=(→0) だから
  (2.3.2)⇔ S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)=(→0)・・・(2.3.1)
 となる。逆に
   S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)=(→0)・・・(2.3.1)であるとする。
 ⇔  S_A[(→PI^A)-(→PI)]+S_B[(→PI^B)-(→PI)]
    +S_C[(→PI^C)-(→PI)]+S_D[(→PI^D)-(→PI)]=(→0)

 ⇔   S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)
    =(S_A+S_B+S_C+S_D)(→PI)
  ここで [命題2.2]の(2.2.1) より
   (S_A+S_B+S_C+S_D)(→PI)=S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+S_S(→PD) よって
  S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)
  =S_A(→PA)+S_B(→PB)+S_C(→PC)+S_D(→PD) となり、
  (2.1.1)が成り立つ。  
(「証明」終わり)

[定理2.1]の(2.1.1)と[命題2.2]の(2.2.1)から、次の命題が成り立つ。

[命題2.4]
 四面体ABCD⊆E^3⊆E^n (但し n≧3とする)とする。 内心をI、内接球面Iと
 各面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCとの接点を例によって、I^A,I^B,I^C,I^D とし、
 面△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積をS_A,S_B,S_C,S_D とおき、
 S_A+S_B+S_C+S_D=2F とおく。
 このとき、∀P∈E^n に対して
 (→PI)=[S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)]/(2F) ・・・(2.4.1)
 が成り立ち、これは

 S_A(→AI^A)+S_B(→BI^B)+S_C(→CI^C)+ S_D(→DI^D) =(→0) ・・・(2.1.2)と
 S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)=(→0)   ・・・(2.3.1)とも同値である。

そこで、
[定義2.5]
[命題2.4]の同値な3つの等式(2.4.1),(2.1.2),(2.3.1)を、「内心I」と「内接球面I
と接点との間」に成り立つ「ベクトル等式」とよぶことにする。
以上のことをまとめれば、

[定理2.7]
 四面体ABCDに対しその「内接球面I」から決まる4つの接点I^A,I^B,I^C,I^Dに対し
 四面体(I^A)(I^B)(I^C)(I^D)ができるときは、四面体(I^A)(I^B)(I^C)(I^D)の「外心J」は
 四面体ABCDの「内心I]に一致するが、その 四面体(I^A)(I^B)(I^C)(I^D)の「外心J」

四面体(I^A)(I^B)(I^C)(I^D)に関する ベクトルによる「重心座標表現」は、
 (→PJ)=(→PI)=[S_A(→PI^A)+S_B(→PI^B)+S_C(→PI^C)+S_D(→PI^D)]/(2F) ・・・(2.7.1)
 となる。

 また「ベクトル等式」
  S_A(→AI^A)+S_B(→BI^B)+S_C(→CI^C)+ S_D(→DI^D) =(→0) ・・・(2.7.2)と
  S_A(→II^A)+S_B(→II^B)+S_C(→II^C)+S_D(→II^D)=(→0)   ・・・(2.7.3)が成り立ち、
  (2.7.1)と同値である。

☆ [定理2.7]において、四面体(I^A)(I^B)(I^C)(I^D)ができそうだが、明らかではない。
これについてはまた考えることにする。










四面体ABCDの「内接球面Iの接点」と内心Iとの間のベクトル等式_[その1]

2018年04月11日 | 考察

四面体ABCDの「内接球面Iとその接点」と内心Iとの間のベクトル等式_2018.04.11(水)_[その1]
                                        
みなさん、今年の2月は寒かったですね。やっとなんとか過ごしやすい時季になりました。
  それではブログを続けます。

[0].

 2016.11.17(木)に東京出版の「大学への数学」の2016.12月号のP23のベクトルの「問題」を
 みていて、 以下に述べる[1].の内容が成り立つことに気がついた。

[1].
まず、どういうことであるかを△ABCについて述べる。それで

△ABCの3辺をBC=a,CA=b,AB=cとし内心をI,内接円Iと3辺BC,CA,ABとの接点を例によって
I^A,I^B,I^Cとする。次のことはよく知られている。

[命題1.1]
 a+b+c=2sとおく。このとき、
 AI^B=AI^C=s-a, BI^C=BI^A=s-b, CI^A=CI^B=s-c ・・・(1.1.1) である。
 なお、s-a>0 ,s-b>0,s-c>0 が成り立つ。
「証明」
 老婆心ながら、証明しておく。
 I^BとI^Cとは内接円Iとの接点であるから、直角三角形△AII^Bと△AII^Cにおいて
 II^C=II^B=半径r、AIは共通の斜辺だから△AII^B≡△AII^C。ゆえに AI^B=AI^C ・・・(1.1.2)
 また ∠IAI^C=∠IAI^B (角Aの二等分。これが内心Iを求めるときの1つの方法)となる。
 同様にして、BI^C=BI^A ・・・(1.1.3)、CI^A=CI^B ・・・(1.1.4)  そこで、
 AI^B=AI^C=x,BI^C=BI^A=y,CI^A=CI^B=z とおけば、(1.1.2)~(1.1.4)より
 BC=a=y+z・・・(1),CA=b=z+x・・・(2),AB=c=x+y ・・・(3) つまり
 y+z=a,z+x=b,x+y=c  [図1参照] この連立方程式を解く。全辺加えて 2(x+y+z)=a+b+c つまり  
 2(x+y+z)=2s ⇔ x+y+z=s ・・・(4)。 (4)-(1) ⇒ x=s-a, (4)-(2) ⇒ y=s-b,
 (4)-(3) ⇒ z=s-c こうして (1.1.1)が示された。そして b+c>a ⇔a+b+c>2a
 ⇔2s>2aなどから、s-a>0 などが成り立っている。
(「証明」終わり)

さて、△ABC⊆E^2⊆E^n としておく。但し n≧2とする。[命題1.1] より 点I^Aは辺BCを
  y:z=s-b:sーc に 内分する点 であるから、∀P∈E^n に対して、次の式が成り立つ。
 (→PI^A)=[z(→PB)+y(→PC)]/[y+z]=[z(→PB)+y(→PC)]/a ・・・(1.2.1)
同様にして、 
 (→PI^B)=[x(→PC)+z(→PA)]/[z+x]=[x(→PC)+z(→PA)]/b ・・・(1.2.2)
 (→PI^C)=[y(→PA)+x(→PB)]/[x+y]=[y(→PA)+x(→PB)]/c ・・・(1.2.3)
これらより、
 a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)を計算してみると次の[定理1.2]をうる。

[定理1.2]
 △ABC⊆E^2⊆E^n としておく。但し n≧2とする。△ABCの3辺をBC=a,CA=b,AB=cとし内心をI,
 内接円Iと3辺BC,CA,ABとの接点を例によって I^A,I^B,I^Cとする。
このとき、∀P∈E^n に対して
  a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)=a(→PA)+b(→PB)+c(→PC) ・・・(1.2.4) となる。これは、

  a(→AI^A)+b(→BI^B)+c(→CI^C)=(→0) ・・・(1.2.5)と同値である。

「証明」
(1.2.1)~(1.2.3)により、
(1.2.4)の左辺=a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)
       =[z(→PB)+y(→PC)]+[x(→PC)+z(→PA)]+[y(→PA)+x(→PB)]
       =(y+z)(→PA)+(z+x)(→PB)+(x+y)(→PC)
             =a(→PA)+b(→PB)+c(→PC) [∵ [命題1.1]の(1)(2)(3)による]

       =(1.2.4)の右辺。 ゆえに (1.2.4)が成り立つ。次に
 (1.2.4) ⇔a[(→PI^A)-(→PA)]+b[(→PI^B)-(→PB)]+c[(→PI^C)-(→PC)]=(→0)
     ⇔a(→AI^A)+b(→BI^B)+c(→CI^C)=(→0)
 ゆえに (1.2.4)⇔(1.2.5)
(「証明」終わり)

 ところで既に三角形の内心Iの「ベクトルによる重心座標表現」[三線座標を使うもの]
 で示した様に次のことが成り立つ。
[命題1.3]
 △ABC⊆E^2⊆E^n としておく。但し n≧2とする。内心をIとすると、∀P∈E^n に対して
 (→PI)=[a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)]/(a+b+c) ・・・(1.3.1)
 であって、これは a(→IA)+b(→IB)+c(→IC)=(→0) ・・・(1.3.2)と同値。
「証明」
 (1.3.1)は三線座標を使うと分かりやすい。点T∈E^2の真の三線座標(α,β,γ)と
 真の重心座標 (κ,λ,μ),κ+λ+μ=1 ・・・(#)との間には、
 α=(2S/a)κ,β=(2S/a)λ,γ=(2S/a)μ ・・・(1.3.3)が成立する。
  [(1.3.3)の証明には 重心座標と三角形の相似を使う。四面体版の四線座標については、  
 「本」のPP163~169に書いておいた。(命題10.6と命題10.8が本質的。命題10.9の
  h_A:α=1:κがポイント)そちらを 見て三線座標も同様に行うか、
   以前のblog 2009.02.16(月)(その1)・(その2)を参照のこと。]

 すると内接円の半径をr>0とすれば、内心Iの三線座標 (α,β,γ)について、
 α=β=γ=r>0 である。これは (1.3.3)から、(2S/a)κ=(2S/b)λ=(2S/c)μ=r ・・・(1.3.4) 
  と同値。(1.3.4) ⇔(2Sκ)/a=(2Sλ)/b=(2Sμ)/c=r 。ここで高校の「数学Ⅰ」の「加比の理」
 を使えば (1.3.4) は
   (2Sκ)/a=(2Sλ)/b=(2Sμ)/c=(2Sκ+2Sλ+2Sμ)/(a+b+c)
       =(2S)(κ+λ+μ)/(a+b+c)=rとなるが、(#)を使って、
 最後の等式の部分=(2S)/(a+b+c)=r となる。よって  (1.3.4) ⇔
  (2Sκ)/a=(2Sλ)/b=(2Sμ)/c=r=(2S)/(a+b+c) ・・・(1.3.5) これより まず
  r=(2S)/(a+b+c) ,
 また (2Sκ)/a=(2S)/(a+b+c) により κ=a/(a+b+c) がでてくる。同様にして、
 λ=b/(a+b+c),μ=c/(a+b+c) ・・・(1.3.6) こうして(1.3.1)が示される。
 次に
 (1.3.1) ⇒ (1.3.2)を示す。(1.3.1)は ∀P∈E^nに対して成り立つので (1.3.1)で
  特に P ⇒ Iとして
  (→II)=[a(→IA)+b(→IB)+c(→IC)]/(a+b+c) が成り立つが、この左辺=(→0) よって
   (1.3.2)が成り立つ。
 逆の (1.3.2) ⇒ (1.3.1)を示す。a(→IA)+b(→IB)+c(→IC)=(→0)とする。すると、
  ∀P∈E^nに対して a[(→PA)-(→PI)]+b[(→PB)-(→PI)]+c[(→PC)-(→PI)]=(→0)
 ⇔  (a+b+c)(→PI)=a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)
 ⇔ (→PI)=[a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)]/(a+b+c) ゆえに示された。
 (証明」終わり)
 これで次の命題がいえる。
[命題1.4]
 [定理1.2]の等式  (1.2.4)は、
    a(→II^A)+b(→II^B)+c(→II^C)=(→0)・・・(1.4.1)と同値。よってまた
  (1.2.5)とも同値。
「証明」
 (1.2.4)であるとする。(1.2.4)で P ⇒ I として
 a(→II^A)+b(→II^B)+c(→II^C)=a(→IA)+b(→IB)+c(→IC) ・・・(1.4.2)
 ここで[命題1.3]の(1.3.2)より a(→IA)+b(IB)+c(→IC)=(→0) だから、
 (1.4.2) ⇔ a(→II^A)+b(→II^B)+c(→II^C)=(→0)・・・(1.4.1)
 となる。逆に
  a(→II^A)+b(→II^B)+c(→II^C)=(→0)・・・(1.4.1)であるとする。
  ⇔ a[(→PI^A)-(→PI)]+b[(→PI^B)-(→PI)]+c[(→PI^C)-(→PI)]=(→0)
  ⇔ a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)=(a+b+c)(→PI)  ここで[命題1.3]の(1.3.1)
  より  (a+b+c)(→PI)=a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)  よって
  a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)=a(→PA)+b(→PB)+c(→PC)  となる。
(「証明」終わり)

 [定理1.2]の(1.2.4)と[命題1.3]の(1.3.1)から、次の命題が成り立つ。
[命題1.5]
 △ABC⊆E^2⊆E^n としておく。但し n≧2とする。△ABCの3辺をBC=a,CA=b,AB=cとし内心をI,
 内接円Iと3辺BC,CA,ABとの接点を例によって I^A,I^B,I^Cとする。
このとき、∀P∈E^n に対して
  (→PI)=a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)/(a+b+c)・・・(1.5.1)が成り立ち、これは
 (1.2.5),(1.4.1)と同値である。
(∵ (1.3.1) ) 

そこで
[定義1.6]
 (1.2.5),(1.4.1)及び(1.5.1)を「内心I」と「内接円Iとの接点との間に」成り立つ
「ベクトル等式」とよぶことにする。

△ABCの「内接円I」は△(I^A)(I^B)(I^C)の「外接円」であるから、△ABCの「内心I」は、
△(I^A)(I^B)(I^C)の「外心J」(「内心」ではない!)になることが分かる。そして、
 [命題1.5]から、△(I^A)(I^B)(I^C)の「外心J」の「△(I^A)(I^B)(I^C)に関する」
「ベクトルによる重心座標表現」は、
 (→PJ)=(→PI)=a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)/(a+b+c)・・・(1.5.1)であることが分かる。
 (∵ J=I )

 (∵ a/(a+b+c)+b/(a+b+c)+c/(a+b+c)=1 ) 一見して不思議な感じがするが、
 a,b,cは△(I^A)(I^B)(I^C)の3辺ではないことに注意! これを説明してみよう。
 実際に図を書いてみれば、次のことが分かる。

[命題1.7]
(I^B)(I^C)=2(s-a)sin(A/2),(I^C)(I^A)=2(s-b)sin(B/2),
 (I^C)(I^A)=2(s-c)sin(C/2),∠(I^B)(I^A)(I^C)=90°-(A/2),
 ∠(I^C)(I^B)(I^A)=90°-(B/2), ∠(I^A)(I^C)(I^B)=90°-(C/2) ・・・(1.7.1)と
 なることが分かる。
[これについては、またいつの日か示すことにする。] これより、
2008.09.01(月)のblogでの(2.6)式で述べた三角形の角の正弦による「外心J」の表示式に
よれば、△(I^A)(I^B)(I^C)の「外心J」の「△(I^A)(I^B)(I^C)に関する」
 「ベクトルによる重心座標表現」は、
(→PJ)
=[sin2(90°-A/2)(→PI^A)+sin2(90°-B/2)(→PI^B)+sin(90°-C/2)(→PI^C)]
/[sin2(90°-A/2)+sin2(90°-B/2)+sin2(90°-C/2)] ・・・(1.7.2)
であるが、
(1.7.2)の右辺=[sinA(→PI^A)+sinB(→PI^B)+sinC(→PI^C)]/[sinA+sinB+sinC]
             =[a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)/(a+b+c) (∵ 正弦定理 )と
 なる。
 即ち、小さい △(I^A)(I^B)(I^C)の「外心J」の「△(I^A)(I^B)(I^C)に関する」
 ベクトルによる重心座標表現は、
 (→PJ)=[a(→PI^A)+b(→PI^B)+c(→PI^C)/(a+b+c) であって、
 これが元の大きい△ABCの「内心I」の「△ABC)に関する」ベクトルによる重心座標表現
 に等しい、つまり、(→PJ)=(→PI) ⇔ J=I というのが[定理1.2]の内容である。