三角形の構成理論-2009.8.21(金)
<記号の約束>
mは自然数、E^mでm次元ユークリッド空間を表すものとし、「ベクトルAB」などを(→AB)で表す。
ベクトル(→AB)と(→AC)の「内積」を((→AB),(→AC))で表わし、また、「三角形ABC」の3辺BC,CA,ABを
BC=a,CA=b,AB=cとし、その面積をSで表す。
「垂心四面体ABCD」の6辺を、BC=a,CA=b,AB=c,AD=d,BD=e,CD=f とする。
その体積をV,頂点A,B,C,Dの対面の△BCD,△ACD,△ABD,△ABCの面積をそれぞれ
S_A,S_B,S_C,S_D とおく。またdetJ(2),detJ(3)はいつもの通りとする。
1.三角形ABCについて次のことが成立した。
△ABC⊆E^2⊆E^m (m≧2)としておく。BC=a,CA=b,AB=c …(1.1.1) として、
3つの「ベクトルの内積」((→AB),(→AC)),((→BA),(→BC)),((→CA),(→CB))を
それぞれ x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB)) …(1.1.2)とおく。
このとき
|(→BC)|^2=|(→AC)-(→AB)|^2=|(→AB)|^2+|(→AC)|^2-2((→AB),(→AC))から
x=((→AB),(→AC))=(1/2)[|(→AB)|^2+|(→AC)|^2-|(→BC)|^2] よって
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2],同様にして
y=(1/2)[c^2+a^2-b^2] , z=(1/2)[a^2+b^2-c^2] …(1.1.3)となる。
◎ この逆も成り立つ:つまり
[命題1.1.2]
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2],y=(1/2)[c^2+a^2-b^2],z=(1/2)[a^2+b^2-c^2]
⇒ x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))
「証明」
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2]⇒ x=((→AB),(→AC)) を
示しておこう。
b^2=|(→AC)|^2,c^2=|(→AB)|^2,a^2=|(→BC)|^2 だから
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2]=(1/2)[|(→AC)|^2+|(→AB)|^2-|(→BC)|^2]
=(1/2)[|(→AC)|^2+|(→AB)|^2-|(→AC)-(→AB)|^2]=(1/2)[2((→AB),(→AC))]
=((→AB),(→AC)) すなわち x=((→AB),(→AC)) 他も同様である。
([命題1.1.2] の「証明」終わり)
次に
[命題1.2.1] 上記と同じ記号のもとで、△ABCについて「内積」の定義から
x+y=AB^2=c^2, x+z=AC^2=b^2, y+z=BC^2=a^2 …(1.2.1) が成り立つ。
「証明」
例えば x=((→AB),(→AC))=(-(→BA),(→BC)-(→BA))=|(→AB)|^2-((→BA),(→BC))=AB^2-y
すなわち x=AB^2-y ⇔ x+y=AB^2=c^2 が成立。他も同様である。
([命題1.2.1]の「証明」終わり)
[命題1.2.2] ---(1.2.1)を満たす x,y,zの「一意性」---
△ABCについて[命題1.2.1]の(1.2.1)式を満たすx,y,zは
x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))に限る。
「証明」[命題1.2.1]の(1.2.1)をx,y,zを未知数とする連立方程式と考える。
(1.2.1)の三式の両辺を加えて
2(x+y+z)=a^2+b^2+c^2 よって x+y+z=(1/2)[a^2+b^2+c^2] …(1.2.2)
これから x=(1/2)[b^2+c^2-a^2],y=(1/2)[c^2+a^2-b^2] ,z=(1/2)[a^2+b^2-c^2]
と解ける。これと[命題1.1.2]から x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))
となる。
([命題1.2.2]の「証明」終わり)
☆ x+y=AB^2=c^2,x+z=AC^2=b^2,y+z=BC^2=a^2 ならば
x+y>0,x+z>0,y+z>0 であるから 以上のことより、次の[命題1.3.1]が成り立つ。
[命題1.3.1]
△ABCの3辺BC,CA,ABをBC=a,CA=b,AB=cとし、x,y,zを[命題1.2.1]の(1.2.1)式を満たす
【実数】としたとき、√(x+y)=AB=c,√(x+z)=AC=b,√(y+z)=BC=a …(1.3.1)
かつ x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB)) …(1.3.2)となる。
さて
「△ABC」の面積をSとすると4(S^2)は 「上の」x,y,zを用いて
4(S^2)=yz+xz+xy …(1.3.3)とx,y,zの2次の対称式で表されるのであった。
◎ これは【Goo】の2008年のBlogに書いてあるが、いつかを調べていると、【執拗な攻撃者】にまた
【妨害】されて【ネットに繋げなくされる】ので申し訳ないが皆さんで調べて下さい。
もう1年以上も【攻撃】・【侵入】を受け続けているので困っている。
[証明」は簡単である。
[命題1.3.2]
△ABCの3辺BC,CA,ABをBC=a,CA=b,AB=cとし、x,y,zを
x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))とおけば
4(S^2)=(2S)^2=yz+xz+xy …(1.3.3)
「証明」
受験生なら知っているだろう、 (2S)^2=|(→AB)|^2×|(→AC)|^2-|((→AB),(→AC))|^2 を使う。
|(→AB)|=c,|(→AC)|=b,((→AB),(→AC))=x なので (1.2.1) のx+y=c^2,x+z=b^2 から
(2S)^2=(b^2)(c^2)-x^2=(x+z)(x+y)-x^2=x^2+xy+xz+yz-x^2=yz+xz+xy
([命題1.3.2]の「証明」終わり )
◎つまり △ABCでの3辺をBC=a,CA=b,AB=c,その面積をS,x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),
z=((→CA),(→CB))とおけば、 x+y=c^2,x+z=b^2,x+y=a^2 ,
(2S)^2=yz+xz+xy>0 であって √(x+y),√(x+z),√(y+z) は順に△ABCの3辺c,b,aをなす。
そしてa,b,cとの関係は、
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2],y=(1/2)[c^2+a^2-b^2],z=(1/2)[a^2+b^2-c^2]
この逆も成り立つのである。まず、これが今回の目標の一つで「三角形の場合」である。
[定理1.4]
x,y,zが【実数】(したがってマイナスになるときもある)として、
x+y>0 ,x+z>0 ,y+z>0 …(1.4.1) かつ yz+xz+xy >0 …(1.4.2)であるとする。
このとき、次のことが成り立つ。
(1) 正の数 √(x+y),√(x+z),√(y+z)は三角形の三辺をなす。
すなわち √(x+y)+√(x+z)>√(y+z),かつ √(x+z)+√(y+z)>√(x+y),かつ
√(y+z)+√(x+y)>√(x+z) ・・・(1.4.3)
(2)
√(x+y)=AB ,√(x+z)=AC,√(y+z)=BC とおくと
√(x+y),√(x+z),√(y+z)は順に△ABCの三辺 AB,AC,BC …(1.4.4)となり、
x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB)) …(1.4.5)
そして √(x+y)=c,√(x+z)=b,√(y+z)=aとおけば、
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2] ,y=(1/2)[c^2+a^2-b^2],z=(1/2)[a^2+b^2-c^2] …(1.4.6)
また △ABCの面積をSとすれば 2S=√(yz+xz+yz) ...(1.4.7) となる。
(3)
角A,B,Cについて、
cosA=x/[√(x+y)√(x+z)] ,cosB=y/[√(x+y)√(y+z)] ,cosC=z/[√(x+z)√(y+z)] …(1.4.8)
となる。
「証明」
(1) (1.4.3)についてはx,y,zの対称性から √(x+y)+√(x+z)>√(y+z) ...(1.4.9)を示せば十分である。
(1.4.9)の両辺>0なので両辺平方しても同値
√(x+y)+√(x+z)>√(y+z) ⇔ [√(x+y)+√(x+z)]^2>[√(y+z)]^2
⇔ (x+y)+(x+z)+2√(x+y)√(x+z)>y+z ⇔ x+√(x+y)√(x+z)>0 そこで
⇔ √(x+y)√(x+z)>-x ...(1.4.10) を「証明」すればよい。
(1.4.10)の左辺>0 だから
(ア)x≧0 のとき、 (1.4.10)の右辺≦0となり(1.4.10)は成立する。
(イ) x<0 のときは、-x>0 よって このとき、√(x+y)√(x+z)>-x は[√(x+y)√(x+z)]^2>(-x)^2と同値になる。
ところが [√(x+y)√(x+z)]^2-(-x)^2=(x+y)(x+z)-x^2=yz+xz+xy …(1.4.11) となるが、
条件の yz+xz+xy >0 …(1.4.2)により [√(x+y)√(x+z)]^2-(-x)^2=yz+xz+xy>0
ゆえに [√(x+y)√(x+z)]^2>(-x)^2, -x>0 のときだから √(x+y)√(x+z)]^2>(-x) となり、
やはり (1.4.10)は成立する。
よって(1)は「証明」された。
(2)
(1)より (1.4.4)~(1.4.7)が成り立つことは、√(x+y)=c,√(x+z)=b,√(y+z)=c ならば
x+y=c^2,x+z=b^2,y+z=a^2となるので (1.1.3),[命題1.1.2],[命題1.2.2],[命題1.3.1],[命題1.3.2]
により成立する。
(3)
「内積」の定義より cosA=((→AB),(→AC))/[|(→AB)||→AC)|]=x/[AB×AC]=x/[√(x+y)√(x+z)]
cosB=((→BA),(→BC))/[|(→BA)||→(BC)|]=y/[BA×BC]=y/[√(x+y)√(y+z)],cosCも同様である。
([定理1.4]の「証明」終わり)
「注意1.4.2」
実数 x,y,zについて
x+y>0 ,x+z>0 ,y+z>0 ならば x,y,zのうち「0以下になるのは唯一つだけ」で
残りの2つは正の数でなければならない。
「なぜなら、仮にx≦0 とすれば x+y>0から y>0,またx+z>0からz>0 でなければならない。
y≦0のときもz≦0 としたときも同様である。」
◎これは[定理1.4]において、x=((→AB),(→AC)),y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))
なので
x<0 ,y>0,z>0 ⇔ ∠BACが鈍角,∠ABCと∠ACBは鋭角
x=0, y>0,z>0 ⇔ ∠BACが直角,∠ABCと∠ACBは鋭角
x>0, y>0,z>0 ⇔ ∠BAC,∠ABCと∠ACBはみな鋭角
を意味し、x,y,zは「三角形の性質」をよく反映している。
以上により、次のことが言える。
[定理1.5]
△ABCにおいて [定理1.4]の条件:x+y>0,x+z>0,y+z>0 かつ yz+xz+xy>0
を満たす【実数】 x,y,zで「△ABCの性質を調べる」ことが、
△ABCの3辺AB=c,AC=b,BC=aの正の数a,b,cでb+c>a,c+a>b、a+b>cを満たすもので
「△ABCの性質を調べる」ことと「同じように」できる。
これらはいわば、「図形,多様体などの座標変換」に相当する。REAL={実数全体}とおく。
T(3)={△ABCの全体}とおく。
(1) M(3)={(a,b,c)∈(REAL)^3|a>0,b>0,c>0,b+c>a,c+a>b,a+b>c}とおけば,
M(3)は3次元空間(REAL)^3の部分集合である。T(3)={△ABCの全体}を調べることは集合M(3)を調べることであると
いってよいだろう。
(2)IP(3)={(x,y,z)∈(REAL)^3|x+y>0,x+z>0,y+z>0,yz+xz+xy>0}も3次元空間(REAL)^3の部分集合である。
( IP(3)は「内積」Inner Product の略のつもり)
T(3)={△ABCの全体}を調べることは集合IP(3)を調べることであると言える。
(3) 変数変換の写像 Φ:M(3)→IP(3) を
Φ(a,b,c)=((1/2)[b^2+c^2-a^2],(1/2)[c^2+a^2-b^2],(1/2)[a^2+b^2-c^2])
と定義する。すなわち fは2次変換で
x=(1/2)[b^2+c^2-a^2] ,y=(1/2)[c^2+a^2-b^2],z=(1/2)[a^2+b^2-c^2] …(1.5.1)である。
このとき、x+y=c^2>0, x+z=b^2>0 ,y+z=a^2>0,yz+xz+yz>0となり、
△ABCの面積をSとすれば 2S=√(yz+xz+yz)
(4) (3)の逆変換 Ψ:IP(3)→M(3) は Ψ(x,y,z)=(√(y+z),√(x+z),√(x+y))…(1.5.2)である。
すなわち a=√(y+z),b=√(x+z),c=√(x+y) …(1.5.3)
(Ψ・Φ)(a,b,c)=(a,b,c) ,(Φ・Ψ)(x,y,z)=(x,y,z) である。
(5) この様に写像 Φ,Ψは1:1かつ「上への」写像で「互いに他の逆写像」で M(3)とIP(3)は1:1に対応する。
☆したがって「どんな△ABCも上のIP(3)の要素 x,y,zを用いて得られる」わけである。こうして
「△ABCを表現する(前から使用しているが)新しいパラメータ x,y,zを得たことになる。」といえよう。
変数はどちらも3つである。
なお
◎ 「△ABCが正三角形 ⇔ a=b=c ⇔ x=y=z」である。
[命題1.6] ---[定理1.4]の系---「3辺の三角不等式は試す必要がない!ので問題作りが助かると思う」
実数x,y,zが x>0,y>0,z>0であれば、
√(y+z),√(x+z),√(x+y)は「鋭角三角形の3辺になりうる」
[証明」
x>0,y>0,z>0のとき、[定理1.4]の条件
x+y>0 ,x+z>0 ,y+z>0 …(1.4.1) かつ yz+xz+xy >0 …(1.4.2)は【自然に】成立する。
ゆえに AB=√(x+y),AC=√(x+z),BC=√(y+z)は鋭角三角形ABCを形造る。
「注意」:x>0,y>0,z>0 だから∠BAC,∠ABC,∠ACBはみな鋭角であることを注意しておく。
また、この方法で造ると「3辺の間の三角不等式は自然に成り立つ」ので簡単に「三角形が作れる」ので
便利である。
[命題1.7] ---[定理1.4]の系---
自然数x,y,zをx<y<z と選んでおけば「3辺の長さがみな異なる鋭角三角形」がQ(有理数体)上せいぜい
2次代数拡大の長さの3辺 √(x+y),√(x+z),√(y+z) のもので無数にできる。そして
√(x+y)<√(x+z)<√(y+z) …(1.7.1)
「証明」x>0,y>0,z>0 で x<y<zだから ( x=((→AB),(→AC))>0⇔∠BACが「鋭角」などに注意)
x+y<x+z またx<yの両辺にzを加えてx+z<y+z よって x+y<x+z<y+z ⇔√(x+y)<√(x+z)<√(y+z)
([命題1.7」の「証明」終わり)
[命題1.8]
[定理1.4]の条件(1.4.1),(1.4.2)を満たす x,y,zを用いて ∠BACが鈍角の「鈍角三角形ABC」を造るには、
x<0 のうち、|x|<y かつ |x|<z かつ |x|<(yz)/[y+z]と なるように選べば良い
「証明」
∠BACが鈍角⇔ x<0 このときy>0,z>0 で、 x+y>0,x+z>0 からy>-x ,z>-x またyz+xz+xy >0となるには
yz+(y+z)x>0 ⇔ yz>(y+z)(-x) となることから分かる。
[例1.9]
(1) x=1,y=2,z=3 として AB=√(x+y)=√(1+2)=√3,AC=√(x+y)=√(1+3)=2,BC=√(2+3)=√5
ゆえに(c,b,a)=(√3,2,√5)が一つできる。 三角不等式を試す必要はない。
(2) x=0 のとき( x=((→AB),(→AC))=0⇔∠BACが直角 )∠BAC=90°の直角三角形で、y>0,z>0 で
AC=√(x+z)=√(z),AB=√(x+y)=√(y),斜辺BC=√(y+z)
の直角三角形ABCができる。[三平方の定理も成り立っている。{√(z)}^2+{√(y)}^2={√(y+z)}^2 ]
(3)
x=77/2,y=51/2,z=21/2 として AB=√(x+y)=√(128/2)=8,√(x+z)=√(98/2)=7,
√(y+z)=√(72/2)=6 よって (c,b,a)=(8,7,6)の「鋭角三角形」
(4)
x=-2,y=4,z=5 とすると x+y=2>0、x+z=3>0,y+z=9>0,(yz)/[y+z]=20/9>|-2|なので
(c,b,a)=(√2,√3,3)となり、∠Aが鈍角である。
--垂心四面体の構成理論及びその展開図の作成(その1)-2009.8.21(金) --に続く