四面体ABCDの「内接球面」の各側面との4つの接点「I^A,I^B,I^C,I^D」の重心座標_2017_01_31(火)
[1]
「重心座標による幾何学」の単行本化の以前に研究していた、2007年頃にWordで
打ったものを印刷したB4用紙の冊子第1部~第4部が2016_11_25(金)に見つかった。
その第4部に次のことが記してあった。
[命題1.1]
四面体ABCD⊂E^3(E^3は3次元ユークリド空間)内の1点Tで、その
重心座標が、T(κ,λ,μ,ν),ただしκ+λ+μ+ν=1・・・(1.1.1)
の点Tから、「頂点Dの対面△ABCを含む平面」に下した垂線の足をT^Dとすると、
そのT^Dの△ABCに関する真の重心座標は
(κ+[{|→BC|^2(→BA,→BD)-(→BA,→BC)(→BC,→BD)}ν]/(4S_D)^2
,λ+[{|→AC|^2(→AB,→AD)-(→AB,→AC)(→AC,→AD)}ν]/(4S_D)^2
,μ+[{|→AB|^2(→AC,→AD)-(→AB,→AC)(→AB,→AD)}ν]/(4S_D)^2 )・・・(1.1.2)
=
(κ+ν[{a^2(b^2+c^2-a^2)+e^2(a^2+b^2-c^2)+f^2(c^2+a^2-b^2)-2a^2d^2}/(16S_D)^2]
,λ+ν[{b^2(c^2+a^2-b^2)+f^2(b^2+c^2-a^2)+d^2(a^2+b^2-c^2)-2b^2e^2}/(16S_D)^2]
,μ+ν[{c^2(a^2+b^2-c^2)+d^2(c^2+a^2-b^2)+e^2(b^2+c^2-a^2)-2c^2f^2}/(16S_D)^2] )
・・・(1.1.3) である。
・・・というものだった。(1.1.2)の「証明」はまたいつか発表することにして、
(1.1.2)→(1.1.3)となることの
4{|→BC|^2(→BA,→BD)-(→BA,→BC)(→BC,→BD)}
=a^2(b^2+c^2-a^2)+e^2(a^2+b^2-c^2)+f^2(c^2+a^2-b^2)-2a^2d^2 などの等式は、
「一般の四面体ABCDの二面角 cosθ(A,D)の公式を導く計算」と同様で、
本「重心座標による幾何学」P223の[命題12.31]の(10)~(12)の「証明]と同じであるから、
そちらを見てください。大事なことは、P225からP226の公式を見て
16(S_A)(S_D)cosθ(A,D)=
a^2(b^2+c^2-a^2)+f^2(c^2+a^2-b^2)+e^2(a^2+b^2-c^2)-2a^2d^2,
16(S_B)(S_D)cosθ(B,D)=
f^2(b^2+c^2-a^2)+b^2(c^2+a^2-b^2)+d^2(a^2+b^2-c^2)-2b^2e^2
16(S_C)(S_D)cosθ(C,D)=
e^2(b^2+c^2-a^2)+d^2(c^2+a^2-b^2)+c^2(a^2+b^2-c^2)-2c^2f^2・・・(1.1.4)
により、[命題1.1]は次のように単純になることである。
[命題1.2]
四面体ABCD⊂E^3としておく。T∈E^3とし、その真の「重心座標」が
T(κ,λ,μ,ν),ただしκ+λ+μ+ν=1・・・(1.2.1)であるとする。
このとき、「頂点Dの対面△ABCを含む平面」に下した垂線の足をT^Dとすると、
そのT^Dの△ABCに関する真の重心座標は、
(κ+ν[S_A/S_D]cosθ(A,D),λ+ν[S_B/S_D]cosθ(B,D),
,μ+ν[S_C/S_D]cosθ(C,D) ) ・・・(1.2.2)
「証明」
(1.1.4)を(1.1.3)に代入してS_Dを約せばよい。(証明終わり)
[命題1.2]を「ベクトルによる重心座標表現」として書けば、
[命題1.3]
四面体ABCD⊂E^3としておく。T∈E^3⊂E^m(m≧3)とし、その真の「重心座標」が
T(κ,λ,μ,ν),ただしκ+λ+μ+ν=1・・・(1.3.1)であるとする。
このとき、「頂点Dの対面△ABCを含む平面」に下した垂線の足をT^Dとすると、
そのT^Dの△ABCに関する「ベクトルによる重心座標表現」は、
∀P∈E^m に対し、
(→PT^D)=[κ+ν[S_A/S_D]cosθ(A,D)](→PA)+[λ+ν[S_B/S_D]cosθ(B,D)](→PB)
+[μ+ν[S_C/S_D]cosθ(C,D)](→PC) ・・・(1.3.2) となる。
なお、(1.3.2)において、
[命題1.4]
[κ+ν[S_A/S_D]cosθ(A,D)]+[λ+ν[S_B/S_D]cosθ(B,D)]
+[μ+ν[S_C/S_D]cosθ(C,D)]=1 ・・・(1.4) となるから、
(1.3.2) は△ABCに関する重心座標表現である。
「証明」
κ+λ+μ+ν=1 と四面体の「第一余弦定理」
(S_A)cosθ(A,D)+(S_B)cosθ(B,D)+(S_C)cosθ(C,D)=S_D・・・(1.4.1)
を用いる。何故なら、このとき(1.4)の左辺は
κ+λ+μ+ν/(S_D)×[(S_A)cosθ(A,D)+(S_B)cosθ(B,D)+(S_C)cosθ(C,D)]
=κ+λ+μ+[ν/(S_D)]×(S_D)=κ+λ+μ+ν=1 (「証明」終わり)
☆ [第一余弦定理」については、「本」のP210を参照のこと。以後「本」といえば、
「重心座標による幾何学」を指すことにする。同様にして、
[命題1.5.A]
四面体ABCD⊂E^3としておく。T∈E^3⊂E^m(m≧3)とし、その真の「重心座標」が
T(κ,λ,μ,ν),ただしκ+λ+μ+ν=1・・・(1.5.1)であるとする。
このとき、「頂点Aの対面△BCDを含む平面」に下した垂線の足をT^Aとすると、
そのT^Aの△BCDに関する「ベクトルによる重心座標表現」は、
∀P∈E^m に対し、
(→PT^A)=[λ+κ[S_B/S_A]cosθ(B,A)](→PB)+[μ+κ[S_C/S_A]cosθ(C,A)](→PC)
+[ν+κ[S_D/S_A]cosθ(D,A)](→PD) ・・・(1.5.A.2) となる。
・・・ などとなる。
[2]
これらを用いて、四面体ABCDの内心をIとしたとき、四面体ABCDの
内接球面と△BCD,△ACD,△ABD,△ABCとの接点をI^A,I^B,I^C,I^D として、
それらの「四面体ABCDに関する」重心座標を求めてみよう。
まず、
次のことを思い出そう。
[事実1.6]
四面体ABCDの内心Iの「四面体ABCDに関する」真の重心座標は、
(S_A/(2F),S_B/(2F),S_C/(2F),S_D/(2F) )
I^Dは、内心Iから△ABCを含む平面に下した垂線の足であるから、[命題1.2]の
(1.2.2)式において、κ=S_A/(2F),λ=S_B/(2F),μ=S_C/(2F),ν=S_D/(2F)
として、
κ+ν[S_A/S_D]cosθ(A,D)=S_A/(2F)+S_D/(2F)[S_A/S_D]cosθ(A,D)
=S_A/(2F)[1+cosθ(A,D)] ・・・(2.1) などから、
[定理2.2.D]
四面体ABCDの内心をIとしたとき、四面体ABCDの
内接球面と△ABCを含む平面との接点をI^D とすると、I^D の
「△ABCに関する」真の重心座標は、
(S_A/(2F)[1+cosθ(A,D)] ,S_B/(2F)[1+cosθ(B,D)] ,S_C/(2F)[1+cosθ(C,D)] )
・・・(2.2.D.1) となり、
したがってI^D の「四面体ABCDに関する」真の重心座標は、
(S_A/(2F)[1+cosθ(A,D)] ,S_B/(2F)[1+cosθ(B,D)] ,S_C/(2F)[1+cosθ(C,D)] ,0 )
となる。同様に考えて、
[定理2.3]
四面体ABCDの内心をIとしたとき、四面体ABCDの
内接球面と△BCD,△ACD,△ABD,△ABCとの接点をI^A,I^B,I^C,I^D として、
それらの「四面体ABCDに関する」真の重心座標は、
I^Aは、
(0,S_B/(2F)[1+cosθ(B,A)],S_C/(2F)[1+cosθ(C,A)],S_D/(2F)[1+cosθ(D,A)] )
・・・(2.3.1)
I^Bは、
(S_A/(2F)[1+cosθ(A,B)],0,S_C/(2F)[1+cosθ(C,B)],S_D/(2F)[1+cosθ(D,B)] )
・・・(2.3.2)
I^Cは、
(S_A/(2F)[1+cosθ(A,C)],S_B/(2F)[1+cosθ(B,C)],0,S_D/(2F)[1+cosθ(D,C)] )
・・・(2.3.3)
I^Dは、
(S_A/(2F)[1+cosθ(A,D)],S_B/(2F)[1+cosθ(B,D)],S_C/(2F)[1+cosθ(C,D)],0 )
・・・(2.3.4)
である。
「確認」
念のため、(2.3.1)が真の重心座標であることを、確かめておこう。
0+S_B/(2F)[1+cosθ(B,A)]+S_C/(2F)[1+cosθ(C,A)]+S_D/(2F)[1+cosθ(D,A)]
=(S_B+S_C+S_D)/(2F)
+1/(2F)[(S_B)cosθ(B,A)+(S_C)cosθ(C,A)+(S_D)cosθ(D,A)]
=1/(2F)[S_B+S_C+S_D]+1/(2F)[S_A] (∵第一余弦定理)
=1/(2F)[S_A+S_B+S_C+S_D]=1/(2F)×(2F) (∵2F=S_A+S_B+S_C+S_D )
=1
よってO.Kである。他も同様である。
なお、二面角 θ(B,A)等において、0°<θ(B,A)<180°⇒ -1<cosθ(B,A)<1
⇔ 0<1+cosθ(B,A)<2 より 0<S_B/(2F)[1+cosθ(B,A)]<S_B/F<1
となるので、内接球面と△BCDとの接点I^Aは△BCDの内部にあることが分かる。
ここで、S_B<S_A+S_C+S_D (∵「本」のP211参照)⇔ 2S_B<S_A+S_B+S_C+S_D
⇔2S_B<2F ⇔S_B<F を用いた。
[3]
特に等面四面体ABCDにおいては、S_A=S_B=S_C=S_D により
[定理2.3の系1]
I^Aは、
(0,1/4[1+cosθ(B,A)],1/4[1+cosθ(C,A)],1/4[1+cosθ(D,A)] )
・・・(2.3.5)
I^Bは、
(1/4[1+cosθ(A,B)],0,1/4[1+cosθ(C,B)],1/4[1+cosθ(D,B)] )
・・・(2.3.6)
I^Cは、
(1/4[1+cosθ(A,C)],1/4[1+cosθ(B,C)],0,1/4[1+cosθ(D,C)] )
・・・(2.3.7)
I^Dは、
(1/4[1+cosθ(A,D)],1/4[1+cosθ(B,D)],1/4[1+cosθ(C,D)],0 )
・・・(2.3.8)
[4]
さらに特に正四面体では、二面角の余弦 cosθ(B,A)=cosθ(C,A)=cosθ(D,A)
=cosθ(B,C)=cosθ(B,D)=cosθ(C,D)=1/3
なので、
[定理2.3の系2]
正四面体では
I^Aは、(0,1/3,1/3,1/3) すなわち△BCDの重心 ・・・(2.3.9)
I^Bは、(1/3,0,1/3,1/3) すなわち△ACDの重心 ・・・(2.3.10)
I^Cは、(1/3,1/3,0,1/3) すなわち△ABDの重心 ・・・(2.3.11)
I^Dは、(1/3,1/3,1/3,0) すなわち△ABCの重心 ・・・(2.3.12)
となることが分かった。
★
以上により、「本」でも分かっていなかった内接球面と4つの各面
との接点の真の重心座標を「二面角の余弦」を用いて、決定することができた。
なお、「等面四面体」については必要条件として、まだ成り立つことが
あるので、次回にそのことと、また「傍接球面」についても記す。