[三角形の外心のベクトルによる重心座標表現]2008.09.01(月)
「ベクトル AB」をここでは (→AB)で表すことにする。
三角形ABCの「外心」を「外心O」とし、「垂心H」の場合と同様に、
xを (→AB)と(→AC)との「内積」とする。
x=((→AB),(→AC)) ,
同様に
y=((→BA),(→BC)),z=((→CA),(→CB))である。
このとき、x+y=c^2,x+z=b^2,y+z=a^2 ・・・(2.1)で
x=(b^2+c^2-a^2)/2,y=(c^2+a^2-b^2)/2,z=(a^2+b^2-c^2)/2・・・(2.2)
yz+xz+xy=4(S^2)・・・(2.3)であった。さらに ∠BAC=Aなることと「内積」の定義から
x=((→AB),(→AC))=(AB)(AC)cos∠BAC=cbcosA
すなわち、
x=bccosA,同様にy=cacosB,z=abcosC ・・・(2.4)である. また、
Sを△ABCの面積として 2S=bcsinA=casinB=absinC ・・・(2.5)
三角形ABC⊂E^2⊂E^mとする。
ここにm≧2とし、E^mは m次元ユークリッド空間とする。
さて、「外心O」の△ABCに関する「ベクトルによる重心座標表現」を述べる。
点PをP∈E^mなる任意の点としたとき、
(あ)
三角関数の表示では、
(→PO) =1/(4sinAsinBsinC)×{sin2A(→PA)+sin2B(→PB)+sin2C(→PC)}・・・(2.6)であって、
簡単な計算で sin2A+sin2B+sin2C=4sinAsinBsinC ・・・(2.7)となるので
(2.5)は「係数の和=1」となる「ベクトルによる重心座標表現」である。
(い)
「内積」による表示では、 (→PO)=1/(8(S^2)){(a^2)x(→PA)+(b^2)y(→PB)+(c^2)z(→PC)} ・・・(2.8)
このとき、(2.1)(2.2)から
(a^2)x+(b^2)y+(c^2)z=8(S^2)・・・(2.9)
が下の◎のように簡単に示されるので、
(2.8)は「係数の和=1」の 「ベクトルによる重心座標表現」である。
(う)
「3辺」a,b,cによる表示では、(い)から(2.2)を用いて
(→PO)
=1/(16(S^2))× {(a^2)(b^2+c^2-a^2)}(→PA)
+1/(16(S^2))×{(b^2)(c^2+a^2-b^2)}(→PB)
+1/(16(S^2))×{(c^2)(a^2+b^2-c^2)}(→PC) ・・・(2.10)
となる。
これも「係数の和=1」の「ベクトルによる重心座標表現」となることは(2.7)から明らかである。
◎ まず(2.9)は(2.1),(2.3)から
(a^2)x+(b^2)y+(c^2)z=(y+z)x+(x+z)y+(x+yz=2(yz+xz+xy)=8(S^2) としてでてくる。
以上(あ)(い)(う)の3通りを示したが、「(い)から(あ)を」計算が少しいるが、次のように導くことができる。
(2.4)(2.5) 及び「2倍角の公式」を用いる。
(8(S^2))=2(2S)^2=2(casinB)(absinC)=2(a^2)bc(sinB)(sinC)
よって 1/(8(S^2))に代入すると
1/(8(S^2))=1/{2(a^2)bc(sinB)(sinC)}だから
まず
1/(8(S^2))×{(a^2)x}
=1/{2(a^2)bc(sinB)(sinC)}×{(a^2)x}=x/2bc(sinB)(sinC)
=bc(cosA)/{2bc(sinBsinC)}=cosA/(2sinBsinC)
=2sinAcosA/(4sinAsinBsinC)=sin2A/(4sinAsinBsinC)
つまり、 1/(8(S^2))×{(a^2)x}=sin2A/(4sinAsinBsinC) ・・・(2.11)となる。
同様にして 1/(8(S^2))×{(b^2)y}=sin2B/(4sinAsinBsinC) ・・・(2.12)
1/(8(S^2))×{(c^2)z}=sin2C/(4sinAsinBsinC) ・・・(2.13) ゆえに (い)から(あ)がでてくる。
この場合「計算」が、「垂心H」の時ほど容易ではなかった。
☆ 最後に 図形的なことを述べておく。(い)によれば,辺BA,AC,CB上、またはその延長上に点L,M,Nをそれぞれ
BN:NA=(a^2)x:(b^2)y、AM:MC=(c^2)z:(a^2)x
CL:LB=(b^2)y:(c^2)zとなるようにとったとき、
「直線AL、直線BM、直線CNは1点で交わり」その点が「外心O」である。(あ)によれば、
BA,AC,CB上,または
その延長上に
点L,M,Nをそれぞれ
BN:NA=sin2A:sin2B、AM:MC=sin2C:sin2A
CL:LB=sin2B:sin2Cの
比に分ける点となるようにとったとき、
「直線AL、直線BM、直線CNは1点で交わり」、その点が「外心O」である。
また、(あ)のときは、△OBC:△OCA:△OAB=sin2A:sin2B:sin2C
ただし A=90度のような直角三角形のときは、sin2A=0であるし、Aが鈍角のときは
sin2A<0なので比に注意する必要がある。