緋野晴子の部屋

「たった一つの抱擁」「沙羅と明日香の夏」「青い鳥のロンド」「時鳥たちの宴」のご紹介と、小説書きの独り言を綴っています。

これでいい。(いい?)

2014-09-23 16:33:04 | 千里の道
「青い鳥のロンド」 通算5度めの改稿を終えました。

新潮の応募前までに3度。 落選した秋に1度。 この夏からまた1度。

連休明けに、「これでいい。 とうとうできた」 と思いました。 あとは表記のチェックをするだけです。応援して

くださる皆様に、「とうとうできました!」 と報告できると思うと嬉しくて、静かに興奮しておりました。

けれど・・・・表記チェックのためにまた文面を辿っていますと、なんだか、いかにも私っぽい嫌~な文章だなぁ

と思えてきたり、作品の自立的帰結としてはこれでいいように思えるものの、どこか軽い印象を与えやしない

か、 小説とはもっと鮮烈な印象を与えるものでなければならないのではないか、などと思えてきたりして、や

はり賞に は届かないだろうなぁと、早くも改稿の喜びは縮んでくるのでした。

でも、まあ、これ以上原稿を睨んでいてもしかたがありません。 もう目が変になっていますので、これ以上推

敲しても堂々めぐりになるだけです。 よって、この第5回めの改稿をもって、千里の道の21歩めとしたいと

思います。


やれやれ、文学作品を作るというのは、きりのない行為ですね。

芥川龍之介の「羅生門」ような、完璧な芸術品を創ってみたいものです。


二度目の博多行(海の中道海浜公園) - 忘れ難い出来事

2014-09-08 14:18:05 | 空蝉
平凡な日常にも、何がしかの小さな事件は起こるものです。

今年のお盆は13・14・15日と夫婦で息子のいる博多へ行ってきました。 前回の旅で、夜行バスに耐

えるだけの若さはもはや無いと悟った我々は、今回は新幹線で行きました。 新幹線は早い! 豊橋から僅

か3時間50分、我が家の最寄駅からでも5時間で着いてしまいました。

(つまり、家から豊橋まで出るのに1時間もかかっているわけです。ああ・・・飯田線よ)

13日は三人で名物博多ラーメンをいただいたあと、息子のアパートでゆっくり談話。とは言いながら、私

はやっぱり主婦の習性で汚れた所を見つけてはついゴシゴシ。「お母さんは休まない人だね」と笑いながら

も、息子は息子で 「喋りながらこれお願いできる?」 などと、ちゃっかり縫い物を差し出したりして。


14日は海の中道海浜公園へ行き、涼しい水族館で過ごしました。海の生物を見歩きながら息子が小さかっ

た頃の思い出話や将来のことなど飽かず話して、夕方のイルカショウを堪能。イルカにも、イルカの大ジャ

ンプに興奮して跳ね回る幼児たちの無邪気さにも癒されました。 夫は 「絶妙なタイミングで写真が撮れた

ぞ」 などと、ご満悦 です。


息子のアパートに2泊して、15日、三人で少し豪華なランチをとってから、新幹線で博多を後にしまし

た。広島あたりで車内販売のコーヒーをいただきながら、どれ、ゆっくりと今回の旅の写真でも見ましょ

うかと、カメラを・・・・・? ? ??  な! 無い!

すぐさま息子に電話してアパートを探してもらいましたが見つりません。 どうやらどこかに置き忘れてき

たようです。 あのカメラには、まだPCに保存していない今年の祖母の初盆の写真や、それ以前のものもい

ろいろ入っていたはずです。 カメラ担当だった夫は特に狼狽。 楽しい旅の最後は、どこで失くしたかとい

う記憶の掘り起こしで頭ぐるぐるの、落ち着かなく、気の重い帰還となってしまいました。

人生、こんなものかもしれません。禍福はあざなえる縄の如し。 喜びの隣には、いつでも予期せぬがっか

りが控えているものです。


帰ってから荷物の中身を全部出してみましたが、やはりありません。 無いものは無い。もう諦めようと思

いました。が、あくる日、それでもと、一番可能性の高い水族館に電話してみました。きっぱり諦めをつけ

るために。

すると、親切なもの言いの若い女性の声で、

「ちょっとお待ちください。・・・(探して)・・・届けられていますよ」

ああ、神様! 何の宗教も持ってはいませんが、思わずそう言いたくなってしまいました。

その神様とは、すなわち人の善意です。誰かが見つけて忘れ物として届けてくれたのでしょう。

しかもその声の女性は、「愛知県からはるばる来てくれたんですか。ありがとうございます」と親しげに話

しかけてくださって、いわゆる落し物係などという場所の事務的な対応に慣らされていた私に、新鮮な驚き

と喜びを感じさせてくれました。


そして三日後、実に丁寧に包装されたカメラが我が家に届きました。それを解いていると、包んでくれた人

の温かい親切が思われて、私たちの胸の中も温かくなりました。 さっそくお礼状を書いてポストに出しに

行きましたが、最近になく幸せな気持ちでした。

この忘れ難き良き旅に、 感謝。



  *博多・・・海の中道海浜公園マリンワールド。とてもフレンドリーな水族館です。
    皆様もぜひお出かけください。








とうとう

2014-09-01 19:03:40 | 千里の道
つくつくぼうしの鳴く坂道を下っていくと、土手には萩、つゆ草、やぶらん、やまぶどう、名も知らぬ白い

小花・・・・秋の野草が色とりどりの花や実をつけている。空を見上げれば、ところどころに浮かぶ薄い積

雲のむこう、遥か上空に巻雲がひろく横たわる。夜には虫の声。

とうとう秋が来てしまった。小説の最後がまだ決まらないというのに、もう秋が来てしまった。時の過ぎる

のが早いのか、それとも私の筆が遅すぎるのか。さっき集計してみると、この2か月半で小説に当てられた

時間は71時間35分だった。日割りにしてみると1時間もない。残念なことだけれど、しかたがない。こ

れが私の現実。 まったく蟻の歩みだなと、いつもながら思う。

それでもなんとかラストの場面まではやってきた。 あとここだけ。 ここだけ。 ・・・・なんだけど、その

ここだけが、ああ、決まらない!

悩ましき夏を過ぎて悩ましき秋に入りぬ。 

それにしても、今年の秋はちょっと早すぎやしないだろうか? 夏の名残りを断ち切るように、雨降りすぎ。

涼しすぎ。 ・・・・寂しい。