夏の蒸し暑い日に生まれた。でもあの街ではなく山村だった。
当時は貧しかった。日本全国が焼け野原から立ち上がっていた。
都会と違い、あまり悲惨さはなく、食料に不自由はなかった。
山には果物、畑には野菜。勝手に採りまくりだった。
栗、柿、ミカン、リンゴ、桃、キュウリ、カボシャでした。
子供はチャンバラごっこ、隠れ家、探検、川遊び、色々だ。
学校に出かけると、進駐軍のDDTを頭からぶっかけられる。
今の様に幼稚園などと言った気の利いたものはなかった。
他人の家の屋根の上を走周り、良く叱られた。
何よりもお気に入りは、屋根の上で寝転び大空を見る。
実に気持ちが良い。大人になることを勝手に想像した。
だが、両親が亡くなり今や故郷はない。帰ることもない。
どっぷりと都会の濁った世界に馴染んでしまった。
それが愚息共の故郷です。やりたいこと、やり残したこと、
この齢になると、妥協と諦め、そんな人生を振り返る。