【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ9-205 「パーティ」(1)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

205 :パーティ 1/12:2007/05/24(木) 03:52:21 ID:Zr/Vl4CQ
「今日はキミをパーティに誘おうと思っているのだ」
 佐々木は電話口でそう言った。なぜだか、意地悪げに微笑む中学時代の佐々木を思い出した。
 一体、どういう風の吹き回しだ。
「どういうとはどういう意味だい?」
 中学時代のお前は、他の人間と連んで騒ぐということはあまり好んではいなかった。誘われ
て、お義理に参加することはあっても、自分で主催するようなタマじゃなかったはずだ。お前は
理性的な人間だ。すべてが打算だとまではいわないが、何の理由もなしにそんなことをすると
は思えない。何か、反論あるか?
「ないね、まったくない。もちろん、僕は理由があって僕には似合わない行為をしているのさ。
キミの僕に関する見方はまったくもって正しい、中学時代より1年以上が経過して、親友に正確
に僕が把握されているというこの事実を僕は喜んでいいのだろうか、それとも悲しむべきなのか、
なんとも、名状し難い気分だね」
 では、聞かせて貰えるか、何が狙いだ。その狙い如何によっては協力することもやぶさかで
はない。
「ん? これは聞き捨てならないね、キョン。それは僕に理があるのなら、涼宮さんではなく、
僕の味方になってくれるということなのかな? もし、そうなら嬉しいね。天にも昇ろうとはこうい
う気分を言うのかな」
 俺が態度を決めるのは、お前が理由を話してからだ。話は聞こうじゃないか、すべてはそれ
からだ。それと、言っておくが、俺は橘や藤原、そしてあの九曜など、お前を取り巻く怪しい
連中をこれっぽっちも信用していない。お前の言動の陰に奴らの姿を感じ取ったら、俺はそん
な企てにまったく協力する気はない。
 俺のありったけの不信感を込めた発言に、佐々木は、こらえきれないようにくくくと声を漏らした。
「僕の話を聞く前に、そんなことを言っては僕が彼らの存在を隠蔽するとはキミは思わないの
か、まったく人がいいのか、悪いのか、判断が付きかねるね」
 思わねえな。ちょっと、気に障ったので、声に力を込める。
 お前が俺を騙して担ごうというんなら、もうお前は、もっともらしい理由を告げている。
そしたら、俺はほいほいと騙されて、中学時代の掛け替えのない友人をひとり永遠に失い、
中学時代の思い出の多くを失うことになる。それでお前がいいんなら、もう、それでいいよ。
……それだけの話だろ。
「……すまない、調子に乗ってしまったようだ。そして誓うよ、僕はキミを裏切らない、僕は
キミとの間の友情を失うようなことをしない、僕の意志と責任の及ぶ範囲で、僕はそれを守る。
そして、件のパーティのことなのだが、僕はキミを含めたSOS団の面々ともっと深く友誼を
結びたいのだ。キミに小細工を仕掛けても仕方がないのではっきりというが、僕は涼宮さんに
興味がある」
 佐々木、お前が男に興味がないのは知っていたが、もしかして……。
「キョン、キミは今、僕の性的嗜好に関して、極めて失礼な想像を持ったね。もちろん、それは
間違った感想であるのは理解しているね。僕は異性愛者(ヘテロ)だ。それはキミが一番知っ
ていると思っていたのだが……ん、いやいい。話を戻そう。とにかく、僕はキミたちSOS団と
もっとコミュニケーションを取りたいのだ。そのためには、一緒に行動する機会を持つのが最
善手だと僕は結論した。こういう時にどうするのか、いろいろ考えてみたのだが、ここは、やは
りスタンダードにいこうと思う。それで、パーティだ」
 なるほど、理には適っている。だが、大きな問題がひとつある。
「なんだい、よければ教えてくれないだろうか。対処できるかどうかは聞いてからでなければ、
確約はできないが」
 面子だよ、面子。あんまり、こういう事を言いたくはないんだが、お前ひとりなのか? 
橘たちとは俺は友情を結びたいとは正直思っていない。
「むむむ、それは問題だね、できれば彼女たちも、と考えていたのだが、それではキミの協力
が得られないということなのかな」
 正直、あいつらとの付き合いは考えた方がいいと思うぞ。頭のいいお前のことだから、騙さ
れるとか、そういうのはあまり心配していないが、少なくとも俺の気持ちはすでに伝えた通りだ。
「それでは、手始めに今回は僕ひとりがキミたちのイベントに参加させて貰う形を取った方が
いいのかな? それならばキョン、キミは僕に協力してくれるね」


206 :パーティ 2/12:2007/05/24(木) 03:56:35 ID:Zr/Vl4CQ
 ああ。一応は、な。お前との友情も大事なことだ。お前がハルヒと仲良くしたいというのなら、
俺もその方がいいと思う。ハルヒがお前に興味を持つかどうかは知らんが、まぁ多分、大丈
夫だろう。
「それでは、僕のデビューについてキミの知恵を借りたい。さ、何をしようか……」


「それで、まず僕に相談してくれるというわけですね、これは光栄だ。あなたに対し、僕が友
情を示し続けていた甲斐もあったというものです」
 大仰な身振り手振りで感謝を示す、二枚目役者の前に俺は自販機で買ったコーヒーの紙
コップを置いた。
 お前の友情云々は横に置いておいてだな。大意はその通りだ、お前の知恵を借りたい。
ちなみに、そのコーヒーは奢りだ。
「いただきましょう。佐々木さんが涼宮さんと交流を持ちたがっている。それは、『機関』と
して頭が痛いでしょうが、僕個人としては歓迎すべきかもしれません。協力しましょう。
腹案もないわけではありませんし」
 やけに話が早いな。『機関』はダメでお前はいいという。
その理由、聞かせて貰っても構わんか?
「そうですね、もとより『機関』の僕が所属する派閥は“障らぬ神には祟りなし”というポリ
シーであるのは、すでにご存じかと思います。いろいろ内部闘争もあるのですが、その
辺りは、あなたも興味はないでしょう。どちらにせよ『機関』の大勢は現状の維持を最優
先にしています。この点については長門さん、朝比奈さんとのコンセンサスも恐らくは取
れていますので、SOS団の周辺を固める各勢力の統一見解、そのように捉えて頂いて
結構でしょう」
 曖昧に肯く。どこまで本当だかはわかりはしない。親が心変わりすることはある。それは
これまで、長門やこの古泉が何かにつけて仄めかしている。だが、今はまだそうではない。
今はまだその言葉を信じるしか仕方がないのだ。
「そして、ここに新たなる異分子として佐々木さんが登場です。新入生相手の部活説明会
の時にも言いましたが、依然涼宮さんは彼女に対する態度を決めかねています。もちろん、
もう二度と会うことはないかもしれませんしね。だが、彼女自身が接触を求めているのなら
話は別です。僕やあなたの介在しない所で、彼女たちが二次的接触を行なうという可能性
はある。それくらいなら、こちらのお膳立ての上で、接触して貰った方がずっと安心できる、
そうではありませんか」
 確かに、その通りである。同意を示す。
「僕たちは佐々木さんと涼宮さんとが接触したところで、世界が滅んでしまったりはしない。
そう、確信しています。まぁ涼宮さんを信じている、そう言ってもいいでしょう。ですが、『機
関』は、そこまで彼女に信頼を置いているわけではありません。よって、波風を立ててくれ
るな、というのが本音でしょう。『機関』は歓迎しかねるというのはそういうことです」
 理に適っているな、納得するしかないようだ。それで、お前の腹案とやらはなんだ。
「親交を深めるのなら、同じ物を食べるのが古今からの習わしです。我々もそれに習うとしましょう」
 だから、結論を言えよ、結論を。
「野外でのバーベキューパーティはいかがですか。季節は初夏、野外で過ごすには丁度いい
時期と言えます。悪くないアイデアであると、自負する所なのですが」
 なるほどな、本当に悪くないアイデアだな、それは。
「日本にはホームパーティという習慣が根付いているとは言えません。よって誰かの自宅では、
その家の方に大きな迷惑を掛けてしまいます。鶴屋さんのように、それを迷惑とは考えない方
も多くいらっしゃいますが、誰かのテリトリーといえる場所で、対等の友好というのも考え物です」
 そこで、誰の場所でもない、野外というわけか。
「ええ、ちょっとお金を出せば、網や鉄板、炭などの用具を貸し出してくれる所も多いですし、
現にほら、以前に幽霊探索に行った河原、あの辺りにも公営のそのような施設があったはずです」
 そうだな、いいんじゃないか。よし、その路線で企画を立てよう。用具の手配は任せてもいいか。
佐々木と連絡を取って問題なければ、ハルヒに通してみよう。
「仰せのままに」
 そう言って、古泉は新川さんに弟子入りしたかのように慇懃に礼をした。そういうの板に付
きすぎだぜ。将来はホテルマンにでもなったらどうだ?
「それも、視野に入れていますよ。もちろん」
 それには答えず、俺は携帯を開いて、佐々木の番号を押した。佐々木の反応はすばやく
ワンコールの内に電話は繋がった。


207 :パーティ 3/12:2007/05/24(木) 03:59:02 ID:Zr/Vl4CQ
 ……と、まぁこういう訳なんだが、お前の意見を聞かせて欲しい。
「……すばらしいね、よいアイデアだと思うよ、さすがはキョンだ。それで、僕は何をすれば
よいのだろう」
 いや、アイデアの出所は古泉なんだがな。うん、それでだな。お前は……。
 佐々木のスケジュールを押さえ、当日の下準備について簡単に打ち合わせをする。
 さて、残るは大本命、涼宮ハルヒの攻略だ。

 ひとつ、企画があるのだが、俺はそう切り出した。
 そして、それこそが最大の失敗だった。
「ふぅん、一応聞くだけは聞いてあげるわ。ただし、もし、つまらないこと言ったら、罰ゲーム
だからね」
 あ、やばいとは思ったんだよ、これは。俺の言うことをハルヒがまともに聞くはずがねぇっ
てことに、俺はもう少し、思い至るべきだった。
「……へぇ、キョン、あんたにしてはなかなかいいアイデアじゃないの。それで、何でそんな
ことするの?」
 へ? いや、そのやってみたくはないか。
「うん、悪くはないわ。だから、なんであんたがそんな事言い出すのか、あたしはそれを聞い
てんのよ。あんたが、ただ思いついて、それをこんな風に理路整然とあたしに説明できるな
んて、あたしは信じないわよ。狙いをいいなさい」
 そういって、ハルヒは、おもちゃを見つけた猫のような目つきをした。
 ああ、話したさ。話して何が悪いってんだ、中学時代の旧友が、お前と友誼を結びたがって
いるってな。佐々木の名前を出した所で、ハルヒは口をアヒルのようにひん曲げた。
「なに、それ。なんで、あたしがあんたの昔の女に紹介されなくちゃなんないわけ」
 佐々木と俺はそんな関係じゃない。中学高校と俺は何度、このセリフを言ったんだろうな。
そして、これから何回言うんだろう。
「……………………あたし、トイレ」
 俺の言葉は聞き流し、ハルヒはがたりと席を立った。
 ハルヒが席を外した途端に、部室の隅でおろおろしていた朝比奈さんが、お茶を持ってやっ
て来た。
「キョンくん。ダメですよ、あんな言い方しちゃ」
 じゃあ、どんな言い方すりゃいいんです? 朝比奈さんの煎れてくれたお茶をいただきながら、
俺はそういった。いや、八つ当たりだな、こりゃ。
「すいません。ハルヒがあんな反応をするとは思わなかったもんで」
 まったく、なんで、あんなに苛立ってるんだ、あいつは。もしかして、アレかアレなのか?
 朝比奈さんは、可愛らしくため息をついて、言った。
「別の女の子の名前出して、デートに誘われて、喜ぶ女の子なんていません」
 俺はデートになんか誘っていませんがね。
「キョンくん企画のイベントなんですから、涼宮さんからすればデートも同じです。まったく、
長門さんの時といい……」
 部屋の隅、いつもの場所に座っていた長門から、季節外れのブリザードが吹いた……ような
気がした。いや、気のせいではないかもしれない。朝比奈さんも背中に氷を入れられたように
びくりと、背をのけぞらせる。
「……ひゃい。と、とにかく、キョンくん。その佐々木さんが涼宮さんと」
 ああ、それは本当だし、本気だと思います。
 はぁ、朝比奈さんは、ため息をつき、何度説明しても足し算がわからない生徒を見る家庭教
師のような表情で俺を見た。なんだ、この居心地の悪さは。
 俺は歩き慣れた道が、いつの間にか地雷原に変わってしまったかのように、部室の中で立ち
往生していた。

 十分後、ハルヒはトイレから戻り、ひどく不機嫌な顔で、俺にバーベキューパーティ企画の
了承と進行を告げた。


208 :パーティ 4/12:2007/05/24(木) 04:01:41 ID:Zr/Vl4CQ
 団長のOKが出たのなら、後は粛々と進行させるだけだ。スケジュールを確定し、会場とな
る河原までの移動経路や当日の手続きを確かめ、その近所で食材や飲み物などが購入で
きるスーパーマーケットやコンビニを探しておく。IT技術の進歩ってのはすごいね。地図付き
で、ここらへんの店のマップを作るなんてあっという間だ。そんなわけで、前日までは特筆す
べきイベントは発生しなかった。
 ああ、ちなみにハルヒはなんとなくずっと不機嫌だった。ただ、その不機嫌さは、俺が古泉
にイヤミをいわれるほどじゃなかった、とだけ記しておこう。

 懇親会兼バーベキューパーティ前日。
 明日に備えて、本日は食材その他の買い出しである。買い出し担当は俺、ハルヒ、長門、
佐々木。ちなみに内訳を正確に記すならばこうだ。

荷物持ち担当:俺
サイフ兼食材選択担当:ハルヒ
食材管理および貯蔵担当:長門
オブザーバー:佐々木

 そう、俺たちはいつもの北口公園で学校帰りの佐々木と合流し、一緒にスーパーマーケット
へと向かっていた。
 待ち合わせ場所に現われた佐々木は完璧な微笑を顔に湛えて、明朗快活に俺たちに向かって
挨拶した。
「皆さん、キョンから話は聞きました。部外者である私のために無理を言ってごめんなさい」
 先手を取られた以上、ハルヒも黙り込むしかないわけで。
「いいのよ、佐々木さんとはまた会ってみたかったの」
 ハルヒは、いつもの8割程度の笑顔を見せた。なるほど、佐々木への態度を決め兼ねている
というのはこういうことなのか。
「涼宮さんにそう言ってもらえると助かります。もちろん、今日は私の方でも軍資金を用意し
てきました。え~と、会計担当はどなたなのかしら」
 ハルヒは、苦笑して、
「佐々木さんはゲストなんだから気にしなくていいわ。新学期はじまったばかりで、団の活動
費には余裕があるから、普通にワリカンで払って貰えれば十分」
 ゲストだっつぅんなら、普通ロハじゃねぇのか?
「バッカねぇ、あんた。自分が言い出したイベントで、そんなことまでされて、遠慮しないで
いられるわけないじゃない」
 そりゃまぁそうか。ワリカンなら払った分は喰わないと損になるからな。
「そうよ、佐々木さんとは同い年なんだし、あたしは貸し借りのない関係を築きたいのよ」
 ハルヒにしてはまともなことを言った。花マルをやろう。
「いらないわよ、そんなの。……あ、けど、そうね。代金代わりに、佐々木さんに昔のキョン話
でもしてもらおうかしら。コイツに言うことを聞かせられるような、恥っずかしいヤツがベストね」
 残念でした。お前じゃないんだ。俺にはそんな弱みになるような過去はありません。
「ほう、キョン、そうなのか。それは僕の記憶と少し、食い違うような気がするね」
「それよっ! あたしが知りたいのは、そういうネタ」
「止めろ、佐々木ぃ」
 佐々木はそんなやり取りを見ながら、くくくと細い笑みを漏らした。なんというか二匹の
子猫がじゃれ合っているのを偶然見たというような瞳で。


                                       「パーティ」(2)に続く

佐々木スレ9-205 「パーティ」(2)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

209 :パーティ 5/12:2007/05/24(木) 04:04:01 ID:Zr/Vl4CQ
 そんな、こんなでスーパーマーケットに到着である。とりあえず、カートを繰り出す。
向かうはもちろん精肉売り場だ。こちとら、万年欠食少年少女だぜ。
「佐々木さんは、何か食べられないものってあるの」
 ハルヒは佐々木の食の好みを聞いていた。なんとまぁ、殊勝なこともあるもんだ。
「特に、これといって食べられないもの、苦手な物はないわ、いえ、これから出会う苦手な
食材もあるかもしれないから、断言はできないのだけれど」
 まあ、佐々木が何かの食物アレルギーがあるとは聞いていないしな。給食の時はなんでも
よく食ってたしな。
「あんたには聞いてないわよ」
 牙をむき出しにして、ハルヒは噛みつくように言った。ったく、なんなんだ。
 まぁ、俺の意見が自動的に却下されるのにはこの一年でとうに慣れたがね。
「それじゃ、何にしようかしらね」
 そう言って、ハルヒは辺りを見回した。焼いて料理する物なら、何でもいいだろう。とりあ
えず、牛肉だな。目に付いたパックをひとつ取り上げる。
「バッカね、何やってんのよ」
 肉を見てるんだが?
 答える俺を無視して、ハルヒはその牛肉パックを俺の手から奪い取って元あった場所に置いた。
「そんなの、見りゃわかるわよ、このスカポンタン」
 なんなんだ、一体。
「キョン、どうやら、涼宮さんはタイムサービスを狙っているようだね。周囲の奥様たちを見
てみるといい」
 たしかに、買い物カゴやら、エコバックやらを提げた奥様、おばさまたちが手持ちぶたさに
辺りをうろついている。時刻は直に19:00を回る、このスーパーマーケットの閉店時間が確か
20:00だから、そろそろということなのか。
 しばらくすると、店員がやって来て、値段を打ち直していく。あ、さっきのパックが100円下
がった。その瞬間、ハルヒが動いた。即座に先ほどのパックと、焼き肉用の大盛りパック、
牛カルビ、豚ロース、Pトロ、焼き肉用の加工肉辺りをかき集めてきた。奥様たちも、ハルヒ
の動きを契機にショーケースに群がりだした。
「大漁、大漁。見なさい、キョン。これだけ買って、あんたが最初に取った牛肉パック分以上
は出てるわよ」
 え~と、こっちが100円引き、あっちが150円引き、こっちが200円引き、こっちが……
なるほど。これが奥様お買い物術か。
「すごい、涼宮さんは買い物上手なのね」
 佐々木が感心したようにそう言った。
「私だと、逆にタイムサービスは避けちゃうかもしれない、あんな風に殺気立っている場所に
なんか、踏み込めない」
 褒められてるんだか、どうなんだか、ハルヒはいつものように仁王立ちになって胸を張った。
「あたしは、勝負事に負けるのが、大嫌いなの。どれを買うかはさっき、ざっと見て決めてた
しね。目当てのヤツが全部買えてよかったわ」
 とはいっても、肉だけじゃ味気ない。次は野菜か、魚か、それともソーセージとかの加工品
に行くか?
「そうね、魚なら、ホイル焼きにするのがいいかもね。タラの切り身か鮭の切り身でいいのが
あったら、買いましょ」
 ふむふむ、長門はなんか欲しい物あるのか?
「…………………」
 特に意見はないようだな、じゃあ任させてもらうぞ。
「…………………」
 ん、了解だ。なら、肉はもういいな。
「キョン、キミは今ので、コミュニケーションが取れたのか」
 驚いたように、佐々木が俺に声をかけてきた。
 こう見えても、俺は長門の表情を読むことにかけては、北高一を自負してるんだ。
「ほう、何であれそれだけの自信がもてるのなら、大したものだ。ところで、キョン。
その長門さんだが、彼女もかなりストレインジな感触を受けるのだが……」
 まぁ、あんまり大きな声じゃいえないが、宇宙産だよ、九曜とは別口だがな。



210 :パーティ 6/12:2007/05/24(木) 04:06:12 ID:Zr/Vl4CQ
「なるほど、ね。これが宇宙人的感覚か、覚えておくとしよう。なるほど、やはりSOS団は
僕にとって、とても有為な集団であることがわかった」
「キョン、何やってんの!!」ハルヒが、目を三角形にして俺を呼ぶ。その両手には、魚の切り
身やら、野菜やらが満載だ。がらがらとカートを押して、ハルヒの所へ向かう。
 そんなに野菜を買い込んで、カレーでも作るつもりなのか?
「それも悪くはないけれど、バーベキューとカレーじゃちょっとヘヴィじゃないかな」
 佐々木が俺の気持ちを代弁した。
「なに、あんたカレー食べたかったの? 鉄板焼きならニンジン、キャベツ、タマネギ、
ジャガイモってとこでしょ。串焼きならピーマンにパプリカもほしいわね」
 佐々木が得心したかのように肯く。心なしか瞳に尊敬の色が浮かんでいるように見えた。
「なるほど、カレー粉を入れればカレーになってしまいそうだ」
 ここで反応したのはハルヒだ。
「佐々木さんの家ってカレーにパプリカ入れるの?」
 パプリカと赤ピーマンってよく似てるな。何が違うんだろう。
「手元にある時は使ったりするみたいね。必須というわけじゃないみたい。甘くて、ちょっと
面白い触感だったけど、カレーには合わないように思うわね。やっぱり、ピクルスにして付け
合わせがいいんじゃないかしら。あ、串焼きにして焼くのは賛成」
 そのまま、佐々木は、野菜コーナーに置かれている大きな赤ピーマンを指さした。
「ちなみにキョン、パプリカというのはアレのことだ」
 知ってるよ。そのくらいは。
「ピーマンとパプリカはどちらもナス科、トウガラシ属の植物で、キミの考えていた赤ピーマ
ンは、青ピーマン、いわゆるピーマンをよく熟成させたもので、本質的には同じものだ。パプ
リカもピーマンの仲間だがより大型で肉厚だ。加熱調理すると色鮮やかになること、酢に合
わせても退色しにくい事から、サラダや炒め物の色合いとして、あるいはピクルスにもよく使
用される」
 なるほど、赤ピーマンとパプリカの違いについてはよくわかった。ところで、なんで、俺が
そんなことを考えているとわかった?
「そりゃあ、キミがきょとんとした顔をしていたからさ。まったく、キミは変わらないな。覚えて
いないか、それとも理解していなかったのかな。数学の例題を前にして、キミはさっきのよう
な顔をしていたのだ。そんな顔の後にキミの言う“うん、わかった”は大概、“よくわからん、
聞いてなかった”という意味だった。そこで、僕は考えた。キミはおそらくパプリカという野菜
が何であるのかは知っているだろう。だとすると、パプリカについて考えた時に連想したこと
を取りとめもなく考えているのだろう、そう僕は結論した。そこで、赤ピーマンとパプリカの違
いについて話してみたということさ。どうやら、当たっていたようだね。一年のブランクがあっ
たが、僕のキョン観察技能はそれほど衰えてはいないようだ」
 そういって、佐々木は悪戯小僧が種明かしをするような、得意げな顔でくっくっと笑った。
「キミが長門さんのエキスパートであるように、キミの表情を読むことにかけては、僕もエキ
スパートである自負があるのだよ。ああ、もっともプロフェッショナルであるキミのお母様に
は敵わないだろうけどね」
 くそ、なんか恥ずかしいぜ。
「ちょっと、早く来なさいよ!」
 ハルヒがまた、俺を呼んだ。今度は調味料売り場に行くらしい。追いつく途中で、ハルヒが
ハタと気が付いたというように、ぽんと両手を打ち鳴らして振り向いた。
「今日は有希んトコで、みんなで夕食食べましょう。野菜や肉の下ごしらえもしたいし、その
ついでに夕食も作っちゃいましょ」
 ほう、ハルヒにしちゃ悪くないアイデアだ。佐々木、どうだ?
「親交を深めるのは明日だと思っていたけど、予定の前倒しというのも悪くはないね」
 長門? 大丈夫か?
「…………いい」
 よし、決まりだ。ハルヒ、メニューどうするんだ?


211 :パーティ 7/12:2007/05/24(木) 04:08:57 ID:Zr/Vl4CQ
「そうね、さっきの春キャベツがいい感じだから、もう半球買って、ポトフ風野菜煮込み
スープを作って、メインは……そうねぇ。肉は明日食べるから今日はお魚かしら。さっきは
エビとイカのいいのがあったからスルーしたけど、タラで、ホイル包み焼きがいいかもしれ
ないわね。そうなると、エノキとエリンギも買っておきましょう。ううっ話してたらお腹減ってき
たわ」
 一体、どんな物を買うとそれができるのか、さっぱりだ。お前さんに任すよ。
「見栄えがして、格好つけられるわりに、簡単な料理だから、この機会に覚えておくといいわよ」
 ハルヒは燃えすぎた蝋燭の炎のように瞳を輝かせていた。きっと、すばらしい出来映えの
料理を幻視して舌なめずりをしているに違いない。
「油と調味料も買うけど、どうせ使い切れないんだから、少し使っておきましょ。明日使って
さらに余った分は有希んトコに置いておけばいいし。あんたは知らないだろうけど、この娘
の台所って包丁とまな板くらいしかないんだから」
 まぁ確かに、カレー皿と鍋、レトルトのカレーと米くらいしかなかったな。あ、そうかキャベツ
の千切りしてたから、包丁とまな板はあるのか。
「ひとつ、聞いてもいいかな、キョン。会話の流れを見るに、長門さんはひとり暮らしのようだ。
うむ、それはまぁいい。問題はだね、ひとり暮らしの女性の台所のことをキミはどうして、そん
なにくわしく知っているのかな? これは大いに疑問だよ、そうは思わないか、キョン」
 ちょ、佐々木さん、目が怖いんスけど。
「そりゃ、何度か長門の部屋にはお邪魔しているからな、この一年」
 一年どころか四年前から去年の七月まで、俺は長門宅で三年寝太郎だったわけだが、それ
は朝比奈さんと俺、そして長門だけの秘密だ。
「ほう。まぁそれはそうだろうね」
 佐々木は未だに怖い目をしたままだった。なるほど、これが信用されてない目というヤツか。
「有希、ご飯ある? じゃあ、パンとかは買わなくてもいいわね」
 ハルヒは長門と会話しながら、夕食のメニューのための買い物に移ったようだ。
「ブラックペッパーと、オリーブオイルとサラダ油、塩はあったっけ? ないの? あとは、
コンソメと焼き肉のタレも買わないとね。あ、そうだ脂身も買わないと、有希、バターは?
ないのね」
 ぽいぽいぽいと、調味料の類がカートに投げ入れられる。その後、精肉売り場にとって返し
て、脂身をいくつか、加工品売り場で、ソーセージ、チーズをいくつか、バターなどを迷いなく
カゴに投入する。明日って鶴屋さん来るんだっけ?
「とりあえず食材は、こんなもんね、ソフトドリンクとかも買っておきましょうか」
 そう言って、ハルヒはドリンク売り場に直行する。さすがに制服でビールは買えないので、
酒類売り場は……って白ワインなんか、どうするんだ。
「料理の味付けに使うのよ」(※未成年の飲酒は法律で禁止されています)
 買えるかな? 多分大丈夫でしょ。なんて言いながら、一瓶忍ばせる。
「ウーロン茶に、ミネラルウォーターと、佐々木さん、飲み物の好みある?」
「そうね、100%果汁のオレンジか、アップルをお願い」
 ハルヒは我が意を得たりとばかりに、アップルジュースとオレンジジュースをカゴに入れる。
おい、ハルヒ。そ、そろそろ限界だぞ。カートがえらく重くなってきた。これを俺ひとりで運ぶの
かと思うと気が遠くなるぜ。
「情っさけないことをいってんじゃないわよ、キリキリ運ぶ!」
 発破を掛けるハルヒとは対照的に、佐々木は気を利かせて、カートを一緒に押してくれる。
「飲み物とかは僕が持つよ」
 助かるぜ、やはり持つべき物は頼りになる友人だな。
「ほら、まだお菓子とか乾き物も買うんだからね」
 まぁパーティには乾き物も必要だしな、適当にスナック菓子もカゴに乗せる。
「あ、そうだ。ゴミ袋とビニール袋も買わないと」
 言い捨てて、ハルヒはぴゅーと尻に帆を掛けてどっかに行った。いつもの事ながら、
超小型の台風みたいなヤツだな。
「涼宮さんはまさに嵐のようなという比喩表現を用いる的確な対象だね」
 佐々木がこれまた的確な相づちを打った。ハルヒがいなくなったことにより、周囲の空気
がまったりするのがわかる。ちなみに長門は俺たちの後方1.5m~2mの位置を的確に
キープしており、店内を流れる音楽に耳を傾けているように見えた。


212 :パーティ 8/12:2007/05/24(木) 04:12:58 ID:Zr/Vl4CQ
「今の内に言っておく……我々はあなたおよびあなたの友人に害意を持っていない。あなたの
友人は我々にとっても、重要な観測対象であり、不測の事態の発生はこれを歓迎しない。
……この決定は情報統合思念体においての現在の共通認識であり、わたしはその認識に従う」
 うお、長門がこんな長ゼリフを。
「キョン。これは、僕が長門さんに仲間として容認された、ということかな? 観測対象という
表現に多少引っかかりを感じるが、大意は伝わったし、その意志を僕は歓迎するよ」
 まぁ、そういうことなんだろう、多分、きっと。その上で、そのセリフは長門に言ってやれ、
その方がいい。
「そうだね、長門さん、ありがとう」
 そう言って、佐々木は長門を軽くハグした、って何してんだ?
「いや、言葉では伝えきれないだろうと思って、肉体的接触を併用してみた」
 そういや、言葉による情報の伝達には齟齬が発生するって言ったのは長門だったか。一年前
のこと、長門が初めて俺に対して一行以上の言葉を伝えた日のことを思い出しながら、そう言った。
 そんな俺の言葉を聞き、振り向いた佐々木の眉はハルヒもかくやというようにつり上がっていた。
 な、なんで怒っているんだ?
「ちょっと、待ちたまえ。この会話の流れで、キミがそう言ったということはアレか、キミが夢中に
なっているのは涼宮さんだとばかりに思っていたが、それは僕の早合点だったということかな?」
 な、なんでそうなる?
「そうだね……女のカンさ、とりあえずはそう言っておこう。ちなみに僕は怒ってなどいない。
どちらかと言えば悲しんでいるのだ。それでは、キョン。キミの誠意ある返答を期待したい」
 まず、言っておくが、俺とハルヒは別に付き合ってなどいない。それは中学三年時の我らが
クラスメイトたち並みに的はずれであると指摘しておこう。続いて、長門と俺は……仲間だ。
少なくとも、お前がいま邪推しているような関係ではない。……一瞬、口ごもってしまった。
 それだけ俺が長門との間に抱えてしまった秘密は大きく、そして多かった。だが、佐々木に
詰め寄られている時に、この沈黙は致命的だ。
「……残念だ、キョン。残念だ……本当に残念だ」
 悔しそうに、心底悔しそうに、佐々木はつぶやいた。
「はいはい、お待たっせ、どしたの?」
 ハルヒがゴミ袋とビニール袋、アルミホイルなどを抱えてやって来た。
 いや、何でもないんだ、別に、な。
 無事に会計を済ませ、俺たちは長門のマンションを目指した。つうか、マジ重いぞ、これ。
俺の両手は完全に買い物袋に占領され、その一部は佐々木の手にあった。ちなみに、俺の
名誉のために言っておくが、一番軽い袋だからな。俺の荷物であった学校指定のバッグは、
長門が抱えるようにして持っている。ん、ハルヒか? 自分の鞄だけ持って、先頭でのっしのっ
しと歩いているよ。
 スーパーマーケットを出てから、俺と佐々木の間に荷物の受け渡しに関する物以外に会話は
なかった。今も俺の、後方1mほどを佐々木は歩いている。
 トホホ、なんでこんなことに。だが佐々木にだって話せないことはある。そして、俺は俺の不思
議ライフを佐々木にすべて打ち明けられるほどには、佐々木を未だに信用してはいないのだ。
……仕方ないだろ、俺たちは去年一年間を共有していないんだから。佐々木も俺の気持ちは理
解しているだろう。あいつは賢いヤツだ。それを認められないほどじゃあないはずだ。
 そんな風に、気分をブルーにしながら、俺たちは長門のマンションについた。

 さて、久しぶりの長門邸訪問である。とは言っても、前回と別に何も変わっていない。殺風
景は、この部屋の不変の属性らしく、その感想はいささかも揺らいでいなかった。荷物を玄関
に降ろす。即座に、ハルヒの叱咤が飛んだ。
「ほら、キョン。そんな所に店広げてどうするのよ。こっち、持ってきなさい」
 ひいこらいいながら、荷物を台所に持ち込む。
 ハルヒは俺の置いた荷物から、手際よく、肉やら何やらを取り出し、それぞれ所定の場所に
詰めていく。野菜はいいのか?
「野菜はこれから洗って切るからいいのよ。佐々木さん、飲み物持ってきて……うん、ありがとう」
 なんで、お前は佐々木にはちゃんと礼が言えて、俺には命令と叱責しか与えられんのだ。
「そりゃあんたがグズでのろまな亀だからよ」
 教官、俺は別にCAを目指すつもりはないんだがな。
「うっさいわね、さっさと残りの荷物も持ってきなさい! 二秒で!!」
 はいはいっと、佐々木、何を笑っているんだ。何か面白いものでも在ったのか?


                                       「パーティ」(3)に続く

佐々木スレ9-205 「パーティ」(3)

2007-05-19 | 佐々木×キョン×ハルヒ

214 :パーティ 9/12:2007/05/24(木) 04:15:31 ID:Zr/Vl4CQ
「いや、想像以上にキミらのコンビが決まっているからさ。嫉妬していた」
 はあ? お前は友人が奴隷のように扱われているのを見て、そんなことを言うのか?
 俺は悲しいぜ。佐々木は俺の軽口には付き合わず、シンクに野菜を並べ、まな板と
包丁の準備を始めた。
「涼宮さん、何から始めようか?」
 どうやら、カンのいい佐々木はもうハルヒの扱い方を覚えつつあるようだ。
「そうね、野菜の下ごしらえを先にやって、夕食の準備と肉の下ごしらえは並行で進め
ましょ。じゃ、キョン」
 なんだ、今度は何を買ってくるんだ?
「邪魔だから、居間に行ってなさい」
 はいはい。

 居間に行くと、長門が黙ってお茶を出してくれた。
む、うまい。長門、腕を上げたな。
「そう」
 まったく無反応にそう言って、ビデオを逆再生するかのようにちゃぶ台の向こうに戻った
長門は、ビスクドールのような凍った瞳で、俺の手元をじっと見つめていた。いやいや、そう
謙遜することもない。朝比奈さんほどではないが、俺のお袋はとうに超えている。
「…………そう」
 む、やはりお袋に例えたのはまずかったか?
「いい」
 そうか。もう一杯貰えるか?
「……どうぞ」
 ありがとう。
「有希、あなた普段何を食べてるの? 冷蔵庫ほとんど空っぽじゃない。コンピ研の部長じゃ
ないんだから、サプリメントと水だけで十分とか言うんじゃないでしょうね」
 ハルヒが長門に台所から話しかけていた。
「ダメよ、そんなんじゃ、今は成長期なんだから、ちゃんと栄養取らないと。エンゲル係数
低すぎるんじゃないの?」
 長門は答えない。答えているのかもしれないが、俺の視界には入っていなかった。なんと
なく、リモコンを取り寄せてテレビを点けた。
 テレビでは、タイミング良く天気予報をやっている。奇麗な気象予報士のおねーさんによれ
ば、この週末の天気は問題なく晴れるらしい。よいことだ。さすがにバーベキューパーティの
日に雨ではこれはもうどうしようもない。
 台所からはリズミカルな包丁の音が響いてくる。
 なんか、眠くなってきたな。夕食ができるまで、一眠りしておくか…………。

 うぼっ!!

「団長を働かせて、ヒラ団員が居眠りなんかすんなっ!!」
 脇腹に奇麗に入ったつま先と、「キミってヤツは……まったく、キョンは……まったく」
佐々木の呆れた声によって俺は起こされた。
 無機質な柔らかさを持った枕から……え~と、もしかして、膝枕されてました。今? 
身体を覆っていた、タオルケットが床にだらりと落ちた。
「いい」
 片づけようとした俺から、長門はタオルケットを取り上げ、奇麗に畳んだ。
「ほら、早く退きなさいよ」
 ハルヒにけり出されるようにして、家具調コタツ(いまはタダのちゃぶ台だ)から逃れる。
ハルヒは、ちゃぶ台の真ん中に寸胴をゴンと置き、佐々木は手に持った盆からアルミホ
イルの塊の乗った焼き魚用の皿を面に合わせて4つ置いた。手早く箸、ご飯が山盛りに
なった茶碗、スープ皿が同じように配膳される。
 それを待って、俺は席に着いた。右隣には佐々木、左隣は長門、向かいにハルヒである。
ちなみに、ハルヒが上座に座ったのは説明するまでもないだろう。
 佐々木が膝立ちになって、各人のスープ皿に野菜スープを取り分けていく。コンソメ
スープにいい匂いがした。野菜もほどよく煮込まれてて旨そうだ。


215 :パーティ 10/12:2007/05/24(木) 04:18:03 ID:Zr/Vl4CQ
 いただきます。という唱和とともにスープに手を付ける。おお、野菜のうまみがシンプルに
出ているな。
「あ、そうだ。ホイル焼き大丈夫だと思うけど、あんまり火が通ってなかったら言ってね、
焼き直すから」
 ハルヒがそんなことを言った。まぁ多少レアでも食えるだろう。
「いやいや、タラにはアニサキスが付いていることがあるからね、生食は危険だよ。60℃
以上で死んでしまうから、良く火が通っていれば安心だ。逆に、-20℃以下でも死ぬらし
いから、冷凍してもOKということだね。ちなみに胃酸に負けないことからも分かるとおり、
酸には強く、酢で締めたサバにもいることがあるから気をつけたまえ」
 これから食う物につく寄生虫の話なんかするなよ。怖いじゃねぇか。
「だから、火が通っていれば安心なのさ」
 アルミホイルを切り出すと、中からいい香りがしていた。チーズが溶けていて、かなり旨
そうだ。こりゃいいな。具材はタラとシメジ、エリンギ、タマネギ、チーズってとこか。
「ちなみに、ワインをふりかけて電子レンジに掛けたタラをアルミホイルの船に入れて20分
くらい焼くだけの簡単料理よ。一緒に入れる野菜はタマネギとキノコが基本だけど、まぁ何
でもいいわ。今回はチーズも入れてるけど、これは好みで決めていいわね」
 ほお、なるほどな。今度お袋にも聞いてみよう。
「こっちのスープもいい味でてるね、さすが涼宮さん」
 佐々木もスープを一口すくってそう評価する。
「こっちは、下ごしらえしたジャガイモとニンジンとタマネギとキャベツとベーコンを適当に
切って、適当に煮込んで、コンソメと塩コショウで味を調えたらできあがりの簡単料理
パート2よ。もっと野菜と鶏肉とかソーセージとか、豚バラとかを入れると、コンソメ仕立て
の洋風野菜鍋になるわね」
 さりげなく、こっちにも刻んだエリンギとシメジが入っている。なるほど、材料も一緒にして
効率アップというわけか。主婦的な料理術だなぁ。
「この料理ってお母様、直伝なの?」
 佐々木はさりげなく、ハルヒが喋るように何かと水を向けている。
「ま、ね。ウチの母は簡単料理の権威なのよ、手を抜くことばっかり考えているんだから。
ちなみにウチだったら、ホイル焼きにはならないわね。ホイルの船を人数分作るの面倒く
さがるから。多分、大皿に人数分の切り身を並べて、オーブンレンジで焼いて、後から
ホワイトソースにチーズを混ぜて乗っけて、もうひと焼きして、グラタン風に仕上げて終
わりよ。あ、そこまでやんないかなぁ、焦げたホワイトソースって洗うの面倒だから」
 それはそれで旨そうだな。俺はそんなことを考えながら、ハルヒと佐々木の料理に舌鼓を打った。
 会食は滞りなく済んだ。俺たちの食事が終わるのを見計らったかのように、長門が各人に
お茶を入れた。つうか、四人分の食器と湯飲みがあったことが驚きだ。
 いや、もしかしたら、ここにいないふたりの分くらいは食器に余裕があるのかもしれなかった。
長門は、なんというかそういうヤツだ。
「ほら、なにのんびりしてんのよ、食器くらい片づけて洗いなさいよ。あんた、食っただけな
んだから」
 はいはい。ったく、お前は俺のお袋か。
「何いってんのよ、あたしがあんたのお母さんだったら、こんなことは言わなくても済むように
ガキの頃から教育してるわ」
 まったく人のやる気を削ぐ発言をさせたら天下一品だな、お前は。悪態を付きつつも何もし
ていないのは確かであるので、食器を集めて、立ち上がった。
「キョン、僕も手伝うよ」
 佐々木も湯飲みを置いて、立ち上がった。

 ふたりで、食器を洗う。なんとなく機械的に手を動かしつつ、佐々木に尋ねた。
ハルヒとふたりで何か話せたのか、と。
「ああ、なかなか有意義な時間であったよ。涼宮さんは本当に魅力的な人だ。多少、変人では
あるが、それは僕が言えたものではないだろう」
 ああ、まぁ変人具合じゃあ、大差はないな。もっとも、奇矯な振る舞いをしない分、お前の方が
よっぽどまともだが。


216 :パーティ 11/12:2007/05/24(木) 04:21:41 ID:Zr/Vl4CQ
「連れないね、キョン。もうちょっと、フォローしてくれてもよいだろうに。だが、まぁ確か
にね、宇宙だの、未来だの、超能力だのといった戯言を半ば信じた僕は相当なものだ」
 俺の洗った皿をキュッキュと布巾でぬぐいながら、佐々木は苦笑する。
「キョン、キミに謝らなければならないな」
 ん、俺がお前にじゃなくて、お前が俺に? そんな謝るようなことがあったか?
「ふ、さすがの大人物だね。かつて僕らが同じクラスにいた時だ。不思議なことがあって
もいい、キミはそう言った。僕はそれを真っ向から否定したじゃないか」
 ああ、エンターテインメント症候群だっけ? 覚えてるよ。
「僕らが今おかれている状況を考えてみたまえよ」
 思わず、吹き出した。
「まったく、宇宙人と同じ釜の飯を食べるなんて想像すらしたことはなかったよ」
 友達に宇宙人と未来人と超能力者のいる高校生になれるなんて、中学生だった俺たちは
想像すらしていなかった。あの頃の俺たちが今の俺たちを見たら、どんな顔をするんだろう
か。俺たちふたりは声を上げて笑った。やばい、さっきのキノコはワライタケだったんじゃな
いかというくらいツボに入った。
「ちょいと、おふたりさん。手がお留守よ」
 何事があったのかと様子を見に来たハルヒが怒り出すくらい俺たちは笑い続けていた。


「明日遅れるんじゃないわよ」
 長門邸を辞した俺たちはいつもの北口まで戻っていた。ハルヒは命令口調でいい捨てて、
駅へと歩いて行く。
「さて、僕らも家路へと向かおうじゃないか」
 佐々木と俺はこれまたいつもの駐輪場である。
「その自転車、まだ使っていたんだね」
 佐々木が俺のママチャリを見ながら、そう言った。ああ、大分ガタ来てるけど、まだ乗れる
からな。
「懐かしいな、一年前までその自転車の荷台は僕の場所だった。去年は誰か、たとえば、涼宮
さんや長門さんを乗せたのかな?」
 どうだったかな、ああ、長門、ハルヒで三人乗りしたっけな。
「……む、それは予想外だね。そうか、ふたりともか……。ふふ、柄にもなく妬けてしまうね。
僕は大概の欲望が希薄な性質なのだがね、その分、自分の物に対する執着は……それな
りにあるのだよ」
 なんだよ、また乗りたいのか? だけど、今日はお前もチャリだからなぁ。
「キョン、どうしたんだい?」
 なにがだ。俺を見上げる佐々木の黒い瞳は、街灯の光を反射して、夏の星空のように輝い
ていた。
「僕の自転車のことなど気にするな、僕は月極でここを借りているのだ。一日二日駐めっぱな
しでも文句は言われまい。というわけで、キミの自転車に僕を乗せてくれたまえ。それにしても、
キミが僕の遠回しな要求に即座に応えてくれるなんて、天気予報では快晴だったが、雪でも降
るのではないかな」
 そう言って、佐々木は俺の自転車の荷台に慣れた仕草で横座りに乗った。お互い制服は
替わったが、そうしていると、中三の頃を思い出してしまうな。
 ったく、本気かよ。まぁ、いいか、最初っからお前の家まで送っていくつもりだったしな。
この程度の負荷荷重は食後の腹ごなしには丁度いいというもんだ。
「失礼だね、キミは。僕の体重は、高校二年生女子としては平均的なものだ。決して、
……荷重として厳しい物だとは……思わないぞ」
 その声には応えず、ペダルを強く踏み込んだ。


 佐々木の家までの道のりは覚えている。何度かこうやって、家まで送り届けたものだ。
たしか、小説だか何だかを買って、お前がバス代を食いつぶした時があったよな。
「ん、覚えていたのか……ああ、時効だから言ってしまうがね、あれは嘘だ」
 はぁ?
 佐々木は俺の背中の向こうでくつくつといつもの皮肉っぽい笑いを上げた。
「僕もね、可愛かったものだとね、思うよ。キミの自転車に乗りたいばっかりにそんな嘘をつ
いたんだからね」
 そんなに、いいもんか? 俺はあんまり記憶にないが、荷台が尻に食い込んで痛いんだよな。
背中で佐々木が溜息を漏らした。俺の腰に回された腕に力が籠もる。


217 :パーティ 12/12:2007/05/24(木) 04:25:11 ID:Zr/Vl4CQ
「こうしてね。腕で、キミの体温を感じて、キミの匂いを嗅ぐとね、僕はとても、そうとても
安らぐのさ」
 人の匂いを嗅ぐなよ、恥ずかしいな、おい。そんな告白をされては、自然に体温が上がる。
佐々木が後ろで助かった。今、俺はゆでダコのようになっているに違いない。こんな顔を知り
合いのしかも女の子に見られたくはない。
「いいじゃないか、僕はキミの匂いが好きなのだ。知っているかい。好意や恋する気持ちは、
大体二年で、その神経接続が断たれて終わってしまうのだそうだ。多くの恋や結婚生活に
とって三年目がキーになるのは最初に始まった恋が終わっているからなのだ。言い方が悪
いかもしれないが動物としての人間にとって、同じ雌雄でつがいでいられるのは二年で十分
だということなのかもしれないね」
 いきなり、なんだよ。例の本能と精神的な疾病の一種の話か。
「そうだよ。例の本能と精神的な疾病の一種の話、さ。恋とは、特定の人物、嗜好のことを
記憶した大脳が快楽物質を放出する作用のことだ。この作用は永続的なものではないし、
個々人によって、強かったり弱かったりするだろう。僕は、知りたかったんだ。僕のこの気持
ちがどんなふうに変化するのか、知りたかった。キミと触れ合わなければ、キミのことを忘れ
れば、僕はキミと出会う前の僕に戻れるのではないかと、そう思ったんだよ」
 何だよ、俺のことを忘れたかったのか? 連れないな、親友なんだろ。
「忘れることができたのならこんなことは言いはしないさ。……キョン、キミはいま酷いことを
言ったのだぞ。僕は大いに傷ついたからな。この精神的な慰謝料は後ほど、一年分のツケ
を加えて払って貰う」
 なんだよ、怖いこと言うなよ、お前はハルヒか。
「……今の発言も、きっちり加算するからな。キミには遠回しに言っても通じないから言って
おくがね。僕との会話の中で涼宮さんや長門さんや朝比奈さんや橘さんや周防さんや、
妹さんや、この間の先輩や、妹さんの親友、とにかく僕とキミとの間の共通の知り合いの女性
を引き合いに出してはいけない。その度にペナルティを課すからな」
 じゃあ、何を言えばいいんだ。俺は半ば自棄になってそう言った。
「キョン、僕といる時は僕のことだけ見て、僕のことだけ話しておくれよ、それでいいんだ」
 俺は、ペダルを動かす足を止めた。街灯の中、自転車は自然に停車する。
 ……すまん、佐々木。さっきから聞いていると、何やら話の焦点が致命的にずれているよう
な気がするんだが。
 軽い溜息と共に、佐々木は自転車から降りた。そのまま前に回ってくる。ハンドルを握る俺
の手の上に佐々木は自分の手を置いて、強く握った。佐々木の肩口で切りそろえられた髪
から、シトラス系の香りが漂っていた。正面から見上げる瞳はしっとりと濡れ、輝いていた、
淡いピンクのリップがなんとも艶めかしい。佐々木は俺を見つめながら、口を開いた。
「キョン、大事な話なんだ。黙って、聞いてくれ。僕とキミが出会って、二年が経った。初めて
キミを見て、知ってしまった感情は、僕の脳からは、もう薄れて消えてしまったはずだ。だけど、
こうしてキミを見ていると、変わらぬその感情が僕を支配しようとする。僕は……キョン、僕は
キミに恋している、恋し続けている。毎朝、毎昼、毎夜、僕はキミに恋している、恋し続けてい
る。この気持ちはここまで来るともう精神の病のひとつ、そう断言しても構わないだろう。一年
離れても、僕の病は治らなかった。だったら、離れることに意味なんかない。キミに触れたい。
僕がそう思った時に、キミがそばにいないのはね。正直、つらいんだ」
 時間が止まったように、感じた。何時も静かに理知的で落ち着いた雰囲気を持っていた少女
は、炎のような情熱をその身に宿していた。俺はそれに気がつかなかった……いいや、これは
言い訳だな。二年前、気がつこうと思えば、多分いつでも気が付けたはずだった。だけど、俺は、
彼女とのぬるま湯のような関係が気持ちよくて、気分が良くて、その隠された炎を見つめようと
はしなかっただけのことなのだ。
「だからといって、僕はキミに何かしてほしいと思っている訳じゃないのだ。熱烈にキミに何か
したいのでもないのだ。だけど、こんな僕を、こんなさもしい気持ちでいる僕を、キミが嫌悪し
ないというなら……僕は」

 初夏の風の中、俺と佐々木は静かに口づけを交わした。



218 :パーティ 13/12:2007/05/24(木) 04:26:04 ID:Zr/Vl4CQ
「ありがとう、一年分のツケからさっきのペナルティまですべて帳消しだよ」
 俺から離れた佐々木はそんなダイナシな事を言った。
 おい、コラ。俺とキスして、最初の一言がそれか。
 そう言った、瞬間、佐々木は顔を真っ赤に染めた。慌てて俺に背中を向ける。
「し、仕方がないじゃないか。僕の中の気持ちを逆なでするような事ばかり言うキミが悪いの
だ。い、言っておくけどね、こうなった以上、僕は相手が誰でも引く気はないからね。そりゃあ、
キミの気持ちは最大限尊重するが、それはキミが、僕のことしか見えないようにするだけの
話なのだ。そのためのプランはこの一年でずいぶんと溜まっているのだ」
 そう言って、再び振り返り、挑み掛かるように俺を見た。……女って……スゲエ。
 そして、佐々木は幸せそうに微笑んだ。

「ねぇ、キョン」
 なんだよ。
「……大好き」

佐々木スレ9-170 海水浴

2007-05-19 | その他佐々木×キョン

170 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 22:01:16 ID:vbLlrVR1
佐々木とキョンって二人で海水浴に行ったりしたことありそうだなとオモタ


180 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 22:57:11 ID:pn8QCBBX
>>170
「さて、折角海に来たのだから、僕としてはこんがりとキツネ色になってから帰りたいのだけどね。
 …このシチュエーションですらまだそんな事を言うだなんて、キミは本当にフラグクラッシャーだな。
 どうせなら向こうでやっていたビーチフラッグの旗を根こそぎ真っ二つにしてきたらどうだい?

 さあ、ここまできたらもうやることは一つだ。いわゆる”だれだってそーする 俺だってそーする”ってやつだね。
 つまり、10人で海に来る約束をしていたのに、当日の朝に8人がドタキャンしてきたことや、
 着いた海辺で何故かクラゲが猛繁殖していて、遠泳どころか波打ち際にすら近寄れないことや、
 一緒に来た女の子…一応僕は分類上は女だからね、が妙に布地の少ない水着、というよりも布切れを着ていることや、
 シートを広げた所が岩場のど真ん中の砂浜で、いい感じに周りから死角になっていること、等々は頭の中から追い出して、

 海には入れず、かといって帰るのはもったいないからせめて肌だけは焼いていこうと思った僕に、
 この妙に光沢のあるサンオイル、というかサンオイルらしきものを、心行くまで塗りたくってくれないか、ということなんだ。
 何故キミが頑なに拒むのかが僕には理解できない。一緒に海に来た人にオイルを塗ってあげるのは当然のことだろう?
 それとも何かな? こんなハレンチ極まりない布切れを着ている僕に対して、言いようのない劣情を抱いていることを
 悟られまいとしているキミの精一杯の抵抗なのかな?
 それだったらもう無意味だよ。5分前からキミのパラソルが、…我ながら下品だね、夏の太陽に向かって盛大に自己主張
 してしまっているのを、僕は見てしまっているからね。

 こんな日差しの下ではオイルを塗らないとお互い眠れぬ夜を過ごす羽目になりそうだ。
 ついでに僕は別の意味でも眠れぬ夜を過ごしそうだけれどね。
 少なくともオイルだけは塗ってほしい。それ以上のことはしてもしなくてもいい。
 なに、単にキミが何もしなければ、…僕がナニかするということだけだよ」





「…ということがあったらしいと、機関の調査で判明しました。全く破廉恥極まりない。
 ああ、今度二人きりで海に行きましょう。僕のビーチフラッグ捌きと、ビーチパラソル捌きを是非見ていただきたく」

「誰か、丈夫なロープと重石を貸してくれ」


181 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 23:15:13 ID:P0LYMoIq
>>180
仕事がはやいなwww
なんという小悪魔ササッキーwww


182 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 23:21:39 ID:4Wv8Ek07
ちょw古泉死亡フラグ


183 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 23:38:57 ID:iDmgiJza
どうせキョンがフラグを折るのに負けないくらい古泉は死亡フラグを立てるキャラだからだいじょぶさ~。


185 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 23:48:35 ID:Yi4cEKl2

     待たせたね
      , -‐- 、      ,. ‐-ー- 、
     ,'. /  ト、 ヽ.    ノ /    ヽ
.     i. ((从ソ 从〉   ノハハハハハ !
     l (|┳ ┳i!l     !|─ ─;iリ)!
    ハNヘ.''' ヮ''ノハ!.   ’ 、 - ,ノル´ ダウト!
      ⊂)`_)´)つ .    〈i.`:.´.,i'>
       (.`Y゛.! .      .{_,T_''}
       〈__パ,〉     .  〈_,八_,〉


186 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 00:21:46 ID:inqeyDgp
>>185
やっぱり胸の部分がダウトなのか?


あれ? こんな時間に宅配便? まあいいか、見てk……

佐々木スレ9-146 佐々木の告白

2007-05-19 | その他佐々木×キョン

146 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 19:12:05 ID:+XJxhbed
キョン、急に呼び出してすまないね。まあ、とりあえずジュースでも飲んで人心地ついてくれたまえ。
ああ、そうだね、要件だね。うん。
いや、何分僕もこんなことは初めてでね、ぜひキミに相談に乗ってもらいたいのだよ。ああ、こんなことと言ってもネガテイィブな意味で取らないで欲しい。
むしろ僕個人としては今まさに狂喜乱舞したいほどの気持ちなんだ。キミが訪れるまで嬉しさのあまりどうかなってしまいそうだったよ。ちょうど両親が旅行中じゃなければ黄色い救急車が呼ばれてしまったかもしれないね。これは冗談だよ。あはは。
だって待ち望んでいた者がついに訪れたのだから。まあ、代わりに訪れなくなってしまった物もあるのだがね。くっくっ。
ああ、そうだね。言葉遊びをするためにキミにご足労願ったわけじゃないんだから。
ふふ、ごめんごめん。それにキミはこういうことに鈍いから、こんな言い回しじゃ察してもらえそうにないしね。まあ、そういうところも大好きなんだけど。
ああ、すまないね。ついキミに会うとじゃれ合いたくなる。
じゃあ単刀直入に言わせてもらうよ。



出来ちゃったんだ。



……キョン、いくら驚いたからといってジュースを噴出すのは止めて欲しい。おかげで僕の顔はキミの唾液とジュースをミックスした液体まみれだ。もったいないじゃないか。それに僕の顔はキミの体液をかけられることにまだ慣れていないんだよ?
これじゃあさすがに締まらないからね。僕にとってはロマネ・コンティ以上の液体で非常にもったいないのだが、仕方ないから顔を洗ってくるよ。


147 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 19:13:09 ID:+XJxhbed
………
……


ふむ。待たせたね。おや、正座などしてどうしたんだい?
ああ、そうだね。じゃあ、僕も真面目ぶって正座をして話を続けよう。
さて、話の続きだったね。うん、出来たんだよ。間違いないね。絶対だよ。



キミと僕の赤ちゃんだ。



そんなにびっくりしないで。私はキミに操を立てているから性的関係はもちろんキミだけだよ、今までもこれからも。当然赤ちゃんの父親はキミしかいないでしょ。それにね、わかるの、キョンの赤ちゃんがお腹にいるって。うふふ、ママでちゅよー。
ゴム? ああ、あれね。
穴。穴、開いてたら避妊具としての役割果たせないよね。ふふ。
私ね、よーく考えたんだ。どうしたらキョンの一番になれるか。
涼宮さん、長門さん、朝比奈さん、あと妹さんとそのお友達もだね。私が知るだけでこんなにもキミの周りには雌がいるんだよ。皆キミの一番になりたがっている。
だからね、私一生懸命考えたんだよ。そしたらね、このこと思いついたんだ。
あはは、私はキョンの初めてを貰って、私の初めてを捧げて、そして母親にされたんだ。これ以上嬉しいことはないよ!



ねえ、キョン、一生幸せにしてね。
大好きだよ、キョン……



でもね、他の女見てたらアナタを■して私も■ぬから……







脳内掲示板@佐々木 FKKに負けないフラグの立て方を哲学するスレ26から引用

佐々木スレ9-131 小ネタ×2

2007-05-19 | その他

131 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 16:53:05 ID:4pyDIfdI
ニタニタ笑いながら運転する者。ポカンと口をあけたまま運転する者。癖様々な処であるが
佐々木は車の免許取ったらどんな運転をするだろうか?


133 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 17:54:50 ID:zgNrs+QH
>>131
まちがいなく運転中は話しかけないで!ってタイプだろw


134 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:04:30 ID:R2tEYK81
キョンを助手席に乗せてうんちくを語りながら
運転しているうちだんだん視線がキョンのほうへ向き
「佐々木!前!前!」
ってなる予感。


135 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:05:40 ID:MUyFugQq
やたら真剣な目つきだろうな


136 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:06:36 ID:zk30oOVZ
「ああ、大丈夫だよ。僕は視界が広いんだ。」

キョンの方を見たまま運転し、事故を起こす佐々木かわいいよ佐々木


137 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:06:45 ID:DTqPeRMY
>>131>>133
そこで、あえてがんがんスピード出す佐々木(グラサンに皮手袋)
を想像した俺は異端。もちろん音はトップガン。

あれ、こんな時間に誰だ…





138 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:23:57 ID:rLGp6q0J
キョンのフラグを崩す能力の名前

・フラグクラッシャー
・フラグブレイカー
・フラグスレイヤー
・フラグスレイヴ
・フラグころし

どれがいいかな?


139 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:25:43 ID:6wrMPFZn
旗壊しの魔眼


140 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:28:45 ID:KtQkHL04
>>138
つ フラグジェノサイダー


141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:29:27 ID:fSa6M/au
フラグブレイカーとフラグ殺しと聞いて真っ先に当麻が浮かんできたんだぜ。


142 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 18:42:39 ID:iDmgiJza
>>138
フラグデストロイヤーかな。

>>141
右手か…


144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 19:00:57 ID:6wrMPFZn
オラオラ!フラグの死神キョン様のお通りだ!


160 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:39:56 ID:MF/+5IAw
恋破斬(フラグ・スレイブ)

夜明けのコーヒーより苦きもの
破瓜の血より紅きもの
凡俗の海に埋もれし
平凡なる汝の名において
我ここに 闇に誓わん
我らが前に立ちあがりし
すべてのフラグなるものに
我と汝が力もて
等しく滅びを与えんことを!


こんな感じ?


161 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:46:55 ID:KtQkHL04
我は折る情愛の御旗!

みたいな感じかな?


162 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:51:42 ID:zq3447rO
>>161
オーフェンぽいな


163 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:55:12 ID:vy0iQ375
>>160-162
何そのファンタジアw


164 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:55:17 ID:KtQkHL04
>>162
いや実際そのつもりだったんだが。

あ、しまった。
ここは「実はダイナソアだぜ!」とかほざいて怒りを買っておくべきだったかな?


165 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 20:57:18 ID:zq3447rO
>>164
道理でw


166 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 21:26:50 ID:GsiiMHdk
「エターナル・フラグ・クラッシュ」
鉄板モノのフラグを片っ端から折り、相手を凍り付かせる。
相手は死ぬ。


198 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 02:44:51 ID:Y1Pr073Q
 『フラグブレイカー』
 約束されし永遠の童貞

佐々木「これがキョンの持つ最強のスキル・・・キョン、恐ろしい子・・・・」


200 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/24(木) 03:08:49 ID:/Wy3JSc/
ハルヒの力=フラグジャマーキャンセラー
橘「…と言う訳なのです」
佐々木「なら、戦うしかないじゃないか!」

キョン「俺、昨日はハルヒの部屋にいたんだ!」
ハルヒ「やめてよね、あたしが本気だしたら佐々木さんがかなうわけないじゃない」




って、こんな時間に俺は何を言っているんだ……

佐々木スレ9-118 >>1乙

2007-05-19 | >>1乙

118 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/23(水) 02:19:32 ID:0d5pOiVJ
「やぁ、こんばんは。今回も挨拶が遅くなって済まないね。まず、>>1お疲れ様。今朝方の
なんとも微妙な時間に970が見えて、妙な雰囲気が生まれた中でのキミの存在は初夏の風
のように爽やかであったよ。
 さて、9スレ目だね。最近は『驚愕』発売までに10スレ行くかねぇ、行くんじゃねぇの、なんて
会話はほとんどされなくなったね。もちろん、これは結論を語るまでもないからだが、この調子
なら本来『驚愕』が発売されるはずだった6月までに十分に10スレに到達できそうだ。この9と
いう数字は、僕が登場した『涼宮ハルヒの分裂』のシリーズ巻数と丁度同じだね。これは面白
い符号だ。もう気が付いている人もいるだろうが、『涼宮ハルヒの分裂』はこれまでのシリーズ
の流れからすると、違和感のあるエピソードだ。長編の第一巻であること。--このエピソード
が『驚愕』で収束するかどうかは分からないからね上下巻とは言わないよ。--これまで、『憂
鬱』長編、『溜息』長編、『退屈』短編、『消失』長編、『暴走』短編、『動揺』短編、『陰謀』長編、
『憤慨』中編という風に続いてきたシリーズの流れを見るなら、この9巻目のエピソードは短編、
あるいは中編小説と短編小説を混ぜた形式でも良かったはずだ。『憤慨』のように、僕の紹介
となる中編エピソードと新入生の顛末を描く中編エピソード、あるいはそのどちらかと、未だに
収録が決まっていない『涼宮ハルヒ劇場その1、その2』、あるいはノベライズ版『サムデイ 
イン ザ レイン』でもよかったはずなのだ。で、あるにも関わらず、作者である谷川流が選択
したのはシリーズ最長の長編作品という選択だった。これはなかなか議論の価値のある話題
ではないかな。ああ、もちろん、この佐々木スレッドは、僕佐々木について語る場なのであって、
シリーズの展開予測の議論に適した場ではない。こういった作品考察、シリーズ考察ならライ
トノベル板の谷川流スレッドで行なうのが正しいだろう。ただね、僕は、ほらこういう性格なもの
でね。キミとの共通の話題というヤツに飢えているのさ。すでにシリーズ第一作にして応募作品
である『涼宮ハルヒの憂鬱』で僕の存在は国木田によって語られ、作中の時間で、実に一年間
以上も放置されたキャラクターだしね。僕らの親愛なる友人と語り合いたいテーマというものが
溜まっているのさ。さて、そんな僕らの親愛なる友人だが、そのスタンスが大体単行本3冊周期
で変わっていることにキミは気が付いているだろうか? 涼宮さんとの出会いである『憂鬱』、彼
が長門さんと触れあい、そして別れることで、自分の位置を決定した『消失』、彼が朝比奈さんを
手伝う中で、自分を取り巻く流れのような物に違和感を持った『陰謀』、そしてこれからやってくる
『驚愕』、彼は自分のスタンスをまた変えるのだろうか? 彼は僕に近づいてくれるのだろうか? 
それともまた離れてしまうのだろうか? もちろん、僕の願望はキミにはわかっているだろう。
 とりあえず、『驚愕』が何時になるのかはわからない。恥ずかしい話だがね、僕は今週が最後の
祭りの日々になるだろう、そう予測していたんだ。来週の今頃には、フライング報告が出始めて、
このスレはそれまでの流れと違った世界となるだろうとね、そんな予測をしていた。だが、どうや
らラストダンスにはまだ早すぎるようだ。ねぇキミ、また、僕と踊ってくれるかい」
 そういって、佐々木は右手を差し出した。

 今日の佐々木さんはちょっとメタ的です。

佐々木スレ9-102 「プルケリマ」

2007-05-19 | その他佐々木×キョン

102 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/22(火) 23:25:27 ID:KJ7vhUAj
Part 9 新スレ記念の短編落とします。


103 :1:2007/05/22(火) 23:26:14 ID:KJ7vhUAj
駅からバス停まで歩く帰り道
あの日みたいに私は空を見上げていた
相変わらずの町並みと私と青い夜
キミは自転車を押しながら、空を眺めていたね
この街でも星が見えるなんて、キミに教えられて初めて知った

―何を見ているんだい?
―見ろよ、天然の人工衛星がきれいだ
―あれは何万年前に生まれた光が、僕たちに届いてきているのさ
―なら、あれは今はもうないかもしれない光だな
宙を眺めるキミはそう言った
でも、あの星はまだちゃんと見えているよ

キミと何度この空を見上げて歩いただろう
キミとどれだけの数の星を見ていたんだろう
夜に浮かぶ天然の人工衛星
少し前を行くキミの背中
私が踏んだキミの影
二人きりの空の下で私たちだけを照らしていた
何万年前の光は暖かかったね

帰り道、すれ違う親子
あのつないだ手がずっと離れなければいいな
ずっと手をつないだまま、いつまでも幸せでいられるといいな
その手が離れないままに
ずっとそのそばで

今キミはどうしているかな
私の知らないものを見て
私の知らない人と出会って
私のいない毎日を過ごしている?
キミのいない毎日と同じように

それでも、まだ星を見ているのかい
この星空を覚えてくれているかい
キミは星空に手を伸ばして何かを掴もうとした
その大きな手がうらやましかった
今のキミの手に守りたいものはあるかい
失くしたくないものはあるかい

そんなこと
私は神様じゃないからわからないけど


104 :2:2007/05/22(火) 23:28:04 ID:KJ7vhUAj
あのころの私は精一杯強がっていた
それしか出来なかったよね
自由と目の前に広がる未来に途方に暮れながら
変わっていく自分に怯えながら
必死に虚勢ばかり張っていた

強がって
笑いあって
キミと歩いて
キミのそばにいた
あの愛おしくて切なくて優しい日々は
誰にもさわれないように
土足で踏み込まれないように
誰も知らないこの場所に隠してきたんだ
キミにすら気づかれないように
自分すら騙すように

何万年前の光に満ち溢れたこの空が私に見えなくなるとき
この空が私の知らない違う空に見えるとき
そのとき世界は明日になっているのだろう
でも、それはきっと同じ空

今の私には守りたいものがある
失くしたくないものがある
この夜空に手を伸ばして星空に刻み込んだように
自分の仮面と引き換えに手に入れたもの

強がっていたこと
笑いあっていたこと
キミと歩いていたこと
キミがそばにいてくれたこと
ちっぽけな私だったけど、確かにそこにいたこと
キミと一緒にいられたこと
キミと出会えたこと
全てなくしたとしても忘れないこと

『プルケリマ』


106 :104:2007/05/22(火) 23:29:12 ID:KJ7vhUAj
短い歌ものです。
原曲はランクヘッドのプルケリマ。
ではお粗末さまでした。

佐々木スレ9-90 「奴はペインキラー」(2)

2007-05-19 | その他佐々木×キョン

90 :奴はペインキラー・インターミッション:2007/05/22(火) 23:02:12 ID:YlkZ5fr6
「はっきりいうと、この作品のテーマはありふれたテーマ…『生きること』です。
対照的な二人の神的存在を通して、二つの生き方を見つめたいと思います。
『人間』と『人間以外のもの』との闘いを通して、
人間賛歌をうたっていきたいと思うのです」
「いや橘よ、嘘をつくな嘘を。
だいたい、若い住人が多いらしいこのスレでそういうネタはやめろって」


91 :奴はペインキラー・10:2007/05/22(火) 23:03:53 ID:YlkZ5fr6
結局俺たちは方々の体でコンビニから逃げ出し、
もう一度作戦を練り直してから再度佐々木のご機嫌取りに向かう事となった。
あーくそ、なんだってんだよこりゃ。
それにしてもこれ書いてる奴は、メタル絡めないとss書けんのか。自重しろ。
「うう…頭が痛いです…」
隣の橘は最早グロッキーモードだ。
どうやらさっきのヴァイオリンを弾くM字ハゲやら、
筋トレに励む自称声域4オクターヴのガチホモやらが
こいつの精神をとかちつくちて、いや溶かしつくしてしまったらしい。
それはさておき、いったいどうしたらあいつの機嫌を直せるもんやら。
なにより、そもそもなんで佐々木がこんな事になっちまったのか、
その辺を聞きださないと話にならない。
駅前の石段に座り込んで頭抱えながらうーうー唸っている橘はとりあえず捨て置いて、
俺は町の中をうろついてみる事にした。
ひょっとしたら何かヒントになるものがあるかもしれないからな。
待ってるより探しにいったほうがマシってもんだ。
団長様直伝のアクティヴ精神って奴さ。

それからあちこちをうろつきまわって、いくつか分かった事がある。
まず第一に、ここは佐々木の世界だとはいうものの
あいつが全知全能ってわけではないということ。
どうやら俺や橘がどこにいて何をしているか完璧に把握しているわけではなく、
町中に大発生したデタラメパソコンに直接触れるかもしくは相当近くに行かないと
俺の今現在の位置が分からないようだ。少なくとも『今のところは』。
そういえば俺が橘のマジカルノーパソで書き込んだとき、
初めて俺の存在に気づいたような口ぶりだったしな。あのちび佐々木どもは。
そしてもうひとつ分かった事。あいつはパソコンを使って音やら絵やらを
こっちに見せる事はできるものの、直接俺たちをどうこう出来るわけではないということ。
だから脇腹をナイフで刺されたり、謎の洋館に閉じ込められたりってことは
とりあえず心配しなくてもいい。これも『今のところは』。
で、最後に分かったこと。出来ればこれには気づきたくなかったんだが。
…俺がさっきから2回も『今のところは』と断りをいれたのは、
『これからどうなるか分からない』からだ。
これさえなければゆっくり寝そべりながら善後策を講じる事も出来たんだが。


92 :奴はペインキラー・11:2007/05/22(火) 23:04:58 ID:YlkZ5fr6
それに気づいたのはSOS団御用達の喫茶店。
俺が何か手がかりになるものがないかと俺がそこかしこをひっくり返していたときだ。
佐々木が手出しできないと思って、俺はは安心しきって家捜しに勤しんでいたのだが。
『ブツッ、ブツ』
…スピーカーだ。いつもイージーリスニングを流したり、
客の呼び出しをしたりするのに使われるスピーカーから、何か音が出ている。
今までうんともすんとも言わなかったのにな。
『…を…るの…ら』
誰かの話し声だ。…この声は。
『今が千載一遇のチャンスだって、何でわかんないのかな』
『チャンスだって? 戯言はやめたまえ』
『そうだよ、キョンが自分から気づくかもしれないでしょ?』
『気づくわけないじゃない!』
『待ってたら日が暮れるどころか、ワールドカップが三回はできちゃうよ』
…なにやらひどい言われようだ。
ってそれより、何だこれは?
なんで喫茶店のスピーカーの向こうで佐々木が一人芝居してるんだ?
事態を把握できず立ち尽くす俺の耳に、ガチャリと入り口のドアにロックのかかる音が聞こえた。
…え、ひょっとして俺、ピンチ?
『ほーら、これでオッケーでしょ』
『ちょっと、何してんの!すぐ開けて!』
『馬鹿な真似はやめたまえ。こんな事をしても、根本的解決にはならない』
『どうせ気づくわけないんだから、同じ事じゃない!』
『…キョン、今そこにいるんだろう? 少々まずい事になった』
『すぐ鍵を開けるから、早く逃げて!』
何の話だ?そんな早口でまくし立てられても何がなんだか分からん。
俺が首を捻っていると、先ほど念入りにロックのかかったドアが
豪快な火花とともに外へと吹き飛んでいった。
オーウ、ビバ・ハリウッド。
『ボーっとしてないで早く!』
『ノロノロしてるとぶっ飛ばすよ!?』
うお、なんかハルヒみたいだぞ佐々木。


93 :奴はペインキラー・12:2007/05/22(火) 23:06:05 ID:YlkZ5fr6

つまり、だ。
俺が今見たことを総合すると、佐々木はゆっくりではあるが
あのパソコン以外のものに対しても支配力を持ち始めているという事だ。
まずいな…あんまりゆっくりはできない。
で、なぜか俺は敵意を持って追いかけられる状況にある、と。
今はこうして街中をうろうろ出来たりするが、そのうちそうもいかなくなるんだろうな。
救いなのはどうやらあのブランチ佐々木連中の中で俺をかばってくれるのも
少なからず存在する、ということか。
しかし『気づく』だのなんだのってのは何の話だったんだ?
「それはどうやら、あなたに原因があるみたいよ」
橘か。復活早かったな。
「うー…正直まだ辛いんですけど、あんまりのんびりもしていられないみたいだし」
らしいな。
「なんでそんなに他人事チックなんですか、もう!
…佐々木さんの意識の一部が大本の『幹』から剥離して動き出してるみたいです。
このままだと最悪、ここに閉じ込められたままかも…」
剥離?…なるほどな。今まで直接モノを動かしたり出来なかったのは、
実は『していなかった』っていうだけだったってことか。
あいつが無意識のうちにセーブしてたんだな。
今になって思えば、一番最初に俺が見たあの掲示板の荒れようは、
佐々木の一部が暴走する前兆だったわけだ。
「しかし…正直いって、これは異常事態です。
いままでこんな事なかったのに」
いままで、ねぇ。そうだ、聞きたい事があったんだった。
「橘、ひとつ聞いていいか?」
「? なんでしょう?」
「お前、『いままで』っていったよな。
……いつから佐々木は、こんなけったいな事をやり始めたっていうんだ」
「…最初に佐々木さんの精神に変調がみられたのは一週間ほど前。
あたしたちにこの『力』が授かったのは、三日ほど前の事です」
三日前か。いったいそのときに何があったんだろうな。
「あなたを呼んだのは、そのあたりの話を聞きたかったというのも
理由のひとつなんです。
…佐々木さんに、なにをしたんですか」
何をしたってお前、俺が加害者なのは規定事項だとでも言うつもりなのかよ。
やれやれ、そんなこといったって俺には全然身に覚えがないんだよな…
俺は自分の潔白を心から信じていたものの、何か手がかりを探せないものかと
あまり性能の良くない灰色の脳細胞から記憶をたどり始めた。
最後に、佐々木と会ったときの記憶を。



                                  「奴はペインキラー」(3)に続く