【涼宮ハルヒの憂鬱】佐々木ss保管庫

2chの佐々木スレに投稿されたssの保管庫です

佐々木スレ6-182 「正夢おっぱい」

2007-05-07 | 胸関連

182 :正夢おっぱい :2007/05/06(日) 07:45:44 ID:jB9Utw77
「キョン、キミは本当に僕のおっぱいが好きだね」
 そう言うと佐々木はいつもと違い女らしくふふっと笑った。
 うるさいな。好きなんだからいいじゃないか。
「それはおっぱいだから? それとも僕のおっぱいだからかい?」
 禁則事項だ。答える義務はない。
 やたら顔面の温度が上昇するのを感じた俺は、返答と抗議の意味を兼ねて桃色の突起を口に含み強く吸った。
「んっ……」
 くそ、色っぽいな。
「キ、キミは酷い男だな。僕のおっぱいをおもちゃにして」
 いいじゃないか。俺がこうしていじくってたからお前のコンプレックスたる貧乳が解消されたじゃないか。まあ大は小を兼ねるというし、俺も大きいほうが好きだからな。しかしそれよりも俺はこの形の良さが損なわれなかったことの方が喜ばしかったがね。
「ぼ、僕はだね、キョン、キミにそんなことをされる度に母性本能やら独占欲やらが刺激されるわけで、それだけで、そ、それだけでね、その、あ、う……」
 くそう、可愛いな。これは俺専用のおっぱいだ。誰にも渡さない。

………
……


「なあ佐々木、さっきからノート見てなににやにやしているんだ? それに顔赤いぞ。大丈夫か?」
「ああ、大丈夫さ。いや昨日見た夢があまりにも僕の欲求を如実に表したものだったからね、それをノートに書き記したんだ。この記述を見る度にその映像がリフレインされるんだよ」
「ふうん、どんな夢だったんだ?」
「それは秘密だよ。ただね、正夢にしたいんだよ。ところでキョン、キミはおっぱいが好きかい?」
 佐々木は自身の小振りだが形の良い乳房を指差しながらいつものようにくつくつと笑った。



佐々木スレ6-171 「いろがみ」

2007-05-07 | その他中学時代ss

171 :いろがみ 1/4:2007/05/06(日) 03:01:51 ID:FL9efRct
「いろがみ」

 まいどまいど、馬鹿馬鹿しく思うんだが、この寄せ書きってのはどういう習慣になるのかね。
そんなことを思いながら、俺は色紙に書く担任教師へのお別れの言葉を考えていた。オリジナ
リティの溢れる文面にしようと考えるモノの、下手の考え休むに似たり、一向に進まぬ。終い
には、“ご苦労様でした、キョン”と綴るのが精一杯というところだ。本名ではなく、クラス内で
本名より知られた通名で書くあたりが抵抗の足跡か、色紙をひょいと隣席の佐々木に手渡した。
 佐々木は、ふむと短く嘆息し、色紙を一瞥した後に、筆箱から筆ペンを取り出した。そして、
“一期一会”となかなかの達筆ぷりで一息に書いた。さらさらっと署名。
 その迷いのなさに思わず、理由を聞いてしまったのも無理からぬというところだろう。
「ん、なんで“一期一会”なのかって? うむ、こういう寄せ書きのたびに記入する文章を考
えるのは無意味だとキミは思ったことはないか、僕はそう思っている。そこで、よっぽどのこ
とがない限り、どんな寄せ書きでも、僕は自分の好きな言葉を書くことにしている。その言葉
を今回は一期一会にしてみただけのことだ」
 なるほどなあぁ。ヘンに納得させられるな。一年受け持ってもらった担任教師には、ちょっ
と失礼じゃないかと思わないでもないが、俺の書いた言葉だって決して褒められたモノじゃ
ない。それなら、佐々木の流麗な一筆の方がよいようにも思えた。
「キョン、聞いてくれないか。そして、良ければ僕の疑問に答えて欲しい。毎回、疑問に思っ
ているのだ。ああいう寄せ書きをどうして色紙の裏に書くのかね。クラスのメンバー全員で、
先生に対して感謝の意を述べるというのに。それこそ大いに失礼に当たるのではないかと
思うのだが」
 色紙って、白い方が表だろう。
「何を言っているんだ、キョン。白い方が表なのだったら、アレは白紙だ。色紙なのだから、
色の付いている方が表に決まっているだろう」
 うお、確かに、言われてしまえばその通りだ。うっ、俺が知らないと思ってやがったな。
なんだその、悪戯がうまく行った悪ガキみたいな得意な笑顔は。あ~あ~、俺は知りませ
んでしたよ、そんなこと。
「たとえば、これがサイン色紙であるのなら、裏書きするのは分かる。自分は色紙の表に書け
るような人間ではありません、という遠慮の心と捉えることも可能だからだ。しかし、師に対し
て感謝の意を述べるのに、そんな遠慮をしていては返って失礼ではないかな」
 むむむ、それは確かに。だが、言っておくが、このクラスで色紙の白い方が裏だって思って
いるのは、たぶん、お前だけだぞ。
「そうなのだよ。うむ、それも分かっているんだ。だから僕はああいう寄せ書きを受け取るたび
に僕だけは表に書こうかと数瞬、悩んでしまうのだよ。まぁ、これはキミだからこそ話した、
僕の秘密のひとつというわけだ」
 寄せ書きを見て、思っていたのはそれか。
「そうだ。僕は寄せ書きを受け取るたびに、うまい悪戯を考えついた小学生のような気分になっ
てしまうのだよ」
 わかったよ、じゃあ、俺がお前から何かを受け取るようなことがあったら、キチンと裏面も
見ることにするぜ。
「ああ、キョン、ぜひにそうしてくれたまえ。知っての通り、僕は結構へそ曲がりな所がある
からね」
 まったく、口の減らないヤツだな。
「もちろん、それもよく言われるよ。そうそう、キョン。色紙ついでに教えておこう。色紙と
は元々は和歌を記すための物だ。小倉百人一首などの和歌さ。ちなみに百人一首は、鎌倉時代
の歌人藤原定家がある貴人の別荘の襖色紙に載せるために依頼を受けたのが始まりだそうだ。
定家は壁一面に百枚の色紙を貼り付けて、あーでもない、こーでもないと悩んだようだよ」
 そりゃまた、ずいぶんと広い壁をお持ちのようで、うらやましい限りだな。
「実際どのくらいの広さだったのかはさすがに知らないがね。一面に百人一首が描かれた襖は、
なかなかの風流だったのではないかな」
 風流か、俺にはまったく縁のない話だな。


172 :いろがみ 2/4:2007/05/06(日) 03:04:28 ID:FL9efRct
「キミが朴念仁なのはいい加減よく知っていたつもりだがね、言うに事欠いてそれはないだろ
う。落花流水の心を忘れてはいけないよ」
 落花生?
「あ~~、もういいよ」
 そう言うと、佐々木はぷいすと横を向いた。周囲のクラスメイトがこっちを見てくすくすと
笑った。
「そこまで言ったんだ、今日の放課後は開けておきたまえ、キミに付き合ってもらいたい場所
がある」
 ん、付き合うのは構わんが一体何をするつもりだ。
「お茶を飲みに行こう。美味しい茶菓子もでるのだ。そうだな、午後二時にキミの自宅まで迎
えに行くよ、家の前で待っていたまえ。ああ僕らは学生だから、格好は制服でよい」
 なんだよ、ドレスコードのある喫茶店なんかあるのかよ。
「まぁ楽しみにしていたまえ。キミの期待を裏切ることはないよ」
 そういって、佐々木はにやりと唇を歪めた。考えてみれば、イヤな予感はしていたんだよな。
この時に。


 午後二時、家の前に立っていたら、音も立てずに、黒塗りの高級日本車が着いた。なんだな
んだと思っていると、運転手らしき男が降りてきて恭しく後部座席を開けるではないか。まさか
……そこから新緑色の振り袖も艶やかな佐々木がどこの良家の子女かというような優雅な動
きで降りてくる。
「やぁ、キョン。待たせてしまったようだね。行こうか、乗ってくれたまえ」
 な、なんだ。何が起こっているんだ。分からぬまま俺は車に乗せられていた。俺たちを乗せ
た車は再び音もなく動き出す。これ、返って危険なんじゃねえか。
「そうだねぇ。最近の高級車は逆に始動時などは音が出るようにしているものもあるようだよ、
むろん、内部的には静穏を維持してのレベルで」
 で、佐々木よ。俺は一体、どんな企みに付き合わされるんだ? 茶を飲みに行くのではな
かったのか?
「ああ、その通りさ。母の付き合いのある人がね。今日、野点を開いているのだ。それに参加
させてもらうのだよ」
 のだてってなんだ?
「野点とは野外で自然の風物を愛でながら茶会を開くことさ。古くは武士たちが狩りを行なっ
た際に、一緒に茶も飲んだことから来ているようだよ。時期的に見て、おそらく今回の主役は
桜、ソメイヨシノだね」
 お前はいいが、俺はどうなる。こんなくたびれた制服で顔を出せる席なのか、それは?
「そうだな、せめてシャツはキチンとズボンに入れたまえ。あとは上着の前をキチンと止めて、
うん、これでよい。キミは中学生なのだから、制服がフォーマルだ、問題はない。それに野点
では、それほど五月蠅くは言われないさ、特に今回のように不特定多数の人々が参加するよう
な催し物ではね」
 わさわさと、佐々木が制服の前を止めて、髪の毛を弄る。やめろう。お前は俺のお袋か。
「やや、これは失敬。どうにも、近所の子供を見ているようでね」
 悪うござんしたね。


173 :いろがみ 3/4:2007/05/06(日) 03:07:39 ID:FL9efRct
 そんなことをしている間に、車は純和風の屋敷の前についていた。
「さぁ、ついた。それでは僕はここから少々大きめの猫を被るからね、普段と違っていても
笑ったり、不用意な発言をしては、いけないぞ、キョンくん」
 そういって、佐々木は静かに微笑んだ。ああ、そうだな。わかりましたさ。
 車は音も立てずに、車宿りに止まる。見れば周囲は、同様かそれ以上の高級車ばかりと来た。
 運転手が俺の横のドアを開け、慇懃に一礼。俺はそれにうながされるようにまろびでた。
伸びをして、振り返ると、車内からは佐々木の右手が、すっと差し出される。
 どうした、降りないのかよ?
「キョンくん、エスコートしてくれないの?」
 あ、さいですか。気が利かずに申し訳ない。俺が手を取ると、舞踏会にやって来たお姫様の
ように優雅に降りてくる佐々木なのだった。しまったな、ちょっとドキドキするかも……。
 おいおい、佐々木相手に俺は何を考えているんだ。
 で、どっちいくんだ。お嬢様。
「キョンくん、こっちよ」
 佐々木が右手の袖をそっと押さえながら、手のひらで方向を示す。へいへいってなばかりに
そっちに向かう俺なのさ。


 そのお屋敷の庭園は見事な日本庭園であり、そこかしこに傘と簡易のベンチのような物が
置かれていた。客たちはてんでバラバラに邸内を散策しているようだ。確かに、あんまりお堅
い集まりとも思えないなぁ、これは。
「どうだい、なかなかの物じゃないか、良く手入れされた庭園という物は見ているだけでも
気持ちがよい、そうは思わないか」
 近くにいるのは俺だけなので、佐々木はいつもの口調で、問いかける。
 ああ、そうだな、と俺は心あらずという風に、答えていた。いや、それがすんごい美人が
向こうで茶を点てていたのだ。平安期のお姫様のような翠がかった長い黒髪は、桜色の振り袖
に良く映えていた。あっ痛、っっ、耳引っ張るな。
「何を鼻の下を伸ばしているんだね、キミが見るのはこっちだ、こっち」
 そういって、ぐりんと俺の首を反対方向にねじ曲げる佐々木、やばい、その方向はやばい、死ぬ。
 だが、その抗議も中途で消えた。そこには見事な桜の古木が立っていたのだ。
 苔むした幹には悠久の時を過ごした証明だ。こいつは、軽く見積もっても、俺たちの10倍は
生きているのだろう。それが、今年も見事な花をその枝一杯に開かせている。薄紅色の花は、
周囲の緑の中で、その木を浮かび上がらせる見事な働きをしていた。人によって計算され尽く
された自然の美。だが、この艶やかな花は決して、計算では開かない。そして、その花の下、
新緑色の振り袖を身に纏った佐々木はその桜すらも支配下に置いていた。
「どうだい、すばらしいだろう」
 佐々木は桜のことを言っているのだろう、恐らくは。だが俺は佐々木を含めたこの風景に、
同意を返していた。
「ああ……そうだな、とても…綺麗だ」
 俺の気持ちは桜に乗ったのか、佐々木は珍しく頬を染めた。
「な、なんだか、気恥ずかしいな。どうしたことだろうね。これは」
 その言葉には応えず、俺はじっと、佐々木を含む、その美しい風景に見入っていた。魂を
止める美しさというものは確かにあるのだ。詩人だね、俺も。


174 :いろがみ 4/4:2007/05/06(日) 03:10:20 ID:FL9efRct
「“君ならで誰にか見せむ桜の花、色をも香をも知る人ぞ知る”むむ、字余りだね」
 その時、佐々木が歌を詠み上げた。その時、五七五?七七の言葉が俺たちの間に流れる。
字余りになってるからバランス悪いな、おい。
「さすがに、今の心境を五七五で綺麗にまとめるのは、僕では荷が重すぎたよ、すまない。
もう少し、和歌の素養を積んでおくとしよう。今日の記念にキミに捧げる歌だ。謹んで受け
取ってくれたまえ」
 そんな俺たちの後ろから声が掛かった。
「紀友則、古今集の38の変形かっ、なかなかのものだねっ、風流風流、青春じゃないっか」
 振り返ると、先ほどのお姫様のお成りである。思わず、会釈する。
「お邪魔してもうしわけないっさ。ちょっと、その桜くんに用があってね。さてさて、一枝拝借っと」
 その女性は、ふんふんと桜の枝振りを確かめ、満開の桜とつぼみが絶妙にブレンドされた
一枝を右手に持った鋏で切り取った。
 佐々木は素早く猫を被り、優雅に一礼。
「ご無沙汰しております。お嬢様、本日はお招き頂きありがとうございました」
 俺も付き合ってもう一度、お辞儀をする。
「いいのさ~、このおじいちゃんもみんなに見てもらって喜んでるっさ。そろそろ咲き収めだ
からっね」
 どこかのお嬢様なのだろうが、威勢のいいしゃべり方をする人だなぁ。
「向こうで、先生が茶を点ててるから、逢い引きがすんだら、寄るといいっさ。それじゃっ」
 しゅたっと右手を挙げてそう言って、お姫様は去っていった。ところで、誰?
「ん、今の女性かい? この辺りの土豪で大地主の娘さん、僕やキミの人生には基本的に関わ
らない人だよ、所謂殿上人というヤツだ」
 ふむ、日本に根深く残る階層社会の一端を見た。
 ところで、さっきお前が詠んだ和歌もどきなんだが。
「お嬢さんが言われていた通り、あれは古今集の歌の変形だ、ちなみに元の歌では、桜ではな
く梅の花だ」
 ほう、どんな意味なんだ。
「歌の心は秘めてこそ華さ。あの歌は僕からキミに贈ったのだから、その心はキミが詠んでく
れたまえ」
 そう言って、佐々木は常にもまして華やかな笑顔をみせて、くつくつと笑った。


 後のことは、まぁいいだろう。ちなみに初めて飲んだ抹茶は酷く苦かったが、これはこれで
おつな物なのだ、ということを知ったな。あと甘い和菓子がお茶に良く合う理由が分かった。


 さて、翌日のことだ。
 佐々木は、朝から神妙に俺の隣で座っていた。心なしか、背筋も伸びていたな。だから、
つい聞いてしまったんだ。
 今日も、何かあるのかってね。
 佐々木は俺の言葉を聞いた途端に、深く深くため息を吐いた。
「……ふぅ、裏を読んでくれるんじゃなかったのか……。そうだよな、キミに返歌を期待した
僕がバカだった」
 おいおい、一回や二回、風流に触れたからといって、俺が変わるわけもないだろう。
「ああ、そうだね、その通りだ。キミは朴念仁なのだったよ」
 俺は一体、佐々木にどんな変化を期待されていたのだろうか?
 それは今になってもわからない。


175 :いろがみ 補足 :2007/05/06(日) 03:12:36 ID:FL9efRct
 風流を狙いすぎて、オチがよくわからんなくなった。というわけで補足っさ。

作中で詠まれた歌の原型は
“君ならで、誰にか見せむ、梅の花、色をも香をも、知る人ぞ知る”
 古今和歌集に掲載されている三十六歌仙の一人、紀友則の歌です。

 梅の花を折って人に贈ったときに添えた歌であるとされており、

 “この花の良さ(を知らせる)が分かるのは君だけだよ”

 という意味のようです。
 単純な恋歌というわけでもないらしく、おそらく同性の友人に送った歌であろうとされてい
ますし、いろいろな解釈の幅がある歌といえるでしょう。
 まぁこのお話での解釈は秘めさせて頂くとして、佐々木がどのような返歌を望んでいたのか、
想像していただけるのもまたおつなものかと。


176 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 03:57:19 ID:Ug7C8G1J
>>175
朧月若草萌ゆる花の世に君があれなとおもほゆるかな

歌ネタは難しいなー・・・こういう時に自分の教養の無さが身にしみて辛い


177 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 04:04:25 ID:rnSfteBH
>>175
登場した瞬間から、鶴屋さんだと分かった。
本編でもこんな恋歌?になぞらえた展開が出てきたら、それはそれで
また優雅なもんだな。


178 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 04:07:00 ID:i9c6iypU
>>175
佐々木嬢が生徒会長に思えたのは俺だけでいい
しかし鶴屋さんが登場とは意表を突かれた


どうせだったらキョンに

散りぬとも 香をだに残せ 桜の花
恋しき時の 思ひ出にせむ

と返してもらってもよかったかも
卒業シーズンの別れの季節だし
鶴屋さんもおじいちゃん木が咲き納めと言ってたし
間違える箇所も佐々木と同じだからね

なんにしても
風流乙っさ!

佐々木スレ6-138 佐々木×キョン

2007-05-07 | その他佐々木×キョン

138 :1/7:2007/05/06(日) 01:11:36 ID:lLMf+wn5
季節は12月上旬
一般的な中学校では期末試験へ向けての準備に追われる時期
さらには最終学年となれば受験勉強へ向けての学習も怠ることのできない時期
参考書や問題集との親交を深めるには非常に良い機会であるこの時期の、ある日……


…………今、俺は猛烈にイラついている。




俺は朝っぱらから母親と喧嘩
不機嫌な母親に勉強のことを突付かれるだけならそんなに珍しくもない、が…
俺だって人間だ、そんなに言われたらたまには反撃する事だってあるさ
さらにはそのおかげで家を出る時間が大幅に遅れた
学校までは全力疾走さ
しかし間に合わず遅刻
そして宿題を忘れる
授業ではやたら難しい問題ばかり当てられて1問も答えられない


そんな俺は今、塾からの課題の分厚い問題集をやっていた
明日までに終わらせて提出しなければならない
全然分からない問題のおかげで、朝っぱらから続くイライラに焦りが積み重なる
あぁ…、この問題集をそこの窓から全力でぶん投げることができたらどれほど気持ちいいだろう……

「負のオーラがやたら出ているね、キョン。」

佐々木だ
いつもの俺ならたわいもない返事を返すことができただろう
しかし今の俺にはそんな余裕はない
よって言葉を発せない

「………」

「塾の課題をやってるのかい?
 くく、まだ半分もあるじゃないか。提出期限が明日ということを君は理解してるのかな?」

「分かってるさ、だから学校にまで持ち込んでやってるんだ。
 ………くそっ、全然分かんねぇ。」


139 :2/7:2007/05/06(日) 01:12:06 ID:lLMf+wn5
「キョン、この問題集ばかり覗いていても進歩しないよ。
 これと一緒にもらった参考書があっただろう?分からない時はそれも使わないと。
 君は頭の回転も良く利口なほうだとは思うが、勉強を冷めて見すぎていると思う。
 確かにこんな数学の公式なんて知らなくても生きていける、
 不便なことはあるだろうが英語を話せなくても充分人生は楽しめる、僕もそう思うよ。
 だがねキョン、今の日本はそんなに甘くはないんだ。
 学歴なんて関係ない、成功した人でこういったことを言う人はよく見るよね、
 でもそんな成功を収めることができるのは何万人に1人だと思う?
 僕は自分の人生を成功させるために勉強してるんだなんて言わないけど、
 人生を歩む上で重要な選択肢が増えるというのは、ワクワクすることだと思わないかい?」

空いている俺の前の国木田の席に座った佐々木は、ひじを俺の机につき、
手であごを支えながらそんなそうな難しいことを言っていた
平常心を保っていない今の俺にそんな難しいことを言ったって素直に反応できるわけがない

「お前にまで説教されなきゃならんのか、
 そんなことより俺は明日までにこれを終わらせなけりゃならんのだ」

問いを必死に考えつつ、俺はぶっきらぼうに答える
相変わらず分からん
頭に血が上り、脈拍が上がってくるのが分かる

「くっく、今日のキョンの機嫌の悪さはそこからきてるのかい?
 朝にでも勉強のことについて親から叱責を受けた、といった感じかな?
 それならば遅刻の理由も納得できるね。
 それよりキョン、親御さんからそんなに心配されてるのかい?
 何だったら受験や課題についても僕が力に―――

「――うるせぇな!」

佐々木にイラついていたわけではない
恐らく…勉強に対して悩みのない佐々木に嫉妬している自分自身にイラついていたんだろう
朝からたまっていたイライラがついに抑えきれなくなってしまった


140 :3/7:2007/05/06(日) 01:12:57 ID:lLMf+wn5
「……キ、キョン?」

佐々木も動揺しているようだった、それもそうだろう
俺が同年代の友達に対してここまで感情を表したのは初めてかもしれない
こう言っちゃ何だが、俺は結構理性のきいた人物だ
人前で我を忘れて怒り狂うなど、まさかするはずもない

そう思っていたのだが……

「お前はいいよな、俺みたいにこんな苦労する必要がなくて!
 俺とお前は違うんだ!ほっといてくれ!」



………………………



教室の見事な沈黙のおかげでここでようやく現状を把握できる余裕ができた
今は昼休み、ほとんどの生徒が教室で思い思いの時間をすごしている
そんな中に響く怒声、どうやら注目の的らしいね
やれやれ

「すまない、キョン…そ、そんなつもりじゃ――――

佐々木が見たこともない顔をしていた
表現はしにくいが…まぁ、佐々木にこんな顔をさせちゃいけないな…
俺がレアなところを見せたお礼なのだろうか
などという場違いなことを考えているほど俺の思考は腐っちゃいなく、
俺の頭ではさっきからの自分の言動がめまぐるしくリピートされていた


30人ほどの人数がいるにもかかわらずこの沈黙
その沈黙に耐え切れなくなった俺はその教室から逃げ出す事しかできなかった

校舎をフラフラと散策しつつ俺は自らの頭を冷やしていた
まさかあんなこと言っちまうとは………
佐々木はいつも通りの対応をしてくれていた、あの場合明らかに俺がどうかしている
何をやってるんだ俺は………


「謝っとかねぇとな………」

自分自身に言い聞かせるようにこんな言葉を吐いていた


141 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 01:13:06 ID:bK+GduL7
>>136
ワロタwその勢いで佐々木の胸にターッチターッチそこにタッーチ♪するんだ


142 :4/7:2007/05/06(日) 01:13:42 ID:lLMf+wn5
その後、俺は午後の授業の始業の鐘ギリギリに教室に戻った
まぁ……早くから席についてクラスのやつらから注目されたくなかったんだよ
分かるよな?この気持ち


「ねぇキョン、あれはちょっと酷いんじゃない?」

授業が開始してすぐに前の席の国木田が話しかけてきた
もちろん国木田も一部始終を見届けている

「佐々木さん、泣いてたように見えたけど」

………まじかよ……!
あの佐々木が泣く?…嘘だろ、そんな柄じゃねえぞ
国木田の発言に俺は瞬間的に佐々木の席のほうを振り返ってしまった


いない

「それ」

そういいながら国木田が指差したのは俺の机の右上のあたり
何やら書いてあるのに俺は気付いた


――――キョン、本当にごめん


文字体からみても佐々木からのメッセージだった


何でだ

何で俺は佐々木に先に謝らせてるんだ
どうみても悪いのは佐々木に八つ当たりしちまった俺じゃねぇか!

「佐々木さんは………いませんね、
 欠席ではないようですが、どなたか連絡を受けていますか?」

教師が出席を取りつつ佐々木の不在を確認する

「すいません!体調悪いので保健室行って来ます!」

俺は教師にそう告げるや否やダッシュで教室を駆け出した
教師が何やらいっていた気もするがそんなの耳に入っちゃいねえ



佐々木に謝りたかった


144 :名無しさん@お腹いっぱい。:2007/05/06(日) 01:14:20 ID:i9c6iypU
>>126
よう、俺

俺、サービス業だから黄金週間だからは忙しいんだぜ
それなのに仕事中SSの構成とか考えてるからミスとかやっちまう
おかげで頭のなかではだいぶ形になってるが
書き出せるのはGWぬけないと出来ない
早く休みが欲しい


あー、もう寝ないといけないな
佐々木さんおやすみ


145 :5/7:2007/05/06(日) 01:14:22 ID:lLMf+wn5
俺は一目散に屋上へと向かった
何故場所が分かるかって?
1年近くも一緒にいりゃ落ち込んだあいつが居そうな場所くらい分かっちまうんだよ

ガチャ!
校舎から屋上へ続くドアを一気に開ける
ヒュウ、と冷たい風を感じる。やはりもう冬だな
そして手すりにもたれ掛かりこっちを振り返る佐々木の姿を確認した
そのまま駆け足で佐々木のほうへと向かった

俺の姿を確認してから、佐々木は自らの征服の袖で顔を拭っていた
ホントに泣いてたらしいな…

「くっく、涙が出たのはいったい何年ぶりだろうね」

階段ダッシュのおかげで息切れしてる俺をよそに佐々木が呟く

「……」

「キョン、さっきは―――――

「すまなかった!佐々木!」

まだ言いたいことをまとめてなかったのだがこれ以上佐々木の方から謝らせるのは許せなかった

だが、どうやらこの一言だけで充分だったらしい
そういえば俺のイラついてた理由も分かってくれてたようだしな、佐々木は


「もちろん許すよ、キョン」

爽やかな笑みを見せつつ返す佐々木
そして少しシリアスな顔になりこう続ける

「でも僕が君に対して失礼なことを言ってしまったことは事実だ、
 そのことに関しては僕のほうからも謝らせて欲しい。ごめん、キョン。」

俺はほんとに馬鹿野郎だねぇ
こんないいヤツにあんなこと言っちまったんだ
自分にも非はあるということにして、俺と対等な立場にしようとしてるんだ
それぐらい馬鹿な俺にも理解できるさ

「……キョン、許してくれないのかい?」

俺が反応できないでいると不安になったのか佐々木はこう聞き返してきた
こみ上げる涙を必死に我慢してたんだよ


「許すに…決まってるだろ」







揃って教室に戻った俺たちをやけにニヤニヤしながら見てくるやつらもいたが、まぁ気のせいにしておこう


146 :6/7:2007/05/06(日) 01:14:55 ID:lLMf+wn5


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――




6「久しぶりにみんなでゲーセンいかねぇ~?

授業後の教室、何のためにテスト前は部活動禁止になっているのか理解してない連中が
余暇の過ごし方について色々と議論している
もちろん、俺の学力と勉強実績では『テスト前なんだから早く家帰って勉強しろ』なんて事言っても
全くサマにならない事はとっくに理解しているしやろうとも思わん

「キョン~、おまいもゲーセンでも寄ってかねぇか?」
「悪いな、俺は塾の課題ってもんがあるんだ、ベンキョウすんだよ」
「ノリわりいぞ~」

などというくだらんやり取りをしていると、佐々木が隣に居ることに気が付いた

「お、佐々木か」
「キョン、これから君の家へ行っても大丈夫かな?」

いきなりの自宅訪問要求に多少戸惑ったが
佐々木が家に来ることは初めてではなかったので来られても特に困るようなことはなかった

「あ、あぁ、別に構わんが……やることねぇぞ、
 俺はこいつ終わらせないといかんしな」

俺は問題集を指差しながら答える

「だから、だよキョン。終わるまで力になるよ。」
「はは、そりゃ心強いな」

佐々木が家庭教師をやってくれるというのなら、明日までには何とか終わらせそうだな、
……いや、問題集半分もあるんだった。徹夜でもしねぇと無理なんじゃねぇか、
などと考えていると佐々木が他の女子に話しかけられていた

「佐々木さーん、この後暇ならあの喫茶店寄ってこうよ。あの最近できたっていう――

どうやら5~6人の女子グループに誘われているようだ

「あー、ごめんね。今日はちょっと無理なんだ」
「そっかぁー、……あ、もしかしてキョン君が先客~?」

そんな意味深な目で見られてもなぁ、

「確かにこれから佐々木の世話にはなるが、そんなんじゃ――――
「そうなんだ、どうやら今日は家に帰してくれそうになくってさ」


俺の言葉を遮って佐々木がそういうや否や数名の女子グループの
中心に隕石が落ちたかのようにキャーキャー騒ぎ出す

俺の後ろにいた男子のツレも、何やら騒いでいる
うるせぇなあ、裏切り者ってなんだよおい!


147 :7/7:2007/05/06(日) 01:16:59 ID:lLMf+wn5
「おい佐々木、あいつら何か誤解しちまったんじゃねぇのか?」

帰り道、まだ4時すぎなのにもかかわらず日も短くなったもんだ
と実感させられる太陽の低さを視野に捕らえつつ言った

「何故だい?本当のことだろう。
 あの課題の量じゃ、僕が付きっきりで教えても今日中に終わらせるのは中々に厳しいんじゃないかい?」

あの時やっておけば……という後悔を何度もしているのに、
何故俺はまた同じ後悔をする羽目になっているんだろうねまったく、と思いつつ返す

「まぁ、そうだろうが……」

「それに、僕は構わないよ。誤解されていても」

素っ気無くそんなことを言ったので俺は隣に居るのが本当に佐々木かと確かめてしまった
俺がこんな反応をすることを予想していたのか、佐々木は少し得意げな顔をしていた

だが佐々木は気付いているのかね




自分の顔にほんのり朱が染められていたことに

そんな佐々木を見つつ、俺もその時思ったことを素直に言葉にした




「――俺もさ」


―――――――― Fin ――――――――

佐々木スレでは3作目の投下となります
倉庫に置いてありましたが流れに乗って投下
もう少し短めにまとめようと思ったのですがちょっと伸びすぎました。。