サナリ日記

貧乏でもがんばっている編集プロダクションの日常

怖い話 3

2010-07-29 10:14:02 | Weblog
今日は社長が体験した怖い話を。
社長は若い時、山男だったそうで、
しかもロッククライミングの達人だということでした。

指先を岩の間に入れ、
指と腕の力だけで体を持ち上げて岸壁を登り、
寝るときは岩にロープを吊るして、
臨時の寝床を作ったりしたこともあると言ってました。


本当か?


と、疑ったりしていたのですが、
社長の後輩やら仕事仲間の話を聞くと、
案外ウソでもないらしい。


とにかく筋骨隆々で今はともかく、
昔は泣く子も黙るくらいの怖さだったということです。



今でも一緒にお酒を飲むと、

「アルプスの天然水って売ってるだろ?俺は絶対飲まないんだよ」

といいます。

どうやらそこらへん近辺で死体をたくさん見ているそうで、
見つかっていない遺体などは時間とともに濾過されて……。
といっております。



そんな社長が体験した怖い話は、
やっぱり山で起きたことでした。


23年前の雪山登山。
社長と友だち2人と3人のパーティ。

雪の中を進むと腕時計が落ちていた。
何気なく時間を見ると、現在の時刻と全く同じだった。

「動いているのか?」

と拾い上げてみると壊れて止まっている。
ものすごい偶然だなと思ったが時計を元の場所に置いたその瞬間、



「助けてくれ~」

と声がした。
最初は空耳かと思ったが、
3人とも同時に顔を見合せたから空耳ではない。
大変だ、誰かが遭難していると緊張感が張り詰める。

「どこだー!!」

と、3人であらん限りの声を張り上げ救助体制に入ったが、
声は途絶えてしまった。


あきらめて黙々と山を登り、
日も暮れてきたのでテントを張ろうとした場所に、
すでに先客がいて、テントが張ってあり明りが灯っていた。


丁度いい距離を保ってこちらもテントを張り、
夕食をとったがどうも空気が重い。
昼間の出来事といい、なぜかそばにあるテントが気になる。
明りが灯っているのに気配がしない。

誰かが代表してあいさつに行こうということになったが、
どうもみんな気が進まない。いつもなら簡単なことなのに……。

しょうがないのであいさつはやめて、
そのまま寝ることになった。


早朝、テントをたたみ出発の準備をする。
このときにもテントはあった。
もちろん明りは消えている。



そして登頂。
下山してバスの停留所まで付いた。

ちなみに停留所の付近には小屋があり、
その小屋には「訪ね人」の写真がたくさんはってあるそうだ。
いまだ行方不明になっている人たちの家族が、
情報を求めて顔写真、出かけた服装や小物の情報を公開している。
その中の一枚の写真をみて社長は凍りついた。


拾った腕時計だ……。


でも、情報公開の日付は去年の今頃。


3人が黙りこくっているとバスが到着した。

今日が最後のバスの運行。
今度は来年の春に再び運行となる。

ということは、このバスに乗れなかった場合、
ふもとまで3時間以上歩かなくてはいけなくなってしまう。

バスに乗り込んだのは3人だけ。
あのテントの持ち主は?




社長が経験した怪奇現象らしい体験はそれっきりだということです。

未だに時計とテントが鮮明に目に焼き付いているといっています。




「社長、谷川岳の天然水飲みますか?」

といったら、

「谷川岳なんてさらに飲みたくない」

だって。
山男は天然水にうるさい。