犬吠崎に温泉があることを知り、“大海原を見ながらの温泉も乙だろう”と考えたのが銚子を訪れた動機だが、意外に途中の銚子電鉄が楽しめた。
JR銚子駅の改札を出て、銚子電鉄の券売機を探したが見つからない。駅員に尋ねると、「切符は車内で買えます」と言って、改札口を切符なしで通してくれた。“今どき券売機もないとは、ずいぶん貧乏な鉄道もあったものだ”と思いつつ乗車すると、確かに車掌が乗車券を売りに来た。
愉快なのは駅名の看板。「もとちょうし」駅では、看板に“上り調子、本調子、京葉東和薬品”、「かさがみくろはえ」駅では“髪毛黒生”、などと表示してある。“ナニコレ?”と思ってスマホで検索すると、銚子電鉄は停車駅のネーミングライツを売っていることが分かった。各駅の近所にある会社や店もあるが、東京に存在する会社もある。例えば、“髪毛黒生”はメソケアという新橋にある頭髪ケア材の販売元である。その他については、下のURLを開けていただく。
https://www.choshi-dentetsu.jp/detail/railway/41
本来の表示板には、オリジナル駅名の「かさがみくろはえ」が表示されているが、どの駅でも本来の表示板の白地部分が赤茶色に錆びているのが面白い。それで思い出したのが、銚子電鉄は生き残りのために、いろいろ工夫しているというTV番組。錆びた表示板は「当社は塗料も買えません」という“ビンボー”ぶりのアピールらしい。
銚子駅で見た駅名の表示板には“絶対に諦めない”とあり、一見しただけでは意味はわからなかったが、 “ビンボー”が基本コンセプト(?)であることがわかれば、“銚子鉄道は絶対に諦めず、生き残るぞ!”という意気込みを示していることがわかる。
車中の広告で見た“鯖威張る弁当”も“サバイバル”で、“絶対に諦めない”意気込みの流れだとわかる。犬吠崎駅にある“たこやき店”も、売店で見つけた銚子電鉄ブランドの袋入りラーメンや濡れせんべい、そして秋刀魚や鰯の佃煮も生き残りを賭けた経営多角化の一環だとわかる。
時刻表を見ると、銚子発10:23の電車が終点の外川着が10:43だから、所要時間は片道20分。その次の発車は11:40発だから、2両連結の電車が2編成で往復していると推測できる。つまり、銚子電鉄には車両が4両しかないのだ。日本一かどうかはともかく、かなり小規模の鉄道である。
銚子電鉄が超小規模でも卑屈にならず、“ビンボー”をユーモアで笑い飛ばしているのは好感が持てる。翌朝、宿を出る時、土産物売り場で銚電ブランドの秋刀魚の佃美を買って、応援気分を形に表した次第。
頑張れ、銚鉄!!