憔悴報告

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FF12連載「回顧録」第15章:ちょっとした小話

2006年05月03日 | ゲーム
『FF12』では、ハントカタログ(モンスター図鑑みたいの)を埋めていくと、そのモンスターに祭わるいろんな情報やエピソードを見ることができる。
で、「亜人」に属するなんとか族とかなんとか族に関してはちょっとした小話が見れるようになっているのだが、今回はそのひとつを紹介。
以下、その小話です。
↓  ↓  ↓  ↓

この世には、決して相容れぬものが存在するという。
どんなに歩み寄ろうとも、距離をおこうとも、それは真理であり覆ることはないのだ。
その真理に至ることができない故に起こした行動は世界を動かしたが、結局は、いつか訪れる最期が加速しただけのことだった。
どちらも望まぬ結果であれ――。
          哲学者アマタ

山と海に囲まれた小さな街。
豊かで平和なこの街には、ひとつの心配事がありました。
それは森に住んでいる1匹の大きなオオカミのこと。
いつのまにか棲みついていた凶暴な獣は、時おり遠吠えを響かせ、街人を震え怖がらせるのでした。
しかし、そのオオカミは街人を困らせるつもりではなく、本当は人と仲良くしたい、友達をつくりたいと遠吠えを上げていたのでした。

そんなオオカミの姿をみかねた街の狩人は、手助けをすることにしたのです。
「オオカミよ。何故あなたが人に恐がられるのかわかりますか?
それは、あなたの姿が怖いからなのです。」
どうしたらいいのかとオオカミが尋ねると狩人は言いました。
「あなたに人の姿になる魔法をかけてあげましょう。」
その言葉が終わると、オオカミは人の姿に変わっていました。
感謝するオオカミに狩人は忠告しました。
「あくまで姿だけで人に変わったわけではありません。
 決して声を出してはいけませんよ。
 あなたはオオカミなのですから――。」

人の姿になったオオカミは、森を抜け街に向かいました。
これで友達をつくることができる。
顔には眩しい笑顔を浮かべていました。
通り過ぎる人は皆、誰だろう?と不審がりましたが、その笑顔に緊張を解き歓迎するのでした。
これまで恐ろしい形相の顔の人しか見たことがなかったオオカミは、街の人から向けられた笑顔に感激しました。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、辺りは暗くなってきました。

オオカミは森に帰りました。
人の姿は元に戻り、口を閉じる必要もなくなりました。
けれど、もう遠吠えを上げることはありません。
今日という素晴らしい日を狩人に感謝しながら眠りにつきました。
そんなオオカミを、狩人は優しく見つめるのでした。
そして――。

山と海に囲まれた小さな街。
豊かで平和なこの街には、ひとつの心配ごとがありました。
しかし、そんな心配を抱くことはもうありません。
街では勇敢な狩人を称える声が響き渡っていました。
その声は、街人を震え怖がらせることもなく、いつまでもいつまでも止むことはありませんでした。

――オオカミの大群が街へ向かってきていることに気付くまでは。


業務報告
●おれはこの話を読んで、ちょっと方向性は違うけど、別のあるエピソードを思い出した。
それは、このブログのサイドバーにも載っけている『映画の授業』の中で紹介されているもので、出典はオーソン・ウェルズの『アーカディン氏』。
湖を渡りたいサソリが蛙に頼んで背中に乗せてもらおうとする。
でも蛙は、サソリに咬まれるかもしれないから嫌だと断る。
そこでサソリは、「もし咬んだら僕まで溺れてしまう。だから大丈夫。」と言って蛙を説得し、蛙の背中に乗って湖を渡る。
が、サソリはその途中で蛙の背中を咬んでしまい、2匹とも溺れ死んでしまう。
「どうしてこんなことをしたんだ?おまえも死ぬことになるじゃないか。」と蛙。
サソリは答える。
「僕にも分かっている。
 でもどうすることもできないんだ。
 これは、僕のキャラクターなんだ。」
●このサソリと蛙の話は塩田明彦のシナリオ概論の一貫で、「普通、人はこうする」というに陥るな、という文脈の中で引用されてます。
そういうわけで、極端な例ではあります。
●この小話シリーズはコンプリートしたいんだけど、なかなか埋まってくれません。

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