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各国のセンターハーフの類型1 「ボランチ論」 PART2

2008年03月10日 | 考察集
■ 各国のセンターハーフの類型

前回までのTWENTY-FOUR・・・いやいや、前回までのFootball Kingdom
ボランチという言葉のルーツ、ブラジルにおけるボランチの成り立ちについて調査した。現在中盤が4人の場合両サイドを除いたセンターの2人構成は、「守備的+攻撃的」というのが一般的である。しかし、一概に守備的、攻撃的と言ってもチーム、各国リーグによって微妙に異なる。

 「ボランチ限定で考えるから難しくなるんじゃないのか?」
 「ここは、いっちょう中盤(センターハーフ)の役割について考えてみるかな・・・」

そこで、もう少し視野を広めて「センターハーフ」について考えてることにした。
つまり、センター2人の構成・役割などを明確にすれば、必然的にボランチの役割が鮮明になると考えてみた。

次に、各国「イタリア、スペイン、イングランド、フランス、ドイツ」のCH(センターハーフ)の役割とその名称について列挙してみる。
また、以下文中で語られるCH(センターハーフ)は、[4-4-2]フラットをベースとして進めていく。一部、[4-3-3]や[4-2-3-1]であるが、基本4バック・フォーメーションであることも留意願いたい。

■ スペイン  PIVOTE(ピボーテ)

◆ ピボーテの原型、グアウディオラ
スペインでは、センターハーフをピボーテ(PIVOTE) [意味:他の何かが寄りかかる、ある部分の先端]。
しかし、サッカーの世界で用いられると、その意味は途端に広がりをもつ。“軸”の意味を持つこのポジションは、両サイドにパスを振り分けて、攻撃を組み立てると共に守備の第一歩として最終ラインをプロテクトする重要な役割を果たしている。

現代のピボーテの原型となったグアウディオラ現代のピボーテのターニングポイントになったのは、90年代前半に“ドリームチーム”バルセロナの中枢を担ったジョゼップ・グアウディオラである。当時のバルセロナは、主にウィングを用いる3-4-3システムを採用しており、3バックの前方に陣取るグアウディオラの想像性豊かなプレー(ピッチの縦横に放つパスは正確無比)を起点に相手の守備組織を崩した。(※)

近年、バルセロナを除く、多くのチームが中盤をダイヤモンド型[4-4-2]から[4-2-3-1]へシステム変更をしたことにより、ドブレ(ふたりの)ピボーテに変化していった。近年だと、バレンシアの「アルベルダとバラハ(マルチェナ)」という組み合わせなどが象徴的である。

◆ ピボーテの浸透
具体的な例を元に当時のドブレ・ピボーテ(日本で言うダブル・ボランチ)について説明しよう。
(PIVOTE DEFFRNSIVO(ピボーテ・デフェンシボ)をベースに考える)

ドブレ・ピボーテをチームの軸とするシステムをヨーロッパで最初に機能させた監督は、カッペロだった。
91/92シーズン、カッペロ率いるACミランが「ライカールトとアルベルティーニ」がピボーテを務めていた。その後、指揮を執ったローマでは、「エメルソンとトンマージ」、ユベントスでは「エメルソンとビエラ」という組み合わせで優勝収めてきた。(後日、イタリアの項で詳細を別記)

このカペッロがヨーロッパ・サッカー界に根付かせたドブレ・ピボーテを最初にスペインに広めたのはイングランド人のベテラン監督ボビー・ロブソンである。バルセロナを率いた96/97シーズン、「ポペスクとグアルディオラ」を並べて起用したこともあった。

そのドブレ・ピボーテを基本戦術として採用した最初のスペイン人監督は、おそらくセルタを率いていた時代のイルレタだろう。ガルシア地方の一クラブであったディポルティーボを強豪に仕立てる前の97/98シーズンである。その後、99/00シーズン、リーガ優勝。チャンピオンズリーグでベスト8 (00-01、01-02)などの記録を残す。その当時、ピボーテを務めていたのがマウロ・シウバでピボーテ・ディフェンシボの教科書のような選手であった。
レドンド
ピボーテを論じる上で、語り落とせないのがレアル・マドリーでプレーしたフェルナンド・レドンドである。タイプ的にはグアルディオラとマウロ・シルバの中間に位置する。当たりが激しく、ボール回収能力は抜群。背筋をピンと伸ばしたエレガントなプレースタイルで知られており、パスのスキルや優れたゲームビジョンを兼ね備えていた。また機を心得た相手ゴール前への進入などは、スペクタルでさえあった。

グアルディオラが『メディアセントロ(センターハーフ)』とひとくくりにされていたピボーテの役割をいわば定義づけ、そのあとに続くマルロ・シルバやレドンドがより先鋭化していったと言えるだろう。

また、スペインにおいて[4-2-3-1]フォーメーションが多い理由の一つに、「PIVOTE ORGANIZADOR(ピボーテ・オルガニサドール)」を「3」の中央でのプレーを求められる事にも起因していると思われる。この辺は、イタリアサッカー等とは異なるのメンタリティが内在しているのかもしれない。
現代のスペイン・サッカーにおけるピボーテは3つのタイプに分類出来る。

◆ ピボーテの分類
1. PIVOTE DEFFRNSIVO(ピボーテ・デフェンシボ)「守備的な役割を担う軸(造語)」の意味。
最終ラインの前方で守備のバランスを保つともに、ボールホルダーにチェックをかけてボールを奪うタスクを担う。確実なパス能力が要求される。
 ex.アルベルダ、モッタ、エジミウソン、マウロ・シルバ、マケレレ(元レアル・マドリー)

2. PIVOTE SEGUNDO(ピボーテ・セグンド)「補佐的な役割を担う軸(造語)」の意味。
攻守両面で働く万能型の選手を指す。組み立てからフィニッシュの局面に絡み、守備時には相手の攻撃を遅らせて、陣形を整える役割を果たす。また、個々の選手の特性により多少色合いが変化する。
 ex.バラハ、ディアラ、R・ガルシア、デコ、レドンド、バケーロ

3. PIVOTE ORGANIZADOR(ピボーテ・オルガニサドール)「組織する軸(造語)」の意味。
創造的なプレーで攻撃を指揮する選手を指す。ただ、やや守備力に劣る選手が多いため、リーがではセンターハーフで起用されるケースが少なくなった。
 ex.シャビ、グティ、イニエスタ、デコ(PIVOTE SEGUNDOも兼ね備えている)、プロシネツキ

■ イングランド  CENTRAL MIDFIELDER(セントラル・ミッドフィルダー)

◆ イングランドのサッカーの歴史とセントラル・ミッドフィルダー
歴史的に見ると、イングランドの中盤にはテクニックに優れた「ゲームメーカー」は求められず、攻守両面で働く選手が重用されてきた。この背景には、かつては劣悪だったピッチコンディションがある。20年ほど前までは、ピッチは泥沼も同然の重い芝の上で自陣と敵陣を往復するミッドフィルダーにはテクニックよりもスタミナとパワーが求められてきた。

92年トップリーグがプレミアリーグに生まれ変わりピッチの質は改善されたが、海外リーグに比べると依然としてフィジカル重視の傾向は変わらず、激しいボディコンタクトに順応出来なければセンターハーフとして名を成すことは出来ない。マンチェスターUとチェルシーの双方で不発に終わったベロン(アルゼンチン)は、その代表的な例だろう。

また、テクニックで勝負するタイプの選手はピッチ中央ではなくアウトサイドや前線に活躍の場を見出すことが多かった。これは前述のピッチコンディションと関係しており、サイドは比較的に芝の状態も良好で、ピッチに足を取られることも少ない。60年代から70年代にかけて、希代のドリブラーとして名を馳せたジョージ・ベストが左ウィングとして活躍したのも、そうした当時の事情が少なからずあったはずだ。

◆ ハイブリットの誕生と進化するセントラル・ミッドフィルダー
90年代以降、外国人プレーヤーの激増により、従来の枠組みではくくれない選手が続々と現れ細分化が進んだ。分かり易く言えば、複数の能力を兼ね備えた選手達が増加してきた。特に、イングランドの伝統的な力強さに加え、身体能力の高いアフリカ系選手達が新しい流れを生み出した。ファブレガスは、プレミアシップの象徴となるか?
さらに、興味深いのはイングランド人にも「ハイブリッド」が出てきたことだ。現在アストン・ビラでプレーするナイジェル・レオ・コーカーは、新世代のセントラル・ミッドフィルダーのひとりだ。彼らの世代は、90年代、アーセナルで活躍したパトリック・ビエラのプレーを観て育ち、ビエラは当時子供たちに多大な影響を与えていた。

ビエラの登場以降、守備力の高いハイブリッド・タイプが注目されてきたが、新たな流れができつつある。華麗なパスワークを持ち、激しいボディ・コンタクトを挑んでくる相手を翻弄するテクニックを持つセスク・ファブレガスである。近未来のプレミアシップを牛耳るチームは、力強さと華麗なテクニックを兼ね備えたセントラル・ミッドフィルダーの存在が不可欠となるかもしれない。

イングランドでは、センターハーフをセントラル・ミッドフィルダーと読んでおり、現在はそれを5つに分類している。

◆ セントラル・ミッドフィルダーの分類
1.ALL ACTION MIDFIELDER(オールアクション・ミッドフィルダー)「すべてをこなすミッドフィルダー」の意味。
攻守両面での働きが求められたことから、必然的に言葉が生まれた。機動力に優れ、激しい上下動を繰り返すオールラウンダーに用いられる。
 ex.ジェラード、ランパード、バラック、プラット、ロブソン、チャールトン

2.QUARTER BACK(クォーターバック)「アメリカン・フットボールで攻撃の中心をなすポジション」が由来。
オールアクション・ミッドフィルダーの中でも、ミドルパス1本で局面を打開できる選手。後方から前方へのパスレシーバーに長いパスを送ることから名づけられた。中長距離パスを得意としている選手を示す。
 ex.シャビ・アロンソ、キャリック、マカリスター、グレン・ホドル

3.ANCHOR(アンカー)「船のイカリ。最後尾の人。安定させるもの」の意味。
中盤の後方で守備を安定させることから総呼ばれるようになった。ポジショニングに長け、ボール奪取能力に優れたタイプを指す。
 ex.マケレレ、サベージ、マスケラーノ、ロイ・キーン、インス、ウィキンス

4.HYBRID DFFENSIVE(ハイブリッド・ディフェンシブ)「守備的な合成物(造語)」の意味。
複数の守備能力を兼ね備えているタイプを占める。外国人選手が増え始めた90年代から数多く出てきた。身体能力に優れたアフリカ系選手が多い。
 ex.エッシェン、レオ・コーカー、シソコ(元リバプール)、ビエラ(元アーセナル)

5.HYBRID OFFENSIVE(ハイブリッド・オフェンシブ)「攻撃的な合成物(造語)」の意味。
オールアクションタイプのパス能力に加え、ボディコンタクトを回避するテクニックを備えた選手。現在、該当するプレーヤーはセスクのみである。
 ex.セスク・ファブレガス

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次回は、「ドイツ・フランス」編。各国のセンターハーフの類型2 「ボランチ論」 PART2
あと、近いうちに 『プレーバック94年W杯アメリカ大会』をお送りします。


■□ 参考資料・引用など □■
 ・ワールドサッカーマガジン 2006/09/21発売号 (10/5号) - 国別センターハーフ研究
 ※ 今回の資料は、2年ほど前の雑誌なので、情報の新鮮さに欠ける部分はありましたが、逆に時代を遡るという意味では良かったかもしれません。この辺に関しては、ご理解、ご了承願います。

■□ お願い等 □■
 ・文中の(※)は、個人的な目印です。
 ・記事が連続シリーズ物ですので、コメントの内容次第では、こっちで判断し「表示を保留」とさせていただく場合もあります。
  また、現時点では、お返事出来ない場合もあります。
 ・あとから、普通に文章構成など変わる場合もあります(笑)


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5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (シャンク)
2008-03-10 23:41:23
イングランド=足元の悪さ の視点は久しく忘れていましたので、改めて考えさせられました。気候のよいスペイン、ポルトガル地方で優れたセンターハーフやドリブラーが輩出されるのは必然だったのですね。
ボランチの一言ではかたずけられない役割があり、時、場所、システムによりそれぞれ負担が変わる様ですね。
勝手な解釈ですが「守備においては常にスペースを消す動きをして、1対1では鬼のスライディングで相手の足ごとボールをかっさらい近くの見方に配球。転じて攻める場面では上がっていった味方のポジションをカバーし、ここぞ!では思い切ってゴール前へ突進する。」のが私の理想のボランチです。(ジェラードかな)あと審判の目を盗んで、相手にちょっかいをだしてイライラさせる事が出来てもいいです。(あぁマスケだ。)
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Unknown (yohan)
2008-03-11 20:23:02
レアルのマケレレ・エルゲラのコンビが好きでした。

ライカールトもなかなか。
返信する
コメントのお返事 (コージ)
2008-03-11 21:56:45
シャンクさん

こんばんは。
>ボランチの一言ではかたずけられない役割があり、時、場所、システムによりそれぞれ負担が変わる様ですね

今回のテーマはご指摘の部分なんですよね。
日本のボランチという表現にはあまりにも狭義な感じがするんですよね。そういう意味で、前回のブラジル編などルーツを探るってイメージです。
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Unknown (rarirooney)
2008-03-19 21:10:57
はじめまして。

たまたま通りかかったんですがすごく面白いのでコメントしてしまいました!

マンUファンなんですがスコールズは「HYBRID OFFENSIVE」には入りませんかね?
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コメントのお返事 (コージ)
2008-03-19 22:21:32
rarirooneyさん

こんばんは、はじめまして。
スコールズは、オールラウンダーですね。
ランパード、ジェラードの先輩格って感じでしょうね。
ただ、時代が異なるので求められるプレースタイルの微妙な部分で異なる感じだと思います。
今後ともどうぞ宜しくお願いします。
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