原題： ABENDLAND
監督： ニコラウス・ゲイハルター
観賞劇場： シアター・イメージフォーラム
公式サイトはこちら。
夜のお仕事。
人間の感覚として眠りに向かう夜に眠らず、仕事をする人たちの羅列が続く。
ライブ会場、工場、ホットライン、国境監視員、病院、風俗、郵便局、警察・・・。 考えてみると実に多様な職業が夜でも存在している。
しかしながらそこは『いのちの食べかた』で無言のうちに食に対しての現代人の歪んだ在り方を突き付けたニコラウス・ゲイハルター、もちろんこれはタイトルのような単なる「図鑑」ではない。
様々な職業は一見何の関連性もないように見える。しかしずっと見ているとそこにはある共通性が浮かび上がってくる。それは「熱狂の後に訪れる危機」だ。
ここに出てくる全ての職業（何の関連性もない順番だけど）を眺めているうちに、ある地点からそれは人間が刺激を求めるが故に派生してきた職業の割合が多いことに気が付く。
刺激を求めるという表現がもし的確でないのなら、「本来人間があるべき姿よりもさらに満足を求めた」結果、できた職業、とでも言うべきか。 便利だとか効率を求めたり、あるいは以前では考えられなかったような欲望や要望や刺激のニーズがあるが故に生まれた職業。
世界的な不況の折、雇用の拡大という面では確かに夜の仕事は貢献しているのかもしれない。がしかし、こうして夜の職業を外側から眺めてみると、どことなくそれは自然な流れではなく、後から作り出された需要によって生み出された思いに捉われるのもまた事実。
普通の感覚として、夜に働く人がいることは当たり前になりつつあるにも関わらず、改めて並べられてみるととてつもない種類の仕事があり、そしてそれは計り知れない人間の要求に基づいて出来たものということに気が付くにつれ、慄然とした感覚にも捉われてしまいそうになる。 快楽や要求を満たすために後天的に生まれたものたちは、何も仕事だけではないのだろうけど、それが収入になるという視点から必要とされてしまうことがあまりにも安易に感じてしまう。
そして何よりもその仕事の１つ１つの持つ意味が重たく、必要性を強く訴えかけてくる。 映像自体は無言にも関わらず、これでもかと印象付けてくるのは監督の手腕だろう。
オクトーバー・フェストの大群衆の中で淡々と任務をこなすスタッフたち、顔の見えない相手の心をつなぎとめるホットライン、消えてしまいそうに小さな命を守る看護師、有事に備え訓練を続ける警官、その他の職業のどれもが、今までは考えつかなかった隙間の需要を満たすためのものである。 隙間のニーズを職業にしてしまう発想の豊かさに驚くと同時に、そこまで便利にすることが至上命令であるかのような世の中も、うすら寒く感じてしまう。 無言でもここまで想像力を高めさせ、観る者を圧倒するのは、監督の力量に他ならないのだろう。
★★★★☆ 4.5/5点
コチラでは8月下旬からの公開です。
『いのちの食べかた』もそうだったけど、
夜の職業に注目したこの作品も独特の視点の作品のようですね。
無言の中にもこれだけのことを訴えかけられる手法はさすがです。期待していいですよ。
あーやっとroseさんとカブった～。最近、TB廃止になったブログが結構ありますね。楽天ブログが早かったですが、こんなに増えてくるとは。
夜の職業に就く人々の姿、自分には「静かな時間に働けてちょっとうらやましいなあ」と思ったりもしちゃいました。満員電車に乗らなくて済むし。と考えちゃうのは日本が安全な国だからなんでしょうね。外国に住んでたらコンビニの店員だって怖そう～。
と言いつつ、煌々と灯りが灯っているのは、あれはあれで不自然ですよね。
笑っちゃいました。 最近、TBつけてまわるような大作を書いてないもので。
この作品、無言なのに訴えてくるものが大きくて、しかも夜の映像が何故か美しくて、私とっても好きです。
夜の方が人がいないし、昼のごみごみとしたところじゃなくてゆっくりのんびり仕事出来るなら、その方が私も好きなんですよ。満員電車嫌だしね（笑）
日本って本当に平和ですよね。でも世界を見渡すと危険は足元にあるところばかりで、そしてその危険が夜の職業にもなっていたりもします。
いつまでも平和な日本であってほしいけど。。。
＞最近、TB廃止になったブログが結構ありますね。
ですね。アメーバもだし、あといくつか。
TBは時間取られるけど、それはそれで本来の意味もあるのに。