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【TIFF_2012】『NO』 (2012) / チリ・アメリカ

2012-10-25 | 洋画(な行)


原題: NO
監督: パブロ・ラライン
出演: ガエル・ガルシア・ベルナル 、アルフレド・カストロ 、ルイス・ニェッコ 、アントニア・セヘルス 、マルシャル・タグレ 、ネストル・カンティリャーナ 、ハイメ・バデル 、パスカル・モンテーロ

第25回東京国際映画祭『NO』ページはこちら。

作品サイト(英語)

映画『NO』公式サイトはこちら。(2014年8月30日 ヒューマントラストシネマ有楽町他全国公開)






チリに27年間君臨したピノチェト軍事独裁政権の継続可否を問う国民投票にまつわる攻防を、コマーシャリズムを舞台に描く。
まずはピノチェトという人物が一体何なのか、ここだけはせめて映画の前に知っておきたいところ。

アウグスト・ピノチェト


ピノチェト派は当然ながら軍事政権継続を望み、そして長きに渡り政治弾圧を受けたり虐殺されたり、貧困にあえいできた国民たちは退陣を求める。
この頃、1980年代末期~90年代初頭にかけては世界でも大きく政治体制が変革した時期であったことも、選挙結果の後押しをしたのかもしれない。そもそもその流れの中で軍事政権は激しく時代から後退していくものだった。
ピノチェトの場合は陸軍から支持は受けてはいたものの、海軍・空軍・警察等は反発。これが退陣へ繋がったと思われる。しかしながらこの選挙自体が当時は大きく海外にも報道されており、世界が見ている中であからさまに反対派を攻撃して流血騒ぎを起こせなかったのも当然の話だろう。


キャンペーンは支持派と反対派に分かれて行われ、1日15分間、両陣営の映像を流してもいいという規約があった。このコマーシャル製作を巡って物語は進む。
反対派「NO」を合言葉にして映像を作ったのが、ガエル・ガルシア・ベルナル演じる若き広告マン。彼はコマーシャル製作の中枢となって日々のキャンペーン映像を生み出していくが、一口にNO派と言っても様々な人間が集まっている以上軋轢も当然生じる。
またSI派からの、NO派メンバーに対しての相次ぐ圧力や嫌がらせも当然あった。本作の設定としてガエルくんの上司に当たる人間がSI派のキャンペーンリーダーとなっていて、当然ながら彼らの対立やSI派の妨害などもそこに持ち込まれてくる。
また敵陣営の攻防を読みながらの仕事の合間に抱えている家族の問題など、どこもかしこも一筋縄ではいかない難しい話が取り巻く。


あくまでも私見ですが、YESな部分を探していくよりもNOなところを突いた方がキャンペーンって展開しやすそうな気がする。まして相手は民衆の間では悪名高い、極悪非道な弾圧を行って来たピノチェトなのでネガティブキャンペーンならいくらでも展開できる。
徹底的に叩くのが最も簡単だけど、しかし広告マンとしてはそうはしなかった。あくまでも民衆に親しみやすく、支持を得るためにはどうすればいいか。コマーシャリズムとして訴えることを選択したのである。
当然ながらネガキャンに軽いイメージ?と反対する人たちもいる。しかしまずは「NOということを浸透させる戦略」の方が、様々な大衆を惹きつけるには効果的なのでしょうね。そのためのシンボルマークでありキャンペーンソングでありスローガンなのだから。例え主張としては正義だったとしても、それが受け入れられなければ始まらないことがわかる。浸透させていって、そこからシリアスで訴えかけるようなフィルムを作っていく作戦もいい。そうすれば弾圧時代に最も被害を受けた世代も、そうでない若い世代も取り込めるからだ。
対するSI陣営はもう、NO陣営の自由自在な動きに焦って防戦一方。旧態依然の恐喝や脅しなど、およそ時代遅れの方法で裏からつぶそうとしたり家族に危害を加えると警告したり。そんなのいつの時代の話だとも思うのだけど、まだまだそんな国家は山ほどある。


結果的にはもう検索すれば出てくるのでここでは割愛するが、こうした政治キャンペーンにつきもののあれやこれやの話と、実際に黒歴史として刻まれた弾圧に対しての抵抗という二本柱で見せてくれた、ちょっと珍しいタイプのエンタメ作品。日本ではなかなかこういうジャンルの作品はなく、また約20年前の話と比較的記憶に新しいだけに、非常に共感できる部分も多いのではないだろうか。


★★★☆ 3.5/5点






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8 Comments

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Unknown (mig)
2012-11-01 09:21:11
おはようです。

>結果的にはもう検索すれば出てくるのでここでは割愛するが、

ウケました 笑

そんなに面白いという作品ではなかったんだけど
映画でこういうことを知るきっかけになりますね。
ガエルがいかにも出そうな内容で
ハリウッドのラブストーリー(ケイトと済み)
なんかよりずっと合うよね。
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migちゃん (rose_chocolat)
2012-11-01 10:42:51
そうなのよ。結果わかっちゃってるから、ここには書かなくてもいいよね(笑)
南米のことってよくわからないことも多いし、映画で教えてもらうこともずいぶんあるよね。

>ハリウッドのラブストーリー(ケイトと済み)なんかよりずっと合うよね。
ハリウッドのって去年の暮の、あれだよね?こちらの方が断然面白かったです。
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 (とらねこ)
2012-11-04 14:51:20
roseさん、日参してますがこんにちは。
私もこちら、見たけれど途中で少し寝落ちしてしまったので、書けないと思うので来ちゃいますー。
寝た部分は少しだと思うんですけど、ワイン2杯呑んじゃったのは失敗でした・・かえるさんと例のチーズバーでw

私としては、映像をわざと古いタッチにするのみならず、サイズもあれかあ・・というのがとても残念でした。
『アルゴ』や『グラインドハウス』などのオールドタッチは逆に素敵だなーと思えるんですけどね。
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とらねこさん (rose_chocolat)
2012-11-04 15:34:07
こんにちは~ 日参大歓迎ですわ。お茶飲みます? 笑

で、寝落ちしちゃいましたかー。やっぱり、映画祭で1日に3本4本5本ってのが1週間続いたらそういうのもありますよね。
しかもチーズバーでワイン!そこ行きたいなあ。

私も映画中に眠い時は寝ます(笑)
これは割と集中して見て、この次の『眠れる美女』で撃沈、私が眠った。 笑

サイズってよくわかんないんだけど、いわゆる4:3ってやつかな?
小さくしないでもいいのにね。『アルゴ』はよかったけど。
でもまあこれは公開ある方に賭けてるんですけどね。
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Unknown (ふじき78)
2014-09-20 22:57:24
> 日本ではなかなかこういうジャンルの作品はなく、

日本の映画で選挙取り扱ったので記憶にあるのは津川雅彦主演の『善人の条件』かな。オヤジさんが死んで選挙に担ぎ上げられた津川雅彦が政治の世界の慣習によって、正しい選挙をどんどん行えなくなる様子を描いてた。
マンガだと『ヨシイエ童話』が傑作。

結局、黒い話になっちゃうので明るく派手にポップなエンタメにならないのが日本の選挙映画なのかもしれない。
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こんばんは (ノラネコ)
2014-09-20 23:43:28
二年前のTIFFでやってたんですね。すっかり見逃してました。
今回のスコットランドの投票ともかぶって、結果的に実にタイムリーで興味深い作品になりました。
イッシューの内容は違うけど、今回もNOが勝った訳ですよね。
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ふじきさん (rose_chocolat)
2014-09-21 13:40:34
あと、新しいところでは想田監督の『選挙』『選挙2』ですかね。完全なるドキュメンタリーですが。

日本の選挙映画は暗いですね。重たいとでも言うべきか。
エンタメ系はかなり難しいんじゃないかな。
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ノラネコさん (rose_chocolat)
2014-09-21 13:44:28
ガエルくんなんで鑑賞はmustでしたね。社会派映画なんで映画祭でもチケット取っちゃいます。

>今回もNOが勝った
NOという基準って、権利だったり経済だったりしますね。
既成のことを覆すだけでも大変なパワーが必要だけど、結局は民衆の意見だから。
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