原題: A LATE QUARTET
監督・脚本: ヤーロン・ジルバーマン
出演: フィリップ・シーモア・ホフマン 、クリストファー・ウォーケン 、キャサリン・キーナー 、マーク・イヴァニール 、イモージェン・プーツ
試写会場: ヤクルトホール
映画『25年目の弦楽四重奏』 公式サイトはこちら。 (2013年7月6日公開)
<あらすじ>
極めて精巧な演奏で魅了する第1バイオリンのダニエル(マーク・イヴァニール)、彩りを与える第2バイオリンのロバート(フィリップ・シーモア・ホフマン)、深みをもたらすビオラのレイチェル、チェロのピーター(クリストファー・ウォーケン)から成るフーガ弦楽四重奏団。結成25周年を間近に控え、ピーターがパーキンソン病と診断され、今季限りで引退したいと申し出る。カルテットの一角が崩れることを突き付けられた他のメンバーは動揺。嫉妬やライバル意識、プライベート面での秘密など、それまでに蓋をしてきた感情や葛藤が一気に噴出し、カルテット内に不協和音が響き出す……。(Movie Walkerより)
つい先日、これも試写で観た『アンコール!!』に引き続いて、「中高年or老人×音楽のコラボ映画」となった。このジャンルは最近かなり数多く作られているように思う。原則音楽の良さが前提としてあり、その音楽が何らかの意味を持ってくるので、どんな曲を使うかがそのままその映画のテーマと直結してくる。
本作の場合クラシックなので、そのルールも関わってくる。第1バイオリン、第2バイオリン、それぞれどういう役割をするのかを把握していた方が、映画の内容ともリンクできて意味がわかって来るようになっている。
主旋律を主に弾き、花形に見える第1バイオリンは常に正確でないといけない。ダニエルのこだわりが強く高い目標に向かって邁進する性格はまさに第1バイオリン向き。
対する第2バイオリンは第1に比べると一歩引く存在に見えるが、曲を支える意味でいろいろな旋律をこなさないといけないので器用で腕が立つ人物でないといけない。ダニエルに比べると感覚的に生きているように見えるロバートだが、彼の持つ天才的な腕が第2には必要なのだろう。
なので第1と第2を交互に弾き分けることは恐らく無理な話なのだけど、弦楽のキャリアが長いのに、他のジャンルの人間に吹き込まれてそれを主張してしまうロバートは少し腑に落ちない。もしも目立ちたかったらソロコンサートでもした方が余程いいのに。
この役はこの人、ときっちり決まっているオーケストラでは、そこをアレンジしてパートを兼任してというのはあまり聞かない話。ましてカルテットは少人数できちんと息を合わせないと楽曲が成り立たない。その完成された調和に向けてひたすら活動してきた4人。しかし完璧な調和のようでいて、いつの間にか方向性がズレていることだってある。まして4人それぞれに個人的な事情がある訳で、プライベートがズタズタだったり、将来に向けて不安があったりだと自ずと練習にも身が入らなくなるのは当然のこと。
完璧主義に見えるダニエルにもどこか心の隙間があり、1人だけ年齢が高いピーターにも体力面での不安は尽きない。ずっと日蔭の身にさせられてきたロバートの鬱屈や、そのロバートの陰で更に妻として母として家族を支えなければならなかったレイチェル。
4人の付き合いが長くなり、結び付きが近しいほど、プライベートの充実と完璧な調和の両立は難しくなって行くのではないだろうか。調和を乱した原因を追及しようとしても、誰に一番責任があるのかなどはわからない。それは個々の事情が折り重なって生み出されたことだからだ。
ここでのポイントは、ロバートとレイチェルが夫婦だということ。夫婦関係を持続させることほど大変なことはないのに、それにも増して神経を使う弦楽でもパートナーである以上、双方の顔は同じではいけない。恐らくそう思って彼らもやってきたのだろう。娘も大事、しかしいつの間にか弦楽を第1に優先して生活をしてきたツケを思わぬところで支払わねばならなくなった事態はかなりな皮肉である。ここでアレクサンドラがレイチェルにぶつける言葉は哀しいが、真実かもしれない。ここはイモージェン・プーツが好演だった。
芸術を遂行するには余計なものは排除した方が当然うまくいく確率は高い。家族やパートナーを愛しても、もしかしたらそれは芸術以上にはならないことは、芸術に携わる人の心のどこかに引っかかっている。逆にそんな想いがあったとしても、支えになってくれる存在があるからこその芸術かもしれず、この心の入れ方の配分ほど難しいものはないことを本作は示している。
どんなに困難な問題があろうとも、聴衆には常に最高のものを見せなければならないのが芸術家の宿命である以上、舞台に上がればプロにならなくてはいけない。ピーターは最後までプロとして在りたかったのだろう。演奏の最中は集中できたとしても、舞台を降りてから自分たちの人生をどんな結論にするのか。1つ1つの彼らの経緯や決断をハッキリと説明せず、心の揺らぎを映し出すのも本作の特徴で、1つとして同じ演奏はなく絶えず動きのある音のように彼らの人生の行く末を暗示しているようだ。
★★★★ 4/5点
加えて、今ってば音楽物が本当に多くて。
でもこの作品、なかなかの佳作でした!
人間関係がしっかり描けていて、本当に見応えある作品でしたよね。
人間関係の複雑さ、厄介なところ、そこが見どころです。
たくさんの人に観ていただきたいなあと思います。
中々良い映画でしたね。
ホント公開館少なすぎって感じ。有楽町のシアターはまぁまぁの入りでした。
>中高年or老人×音楽のコラボ映画...確かに多いですね最近...。
個性派俳優たちが良い味出していたと思います。
ムーブオーバーや2番館上映もあるのかもしれませんけど、やっぱり公開時の評判も大事ですよね。
個性に溢れた円熟の俳優陣、という感じでした。
ここ、ものすごく思った。
どんな問題を抱えていようと、観客にとっては何にも関係ないし、観客の求める要望に答えないとならない。
芸術家の生き様を見せてもらった気がしました。
回ってくるのに、3か月はゆうにかかりましたね。
でも、スクリーンで見れて、本当によかった一本でした。
「アンコール!」は、ドキュメンタリーみたいにした方がするっと行けたような気がします。
「カルテット」をドキュ風にっすればよかったと感じました。
『カルテット』、私も観てるけど、どうして何だかイマイチだったのかなーという気もしてて。
『25年目・・』、こちらの方がシビアだし、リアルなんですよね。そこがよかった。
>どんな問題を抱えていようと、観客にとっては何にも関係ないし、観客の求める要望に答えないとならない
それがプロとしての生き方だし、観客も要求してますよね。
こういう作品こそ、多々の人達に観て欲しいよねっ
人って完璧じゃ無いし
混沌と調和、不満や葛藤や感情が混ざって生きてるでしょ
そういう ある意味「マイナスなコトを」
この映画が描いていたのも良かった~
あとストーリーを「ベートーベンの弦楽四重奏」になぞられて描いてたのもステキだった~
私、バリバリのクラッシック・ピアノ家族だから
私も小学校に入る前からバキバキのクラッシック・ピアノ弾いてたから、馴染みだし♪
注 いきなりジャズ・ピアノに行っちゃったけどね♪
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何にせよ メンバーそれぞれが上手かったぁ~
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先日の「大統領の・・・」http://blog.goo.ne.jp/qmaytoto/e/15d76ec5a32d9226a135b3bb6124ab55
ちゃっかり 料理に影響されて作ったのをupしちゃった
いや~ ほんと、単純だわ~ がははははは♪
>人って完璧じゃ無いし
>混沌と調和、不満や葛藤や感情が混ざって生きてる
芸術家だからと言って完璧にはできないよね。
むしろ日々の感情が如実に出てしまうのがシビアでした。
こちらこそ宜しくお願い致します。
いい映画を見た後の心が満たされた感触に、
たくさん触れたいです。
私は、そんな感触に満たされてるrose_chocolatさんのブログのファンの一人です。
鑑賞の質も本数もrose_chocolatさんとは全然違う私ですが、宜しくお付き合いくださいませ。