ROOM210-付録

10年ぶりブログ復活!

増山たづ子 徳山村写真全記録

2006年03月23日 | Weblog
写真集を買いました。
と言ってもグラビアアイドルの写真集では無くてお婆さんの写真集です。ヘ(゜ο°;)ノ

お婆さんの名前は「増山たづ子」
お婆さんの住んでいた徳山村がダムで沈むことになり「戦争で行方不明になった夫が戻ってきた時に、在りし日の村の姿を見せてあげたいから」という気持ちから61歳で写真を始め、当時の住人の暮らしや、無くなっていく村を記録した写真集であります。
たづ子お婆ちゃんは写真のプロどころか写真を習った事さえ有りません。カメラは「ピッカリコニカ」と言うバカチョンカメラで、最初はフィルムの入れ方もわからなかったぐらいです。
でもお婆さんの写真はどんな立派なプロにも撮れないすばらしい写真ばかり。写真って機材やテクじゃ無くて、被写体への愛情と目的意識で撮るもんだと思い知らされました。
うつりゆく村の季節。お金は無いけど笑いの絶えない生活。偉大なる自然の恵み。村の人々の友情。そして潰されていく村・・・・(この時点で涙ボロボロ)
それは徳山村を愛し、徳山村を知り尽くし、村のみんなから愛されたたづ子お婆ちゃんだからこそ撮れた写真なんです。
実は私の住んでた田舎の光景とそっくりで涙無くしては見ることできません。

本文より
「御先祖様、申し訳ありません。花の盛り、桜の木が無残にも伐り倒された」
(村の桜の木が満開であるにもかかわらずショベルカーで倒されている写真)
「おばぁちゃんがきっと来てくれると思って僕頑張ったよ」
(廃墟となり、雪が積もった冬の村に一輪咲くひまわりの花)
涙涙涙涙涙・・・・この時点で涙腺全開。
人だけじゃ無くて、木や花や動物にまでもそそがれるお婆ちゃんの愛情・・・
はっきり言って都会育ちの人たちに、この故郷愛は理解できないでしょう。
農村のお年寄りにとって「故郷」「自分の土地」とは、生まれ育って懐かしいとか、財産とかそんな事だけじゃありません。
自分の土地、田んぼ、畑は、農家の住人が食べていくうえで最も必要な物で、お先祖様から伝わる大事な物ですし、先祖代々と営んできた証でもあります。
そして故郷とは自分を育てた親のようなものでもあります。
過疎の村に行くと、農業をしているのは年老いた老人ばかりです。
昔と違って若い働き手が無いので機械に頼らなくてはいけませんが、トラクター数百万円、コンバイン数百万円、田植機が数十万~数百・・・自分たちが食べるだけの農業ですのではっきり言って大赤字です。
でも腰が曲がっても、借金して機械買っても、先祖代々の土地を荒らしてはいけないと年老いた農家の人たちは頑張っているのです。
それだけ大事な物なのです。(田舎では土地を荒らしたからと言って税金が高くなる訳では有りません)

そんな事書いてる田舎育ちの私も、実は故郷の大切さをわかっていないのです。
だからこうやって故郷を捨てて街で暮らしている訳で。
故郷の大切さは重々わかっているつもりですが、実際住み続けろと言われると・・・・・

私の故郷は徳山村と違ってダムの下に沈む訳では有りません。
でも過疎の嵐に飲み込まれて存続の危機に直面しております。
私が通った小学校の同級生は、当時自分を含めて3人でした。
今はもうその小学校は有りません。中学校も有りません・・・(>_<)
徳山村を見るお婆ちゃんの目と、自分が故郷を見る目がよく似てるのかもしれません。
だからお婆ちゃんの写真集見ると涙涙・・・
私の場合、故郷を捨てたってのも有りますし・・・この罪悪感は一生背負って生きていくんでしょうね。トホホ

ちょい脱線しましたが、これだけ感動した写真集も初めてです。
お婆ちゃんは「ダム建設反対」なんて一言も書いてません。
それどころか、自分たちの故郷が沈んだ事で沢山の人々が幸せになるのなら一番嬉しい事だと言ってます。
皆さんの生活が良くなる裏には、お婆ちゃんのような方々の涙が有る事を知って頂ければと思います。
口の悪い人たちは「膨大な保証金を貰って御殿を建ててるじゃないか!」と言う人も居るでしょうが、上に書いたように金や物では置き換えられない貴重な物を失ってるんです。
田舎の人たちは現金を貰っても使い方を知らないので、貰った保証金の大部分を家につぎ込んでしまいます。
でも払いきれない税金がやってくる事を知りません・・(>_<)
実際に、税金を払えないし家を売るに売れない状況になった人たちがいらっしゃるみたいです。

残念ながら増山たづ子さんは3月7日に88歳でお亡くなりになりました。
お婆ちゃんも村も無くなってしまいましたが、写真集として後世に語り継がれるでしょう。
ご冥福をお祈り致します。

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http://chubu.yomiuri.co.jp/news_top/060309_1.htm

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/fu/news/20060309k0000e060013000c.html

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4877142398/250-5991615-5460259

http://wwwsoc.nii.ac.jp/jdf/Dambinran/binran/TPage/TP1130Masuyama.html
コメント (2)
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