
サマソニのNINレポもアップしないうちに、何故かメタリカ。サマソニ終わった翌夜に観てきたのだが、あまりにいろいろと面白すぎて、今週で終了だというのにもう一回観たかったなー、と後悔している。
本作は米国のへヴィメタル/スラッシュ・バンドとして一時代を築いたメタリカの、バンド崩壊の危機を乗り越え最新アルバム【St. Anger】を完成させるまでを追ったドキュメンタリー作品である。ロック・バンドのドキュメンタリーとしては今年はラモーンズの『End of the Century』という傑作があったが、今作もまたそれと比肩しうるだけの見応えのある完成度の高い仕上がりになっており、単にドキュメンタリー作品として見てもよく出来た力作であった。
なぜなら、ここで描かれているのは「長く濃く、続き過ぎて煮詰まった人間関係のこじれと、その修復までの過程」であり、それはロック・バンドに限らずとも、誰しも思い当たることだからだ。友人関係であれ、仕事仲間であれ、共同作業を続けることの楽しさと反面の困難さについてであり、或いは、結婚生活に不安を感じ始めている倦怠期のご夫婦も必見!(苦笑)の内容かもしれない。活動歴の長いバンドというのは実質的な意味で、本当に“家族”であり、彼らの本作での姿はある意味で「結婚20何年目にして離婚&家庭崩壊の危機!を回避したメタリカ一家」ともいえるからだ。(あまりにベタな喩えで申し訳ないが…)
バンドが、明確な一人のリーダーではなく、主張と個性の強い2人の人間による二頭政治の場合は特に“家族”の意味合いが濃厚になる。メタリカの場合は、それがジェームス(g.&vo.)とラーズ(dr.)のオリジナル・メンバー。マッチョを気取った神経質野郎(そのためアルコール依存症に罹る)&親分肌のコントロール・フリークという彼らがバンドの全てを左右する。彼らの関係がツーカーで上手くいってる時には最高でも、何かのキッカケで拗れ始め、互いへのストレスが膨らみ出すと、その惨状は目を覆わんばかり。それはまさしく犬も喰わない夫婦喧嘩のナマ本番・大修羅場の様相を呈し、カメラの前だというのに低レベルな4文字言葉の応酬は、凄過ぎて逆にスクリーンの外で観てるこっちは大爆笑(の後、ガックリくる)。
手こそ出ないが、激しい愛憎をぶつけあう2人の間で、涙目になりつつ途方に暮れるしかないカーク(g.)の心中いかばかりかと、激しく同情してしまう。そして、難航しまくりのレコーディングのみならず、メタリカというバンドそのものの影の屋台骨を支えたプロデューサーのボブ・ロック。彼の懐深く辛抱強い大人ぶりにも唸る。
そんな身内の恥以外の何モノでもないものを外に出せるのも、結果が良い方向に収まったからだとしても…えらい勇気である。恐れ入る。
バンドというのは、有名になればなるほど、それ自体が一つの大きな生き物になっていく。特に、単に「好きな音楽を好きなようにやる」だけでは済まないような成功を収めたバンドの活動&存続には、否応なくビジネスとしての側面や、数多くのファンに対する責任等が付与されることになり、とてもメンバーだけの一存でどうにかできるようなモノではなくなる。“バンド”という“何かの怪物(←本作の原題: Some kind of Monster)”をいかに上手く手懐けていけるか、怪物の力に引きずられずにおれるか、そうしたことにも心を砕かねばならない。ときには、バンド以外の第三者の助けを乞うてでも。
そんなわけで、ついに彼らは万策尽きてセラピストを導入することになる。うーん、流石アメリカ! しかも彼の月給はなんと4万ドル!うーん、流石メタリカ!(笑>でもこういう人は使いようだよな、という参考になった。脱退したジェイソン(b)の「セラピーなんてアホじゃねえか?」の意見も本音では同意だけどね)
セラピーの一環として、彼らの過去のもろもろもまた表明化される。いろんな意味で初期ファンの涙を誘うのは、オリジナル・メンバーでありながらクビになった過去が本人の汚点として残っている、デイヴ・ムステイン@メガデスの赤裸々過ぎる激白だろう。なんかもう、女囚さそりにも塩撒かれる勢いの痛すぎる恨み節、正に負け犬ルール一直線。聞かされてるラーズだけでなく、こっちまで半泣きになりそうだったよ…っていうか、そんな後向きっぷりは理解に苦しむ、と言われるのも無理ない。まあ、それも彼がいかにメタリカというバンドを愛し続けていたかの証左ではあるのだけどね…。しかも、そのあとで、彼らがまだ結成まもないニキビ面さらした少年たちだった頃の初々しい映像が流れたりするところでイタさ倍増。つい、20余年後の現在のっぴきならないダメ中年集団と化した彼らの姿と照らし合わせてしまい、また涙を誘うのであった。
そんなドン底ドン詰まりの彼らにも、ついに浮上する時が来る。互いに胸にしまってたことをブチまけあったおかげで確実に解消されたものがあり、そして自分たちにとってバンドがいかに大切なものであるかが再び鮮明な輝きをもって表れてくる。
自然にグタグタだったレコーディングもじょじょに軌道に乗り始め、音も「コレだ!」という形が見えてくるようになるのである。暗く長いトンネルの向こうに光が見えれば、後はそこに向かって全力疾走するのみ。
ところで、私はメタリカのファンとしては初期~すなわち'83年1st~'86年3rdまでで終わってる人である(本作中でベーシストのオーディション開始の際、ボブが言ったことに激しく肯いてしまった程)。決してスラッシュ・メタルのコア・ファンでもなく、過去にこのテのバンドに少し入れ込んだ程度の人間なので、正直なところ今のメタリカにはなんの思い入れもなかった。だから観ようと思ったのは殆どネタというか、冷やかし的意味合いが強かったわけだが…
本作を観終わった後、思い切り謝りたくなったよ! 特にジェームス、すまんかった。今まで、あんたはフロントマンの器じゃないとか、特徴は凄くあるけど歌下手くそとか、ただのレッドネック野郎だしアル中でしょーもないヤツ(ここに挙げたことは全て事実だということが、この作品の前半でわかるはずだけどさ…)とか、バカにしててすまん!! いや、今でもあんたは愛すべきバカと思ってるけど、私がすっかりメタリカを過去扱いしてる間に、一山超えてすっかり成長したんだね~(涙>ホント、泣き入ります!刑務所での演説とか!)って感じであった。
ついでに【St.Anger】買わなきゃ、とも思わされ、それが本作の主目的かも知らんけど(^^;;)とにかく、出直した彼らの音を、ちゃんと聴かなくちゃいかんかもね。新ベーシストのロバート・トゥルジーロは、プレイもルックスも個人的タイプだし(…)次に来日することがあれば、十何年かぶりに観に行っちゃおうかな、と思わされたわー。
とまあ、一応リアルタイム、ほぼ同世代のバンドとしていろいろと感じるところあり過ぎだったけど、とりあえず観れて良かったな、というのが率直な感想であった。私のように過去好きだった、とか、名前知ってるだけだけど、という人でも、ロック・ファンの自覚がある者ならば必見の映画である。そして断言しよう! メタリカというメタル・モンスター達の真実の瞬間を目撃することによって、君の魂は震えるような感動に包まれ、頬には熱い涙が流れるに違いない(笑>マサ伊藤風、になりきれてないが…)。
本作は米国のへヴィメタル/スラッシュ・バンドとして一時代を築いたメタリカの、バンド崩壊の危機を乗り越え最新アルバム【St. Anger】を完成させるまでを追ったドキュメンタリー作品である。ロック・バンドのドキュメンタリーとしては今年はラモーンズの『End of the Century』という傑作があったが、今作もまたそれと比肩しうるだけの見応えのある完成度の高い仕上がりになっており、単にドキュメンタリー作品として見てもよく出来た力作であった。
なぜなら、ここで描かれているのは「長く濃く、続き過ぎて煮詰まった人間関係のこじれと、その修復までの過程」であり、それはロック・バンドに限らずとも、誰しも思い当たることだからだ。友人関係であれ、仕事仲間であれ、共同作業を続けることの楽しさと反面の困難さについてであり、或いは、結婚生活に不安を感じ始めている倦怠期のご夫婦も必見!(苦笑)の内容かもしれない。活動歴の長いバンドというのは実質的な意味で、本当に“家族”であり、彼らの本作での姿はある意味で「結婚20何年目にして離婚&家庭崩壊の危機!を回避したメタリカ一家」ともいえるからだ。(あまりにベタな喩えで申し訳ないが…)
バンドが、明確な一人のリーダーではなく、主張と個性の強い2人の人間による二頭政治の場合は特に“家族”の意味合いが濃厚になる。メタリカの場合は、それがジェームス(g.&vo.)とラーズ(dr.)のオリジナル・メンバー。マッチョを気取った神経質野郎(そのためアルコール依存症に罹る)&親分肌のコントロール・フリークという彼らがバンドの全てを左右する。彼らの関係がツーカーで上手くいってる時には最高でも、何かのキッカケで拗れ始め、互いへのストレスが膨らみ出すと、その惨状は目を覆わんばかり。それはまさしく犬も喰わない夫婦喧嘩のナマ本番・大修羅場の様相を呈し、カメラの前だというのに低レベルな4文字言葉の応酬は、凄過ぎて逆にスクリーンの外で観てるこっちは大爆笑(の後、ガックリくる)。
手こそ出ないが、激しい愛憎をぶつけあう2人の間で、涙目になりつつ途方に暮れるしかないカーク(g.)の心中いかばかりかと、激しく同情してしまう。そして、難航しまくりのレコーディングのみならず、メタリカというバンドそのものの影の屋台骨を支えたプロデューサーのボブ・ロック。彼の懐深く辛抱強い大人ぶりにも唸る。
そんな身内の恥以外の何モノでもないものを外に出せるのも、結果が良い方向に収まったからだとしても…えらい勇気である。恐れ入る。
バンドというのは、有名になればなるほど、それ自体が一つの大きな生き物になっていく。特に、単に「好きな音楽を好きなようにやる」だけでは済まないような成功を収めたバンドの活動&存続には、否応なくビジネスとしての側面や、数多くのファンに対する責任等が付与されることになり、とてもメンバーだけの一存でどうにかできるようなモノではなくなる。“バンド”という“何かの怪物(←本作の原題: Some kind of Monster)”をいかに上手く手懐けていけるか、怪物の力に引きずられずにおれるか、そうしたことにも心を砕かねばならない。ときには、バンド以外の第三者の助けを乞うてでも。
そんなわけで、ついに彼らは万策尽きてセラピストを導入することになる。うーん、流石アメリカ! しかも彼の月給はなんと4万ドル!うーん、流石メタリカ!(笑>でもこういう人は使いようだよな、という参考になった。脱退したジェイソン(b)の「セラピーなんてアホじゃねえか?」の意見も本音では同意だけどね)
セラピーの一環として、彼らの過去のもろもろもまた表明化される。いろんな意味で初期ファンの涙を誘うのは、オリジナル・メンバーでありながらクビになった過去が本人の汚点として残っている、デイヴ・ムステイン@メガデスの赤裸々過ぎる激白だろう。なんかもう、女囚さそりにも塩撒かれる勢いの痛すぎる恨み節、正に負け犬ルール一直線。聞かされてるラーズだけでなく、こっちまで半泣きになりそうだったよ…っていうか、そんな後向きっぷりは理解に苦しむ、と言われるのも無理ない。まあ、それも彼がいかにメタリカというバンドを愛し続けていたかの証左ではあるのだけどね…。しかも、そのあとで、彼らがまだ結成まもないニキビ面さらした少年たちだった頃の初々しい映像が流れたりするところでイタさ倍増。つい、20余年後の現在のっぴきならないダメ中年集団と化した彼らの姿と照らし合わせてしまい、また涙を誘うのであった。
そんなドン底ドン詰まりの彼らにも、ついに浮上する時が来る。互いに胸にしまってたことをブチまけあったおかげで確実に解消されたものがあり、そして自分たちにとってバンドがいかに大切なものであるかが再び鮮明な輝きをもって表れてくる。
自然にグタグタだったレコーディングもじょじょに軌道に乗り始め、音も「コレだ!」という形が見えてくるようになるのである。暗く長いトンネルの向こうに光が見えれば、後はそこに向かって全力疾走するのみ。
ところで、私はメタリカのファンとしては初期~すなわち'83年1st~'86年3rdまでで終わってる人である(本作中でベーシストのオーディション開始の際、ボブが言ったことに激しく肯いてしまった程)。決してスラッシュ・メタルのコア・ファンでもなく、過去にこのテのバンドに少し入れ込んだ程度の人間なので、正直なところ今のメタリカにはなんの思い入れもなかった。だから観ようと思ったのは殆どネタというか、冷やかし的意味合いが強かったわけだが…
本作を観終わった後、思い切り謝りたくなったよ! 特にジェームス、すまんかった。今まで、あんたはフロントマンの器じゃないとか、特徴は凄くあるけど歌下手くそとか、ただのレッドネック野郎だしアル中でしょーもないヤツ(ここに挙げたことは全て事実だということが、この作品の前半でわかるはずだけどさ…)とか、バカにしててすまん!! いや、今でもあんたは愛すべきバカと思ってるけど、私がすっかりメタリカを過去扱いしてる間に、一山超えてすっかり成長したんだね~(涙>ホント、泣き入ります!刑務所での演説とか!)って感じであった。
ついでに【St.Anger】買わなきゃ、とも思わされ、それが本作の主目的かも知らんけど(^^;;)とにかく、出直した彼らの音を、ちゃんと聴かなくちゃいかんかもね。新ベーシストのロバート・トゥルジーロは、プレイもルックスも個人的タイプだし(…)次に来日することがあれば、十何年かぶりに観に行っちゃおうかな、と思わされたわー。
とまあ、一応リアルタイム、ほぼ同世代のバンドとしていろいろと感じるところあり過ぎだったけど、とりあえず観れて良かったな、というのが率直な感想であった。私のように過去好きだった、とか、名前知ってるだけだけど、という人でも、ロック・ファンの自覚がある者ならば必見の映画である。そして断言しよう! メタリカというメタル・モンスター達の真実の瞬間を目撃することによって、君の魂は震えるような感動に包まれ、頬には熱い涙が流れるに違いない(笑>マサ伊藤風、になりきれてないが…)。
こうした熾烈な人間ドラマ、多かれ少なかれどこのバンドにもあるのでしょうけど、それを敢えて作品として発表しちゃう!商売しちゃう!というタフさに、またメタリカの「モンスター」ぶりを見てしまいますね~。
そして【St.Anger】の売り上げに貢献してしまいそうです(笑)。