傍流点景

余所見と隙間と偏りだらけの見聞禄です
(・・・今年も放置癖は治らないか?)

映画覚書~如月・弥生~

2008-04-14 | 映画【劇場公開】
煌びやか~な『マイ・ブルーベリー・ナイツ』画像で、ゴマカシてみましたが・・・。
年度末の記事から既に半月、そして連赤映画初見から1ヶ月。今月はまったく映画を観てないのだけど、正直現状の私には映画鑑賞に対する熱意が欠けております。専ら連赤関連の本を読むほうける日々ですし・・・って、明らかにこれはハマッているという状態やね、誰が見ても!(苦笑)
月末にはもう少し落ち着くだろうし、待望だった映画たち(『アイム・ノット・ゼア』と『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』)も公開されるので、それまでにまとめ出し。

■マイ・ブルーベリー・ナイツ
役者が毛唐オンリー&英語だろうが、現代米国舞台だろうが、王家衛電影は良くも悪くも金太郎飴なのだった。というわけで、今回はテイストとしては『恋する惑星』『天使の涙』系でわかりやすーく西洋進出に臨んだ模様。つまり、ライト&ポップ面の家衛作品、じゃないでしょうか。ヒロインのノラ・ジョーンズはとっても可愛かった。今時の米産女子としてはちょっとウブ過ぎでは?とは思うものの、普通の女子っぽさが実に良い。使われる彼女の曲もいい感じにハマってた。彼女を中心として3つのエピソードで見せるわけだけど、ジュード・ロウとのシーンはちょっと退屈、、、に感じてしまったのは、私が彼に全然興味無いせいだと思われます。(>同行した友人は彼のファンで、曰く「堪能できてサイコー!」だったとな) 私的目的はレイチェル・ワイズで、うおおお超久々のファム・ファタル路線がウレシイじゃないかあ!!さすが家衛 女優が輝く術(役柄)を知り尽くした男。そして、そんなレイチェルに振り回されるデヴィッド・ストラザーン。端整でダンディな顔立ちな彼の、情けなさ過ぎる中年男ぶりに涙。そして、ナタリー・ポートマン演じる小娘ギャンプラーの役名が“レスリー”なことに、別の意味で涙です・・・(キャラ造形含め)! 王家衛映画は一面ではスター映画なので、ここに挙げた人たち&家衛ファンなら必見と断言。そうでない人には・・・かなりどーでもいい恋愛映画だと思う(笑)。

■ノーカントリー
いかんせん、コレを観たのが連赤映画鑑賞直後だったというのが悪かった、とは思います。あとね、原作が実に詩的で美しくて(物語は殺伐としているのだが)素晴らしかったから、その読後感を引きずってしまったのもイカンかったのかも・・・。
これがアカデミーに相応しい映画なのか?はやや首を傾げるけれど、しかし単品として観ればデキは見事だと思います。なんせ、本っ当~に原作に忠実な映画化だもん。本音を言えば、忠実過ぎて、コーエンbrosの演出も配役もハマリすぎて殆どスキがなく、逆に喰い足りない感あり。唯一予想と違ったイメージのキャスティングは、モス@ジョシュ・ブローリンの嫁役の女優さんかなあ。もっと幼な妻風な、ややスレてるけどあどけない雰囲気の女性を想像してたので。
だがしかしハヴィエル・バルデム演じる、人というよりヒトガタの災厄・シガーの噂通りなキモ不気味さには惜しみない拍手を贈ろう! なんてったって、髪型も服装も、センスは殆どジョニー・ラモーン!(>ラモーンズの鬼軍曹、いやNY出身のロック・バンドには極めて珍しいと思われるリパブリカンにしてグレイトなギタリスト。合掌)

■エリザベス:ゴールデンエイジ
インド人監督、豪州産主演女優によるイングランド映画。というある種の倒錯ぶりさえプラス要素で娯楽映画として楽しめた前作ですが、今回はどうしちゃったんだ!・・・えーと、正確にはゴールデンエイジ・ビギニング、というところで終わる映画でした。しかも、あの「スペイン無敵艦隊は全然無敵じゃなかった!」海戦がびみょーにショボいので、ちょっと悲しい。更に私のお目当てだったクライヴ・オーウェンは、ホントにただのビーフケーキ状態(=お色気担当)なので、逆に欲求不満ですっ! しつこく前作と比べてしまうけど、今回はなんでこんなに散漫なのだろうか。。。とにかく演出の焦点が絞りきれてない出来上がりで、スコットランド女王メアリー・スチュワート@サマンサ・モートンのクーデター、その熱演も空回り気味で、非常に残念でした。まあ、衣裳のゴージャスぶりとケイト・ブランシェット女王だけを観るなら良い映画なんじゃないかしら。

■ラスト、コーション
前作BBMに続き、今回もヘヴィな愛、というか理屈抜きの人間の情動と、激動の香港・上海を通して近代中国史を描いた映画でした。やはりアン・リー監督は、人の生きる時の流れの無情さと容赦ない残酷さを、深い慈愛をもって作品を撮る人であった。鑑賞後は、BBM以上に胸にもたれる重たさに項垂れたほど・・・。
主演2人のアクロバティックな絡みがスゲエ!とかそーゆー視点は遥か彼方、むしろその過激さがどこから来るものなのか、が感じられるゆえに、とてもエロ目線では楽しめません。むしろ果てしなく哀しい、切ない気持ちになります。思えば、青春期ゆえの理想が先走り、己の手に余るところまで突き進んでしまい、それがやがて無残に押しつぶされる悲劇は、連赤映画と通じるものがありましたな。トニー・レオン、いつになく何を考えてるかわからない暗い2枚目ぶりが印象的。しかし、その名優の誉れ高い彼と張り合って、いささかも霞むことのないタン・ウェイの魅力が画面に溢れている。まったくタイプの顔ではないけど、この女優さんのハマリ方は凄かったです。

■子猫の涙
昭和43年、メキシコ・オリンピックのボクシング・バンタム級で銅メダルを獲得したボクサー・森岡栄治の伝記映画。脚本は森岡利行で、彼の実の甥なのだそうな。いやー知らなかったなあ~。私、森岡さんの脚本で好きな作品がいくつかあったので(代表作は『新・悲しきヒットマン』)だからこの映画も観たいと思ったんだけどね。で、その森岡氏のボクサー引退後の人生を中心に描いてるんだけど、彼はいかにも~な浪速のおっちゃんで、しかも生活者としても父親としてもかなりダメな人なんだけど、それを武田真治がやっちゃうわけですよ! ボクサーとしての肉体の作りあげ方は見事なのだが、昭和にこんな小奇麗な顔の男はまずおらんぜ! しかも彼の愛人・鼻っ柱の強いホステスを広末涼子・・・これまた昭和の女とは程遠いわけや。
でもね、ある意味で“昭和の泥臭さ”とは縁遠い造形である彼らをキャスティングしたからこそ、幅広い層に受け入られる映画になったのかもしれない。2人とも熱演だったし、映画自体も良く出来てたので結果的には無問題と思います。それに、主役は娘の治子@藤本七海ちゃんなんだよね。このコがまたウマい!生な少女の、複雑に揺れ動く心情が手に取るようにわかる。なので、かなり個人的にはグッとくるところもあり、観て良かったなと思わせてくれた佳作でした。

■アメリカン・ギャングスター
アカデミー、これに取らせてあげても良かったんじゃないの~!?と個人的には思いました。奥深いテーマやら背景があるわけじゃないけど、純粋に娯楽アクション映画として堂々とした作品だし、デンゼル&ラッセルの2大スター映画としても完璧。『ニューシネマ・テイスト&ブラック・ムービー+東映実録もの』ってな構えにググッと心掴まれたわよ~。邦題つけるなら「ハーレムの顔役vsはぐれ野獣デカ」ってとこ?(>ダサいよっ・・・;;)
映画は途中まで、ベトナム戦争を背景に麻薬密売で成り上がるギャング@デンゼル主演の話と、腐敗しきった警察組織の中で孤軍奮闘する無頼の刑事@ラッセルの話が並行して進み、緊迫したままついに対面するところで、2人の共闘的局面を迎える。エンドロールになる頃には、1本の映画なのに中味は3本の映画を観たかのような充実感が味わえるというわけ。その捌き方、リズムの良さ、さすがリドリー・スコット!というところなんでしょうか。って、私がリドリー監督の作品をちゃんと観るのって久しぶりなんだけど、少なくとも『グラディエイター』よか面白く感じました。音楽も当然カッコ良かったぜい! 

■ベティ・ペイジ
これ、日本公開希望の記事書いた気がするなあ・・・一昨年。という訳で、伝説のピンナップ・ガールにしてボンテージ・クイーン、ベティ・ペイジの伝記映画がようやく観れました。監督は『アメリカン・サイコ』のメアリー・ハロン。わりと最近知ったのだけど、この人は元々ロック系ライターさんなのですな。読み直したVUの本に出てきてビックリした。さて映画の話ですが。敬虔なキリスト教徒にしてカントリー・ガールなベティが、いかにして“裏マリリン・モンロー”と呼ばれるような存在になったのか。そして、なにゆえに表舞台から去っていったのか・・・ということをコンパクトにまとめて見せた作品でした。
ベティ@グレッチェン・モルの好演が何より印象的で、無邪気でキュートで微塵の卑屈さもない彼女の姿を観ているだけで楽しめるので、アイドル映画としては申し分なし! なのだけど、もう少しパンチの効いた作品にして欲しかったかも。さりげなくフェミニズム視点を盛り込んだところはグッジョブなんだけど、映画としてはちょっと、お行儀良すぎな感じなのよね~。そこがなんか、惜しかったです。