ロト7の38番

利用に関しては自己責任でお願い致します

そろそろネタが尽きるぞって時に短編を書いてみた

2022年04月05日 | 緊急事態宣言 日記
題 小銭強盗

まだ朝晩が肌寒く感じる4月初旬のある朝、ある町で3件連続して自販機荒らし事件が発生した。

刑事A 「まったく、コナゴナだな、こりゃ・・・」

刑事の眼の前には彼が言ったように文字通りコナゴナに破壊された自販機の残骸が散らばっていた。

警官B 「この先にある自販機と、もう少し先にある自販機、2台共同じようにコナゴナになっています。」

A 「・・・で、被害金額は?」

B 「それが、3台共に硬貨が全て無くなっていますが、紙幣は無事でした。」

刑事Aがコナゴナになった自販機の集金機能部分を見てみると確かに千円紙幣が十枚程度残っていたが、小銭が入っているハズの部分だけがそっくり無くなっていた。

A 「それにしても・・・犯人は何考えてるんだ?」

B 「自販機の前にある防犯カメラには棒状の金属を持って自販機に近づいている男の姿が映っていましたが、防犯カメラに気がつくとその棒で防犯カメラの向きを変えてその後犯行に及んでいるようです。」

A 「いや、そうじゃなくて今時、両替するのにもそれなりの手数料がかかる小銭だけを奪うとは・・・」

B 「確かに・・・」

A 「それに、これだけの力で自販機を破壊しておきながら、紙幣には手を付けないなんて・・・」

B 「もしかしたら、記念硬貨か何か間違って使ってしまったとか・・・?」

A 「今時の自販機は記念硬貨とか外国硬貨は全く使えないようになっている。俺達が思っている以上に高性能だよ。」

現場検証が終わり、警官達は警察署へ帰って事件の報告書をまとめていたが、何とも変なこの事件に違和感を感じると同時に連続してこのような犯行が行われないようにパトロールを強化する事にした。

その夜。

被害のあった自販機から少し離れたところにある鉄道の高架下、いつものようにおでんの屋台が出ていた。

店主 「今晩もまだ冷えるなぁ・・・」

そこにふらっと1人の男が入ってきた。

店 「いらっしゃい!」

元気よく、店主は男に声を書けたが、返事がない。

男の右手には、拳銃!

男 「わかってるな?」

男がそう言うと店主の顔はみるみる青くなり、売上金が入った木箱にあった紙幣を鷲掴みして男に差し出した。

男 「これじゃねぇ!」

男は店主が差し出した紙幣を払い除け、こう言った。

男 「小銭だよ! 小銭を出せ!!」

店 「コゼニ・・・ コゼニ・・・?」

店主は男の言っている言葉が理解出来ずに言葉を繰り返す。
業を煮やした男が大声で「硬貨、小銭、100円、500円硬貨だ!!!」と店主に浴びせかけた。

店主はその言葉をやっと理解し、木箱を差し出すと男は大きな袋をポケットから出し、この袋に硬貨を全部入れろと命令した。

そこへ、刑事Aと警官Bがパトロールで通りかかった。

A 「おい、何してる!!」

刑事が大声を掛けるやいなや、男が反射的に刑事に向かって銃を撃ち、刑事の足に命中した。

警官Bが銃を抜き、威嚇発砲。

屋台の周辺で銃撃戦が始まった。

木箱から袋へ小銭を移し終えると同時に店主は恐怖のあまりその場にしゃがんでしまい、ガタガタ震えてしまう。

警官Bがやむをえず男の右腕に向かって発砲し、見事命中。

男は使えなくなった右手から左手に銃を持ち替えてさらに発砲し、同時に小銭の入った袋を口で咥えてその場から逃げようとする。

足を撃たれた刑事も痛みをこらえながらやっと銃を取り出し、男に向かって発砲を始める。

それを見た男は突然、意を決したように刑事と警官に向かって銃を撃ち、刑事と警官の右肩を「正確」に撃ち抜いた。

倒れ込む刑事と警官。

男はそれを見届けると、口で袋を咥えたまま、走って逃げていった。

肩を撃ち抜かれた警官が必死に無線機を操作して、本署へ連絡し応援と一斉検問の要請をしたあと、あまりの痛みで意識を失ってしまった。












非常線が張られサイレンが鳴り渡る中、男は何とかアジトへ戻ってきた。

外の明かりだけしか無い中、男は地面に座り込み、口に咥えてきた袋を地面に置いた。

次に男は横にあったスーツケースを左手で開けた。



中には・・・



「右腕」が入ってあった・・・

左手で着ていた上着を破り取り、上半身裸になった男は左手で右腕を掴み引き抜く。



男 「ふーっ・・・」



「義手」だった右腕は簡単に外れ継ぎ目部分の金属が顕になる



スーツケースにあった交換用の右腕を取り出し、左手だけでそれを上手に装着した。



男 「・・・て、これからが本番」



奪ってきた小銭を袋から出し外からの明かりだけで一枚一枚、何かを必死で調べ始めた。



男 「これじゃない・・・」



男 「これでもない・・・」



男は硬貨を食い入るように見続けていたが、突然、その手が止まった。



男 「あった!!」



その手には100円硬貨が1枚・・・



男 「やっと、見つけた・・・」



安堵の表情を浮かべたその男の手の中にある100円硬貨には









令和11年





の刻印が・・・

男 「俺は”未来から来た警察”。俺が勤務している時代で博物館に泥棒が入り、”昔の紙幣と硬貨”を盗み出した。」

その泥棒が俺達警察に追われブツをもったままタイムマシンでこの時代に逃げ込んだ事はすぐに分かったが、ある事が原因で捕まえる事が出来なくなってしまった。

それは犯罪記録データベース上にこの時代に未解決の「おかしな小銭強盗」が発生していたという記録があったからだ。

仕方なく、泥棒に紙幣と小銭を使わせてから逮捕し、その後回収する事になった。

この事件と一連の事象が起こらないと歴史が変わってしまう事になりかねない・・・

紙幣には製造年が書かれてはいないので万が一、流通しても問題はないらしいが硬貨に関しては絶対に見つかってはいけないので躍起になって回収しなければならなかったのだ。

男 「ボス(人間)の命令とは言え、ロボット3原則を無視してまで守る歴史って意味があるのか・・・?」

男は大きなため息をついた。

男 「ま、この後、撃たれた刑事は入院先で看護師と出会い結婚して生まれたのがボス(人間)の先祖らしいから、躍起になるのも無理は無いが・・・」

男はヨロヨロと立ち上がり、部屋の片隅にあるロッカーの扉を開けた。

男 「さ、帰ろ」

ロッカーの中は未来へ続くゲートになっていた。

男 「まぁ、歴史は守られたから警官としての役目は果たせたかな」

男は未来へ帰って行った。