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不滅の輝きを手にしたファン・エイク兄弟「ゲントの祭壇画」

2011-04-03 00:30:49 | アート


今日の「美の巨人」は、ファン・エイク兄弟の「ゲントの祭壇画」。
ベルギーのゲントにある聖バーフ大聖堂の祭壇画だ。
15世紀初頭、油彩画の技法を確立させ、しかも他に追随を許さないファン・エイクの特権的技法を編み出した。
フランドル派のファン・デル・ウェイデンやハンス・メムリンクも、素晴しい技量の画家だが、先人のファン・エイクを凌ぐには至っていない。
デューラーやクラナッハも、油彩の技法ではやはり足元に及ばない。

「絵画の宝石」とは、もっともな表現の仕方だ。
描かれた宝石が光り輝いているのは言うまでもなく、どこをとっても全て緻密に描ききり、画面全体が光り輝いている。
この絵を20センチ四方で切り取って模写をしようと試みたら、何年かけたらそれらしくできるのか、見当すらつかない。
この時代はさることながら印象派以前まで、画家は工房制を引いて制作にあたっていた。
工房の職人も、その特性を生かし分業についていた。
親方は、その制作工程で、重要な構図と下絵や仕上げの決め所を受け持ち、職人たちは絵の具や支持体、金を施す金細工などをそれぞれ受け持っていた。
それでも、この完成度に到達するには、気の遠くなるような時間と労力を費やしたであろうと、眩暈すら起こる。

以前ゲントを訪れ、この祭壇画をこの目で見たことがある。
薄暗い聖堂の中でも、燦然と光を放っていた。
あまりの神々しさに、絵の持つ力に打たれて心が震えるのを感じた。
それは、子供のときにテレビで見た、「フランダースの犬」の主人公ネロが、アントワープの大聖堂にあるルーベンスの「十字架降架」を見たときのような具合だと、互いの心境が思わず重なったぐらいに。
すっかり、あの物語が、当時の幼子の心に刷り込まれているのだ。
だから、小さいときには、白と黒だけで表現しきれる画家は一流と固く信じていた。
もちろん、まったくそれが当てはまらないわけではないが。

「画家の中の画家」のうちの一角を、間違いなくこのフェン・エイク兄弟は占めるであろうと、誰も納得するに違いない。


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