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伊藤若冲「菜蟲譜」

2011-02-05 23:42:05 | アート
「美の巨人たち」、伊藤若冲「菜蟲譜」。
伊藤若冲は、円山応挙と同世代。
時にある種の気が爆発して、時代を代表する芸術家をまとまって輩出する。
そして、孤高の、また奇想の画家を。

若冲といえば、極彩色に彩られ緻密に描かれた禽獣と植物の織り成す派手派手しい絵を思い浮かべるだろう。
しかし、「菜蟲譜」は、若冲唯一の絵巻物に、野菜や果物に始まり昆虫・植物・小動物へとモチーフが変わっていく。
その描画方法は、水墨を機軸に淡彩でアクセントと物のらしさを付け加えている。
形はデフォルメされているかと思えば、細やかに観察した特長をさらりと描く。
晩年に描かれたものだけに、力の抜けた、あるがままの生命への慈しみがにじみ出ている。

狩野派に学び、宋元画を1000点に及ぶ模写をし、ついに独自の画境にいたり、40代から堰を切ったように制作が始まる。
とにかく、世俗の欲と無縁に「絵」だけに生涯を捧げた。
絵描きにも様々なタイプがいるが、彼の住む世界は、世俗にほとんど交わるところの無い世界だったのだろう。
「画狂人」、「画聖人」といわれそうだ。
彼には何の躊躇も無く、世俗と決別する一歩を踏み出せたのだろうが、いくら恵まれた環境にあったとはいえ、なかなかできないことだ。
でも、強く憧れる世界だ。
その絵の彼岸を、我々は若冲の絵を通して垣間見よう。
花や生き物が、その命を謳歌する姿を。


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