ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

愚か者

2018-12-08 18:09:11 | 読書
車谷長吉『愚か者』





 『夫・車谷長吉』(高橋順子著)を買ったけれど、車谷長吉を読んだことがなかった。

 でも、一冊だけ本を持っている。その『愚か者 畸篇小説集』を本棚から出してみた。

 黒い函に入った本。

 その表紙を見て、なぜこの本を買ったのか思い出した。


 函の表1側に、タイトルを印刷した紙が貼ってある。

 そこにはキャッチコピー、さらに価格とバーコードも入っている。

 こんな変わった表紙をほかに知らない。

 下のバーコード部分の背景は白だが、上3分の2は黒。

 その中でタイトルは薄い黒で、全体の中でもっとも目立たない。

 むしろ「お前も勉強しないで、あそんでいると、くるまたにさんみたいになってしまうよ。」という白抜きのコピーの方が目に飛び込んでくる。

 本を抜き出していくと、水彩の自画像が出てくる。

 青々した頭、真っ赤な頬、焦点の定まらない瞳。

 それが天地いっぱいに、本の背側ぎりぎりに入っている。

 全部出してみると、人物画は端に寄っていて、しかもタイトルなどの文字はなく、ほとんどは白い紙のまま。

 黒い函とのコントラストに、もうこの本に満足してしまう。


 絵は自画像かと思っていたが、味のある題字ともに村上豊氏の作。

 装丁は鈴木成一デザイン室。


 読んでみると、この本一冊では、とても車谷長吉を読んだとはいえないと感じる。

 深い穴に落ちてしまうか、ここで踏みとどまるか。(2017)



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