ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

待ちながら

2019-03-20 22:51:22 | 読書
ルイ・ズィンク『待ちながら』





 アントニオ・タブッキの『島とクジラと女をめぐる断片』を読んでいて、舞台のアソーレス諸島に、一度行ったことがあるような不思議な既視感を覚えた。

 ポルトガルに行ったことはない。

 後日、ポルトガルを特集した雑誌を眺めていて、それがルイ・ズィンクの『待ちながら』の影響だったのだと気づいた。

 何年も前に読んで、かすかな記憶が残っていた。

 でも大半を忘れていたので、もう一度読んでみた。



 とても美しい本。

 140ページほどの、薄いハードカバー。

 表紙はクリーム色。

 入り江のように、細長く写真が入っていて、白壁に赤い屋根の家々が写っている。

 帯は綺麗な青。

 全体に港、海を意識させる作り。

 

 かつて捕鯨がさかんに行われていたアソーレス諸島へ、ジャーナリストを名乗る男が訪れる。

 まだ捕鯨をやっているのか、あちこちで聞いて回り、やっとトロール船に乗船させてもらう。

 そして昔ながらの捕鯨を目の当たりにする。

 この男の皮肉屋な口調に、最初のうちはイラっとさせられる。

 けれども、周りの人間に翻弄される姿を見ていると、口ほどでもないなとおかしくなる。

 捕鯨の描写は、『島とクジラと女をめぐる断片』の方が素晴らしい。(2019)




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