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鹿児島国際大学での集中講義を終えて-マーケティング論 22 終わり

2011-10-04 11:47:02 | 大学教員として

 今回のマーケティングの集中講義で,学生に伝えたかったことは,
①答えは一つではない。また,いまの正解(常識)が,未来永劫続くものでもない。“思い込み”を捨て,柔軟発想を心がける。
②鹿児島の持続的発展を考えるに当たっては,鹿児島中心で戦略を練るのではなく,時代の流れ顧客の変化)とライバルの動きを念頭において戦略を練る
  の2点です。このことを学生に訴える問題提起として,
1)いまのままではA-Zは10年もたないであろう
2)なぜセブン-イレブンは鹿児島に2年間で200店舗出店するのか,勝算の根拠はどこにあるのか
3)天文館のシネマ設立はナンセンス
4)鹿児島は観光立県でなく農業立県を目指せ
 の4点を打ち出し,講義を行いました。「なぜ,そう言えるか」については,このブログに「講義録」として,順次,書き込みます。アクセスいただければ幸いです。 

  

  集中講義,冒頭での私の発言は学生たちの度肝を抜き,彼らの眠気を吹き飛ばしたようです。その要点は,次の通りです。

◆鹿児島の能天気
 「マーケティングの観点から言うと,鹿児島の“観光立県”はナンセンスであり時代錯誤もいいところだ。桜島は確かに鹿児島のシンボルではあるが,日本のシンボルにはなり得ない。また,指宿の砂風呂や霧島温泉郷は確かに魅力的ではある。だが,日本中から観光客を呼びこむほどの魅力には欠ける。富士山の雄大さや,京都の歴史,あるいは北海道の大自然ほどの,吸引力は望むべくもない。

 九州新幹線の全線開通で浮かれているが,博多以外は,大きなメリットとはならない。県内に目を向ければオレンジ鉄道の慢性的赤字をどうするつもりだ。

 鹿児島中央駅前では,高層ビルが建設中でそこには西鉄系列の高級ホテルのソラリアが出店するとのことであるが,採算がとれるとは思えない。また,ビル裏手にある“朝市”の存在は,鹿児島のマチづくりの無策ぶりを象徴している。


 天文館にシネマ劇場(映画館)の設置が決まったようだが,箱物を作る前に,やるべきことがあるはず。

 鹿児島県内には,ファミリーマートの200店舗を筆頭に400店舗のコンビニが出店している。そこへ,セブン-イレブンは2年間で200店舗の出店を打ち出している。これは何を意味するか,県内の商業者はもとより,行政はどのように捉えているのか。また,産業道路沿いの大型店舗「ビック」が撤退し,その跡へ大型のホームセンターが出店するとのことであるが,時代錯誤もいいところだ。

 ▼鹿児島の持続的発展に向けての戦略形成-農業立県への舵取りを

 鹿児島はこれからの日本の命運を担うエリアと言っても過言ではない。その理由,根拠は次の四点にある

1)鹿児島と中心に宮崎,熊本は日本有数の食料供給基地である。
 福島原発事故の影響で,地元福島県はもとより農業が盛んな近隣の盛岡,岩手,山形,茨城,千葉県の農産物,畜産物,さらには水産物の放射能汚染が深刻化している。また,セシウム137は半減期が約30年であることから,その影響が長期におよぶことは避けられない。
 こうした状況からして,鹿児島県を要として,熊本,宮崎3県で形成する南九州エリアの食糧基地としての役割と重要性は高まるばかりである。

2)石油備蓄基地としての役割
 鹿児島市南部の喜入には世界最大級とも言われる735万キロリットルの備蓄能力を持つ原油中継備蓄基地がある。加えて,いちき串木野市の国家備蓄基地(貯油能力175万キロ)と志布志国家備蓄基地(貯油能力502万8千キロ)と3つの石油備蓄基地があり,日本の石油消費量の約98日分を蓄えている。これは,鹿児島が日本の命脈を担うエネルギー基地であることを示すものでもある。

3)陸海空の三拍子が揃う交通網
 九州では福岡空港に次ぐ規模の鹿児島空港。海では鹿児島港をはさんでの志布志港,川内港と3つの国際港湾。陸路では九州新幹線と肥薩線,日豊線,指宿枕崎線のJR在来線,さらに東九州自動車道,南九州西回り自動車道と高速道路網も整備されている。現在のところ,このインフラを十分に生かし切れず,宝の持ち腐れとなっている。

4)日本近代化へ尽くした歴史とくらしやすい風土
 鹿児島(薩摩)は,明治維新による日本の近代化に大きく貢献したという歴史がある。また,日本の南端に位置するという立地特性は暮らしやすい風土を育んできた。いま,殺伐感を増す時勢であるが,こんな時こそ,薩摩の歴史とよき風土を日本再生に向けの礎とすべきである。その一歩は,補助金に頼らない自力によるマチづくりにある。

  

 

▼時間割(授業内容)

    1  限     2  限   3   限   4  限    5 限
一日目 流通とはマーケティングとは マーケティングとセールス ケーススタディ 「A-Zストア」 鹿児島の商業・
天文館のいま
 
二日目 1日目の復習 マーケティングの進め方  マーケティング理論 マーケティングリサーチ/天文館分析  
三日目 タウンウォッチング- 朝市・天文館 朝市・天文館-レポート作成
四日目  レポート作成 / まとめ      

▼ブログ一覧

 

◆関連HP
 マーケティング&マニュアルゼミー
  

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1 コメント

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Unknown (匿名)
2011-10-10 14:20:48
集中講義の講義録を楽しみにしております。
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