歌織♪のつれづれ日記

新潟市在住。愛娘のマナティ(6歳)と2人仲良く暮らしてます。
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映画 「手紙」 ネタバレありです

2006-12-05 | Hobby
昨日書いた映画「手紙」

人と接することを極力避けて生活している直貴(山田孝之)。
その理由は、兄剛士(玉山鉄二)が盗みに入った家で殺人をしてしまい、殺人犯の弟というレッテルをはられ差別を受けていくのです。

早くに両親が亡くなり、兄剛士は学歴がなく苦労したことから弟には大学に行って欲しいと一生懸命運送会社で働きます。が、腰を痛めて働けなくなってしまい、それでも弟の学費をなんとかしたいという思いから盗みに入ったのです。

殺人犯の弟ということで、直貴は大学も、仕事も、恋愛も、そして掴みかけた夢も失います。兄貴がいる限り、兄とのつながりがある限り、この苦しみは消えない。
その苦しみを断ち切り、新しい家族を守る為に刑務所にいる兄と決別するため最後の手紙を送ろうとします。


原作を読んでないので分かりませんが、映画の中の剛士は、とても相手思いで、自分が強盗に入ったのは弟のためなのに、「弟のせいで・・・」というようなことは一切言わず、自分は弟の為にお金を稼いで腰も痛め、彼女を作ることもしなくて明るい世界から遠ざかっているのに・・・本当にせつなくなりました。「ドジだな・・俺・・」っていうセリフが響きます。あの時甘栗を見つけなかったら、殺人までは犯さなかったのではとか、ついついあの時・・と思ってしまいました。回想のシーンで暑い夏の日、扇風機ひとつで汗を流しながら 兄弟仲良くクワガタを飼って語ってるシーンがあるのですが、つつましくてもあの生活が続いてたら・・とつい思ってしまいました。

直貴も剛士の腰を心配し、剛士も直貴の勉強を心配して本当に思いあっているのです。



だから刑務所でただただ唯一の肉親である直貴の手紙だけを待っているのに、手紙がこない切なさが痛いほど伝わってきました。他の人に手紙が届いているのに自分には来ていないあの表情が切なかったです。そして直貴から決別の手紙を受け取った時の剛士の表情が見ているだけで苦しかったです。



毎月毎月欠かさずに、被害者の家族へ手紙を書いた剛士。
そのやさしさと純真無垢な行動ゆえに、弟を大学にやろうとした。
とても切なかったです。



また、差別のある世界から逃げようとする直貴と、正面向いて戦おうとする由美子とが対照的でした。殺人犯の弟ということでたくさんのものを奪ってあきらめることになれている直貴と、逃げてばっかりではだめだ!という裕美子。私は由美子の考えに近いので、あきらめないでと見ていて何度も思いました。


加害者側の家族ということで、差別を受け兄を切り捨てたくなる気持ちも分かるのですが、でもそれはあんたの為じゃないのよ!と思ってしまった私です。お笑いで道を開きそうになった時に、ネット上で嘲笑されて責められた時にすぐに逃げるのではなく、それを糧にすればいいじゃない!と。

でもそれは映画の中で、見ているだけの立場だからの考えであって、きっと現実派辛くてあきらめたほうが早いと思えるのかもしれない。


一度は兄に「兄貴を捨てる」という手紙を送った直貴ですが被害者の息子と会いそこでお互いがケジメをつけたのです。

最後の弟が刑務所に慰問に来るラストのシーンですが漫才をしながら兄を探す直貴。私もどこにいるの??と思って探したら、泣きながら合唱して弟を見る剛士。

「うちの兄貴はバカです」というセリフも、仕事だけをして学校に行けなかったから。「兄貴はもてないし」というのも彼女を作っている暇なんてなかったから。
剛士はただただ弟の為に生きてきて、そしてその思いが強すぎて犯罪にまで結びついてしまったけれど、素直で他人思いの人間だと私には思えてなりません。

直貴は漫才を続けて「それでも僕の兄貴ですから!たった一人の僕の兄貴ですから!捨てようと思って捨てられないですよ!」というセリフを聞いた剛士の心情が伝わってきて、画面が見れませんでした。
 

何より玉山鉄二の演技がすごくて。玉山鉄二のこの映画での演技は、回想の少しのシーンと後は手紙を読むこと。そして最後の「無言の演技」です。何よりラストの玉山鉄二の「無言の演技」がまるで自分のことのように感じ涙が止まりませんでした。しかもアドリブなんだそうです。

4kg減量し人生で初の丸坊主になった玉山鉄二。素敵でした。


周りからもすすり泣きが聞こえ、エンドロールが
流れても誰も席を立たず、照明がついても皆しばらく動きませんでした。

この直貴のセリフが兄を許して絆を取り戻したのか、もしくは決別の意味をこめて慰問したのか分かりません。ネットでも色々な意見があるのですが、私は剛士が刑期を終え、無事に出所して、直貴の家族に出会えていることを。そして剛士にも理解をしてくれる人間が現れることを想像しています。


劇中にあったセリフですが
「差別のない世界を探すんじゃない。ここからがスタートなんだ。
心が通じ合える糸を1本、また1本と増やしていけばいい」


人間みな違いがあって当然で、その差が少しづつ積もって差別に繋がるのかもしれません。

差別のない世界を探すことは、作っていくことは難しいことだけれど、
受け入れて心を繋げていくことは努力次第でできるのではないかと
見ながら思っていました。


理由はどうあれ、罪を犯すということは被害者だけでなく
自分の家族に対しても罪を犯してしまう。
この映画では罪を犯すこと、そしてその罪を償うこと、
そしてさまざまな絆について表現され、本当に見てよかったと思う映画でした。

なんだか取り留めなく色々書きましたが、ぜひ多くの人に見ていただきたいと思います。本当にすばらしい映画でした。