you are my sunshine

40代で始めて今や60代。
光陰矢の如し。年明けたらあっという間に年の暮れ。

家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった 岸田奈美

2024-08-04 | 
NHKでやってるドラマを観て、原作を読みたくなった。

4才年下の弟はダウン症。
中2の時、父親が心筋梗塞で急逝。
高1の時、母親が倒れ病気の後遺症で車椅子生活となる。

それが岸田さんの家族のこと。

生活がつらいわけではなく、毎日毎日悲しくて悲しくてしようがない、それがつらかったと書いている。
なにをがんばるでもなく、ただ毎日死なないようにした。
その代わり、忘れることにした。
そんな状態が何年も続いた。
いつの間にか嵐が止み、父の笑顔と声を全く思い出せない。

本に書かれているエピソードはすべて母親から聞いたものらしい。

自分は「忘れる才能」があったから、生きてこれた。

壮絶であったはずなのに、エッセイは底抜けに明るい。
嫌なこと、嫌なひとであろうことも、嫌な書き方をしない。

編集者の佐渡島庸平さんから
「たくさん傷ついた岸田さんだから、だれも傷つけない、笑える優しい文章が書けるんだと思うよ」
と言われたことがめちゃくちゃうれしかったと書いている。
何回も書いている。
ものすごく嬉しかったんだろうと思うし、その言葉は書くことを生業にした自分への指針となったのではないだろうか。

読んでると、岸田さんは瞬発力がすごい。
躊躇なく(多分)会いたいと思ったひとに会いに行く。
本に書かれているのは素晴らしい出会いだったり、助けてくれるひとばかりだけど、そうじゃないひともたくさんいたはず。そっちが多かったに違いない。
それでも。
世の中捨てたもんじゃないなって思わせてくれる。

岸田さんだって怒り狂う日もあるはず。
でもそっちは書かないと決めてるんだろうな。

前向きな気持ちになれる一冊。

一緒に買ったのがノンフィクション作家佐々涼子さんのエッセイ「夜明けを待つ」
昨年「紙つなげ!彼らが本の紙を造っている―再生・日本製紙石巻工場」を読書会の課題本で読んでこの作家さんを知る。
『エンジェルフライト 国際霊柩送還士』(ドラマ化もされている)や在宅の看とりをテーマにした『エンド・オブ・ライフ』など命と死についての作品を次々と出して、数々の賞も受賞している。

佐々さんは現在56才、2022年12月に悪性の脳腫瘍がみつかり余命も宣告されます。
40才を目前にノンフィクションライターになり、がむしゃらに取材し書いてきた彼女が、自分の命のことは書けない日々が続いているとテレビのインタビューで語っていた。

あとがきには、こんなことが書かれている。
自分のガンが「希少がん」でそれが「希望」に見えてくると。
希望とはなんだろう、その希望はいったいどこにあるのだろう。
いつか私にも、希望の本当の意味がわかる日がくるのだろうか。

この「夜明けを待つ」はエピソードひとつひとつが深く考えさせられます。
一気に読むのではなく、枕元に置いて眠る前にすこしづつ丁寧に読みたいと思う本。


この2冊どちらも「命」つまりは「生き方」について書かれている。

本を読むことで、いろんな人生があり、いろんな生き方があるということを知る。
自分のこの先になにがあるかなんてだれもわからない。
できれば機嫌よく生きていきたいけど、なかなか難しい。
悟りも開けない。

ただ偶然だけど、この2冊の本は同じことを言ってる。

「限りある命、だったら愉しく生きていきたい」

壮絶な日々を生きてきた、そして生きているひとたちの心からの願い。




岸田さんのご家族。


●追記●

佐々涼子さんは悪性脳腫瘍のため9月1日、永眠されました。56歳でした。
心よりご冥福をお祈りいたします。

佐々さん、ありがとうございました。


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