烏鷺鳩(うろく)

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マダガスカル 恐竜切手 小型シート 1997年 (2)

2018-05-13 | 切手


まずは左のコリトサウルスについて見てみよう。
ランベオサウリナエ類というグループに属する、植物食恐竜である。このグループでは、ランベオサウルスやパラサウロロフスといった恐竜も含まれている。特徴的なのは、バラエティーに富んだ「とさか」のような突起である。

この突起、ただかっこいいから発達しただけではない。内部構造は非常に複雑であり、空気が通り抜けることで音が出るという、共鳴構造になっていたのだ。

空洞のとさか状の突起をもっていた仲間については、水中で生活していたか、鋭い嗅覚をもっていたのではないかと考えられたこともあった。しかし、最近の研究によって、とさか状の突起の内部に細かく区切られた空洞が反響室の役割をし、まるで中生代の“アルペンホルン”のように大きな低周波音を生み出すことができたのではないかと考えられるようになってきた。この見解をもとに、現在ではとさか状の突起の役割については、種内競争と性選択が主だったのではないかと考えられている。種、性別、あるいは集団における社会的地位といった情報を伝えるため、とさか状の突起は視覚的にも(反響室としての機能があった場合)聴覚的にも特殊でなくてはならなかっただろう。こうして、成熟した成体同士で条件に合致したペアだけが出会い、交配を成功させることができるのだ。(『恐竜学入門』p.133)

共鳴音が出せるということはそれを聞き分ける良い耳を持っていたということが考えられるようである。さらに、とさかの形状が多様化しているということから、それを見分けられる良い目を持っていた、ということが仮説として述べられている。

「音」というのは化石に残らない。白亜紀の地球にはどんな音、そして「声」が響き渡っていたのだろう。ホルンのような低い音が、色々な音階や抑揚をもってこだましていたのかもしれない。


続いて、隣のストゥルティオミムス(※『恐竜学入門』における表記)はどんな恐竜だったのだろうか。

ストルティオミムスはオルニトミムス科としては典型的な体つきをしている。すなわち小型でスレンダーな頭部、大きな眼とくちばし状の口である。尾の骨は固まっておりディノニクスや一部の小型恐竜のようにバランスをとるのに使っていたと思われる。特徴的な細長い腕を持つがナマケモノに似たつくりをしており頭上の枝を手繰りよせる役割をしていたのではと思われている。事実第二指と第三指はほぼ同じ長さでこの2本を独立して動かすことはできず何かを掴むということには適さなかった。

ストルティオミムス及びオルニトミムス科の食性についてははっきりとした結論は出ていない。

そのくちばし状の口器から雑食性であるとも考えられるが、ガリミムスやオルニトミムスでは頭部化石の研究からくちばしに小さなスリットを多数持つことがわかっており、フラミンゴのような濾過食ではなかったかという意見もある。ただ水中の藍藻類や小動物だけでは、ストルティオミムスにとって十分な量を確保できなかったのではないかという反論もある(小型恐竜といってもそれらの水鳥よりははるかに大きかった)。また胃石の化石や頭の真横に着いた眼、前述の細く長く物をフックのように引き寄せるのに使われたと思われる手などから植物食、または植物食の傾向が強い雑食だったというのが現在の主流である。

オルニトミムス科の特徴である長く力強い後ろ脚をもっており最高速度は時速60〜80キロメートルに達した。


確かに、姿もフラミンゴみたいにスレンダーだ。
最近は、「植物食」か「肉食」かという恐竜の食性による二分法が危うくなってきているようだ。そりゃそうだ、原生の動物たちを見たって、植物か肉か、なんていう単純な食生活をおくってるものだけじゃない。だけど、食べた証拠、つまり排泄物の化石からしか実際の食性はわからないから、難しいところなのかもしれない。




さあ、お待ちかねのトロオドンである。
トロオドンといえば「ディノサウロイド」(恐竜人間)を思い浮かべる方も多いに違いない。元祖「頭の良い恐竜」である。もし、恐竜が6500万年前に滅んでいなかったら、トロオドンから(トロオドン科の恐竜から、といった方が正しいか)進化した「ディノサウロイド」という種族が、大きな文明を築いて繁栄していただろうという仮説である。
体の割に大きな脳を持っていたこと、そして目が前に付いていた、つまり立体視ができていた、というのが根拠である。

「どうしてそんなことが分かるの?」という疑問が沸いたのは私だけではあるまい。だって、トロオドンとして記載されている化石は「1本の歯」だけなのだから。

どうやら近縁種のステノニコサウルスの骨格から、想像して復元したらしいのだ。「恐竜人間」の模型はさらにそこから想像したものだったのだ。あの宇宙人みたいな目のでっかいやつである。子どもの頃、『科学』という子ども向けの雑誌に載っていた恐竜人間が、妙におっかなかったという覚えがある。なんか、支配されそうな怖さを感じたものだ。

そんなトロオドンなのだが、どうやらその学名が抹消されてしまうらしい。
結局のところ、ステノニコサウルスという名前に吸収されるということだ。ただし、「トロオドン科」という科名としては残るという。

まったく、頭の良い恐竜だけあって、学名記載から学名抹消までの経緯が複雑すぎてついていけない。というわけで、詳細をばっさり省いたことをご容赦頂きたい。


ところで、この切手、恐竜たちの「背景」についても、ちょっと思いをはせてみる価値がありそうなのだ。

幻のトロオドンが見つめる先は? 次回へと続く。



【参考サイト・文献】
・ウィキペディア 「ストルティオミムス」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AB%E3%83%86%E3%82%A3%E3%82%AA%E3%83%9F%E3%83%A0%E3%82%B9
・GET AWAY TRIKE ! ※トロオドンの発見から現在の疑問名扱いに至るまでが詳しく述べられている。
https://blogs.yahoo.co.jp/rboz_05/38507230.html 
・『恐竜学入門』 Fastovsky, Weishampel 著、真鍋真 監訳、藤原慎一・松本涼子 訳 (東京化学同人、2015年1月30日)