「老人を大切にする」という社会規範は成熟した福祉国家だけではなく、彼らの豊富な経験値が社会生活にとって欠かせない後進国においても同様に重要な位置づけなのである。今回のこの光景に遭遇すると、まあとりあえずの先進国で福祉国家である日本において世の中の当たり前と思われるマナーを遵守するのが馬鹿らしくなってきた。もちろんこの高齢女性をみて高齢者全体の判断はしてはいけないのは分かっている。しかしそれをも凌駕するほどのインパクトのある「お芝居」を拝見させてもらったのである。こうなると「はー、そうかゴネれば得するのね」という感覚に陥ることが怖いのである。世の中の高齢者全体のイメージに対して偏見を抱かせるかもしれないということや、とにかくゴネればなんとかなるという誤った規範がもし今後拡がっていくのだとしたら、やはりこの高齢女性のなした罪は重いものだと感じるのである。高齢者を敬うことは当たり前のことである。しかし敬われるべき高齢者の方も、個人的に好むと好まざるとにかかわらず敬われるだけの品格をも期待されるのはやむをえないところである。