確かに今回の患者さんも自分の胸痛が心臓発作であることを否定した。20年以上も前に習ったことが今になって確認されたというか、あるいは当時の米国の病院前救護のカリキュラムが進んでいたというか・・・。
そういえば救命センター勤務時代の話を思い出した。某行政機関の方が救急外来に「胃のもたれと違和感」でやってきた。下の先生が診て「どうも消化器の所見がないんですけど心電図とりますか?」と上申してきた。上腹部の腹痛の鑑別診断には「心筋梗塞」も入っている。「それはちょっと危ない、心電図とって下さい」と伝えた。しばらくしてその先生がもどってきた。「いやぁ~、かなり心臓発作のおそれがあるからと心電図をすすめたのですが『大げさな、私は今夜食べすぎただけだ! 胃薬を出してくれればそれでいいんだ!』といって帰ってしまいました」と・・・。本人が拒否したらおさえつけて心電図をとるわけにはいかない。しかも帰ってしまったのならもうどうにもならない・・・。ところが不安は的中した。