なでしこジャパンが世界一になった。素晴らしい事である。今回も「あきらめなかったからこそ夢がかなった」という言葉を幾度となくTVのコメンテイター等から聞いた。話は変わるが、昔、アントニオ猪木の体力が落ちてきた頃、盛んにプロレス界では世代交代が囁かれていた。NO2の藤波と頂上決戦となったが、テレビ朝日のアナウンサーが「猪木さん、今日負けたら引退ですか?」と聴いたところ「戦う前から負けることを考えるバカがいるか」と思い切りビンタされた。確かに最初から負けるつもりでやれば必ず負ける(勝てるわけない)。これは真理である。しかしその逆の「あきらめないからこそ勝った、夢がかなった」というのは真にならない。それは試合に出場する全てのチームが夢をあきらめていないからである。みんな勝つつもりで必死にやっている。勝ったチームは土壇場で実力が出せたかどうかと運がよかったかどうかである。「あきらめないからこそ夢がかなった」というのは、勝った者の後付けコメントとしての感動語句にすぎない。一昔前よりこの言葉が使われだした頃、この言葉を聞くたびに「う~ん感動ありがとう」と、お約束のように感動したものだ。しかしよく考えてみると上記の矛盾点に気がついたのである。今ではこの言葉を聞くたびに「お約束」を強要されているようで居心地が悪くなる。選手たちは、この言葉よりももっと泥臭い現実に埋没して戦っているのである。