今年の正月も例年のように「高齢者 餅で窒息死」という報道を聞いた。「今年は何人死亡」という人数を見るにつけ、なにかしら餅による死亡が「恒例行事」のようになっているのが怖い。かれこれ10年以上も前の話であるが、自分は欧州蘇生協議会という学会で日本における気道異物(窒息)の実態、特に餅の危険性を報告した。これは食べるときは熱で柔らかくなるので苦し紛れの吸気からどんどん気管の奥に入り込み、しかもその可塑性から鋳型状に気道をふさぐので空気の通り道が確保できず通常の気道異物よりも厄介なのである。しかも取り出そうとしてつまんでも、小片が細かく取れるだけで一塊では取れにくいのが特徴である。会場に実物の餅を持って行ったが、東洋の小国の食文化など興味を示す欧州人はほとんどいなかった。