ままちゃんのアメリカ

結婚42年目のAZ生まれと東京生まれの空の巣夫婦の思い出/アメリカ事情と家族や社会について。

スウエーデン

2017-08-15 | 他の国

アルビックからストックホルムへの電車の中で、ひとりせっせと、chain mailを作っている人がいた。幸福(不幸)の手紙や電子メイルではない。あの鎧型の防具、鎖帷子である。ケルト族が最初に作ってノルマン族もヴァイキングも利用した鎖の防具である。彼は黙々と膝においたプラスティックの容器から、鋼線で作った輪を平たく伸ばした座金(washer)のようなのをひとつずつ拾い、つなげている。チェインメイルですか?と思わず聞くと、そうだと答えた。そうですか、と言ったきり、私も口を閉ざした。


何故私は、チェインメイルだとわかったのか不思議だが、おそらく十字軍の話や騎士道物語のようなものが好きだから、かもしれない。電車の中でチェインメイルを黙々と作る人は、スゥエーデンなら、起こり得る光景だと妙に納得した。終点のストックホルムまで彼は黙って作り続け、私は窓外の景色を見ていた。ヴァイキングの国だもの。



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ストックホルムのような都会でも、小さな村でも、人々は他人種がいても、凝視することなく、一般に個人主義が徹底しているからか、他人にそう感心は示さないのだろう。それが冷たいという定評なのかもしれないが、実際は息子の妻が言う、スゥエーデン人はとてもシャイであるから、かもしれない。親切で、親しみやすい人々はどの国にもいるが、スゥエーデンとて例外ではない。質問すれば、丁寧に答えてくれるし、笑顔も美しい。



社会主義が台頭して以来、高額な税を払っても、国民は平等に国家の利益の恩恵(社会保障制度)を受けているので、生きていくのに、経済的な不安から解放され、笑顔を浮かべて、幸せです、と言う。かつて社会福祉のこれだけ発達した国ながら、自殺率が高いと言われていたが、2015年の統計では、日本(17位)や合衆国(50位)よりはるかに下位の58位で、ちなみにトップの二カ国はガイアナと韓国である。


スゥエーデン人のトマスは、自分はアメリカの高校に留学するまで、ホームレスを見たことがなく、あのアメリカで?と不思議に思ったと言う。ただ、と彼は続けた。スウエーデンは冬が長いんで、それで欝になるから、光療法をするんだ、と付け加えた。その欝が昂じて自殺につながることが多い、とも。人間、満足するのはたやすくない。




太西洋を渡る飛行機の中で、私は、アメリカで、突如路上インタビューされて、「貴方はいま幸福ですか?」と聞かれて、何人が即座に、はい、と答えられるだろうかと考えた。この週末に起こったヴァージニアの事件にしても、アメリカは人種の坩堝故の問題が絶えない。人種問題だけではなく、貧富の差も甚だしい。ドラッグ問題も負けず劣らず大きい。貧困家庭の子女は、学校の昼食が命綱ということもある。共産主義は人間の本質に反することが多いから、崩壊したが、資本主義も修正が必要な時が来ているのだろう。



合衆国の社会問題を無視しないが、国民として心がけたいのは、自分から良い社会を作るように努力することから始まると思う。自分から親切の輪を広げるように。上から変化は来るといつまでも待っても、来るのは雨、アラレ、そして雪くらいなものだ。なにもかも豊富にある(筈)のアメリカなのに、発展の途中で、どこかに大きな忘れものをしてきたかのようである。


 
美しいスウエーデンの夏。

 


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