稲敷資料館日々抄

稲敷市立歴史民俗資料館の活動を広く周知し、文化財保護や資料館活動への理解を深めてもらうことを目的にしています。

館蔵の刀剣お手入れ

2012年05月06日 | 日記
4月28日。

本日は資料館所蔵の刀剣のお手入れ。
当館には、第七代横綱稲妻雷五郎関係の刀剣類や
中世の常州東条庄高田郷の鍛冶(岡澤九郎兵衛一門)関係の刀剣、
それに寄贈を受けた刀剣など一〇口(ふり)ほどが所蔵されています。

今回は、これまで第二展示室に展示してありました
①脇差「常住英定作/天正(以下切れ)」
②脇差「家善作」
の2口をお手入れして、白鞘(しらざや)に納めて休めます。
白鞘のことを俗に「休め鞘」というのは、太刀や刀の
拵え(こしらえ)よりも密閉度が高く、刀剣保存に適している
ことから名付けられたとも言われています。


そして代わりに…
③脇差「常州東条庄高田住英定/元亀ニニ癸酉年正月吉日」
④脇差「常州高田住綱貞」
を新たに展示します。

①~③は、いわゆる「平造り」と呼ばれる造り込みで、
刀身の側面にある稜線(りょうせん)である「鎬(しのぎ)」
がありません。

これらは長さが、およそ一尺以下であれば普通に
「短刀」と呼ばれるものです。

①~③はそれぞれ長さが一尺を越えていますので、「脇差」に
分類されますが、俗に「寸伸び短刀」などとも呼ばれるようです。

④の造り込みは、「菖蒲造り」というもので、
菖蒲の葉のような形をしていることから名前が付いたようです。


③の刀剣は、実は今回が初公開です!

英定は、室町時代末期の常州東条庄高田郷の鍛冶の頭領であり、
中々見事な作があります。この脇差は、少し研ぎ減ってはいますが
美術刀剣として見ることができる英定の作例で、製作年の明らかな
もののうち最も古いものです。

④を造った綱貞は、東条庄高田郷の鍛冶の嫡流(ちゃくりゅう)
として名前の分かる最後の鍛冶です。
綱貞は天正頃に活躍した鍛冶と考えられていて、地金の感じも
英定や家善などと比べると、やや硬い感じがします。

綱貞は英定の息子ですが、今回の③と④では地金の感じが
ずいぶんと違います。同じ東条庄高田郷の鍛冶であっても、
時代によって刀を造った地金に変化があったのかなぁ…
とちょっと気にとめて見ていただけると
よいかとおもいます。。